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仁義なき悪役令嬢   作者: 水銀✿党員
悪役令嬢プロローグ
3/59

悪役令嬢の第二歩:ライバルを作ろう前編

 ライバルとは一人の異性を巡り、奪い合う関係であり、ときにはドロドロの愛憎劇に発展する。しかし恋愛以外の物事では意気投合したり仲が良かったりと不思議な関係でもある。僕はその存在を必要としている。テルミドールに接触したのはそのためだった。


「……聞きたいことがある」


 お昼休みの空中庭園から外のベランダに出て単眼鏡を構えていた。その時に声がかかったのである。単眼鏡内では姫と警戒をしている王子がいた。今日はボウガンの組み立てを諦める。


「……何故、そんなに執着する?」


「ふふふ。なんでそんな事を聞くのかしら? それよりも貴方はあそこに行かなくていいの? 親友でしょ」


「……頼まれたんだ。お前の監視を」


「婚約破棄は成立。皆は彼に賛成。名実ともに悪役令嬢ですわ。悪い噂を立てられる前に縁を切った方がいいわよ」


「……」


 会話は済ませてあり、知り合いになっている。確認は取れている。クール無口なキャラだがやはり運があるのかヒロインと仲良くなった。ぜーんぶ見ていたからわかる。


「……他の令嬢と一線を逸している。なんだお前は」


「愛多き乙女ですよ。わかります? おバカさん。うーん今日は進展はいつもの通りに会話だけですね」


「……」


 テルミドールは何も言わない。スゴく困っている表情をした。こう、子犬が「くぅ~ん」と泣きそうな声が聞こえそう。僕はそれについつい「はぁ………」とため息を吐いて、構ってあげるように言葉を口にする。


「シンシアさんと会話をしっかりしたら目的を教えてあげましょう。そろそろイベントですし。あと無口で何も言わないと伝わりませんよ!! はぁ……もう。ゲームなら感情を読めるからいいですけど。わからないのですからね!!」


「……すまん。しかし、令嬢が足音を消すのは変だし、隙がない。『何故、女なのにそこまでの武芸を?』と気になったのだ」


 そういえば寡黙な努力家だった。強くなる。親友に隠れてこっそりと頑張るのが得意なのだ。親友は天才。彼は努力家。だからこそ色んな武芸者に秘訣等を聞いたりする。しまったなぁ………色々と荒事に備えていたのが裏目った。


「さぁ? 気になる?」


「……気になる。女にしておくには勿体無い」


「えっ……あっ…………」


「??」


「あ、ありがとう褒めてくれて」


 少し驚いてドキッとした。流石にイケメンが優しく微笑んで褒めるのは攻撃力が高くて素晴らしいく効き目がある。「そういうことか!! ヒロインがこれを毎日見たらコロッと逝くわけだ!!」と女の身で知る。


「ふぅ。今からシンシアさんや親友の場所へは戻らないのですか?」


「……戻らない。今日は君に付きっきりだ、少し恥ずかしいがな……」


「…………ちょっと待ってください。いま、いいところ」


 僕は単眼鏡でシンシアの服を確認する。まだ育ち盛りの僕の胸とは違った慎ましい胸にあるブローチを見た。その色は白を基調としていた。出会って1月の間にイベントはあったがやはりと言うべきか悲しいことに…………ノブリスルート一卓らしい。


 あれは一番好感度が高いのをつけるのだ。今はノブリスが高い。このままだと親友決闘ルートが見れない。


「うーむ。どうしようか?」


「……?」


「お前がだらしないから悩んでいるんだ……このヘタレめ」


「何故、俺は怒られてるんだ?」


 僕は腕を組んだ。悩む。確かに難しいルートなのはわかる。しかし………見たい。今のままでも十分ではある。考えがグルグルと回る。


「……少し」


「お黙り。ヘタレ」


「……」しゅん


「あっごめんなさい。あああああもう!! いいわ。カフェテラスに連れてって計画変更よ」


「……すまないな」


 何か知らないがテルミドールは私に手を差し伸べる。僕は全力でそれを払いのけ、いい音がするのだった。






 ズズズズズズ


「……」


「……」


 カフェに来て10分がたつ。カフェテラスは色んな場所に点在しているがその中でも人気の場所。屋外のテーブルに座った。日差しが暖かい状態から、暑くなるまでの期間は非常に心地いい。


「……」


 しかし、僕は顔をしかめる。全く喋ろうとしない彼らに対して不満なのだ。シンシアならきっと気を使って喋り、それをエルミドールはそのまま笑顔で返すだけだけ。それにヤキモキし、「あっ僕が喋ればいいのか」と考え直す。


「殿方が喋らないのは如何の物かと」


「……すまない。あまり、喋ることになれていないんだ………」


「知ってるわ。でっ? 私を武芸者と言いましたが酷いと思いませんか? 何処から見ても、か弱き乙女でしょう?」


「……数日前の事件。君が行った」


「数日前? あら? 何かありました?」


「……シンシアの頭上に矢を放ったのは君だろ?」


「まぁ!? そんな物騒な事が!? 怖いですわぁ~」


 しらを切る。もちろん犯人は私だ。学園内で四六時中王子が見張っているので少しアクセントを加えただけ。シンシアは泣き崩れて、それをなだめて怒りをあらわにする王子はなんて美味だったでしょうか。シンシアも王子に何度も何度も名前を呼んでるのは素晴らしいと思いました。たまらない。


「犯人は見つかってませんの?」


「……目の前でお茶を飲んでいるならそうだろうな」


「なーぜ私が犯人だと? ノブリスさんを好んでいる方は多い。田舎者に取られるなんて嫌でしょう? それに私は婚約破棄した側。興味はないですわ」


「……徹底したアリバイ工作でしょう。射撃時間から反対に居たのは知ってます。その場所に本来なら数分で居たのに数分で帰ってくる事は無理です。しかし、屋根を伝って走れば……簡単です」


「まぁ!? そんな事出来ませんわ!?」


「……剣を突き付けられ怯えない令嬢はいるでしょうか? ノブリスに突き付けられてもピンピンしてましたね」


 スゴく探りを入れてくる。困ったなぁ。


「緊張して体が動かなかっただけよ」


「……スカートに隠している物はなんですか?」


「乙女のスカートの中を見ようなんて最低ね」


「……そういうつもりでは」


「根暗、ヘタレ、ド変態、雑魚」


「……怒りますよ?」


「あら、ごめんなさい。正直イラッとしましたの。もっと可愛いお話しませんか?」


「……可愛いお話ですか?」


「そう、例えば恋愛。誰と誰か付き合っているかを知りたいわ。シンシアちゃんとノブリスの仲とかもね………あっ………うん」


 しまった。本音が出てしまった。不味い。彼はノブリスに近い。


「……それが本心ですね。見つけましたよ」


 彼はそんな事を言う。やはり鋭い。


 だから僕は笑みを消した。





「……それが本心ですね。見つけましたよ」


「………」


 飄々としていた。銀お嬢様から笑顔が消える。つり目の綺麗な瞳で俺を睨んで来た。その視線に背筋がぞわっとする。「魔物に近い恐ろしい化け物が目の前にいる」と思っていたが、間違いはなかったようだ。


「……本心ですね」


「質問の返答次第では………気を付けてね」


「……ごくっ」


 俺は黙ってしまう。喋りなれていないとか関係ない。喉にそのまま手で握られているような錯覚なのだ。


「お父様を煩わせたくないの………処理が大変なのよ」


「……くっ……」


 親友に言った通り恐ろしい人だ。ヒールではなくブーツを履いているお嬢様は彼女だけである。それは如何なる場所でも「武器」とするために。


「………そうねぇ。それを知ってどうするの?」


「……どうしようか? 親友に言っても信じてもらえそうにない。『くっつけようとしている』と誰が信じる? 理由だってわからない。しかし………銀さんは『知られたくない』と言う。俺もなぜ悪者になるのかわからない」


 けっこうベラベラと喋ってしまう。


「ふぅ。誰にも言わないと約束してくれるなら、話しましょう」


「……約束しよう」


「では、明日。昼時間にここで待ち合わせましょう。1日様子をみるわ」


 彼女はテーブルにナイフを置く俺はそれに驚いた。盗賊が使っているようなナイフなのだ。


「これを使いたくないの。お願いね?」


「……指輪を」


「……ん?」


 俺は覚悟を決める。騎士であるなら。


「いいでしょう」


 彼女は立ち上がり手を差し出す。俺は彼女の指に嵌められている指輪の赤い宝石にキスをした。綺麗なスラッとした手だと思う。これで信じて貰えるだろう。


「うわぁ………ばっち………」


 俺は「女の人は男の精神を抉ってくる」と学ぶ。


「……これで俺は秘密にしておく」


「……まぁ、気落ちしないで。私が変なだけよ。『ちょっと格好いいじゃない』の照れ隠し」


 彼女はそう言ってナイフをしまい。その場を去った。俺は覚悟を決める。親友のために……真実を探ろうと思う。






 次の日、テーブルの上に数冊の本が並べられている。俺は「それはなんだ?」と聞いたら「恋愛小説だ」と言われて疑問に思う。「何が関係しているのだろうか?」と思慮する。


「これを全部読み終えて。話をしましょうか」


「……何か隠しているのか? 暗号か……難しいな」


「いいえ。ただ単に読めと言ってるの」


「……読んでどうにかなるのか?」


「なるよ!! 私はこのために生きている。全ての始まりであり。人である理由であり続ける至高の物。まぁ~わからないでしょうね」


「……わからん」


「……じゃぁ宿題よ。それで勉強して!!」


「……勉強……何を?」


「……まぁハマれば教えてあげるわ」


 彼女の真意は全く分からなかった。








 



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