悪役令嬢の第十八歩:空から女の子が落ちてきた。避ければよかった。
私は校内のバラ園を覗きながら。石畳みの道を歩いていた。一昨日……気が小さくなり多くの醜態を晒してしまった。悲しいことにソーマドールに対して最近は嫌悪感がない。由々しき事態である。
「シンシアさんもノブリスさんも全然甘くないですし。あまーい付き合いをされてるかたも……居ません。辛いです」
そう。餓えている。私は餓えている気がする。満たされない渇望に。目の前の恋愛に。
ヒューン
「ん?」
ドッ!!
何か上から落ちてくる。私はそれを姫様抱っこのようにして受け止めた。親方はいないけど空から女の子が降ってきたのだ。しっかりと足のバネを使い衝撃を逃がす。
「おっも………で………メアリーさん。私の上に落ちないでください」
「………ん? あれ? 生きてる」
「メアリーさん。落ちるなら1メートル前後で落ちてください。自害するならですね。あと落ちて皮膚がへばりつきます。掃除が大変ですから毒をあげますから。それで自殺してください」
「………」
「なんですか?」
「………………はぅはは………生きてる」
私は壊れたのかなと思い。彼女を下ろすのだった。
*
カフェテラスでコーヒーのミルク入りを頼んで味を楽しんでいる時。メアリーは顔をずっと静めていた。
「なにか話なさいよ」
「はい………実は……死のうとしたんです」
「やっぱり?」
高所から落ちてきたとき……つい受け取ってしまったけど見捨てれば良かったかな~と思った。たぶん死にはしないけど止めは刺してあげれただだろう。苦しんで居るところにナイフで。まぁー寝覚めは悪いだろうが。
「まぁ~運がいいのか悪いのか。私の上へ落ちるんだから………」
「………皮肉ね。目が覚めて。婚約者が他の人を嫁に貰ってさ………奪おうとしたけど無理で………気付けば苛められて………生まれ変わっても。何も変わらなかった」
「ソーマドールの事ならしらないわ。あと何も変わらなかったのじゃなくて。変えなかったあなたが悪い。ナローシュと思った? ばっかじゃない。夢見すぎよ」
私は慰めずに貶した。ソーマドールはそういえば遅いなと思う。何しているのだろうか? いつもならササッと現れる。
「はぁ………恋愛小説みたいにうまくいきたい」
「努力して女子力鍛えなさい。ヒロイン力があれば男なんてイチコロよ」
「………悪役令嬢に諭される日が来るなんて。2流脚本です………」
「なめてる? 殺すわよ? 死にたかったんでしょう? いいわよ? 優しく拷問するよ?」
「や、やさしく殺してください!!」
「嫌よばっちぃ。それに魔族同士の殺しは裁判沙汰で面倒なの。まぁ………物語のようにうまくは行かないのが生きてる証拠よ」
そう、うまくはいかない。恋愛もまた……難しいのだ。だからこそ素晴らしい。
「………本当にね………はぁ。やり直したい。いいよねあなたは」
「いいかしら? 今は生の恋愛は見れずに餓えて餓えてしょうがないのよ?」
「強くって………やっぱり100越えた程度じゃ……底辺のままだったかな?」
「えっ? すごいじゃない!!」
昔の記憶によればそれは努力家だろう。
「感想欄荒れてエタったけどね」
「はぁ!? ふざけんなよ!!」
「うるさいわね!! 毒者!!」
なんか少し元気になって言い返してくる。
「どれだけ苦労して書いてるかわかってる!? それを批判で埋めて!! 最低でしょ!!」
「うっさい!! 炎上もひとつの商法よ。叩かれるならまだ荒がある作品よ!! ひどいのはアカウントも持たずにただ読みしてブクマも評価もせずになーんもしない方よ!! 私はしっかりと評価もするしブクマもしたりしたわ!!」
「………そ、そう」
「そうよ。文句を言う前に。恋愛しなさい。ん? 違うような?」
「それは違いますよね」
私は首を傾げたが。まぁー大丈夫だろう。記憶が何故か混雑する。いけない……ヤブ医者に見て貰わないと。
「……いいえ。恋愛はいいものよ」
「悪役令嬢がそれを言います?」
「目の前で見てきた事を言ってるの。ふぅ………仕方ないわね。転生者のよしみで少し面倒を見てあげるわメアリー」
「えっ!?」
「苛めた奴の顔は覚えてるかしら?」
「……い、一応」
「ふふふ、私が買いとってやるわよ喧嘩を!!」
「やめんか銀姉!!」
ガツン
「ツウウウウウウウ!? ソーマ!?」
私は頭を押さえる。ドスンっと丸太で殴られたかのような重い一撃に身が震えた。ここまで強力な一撃はソーマドールしか打てない。だからこそ私は振り返り彼を睨む。その行為に目の前の男がため息を吐く。ため息は私がかきたいわ。
「くぅ………」
「そんなやつを助けるな。自業自得なんだぞこいつは……ノブリス含めて色んな男に関わり。色目を使っていたから嫌われたんだ。手を出してはいけない」
あっ怒るのそこなんですね。
「………いいじゃない。みーんな奪えば」
「銀姉ならそれで行けるだろうが。こいつにそこまでの魅力はない。それに……魔族なのが余計に関わりにくい」
それは………納得できる。
「うぅ………」
メアリーが泣きそうになる。まぁ……好きな人にここまで言われたらさぞ悔しいだろう悲しいだろう。
「………ソーマ。でもまぁ~男を恵んでやれば大人しくなるんじゃない? ソーマは? 婚約者いないでしょ?」
「婚約者いる」
「えっ!? そうなの?」
「ああ。決まった。いつか紹介する」
私は何故だろう。「寂しいなぁ~」という感想が出る。
「あうぅ………ソーマドールさん」
「はぁ……マクシミリアンの騎士を雇えばいいと思う。『姫様扱いしてくれ』と言えばしてくれるだろう。それに……マクシミリアンの騎士は亜人、魔族には偏見はなく。関わりやすいだろう」
「なーにそんな男婦みたいなの~」
「男婦だ。今人気なんだぞ?」
「え、ええ……まじですか」
騎士とはなんぞや。
「わ、私でも雇えるんですか?」
「ああ。とびきりのイケメンを探すといい。マクシミリアン騎士団に顔を出してから探して指名すればいいだけだからな」
私は思う「結婚相談所のような感じ」と。
「焼き印を見せたら。『忠誠を誓っている』と思われる。いい待遇が期待できる」
「そ、そんな良いことがこれに………」
ソーマが腕を捲って黒いバラの痕を見せる。
「ソーマ……優しいすぎ」
「一応、恩を売れば後で返してくれるかもしれないだろ?」
「ソーマ……優しくないわぁ~」
見返りを求めてるだけでなぜこうも黒く見えるのか。
「ありがとう。褒めてくれて」
「褒めてないわよ!? えっ!? 褒めてないわよね私は!?」
「君に近付けた」
「ソーマ………ゲスになってきたわね。ちょっと待ちなさい!! それは私が『ゲス』と言いたいの!? こんな清らかな乙女が!?」
「銀姉……自覚症状ないのか……まぁ。いいや」
彼が異常に外道なことをしても似合いそうな雰囲気の優しい笑みを見せる。
「………はぁ。あの、目の前でイチャイチャやめてくださいますか?」
「メアリー。あなたの目は節穴よ。でも、少し明かりが見えてきたわね」
「あっ!?」
「銀姉は逆に丸くなった」
「うっさいわ……たまたまよ」
「1m。ずれて受け止めたくせに」
「気付いてたの!?」
「居たならあなたが救いなさいよ!!」
「メアリーさん。あなたは勘違いをしている」
ソーマは私を無視してメアリーに向く。
「えっと………」
メアリーが私の顔とソーマの顔を見比べた。
「銀姉は……ヒロインだ」
「あうぅ………格好いいのに。辛いです」
「………」
そのまま私は温くなったコーヒーを一気に飲み干して立ち上がって、その場を去ろとする。
「ああ、照れるなよ銀姉」
「………うるさい、ついてくるな!!」
「監視役だろ。家までついていくのが仕事だ」
「今日は休め!!」
「嫌だ!!」
「………………辛いですねぇ。仲いいなぁ………」
本当に最近は………ソーマドールは私につきっきりで辛かった。とくに………胸の内が。




