悪役令嬢×悪役王子の第三歩 : 女子会
私ことシンシアは最近、学園で悩みごとが変わった。銀姉さまからの激しい苛めから、どうやって仲良くなるかへと変わり。今では。
「シンシアお姉さまおはようございます‼」
「お姉さまおはようございます‼」
「お、おはよう」
色んな高位の令嬢が私に挨拶してくれるようになった。笑顔で返しながらも……距離を取る彼女らに私は少しどうしようかと悩むのだ。
「お、おはようございます」
「おはよう………あの」
「失礼します!!」ダっ
ことわざに「虎の威を借る狐」と言う言葉がある。私は銀姉さまの舎弟として有名になってしまい皆が私を怖がるようになってしまった。銀姉さまと一緒に居るという事がここまで影響するとは私は想像できなかったのである。
銀姉さまの噂は尾ひれがつき、今では「学園の裏側の支配者」とまで言われる始末。裏側には四天王がおり………その四天王の一人はソーマドールさまと言うことらしい。噂が一人歩きしている。
「……ん?」
「あっ……あなたは」
私は少し悩ましい状況に頭を悩ましていると綺麗な緑色の髪をもった令嬢が騎士と一緒に登校していた。
「ありがとう。今日はここまででいいわ」
「はい、お嬢様」
優しそうな騎士さまが頭を下げてその場を去る。
「えっと………銀姉さまに楯突いて処罰された愚かものですね。あっ!? ごめんなさい………口が滑りました」
「ちょっと!! メアリーよ!! メアリー!!」
「覚えるに値しません」
「待ちなさいよ~ねぇ~シンシアさん~」
私の後ろについてくる彼女は何故か最近よくつるむようになってしまった。
「シンシア~」
「なんですか? メアリーさん………」
「ふふ。やっぱり優しいから!! 止まってくれますね~ふふ」
「……メアリーさん。最近明るいですよね?」
「わかる? あの騎士さま凄くいい方で………優しいの~ノブリスさんとは?」
「……なにもないです」
第二の悩み。全く進展がないのである。
「……あら……どうしましょう。進展が遅いわね、きっと彼女が悪戯としての責務を放棄してしまったから………進みが遅いのね」
「むぅ。じゃぁ~メアリーさんはどうなんですか‼」
「出会ったばっかりでそこまで親密じゃないわ……でも~私にはそこそこ好意はあるらしくって~ちょっと期待してる~」
「………」
「あぁ~シンシアさ~ん!! 行かないで~」
私は多いに悩む年頃のようです。
*
「どうすれば!! 進展がありますか!! 銀姉さま!!」
「……は?」
「シャーリーさん。そんな苦虫を噛み潰した顔をしないでください。好物でしょう!?」
学園の午後の自由な時間。ソーマドールさまが用意したおやつのきな粉餅という物をつまようじと言う物で食べている銀姉さまに私は質問を投げる。初めて見るおやつだが、非常に手慣れた様子で食べている。
「あなたを苛めたら。彼は来ますよ」
「銀姉さま。それをして銀姉さまはどうなりました?」
「……」
銀姉さまは最近可愛くなった。プイッと顔を背けて頬が赤くなっている。実は1回苛めに来たときノブリスさまより先にソーマドールさまが登場し銀姉さまを口撃。銀姉さまはたじたじになり、目の前でイチャイチャしだす始末で全く役には立ってくれなかったのだ。メアリーさんがお下がりのきな粉餅を嬉しそうに食べながら口を動かす。
「シャーリー……あなた。悪役令嬢やめてヒロインになれば?」
「それを……私がしたら……歯止めが効かなくなったソーマドールに何されるかわかったもんじゃないわ。孫見せるのはまだ早い」
「それでも………今はどうみてもヒロインよ」
「………ちくせう」
何故かメアリーさんと銀姉さまは裏で繋がって居るのか仲がいい気がする。
「でも、私は羨ましい思うな~」
「あっ!! 私もです。愛されてるなぁ~って羨ましいですもん」
現にあのソーマドールさまは今では学園一の優良貴族の男性に登り詰めたのだ。家の家督は兄たちを押し退けて継げそうである事や。すでに学園を休み、大人の騎士たちに混じって仕事ができる方であり、あの漆黒の髪と落ち着いた物腰に悪そうな雰囲気が令嬢の評価は非常に高い。残念なのは………銀姉さまが婚約者なので誰も奪おうとしないだけである。
「愛されてる? 苛めとおちょくられてるだけよ」
「銀姉さま………今、お口に入れているおやつはいったい誰がご用意を?」
「ソーマ………」
「シャーリー……あなたが最近。学園で怒られない理由はなんで?」
「……ソーマが根回し」
「誰のため?」
「銀姉さま~誰のためなんですか?」
「………」
つまようじの先をハムハムしながら目線を下げる銀姉。
「………私?」
「正解ですよ」
「そうよ。シャーリー………あそこまで分かりやすいのはないわね」
「…………」
「銀姉さまは好きじゃないんですか?」
「シャーリーはどうよ~」
メアリーさんと私は二人で銀姉さまを見つめた。
「私は……そうね。好きじゃないけど………嫌いじゃない」
私は胸のなかで熱い物が込み上げる。
「これって………メアリーさん」
「そうね……シンシアさん」
「後ろの方が想いが強いですよね」
「ってことは………」
「「好き」」
「うっさいわね!! つまようじ投げるわよ!!」
銀姉さまが顔をあげてグググと唸る。
「素直になりなさいよ。シャーリー」
「そうですよ銀姉さま」
「……おかしい。何故、私が攻められてる? いつ、私は失墜した?」
「それはだな、銀姉。『俺に対してもっと心を開けていいんだ』と言ってるんだ」
「ソーマ!?」
「「!?」」
薔薇の花壇の裏からソーマドールさまが現れて私たちは驚き顔を向ける。赤い薔薇一輪の髪飾りを銀姉につけ肩を掴む。
「どうしてここにと思うだろう。ノブリスには嘘をついて貰った。俺が訓練場に居ることを。潜伏してたんだ」
「い、いつから!?」
銀姉さまが叫ぶ。
「『好きじゃないけど嫌いじゃないよ』の前から」
「………」
顔を押さえる銀姉さま。かわいい仕草だが耳が赤い。あの……狂犬と言われた令嬢がこんなにも純情になるのだろう。そんな恥ずかしがる彼女の耳元で彼はささやいた。
「僕も……そうだね。銀姉……いいや、シャーリー。嫌いじゃないよ。愛してる」
「ああああああああああ!! やめなさい!! 耳が腐る!!」
囁かれた方の耳を手で塞ぐ銀姉さま。
「嫌いじゃないよ!! 愛してる!!」
「違う!! 囁いたことが腐るじゃなくて!! 言うな!! くそばか!!」
「そっか………銀姉も愛してるか」
「何を言い出すの!?」
銀姉さまは本当に今日もソーマドールさまに弱かった。
*
学園で銀姉さまはソーマドールと一緒に帰ってしまい。残された私たちはため息を吐く。結局一緒に帰ってる銀姉さまはかわいい。
「相談忘れちゃった」
「そうね。結局、ソーマドールさまが全部持って行っちゃったから………あそこまで強いと……もう別人ね」
とぼとぼと私は進展がない事を悲しむ。
「シンシア……待たせた」
「あっ!? ノブリスさま!?」
「帰ろう。家まで送るよ………手を繋ぎながら」
「ノブリスさま!?」
「ソーマドールに怒られたんだ。お前の想いはそんなものかって………」
「ソーマドールさま。優秀すぎません!?」
「……ソーマドールみたいに僕はなれない。でも………この手を取ってはくれないだろうか?」
「………はい」
私は差し出された手に私の手を重ねた。強く握られ。想いが伝わる。
「ゆっくりでいいなら………頑張るから……待っていてくれないか?」
「ノブリスさま。待ちます………」
進展した。進展した。
「帰ろう……」
「はい……」
嬉しい事を胸に秘めて立ち上がり。メアリーと別れる。愛しい人と帰るために。
*
残された私、メアリーは昔の小説を読んでいた気分になる。目の前で繰り広げられ物に怒りを覚えてテーブルを叩いた。食べ終わった皿が残っており、後で学園の使用人が取りに来るだろうと皿がひっくり返す。
「なんで!! あんなに!! 羨ましい妬ましい!! ああああああああ!!」
私は叫び世界を呪うのだった。
「お嬢様……お迎えに来ましたが……何か嫌なことでも!!」
「聞いてよ!! あのね!!」
私が雇っている騎士が迎えに来てくれた瞬間に世界を呪うのをやめる。
そういえばフラグたってた。




