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仁義なき悪役令嬢   作者: 水銀✿党員
最強暗殺者は婚約者に弱い。婚約者は暗殺者に滅法強い。
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悪役令嬢×悪役王子の第四歩:銀姉の金妹


 冬が益々、猛威を奮う時期になり学園もそろそろ冬休みを取り休校した方がいい状況が迫ってくる。学園の気温維持等が効かないほどに冷えていく日々の中で、「寒いな」と感じつつ。俺、ソーマドールは銀姉と別れて先に下校していた。


「少しは引き留めてほしいものだ」


 今、銀姉護衛の任務はなくなった結果。自由に動けるようになった午後時間。学園での学生の身分でありながらもすでに仕事として依頼を貰っていた。銀姉のおやつ代など捻出するためと、四六時中一緒では俺の心臓がもたないためだ。


 愛とは毒であり身を滅ぼすのを実感して表通りを歩く。視線を感じながら。


「ここか……」


 依頼が……あった場所に俺は顔を出す。待ち合わせ場所として小さな紅茶屋に呼び出された。奥の席に豪華なドレスと金色盛りに盛られた三角グルグルツインテールのきれいな髪にツンとした表情で紅茶を啜っている人物がいる。俺はその令嬢に声をかけた。


「こんにちは……君がクドルシュチル家のご令嬢様ですね」


「……あなたが。今回の暇潰し相手ね」


「ええ、クドルシュチルご当主から直接のね……子守りは不得意ですがお手柔らかに」


「はぁ~? あなたと同じ歳に見えますけど~?」


「中身」


「……ええ、度胸ね。座りなさい」


 俺は銀姉よりも鋭くもない睨みを受け流しながら飲み物を頼む。コーヒーはないようだ。別のにしよう。


「……あなた名前は?」


「名乗る気なし」


「ああ? 目上に対する姿勢がなってないわね」


「クドルシュチル家とマクシミリアン家のどちらか上か知っているか?」


「マクシミリアン家なのねあなたは………ふーん」


 俺を大きな好奇心の瞳で見つめる。


「他の男より余裕ね」


「そりゃ~どうも」


 銀姉の攻撃より容易い。あの殺されそうな綺麗な瞳より楽だ。こっちは身分を失うかもしれないがあっちは命を失うかもしれない。重さが違う。


「私の名前はローリエ・クドルシュチル。今は聖学園に居ます」


「ボーラス学園。ソーマドール・マクシミリアンだ」


「ソーマドールね。覚えたわ」


「忘れてほしい」


「ええぇ!?」


「冗談」


「あなた、精神図太いわ。初対面にそこまで言えるかしら?」


「……ちょっと歪んでてな」


 「銀姉のせい」とは言わない。何故なら彼女は銀姉の腹違いの妹だからだ。銀姉の方が1ヶ月早く生まれ、銀髪を持って生まれたからこそ用済みになった影武者のような令嬢だ。あの家だ……成人するまでに殺されもするだろう。にしてもあのご当主。正妻とヤりながら浮気でもヤるとはな………狼らしい獣といった所だ。


「……ふーん」


「クドルシュチル家としてよくもまぁ~長生き出来てるな」


「子はシャーリーと私だけよ。後は……もう土かしら? 淘汰されているらしいわね」


 死んでもう土の中もいるか。


「実際は二人だけ……そう聞いた」


「……へぇ~結構父様に信頼されてるんだ~はじめて聞いた」


「君たちに教えたら……色々な?」


「ええ、もちろん。私が当主よ。他には消えてもらうと思って動くでしょうね」


「いいや、お前が死ぬって言ってるんだ」


 俺は出された紅茶を一口含む。睨み付けて俺を見る彼女に笑う。


「理由はなによ」


「君が全く怖くない」


「!?」


「怖くなくかわいいと思うよ」


 一応褒めておく。あとで……お義父さんに何を言われるかわかったものじゃない。


「か、かわいい……そ、そう」


「まぁ~銀姉こと。シャーリーの方がかわいいがな」


「あの、お姉さまがね……人形のように意思も持っていないような人よ。まるで脱け殻だった。だけど強いと聞いてたわ」


「おかしいな……感情の起伏は激しいぞ。それに……聞いているだろう?」


 齟齬がある。昔と今の銀姉の話に。


「婚約者」


「そう。婚約者だ」


 ローリエが俺をジロジロと見る。そして、おもむろに笑みを深めた。


「婚約者、どうやってお父様の信頼を手に入れたのかしらね……」


「シャーリーを倒せた」


「ふふふ、腕が立つのね」


 彼女はニヤッとした表情で言い放つ。


「あなた。私と組まない? 噂は聞いてる。抗争があってそれに与した。そこで……そこそこ活躍したらしいね」


「残念だが今日までだ。俺は君に構っている暇はない」


「……私はクドルシュチルご当主になるのよ? そういう約束になった」


「それがなにか?」


 無欲を突き通す。そう、無欲だ。銀姉を1番とし他を2番とする。美味しい条件かもしれないが俺はシャーリーと歩む。裏切り者の英雄さまもそうしてきたんだ。


「ふーん。わかった。交渉材料用意しとくわ」


「靡かないぞ?」


「そういう態度。中々珍しいわ。みーんな、一つ返事だからね」


 蛇が獲物を見るときのような視線を俺は感じる。蛇だ毒を持ってる。


「ふふ。交渉は終わり、暇潰しに何か話なさいよ」


「じょぁ~シャーリーとのなりそめを」


「却下」


「一番語りたかった………」


 俺はため息を吐きながら。シャーリー用に用意していた話題を試すのだった。





ガチャ


「だたいま」


「……おかえり。何故わざわざ私の寝室に顔を出すのよ」


「文句の前に挨拶してくれる優しさが本心だろ?」


「うっさいわね」


 寝室で椅子に座って読書をしてのだが読むのをやめて、本をテーブルに置く。魔力ストーブの魔力を継ぎ足し。彼に向き直る。


「何処へ行っていたの?」


「君の妹の話し相手」


「そうなの? 可愛かったでしょ~幼くて」


「幼い? 同年代だろう?」


「一生懸命に背伸びして、私を越えようとするなんて可愛いじゃない? 私のスペア……本当にかわいそうな感じね」


「そんなに余裕をこいてると抜かれるぞ」


「ふーん。彼女の肩を持つんだ~」


「悪いか?」


「全然」


 悪びれもせずに彼が席をつく。


「飯は食ったか?」


「いいえ。今、頼んでる」


「……頼んでる?」


「もうすぐ来るわ」


「……待っていてくれたのか?」


「違うわよ……本が面白かったから忘れてただけよ」


「どうせ、帰ってきたら用意させる手筈だったんだろ?」


「さぁ~ね」


 全くその通りだから……むかつく。


「俺の目を見ろ」


「……はい」


 透き通る黒い瞳に私は合わせた。彼はニッと笑い頷く。


「俺の言った通り」


「そんなわけないじゃない!!」


「使用人に聞いてもいいんだぞ?」


「……聞けば」


「全く銀姉は可愛いなぁ~」


 ニコニコと私を見る彼に顔を背ける。口を尖らせてちょっとムッとする表情をした。


「全くあなたの頭の中はどうなってるのよ」


「銀姉で一杯だぞ? 子供の名前も決めてる」


「変態……」


「ありがとう。誉め言葉だ」


 罵り、馬鹿にし……それでもソーマは笑顔を保つ。まるで素直になれない私を見透かしているように私に構いつづけた。


 慣れだしたけど……まだ気恥ずかしいわねこれ。





 学園午後自由時間。寒いために最近は屋内で過ごす日々。魔力ストーブが聞いた屋内の喫茶室は令嬢たちでごった返している。席が無いほどなのだが……絶対に1つテーブル席が空いているのだ。


「なんでここはいつも空いてるのかしら?」


 そんな疑問を持ちながら私はその席に座り学園の従業員である使用人に紅茶を1つ頼む。本を開いてさぁ~恋愛の世界へと入ろうとした瞬間だった。


「シャーリーお姉さま……お久しぶり」


「……あら? ローリエちゃん。お久しぶりね。少しは大きくなったかしら?」


 私は金髪美少女の胸をガン見する。少し膨らんでいる気はするが。


「何か入れてる?」


「入れてないわ!! 今ここで見せましょうか!!」


「ふふ、でも……」


 私は胸をあげて谷間を見せつける。寒い中でも私は胸の谷間が見える服を着ていた。自慢するために。


「ふん……汚ならしいわ。晒すなんて」


「負け惜しみはいつ聞いても楽しい」


「……いつかその吠え面。泣き顔にしてやるわ」


「…………」


 ソーマの前で泣いたことを思いだし手を覆った。すでに泣き顔は見られている。キスもしていた。ああ……やだやだ。思い出したくない。


「あら? 姉さん。どうしたの? 面白い!! 顔見せなさい!!」


 席に座り顔を覗いてくる。私はオホンっと咳をして気を取り直し。向き直った。


「……少し。姉さん柔くなった?」


「気のせいよ……今もナイフを向けてるわ」


「あら……奇遇。私もですわ~」


 周りの声がシーンとし、そそくさと客が減っていく。


「……あなた。何故こちらへ?」


「シャーリーお姉さまに会いに」


「ふーん、嘘でしょ」


「てへ~」


「ぶん殴りたい」


「ふふひ。いい顔ですわ~お姉さま」


 言葉で相手を牽制しながら隙を伺い合う。


「まぁ……一番はあちら学園に私に見合う人が居ませんでしたの。だからこちらに編入ですわ」


「ふーん。こっちで良さそうな人いた? 恋愛話なら大歓迎」


「居ましたわ………恐ろしい程に堂々として少し……血の匂いが混じった。いい人が」


「あら? 素晴らしいじゃない~名前は~」


「ソーマドール・マクシミリアン」


「……」ピクッ


「お姉さま……彼……凄くいいですね。今日も待たせてるんですよ」


「へぇ~でも彼は……」


「姉さんの婚約者」


「……そうよ」


「婚約者でも。噂ではシャーリーお姉さまは毛嫌いしてるそうですね。いがみ合ってる。シャーリーお姉さまは彼のこと好きですか?」


「いいえ……」


 少しその問いは恥ずかしい。それに……私の好きはそんな簡単に口には出さないつもりだ。好きをいい続けるとそれは安く感じるのだ。恋愛脳だからだろうか、 ロマンチックに言ってみたい気持ちがある。いいえ。言いたくないわ。言いたくないわ。


「くぅ………」


「シャーリーお姉さま。なに一人で紅くなってるんですか?」


「なんでもないわ。ソーマのセクハラを思いだしてただけよ」


「ふーん………ねぇお姉さま」


 金髪の美少女が笑みを浮かべて可愛く首を傾げる。そして、大声で宣言する。


「なら……当主になる私に婚約者を譲れ!! シャーリーお姉さま!!」


 私に宣戦布告する。それにクスッと笑みを浮かべ返す。


「いいわ、奪える物なら奪いなさい。我が家は力がすべてよ」


 買った。その布告を私は買い占めるつもりで言葉を返すのだった。ありがとう、神よ。ちょうど……つまらなかった所よ。予測外な所から来てくれて。










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