悪役令嬢と悪役王子の第四歩:汝は人狼なるや?後日譚
俺が学園登校できるようになったのは銀姉の最初の襲撃から約1週間後だった。親父が仲介者となり先方と銀姉の父さんを会わせて強引に手打ち、終わらせた。
学園の外は気温が下がり、寒い時期に差し迫るが学園の結界は非常に過ごしやすい温度を維持してくれている。数人の黒騎士、マクシミリアン騎士を連れて令嬢何人かと会っていた。そしてこれが最後だ。
「……君がアレー家の令嬢ですね」
「え、えっと。ソーマドール様ですよね?」
「マクシミリアン家とお呼びください」
名前で呼ぶのは親しみを持っての行為。だが俺は「親しみを持ってはいけないよ」と暗に忠告する。今日は仕事で来ているためだ。
「!?」
「事情聴取だ。アレー家が関わった事件についてな」
「わ、私は何も存じあげておりません!! 本当です!!」
「それは、俺じゃない騎士が調べれる。連れていけ。抵抗するなら………ミル家と同じになっても知りませんよ」
「ハッ!!」
「い、いや!! マクシミリアン様!! お願いです!!
何も知らないんです!!」
「それは、黒騎士が聞き判断する。なに、悪いようにはしないさ」
「そ、そんな!!」
令嬢に手枷が嵌められる。「死ぬよりましだろう」と俺は言い聞かせた。
「協力ありがとうなマクシミリアン家の騎士」
「いいえ、これも治安維持のためですよ」
「おお、こわこわ。黒騎士の才能があるよ」
「尊敬する人が元黒騎士なんですよ。既に除名されているでしょうが」
「おっ……もしや………あのひとですか? 東方の出と思われる名前の」
「そうです。あのひとです」
「ははは、では、この武器いいでしょう。両手剣です」
「羨ましいですね」
令嬢が泣き喚くのを尻目に世間話をする。これで今日の仕事は終わり、銀姉の元へ行けるだろう。今日はきっと。シンシアとノブリスと一緒にいるはずだ。
「じゃぁ後はお任せします」
「ああ、若物よ。婚約者の元へですか?」
「もちろん」
俺はその場を去る。あとは大人のお仕事だ。
*
私はソーマが来るまでの間にお説教をする。
「シンシア、ノブリス。あんたらねぇ………なに? なんでイチャイチャ出来ないの?」
「銀の姉さん。人前でそういうのは………」
「シンシアは?」
「恥ずかしいです………」
「はぁ……情けない。それでも男? それでも女? イチャイチャしなさい。あわよくばそこでひんむいてもいいのよ」
「銀姉さまが見たいだけですよね」
「人に『性癖を押し付けるのはいけない』と思いますが?」
「つべこべ言わずに私を満足させなさい。シンシアこそ~いいのそれで?」
「いいですよ………今のままでも」
「シンシア……」
「あっその見つめ会うのいいですね。それですよ!! そーれ!!」
「銀姉。まーた変なことを……困ってるじゃないか」
「変なことをじゃないわよソーマ!!」
私の隣にソーマが座る。お菓子の袋を持った状態で。
「なんで私の隣に来るのよ………」
「向こうの席は空いていない。わかるか? あの中の入れるか?」
「ああ、無理ね。イチャイチャしたら余計にね」
「そうだろ? でっ耳は?」
「隠したわよ」
「触りたかった。銀狼ちゃん………」
「ふふふ!! そんなやすやすと触らせるもんですか!!」
「おやつ抜き」
「やぁ!! ぶつわよ」
「はいはい」
ソーマが袋を隠す。ぐぬぬぬ。
「まぁ~それよりもソーマからも言ってよ。イチャイチャしろって」
「ノブリス。イチャイチャしなくていいけど。少しはスキンシップはしろよ。稽古も程々にな。家柄だけで女は来るかもしれないが。シンシアは違うだろ? 彼女の家は地方では大きい。場合によっては……お前が婿入りになる」
「……わかった。肝に命じとくよ」
「やっぱり親友ね。すーぐに頷いたわ。さぁ~イチャイチャを!!」
「銀姉。少し黙る。シンシアももっと強く求めないと……ノブリスはいい家柄でいまだに狙ってくる令嬢がいるんだ。いつまでもそのままじゃぁ………奪われても知らんぞ。媚薬などではノブリスでも対抗なんかできないからな」
「……知ってます。それぐらい………でも………」
「シンシア。大丈夫。俺がいる」
「ソーマさん………」
バシッ!!
私はソーマの頭を叩く勢いよく。
「あなたがいい雰囲気作ってどうするの!!」
「いや……なんもないけどな」
「ふぅ……そうならいいわ。邪魔するのではなくってよソーマ」
「わかってるよ。だ、そうだ。解放されたきゃイチャイチャしろ、一応事件の犠牲者はこの人が行った物だからな……全く……危なっかしい」
ソーマの脅しにノブリスとシンシアは見つめ合い。恥ずかしくなったのかそっぽ向く。私はその感じでも満足だが………もっと。もっと。なんかが欲しい。
「それも。いいんだけど……もうちょっと進展あってもいいじゃない……ボウガンあるから……脅す? キスしろ」
「俺が許さん。銀姉……人にはそれぞれ距離感がある。ゆっくり見守ろう」
「私は今、見たいだけです」
「銀姉さま……イチャイチャと言いますがよくわかりません。手本をください」
「手本ねぇ……恋愛小説でも読めば?」
私は1冊の本を机に置いた。
「私がそんなの出来るわけないし~他人のを見るからこそ。いいものなの。わかる?」
「銀姉。アーン。今日のクッキー自信作だ」
「いつも自信作でしょ。アーン……はむ」
ソーマが袋からクッキーを出して私の口の前に出す。それを唇で半分つまみながら入れてモグモグする。
「美味しい。自信作ね~美味よ」
「よかったぜ」
「「………」」
クッキーの入った皮袋を目の前に置かれて、それをつまむ。
「ノブリス。こういうことだ」
「お、おう」
「ノブリスさん。私にもあれぐらいはやって欲しいです」
「いや………僕には少し……」
「ノブリスさんのヘタレ」
「………すまない。君が可愛すぎるから……」
「おふぅ!?」
「うわぁ~そう!! そのイチャつきよ!! ふふ………ふ………」
私は笑みを溢したがふと。我に帰ってソーマも見た。
「どうした? 銀姉」
「私はどうして……アーンなんてしてるのでしょう?」
「一緒に襲撃したご褒美だ。よく頑張りました銀姉」
「んん? 褒美は私が取らせるのでは………」
「アーンさせてくれって。これでいいよ」
「はぁ………仕方ない人ね………私も流されてたから不問よ」
「ありがとう銀姉………それと……そろそろいいな」
「なーに? ソーマ畏まって
「なんでもない」
「………」
私は首を傾げて覗き込み。ソーマが優しい笑みで微笑み返す。その優しい笑みに少しだけ体をソーマから離した。ふわっとソーマから……いい匂いがする。甘く、優しい匂い。血の臭いとは違った匂いに慌てて動いたのだ。
「銀姉どうした?」
「なんでもないわ」
私は最近本当におかしいと思う。なんでだろうか。いつもいつも、ソーマの横は落ち着く。
「銀姉? 悩みがあるなら聞くよ」
「……あなたには言えないわ」
言えない。本人の前で……流石にこういうのは勘違いされそうだ。勘違いされ……なんで勘違いされるんだ。
「銀姉さんの方がイチャイチャしてる………」
「……そうか。ソーマはここまで彼女を。負けていられませんね」
「何よ、二人してニヤニヤして」
私は何故か胸騒ぎがするのだった。
今夜更新でやっと………です。




