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仁義なき悪役令嬢   作者: 水銀✿党員
腹黒王子プロローグ
22/59

悪役王子の第六歩: 努力する悪役


 俺は休日に父上の元に顔を出した。父上は俺を気に入っているようでそれを利用し、銀姉と婚約した。銀姉は全く知らないだろうが既にそういう動きで決まり、正式に決めるのは俺が銀姉を倒したときだ。だがその約束も「銀姉が敗走した」という事実で望みがないわけじゃない事がわかり安心している。俺は銀姉を倒せる自信がついたのだ。


「父上、失礼します」


 騎士団の団長室に顔を出す俺。豪華な鎧や団旗が飾られている。久しぶりに顔を出した。


「おお、ソーマドール。令嬢への広報は中々いいそうだな」


 配った羊皮紙と自分のあの行為によって噂の話題が増えたのだ。


「ええ、マクシミリアンの代表として銀姉を退けました」


「そうだな。それに伴いクドルシュチル家もマクシミリアン騎士団は嫌だと声明を出した」


「結果は……」


「護衛の任務が噂の評価によって増え軍縮しなくて済みそうだ」


「富も入り。順調ですね。売り上げの1割かあげればよろしいでしょうし」


「全く………『金は天下の回りもの』とよく言った。騎士団が拐い、騎士団が護衛をつけ………気付けば全く関わってない俺らに富が舞い込むのだからな」


「予想外ですね。いや………自分がまさか……広告塔になるとは思いませんでした」


「銀髪鬼を抑える事が出来ている。それだけで広告だな」


「悪名高いのが逆に………いい結果になりました」


 いくつも学園があり、その学園内で言われている言葉。歴代最悪の化け物令嬢シャーリー。


 そんな有名な悪名高いのを監視できる騎士として売りに出している。クドルシュチル家も他の騎士団の騎士を暗殺、令嬢を拐い騎士団に届けるような挑発もしていた。マクシミリアンも同じことをされているが何とか防ぎきれている。


 まぁ……俺が暗殺するならどうするかを考えて護れと父上に助言した結果かもしれない。


 銀姉の暗殺術を騎士団に少し教えただけでこれだ。クドルシュチル家も嫌ではあるのは本当だろう。しかし………それを商売にしてるのだから流石と言える。マクシミリアン騎士団の護衛を雇えば襲われないとな。


「そうそう、お前の大盾を武器に転用は素晴らしい発想だった。だが………扱えるのはいない。いかんせん重い」


「残念、銀姉を退けた武器だったんですが」


「……冒険者。魔物狩りにでもなる気か?」


「……相手は人の皮を被った可愛い銀狼……魔物ではありますね」


「………本当に好きなんだな。俺がやったおこづかいで買ったものを聞いたぞ。都市インバスの名人形師が丁度来ていたからなんだろうが……」


「人形遊びです」


「……なんだろうな。お前……ちょっと怖いぞ」


 父上がドン引きしていた。俺は笑みを浮かべて頷く。


「恐怖は剣を鈍らせる。いい武器ですよ……父上」


「はは……お前は学園で何を学んでいるんだよ……」


「好きな女を落とすために出来る事をしてます。ご本人に頭を下げて『鍛えてください』とお願いするほどに」


 父上はうーむと悩みだす。


「クドルシュチル家とまだ………お前の婿入りかで揉めている。クドルシュチル家の当主から『隠し子を当主に据えたい』と相談を受けている。それの………補佐監視役でお前を使いたいそうだ」


「……ほう?」


「だが………ワシはお前の武勇が好きだ。ああ、言おう。その女のために無茶苦茶するのはワシの悪い癖だった。昔はそんなにお前を見てなかったんだがな………今では1番の息子に思えてな………出したくない」


「………ありがとうございます。ですが」


「わかってる。絶対に一緒になりたいのなら……仕方がない。若ければお前と戦い。勝って従わせたが勘が鈍って………むりそうだ」


「やってみないとわかりません」


「勇敢だな」


 父上の背が少し小さく見えたような気がした。悲しいことに「父は老いているのだろう」と感じる。


「若かかりし父上と剣を交えたかった」


 父上は満面の笑みで悔しそうに俺の頭を叩くのだった。


 







 父上に報告済ました俺はこんどは親友の元に足を運んだ。親友ノブリスの家は豪邸で北騎士団の団長の息子だ。だから庭は広く。訓練出来る場所もあり、そこでノブリスは庭で剣の素振りを無我夢中で行っていた。


 昔は稽古はしてなかったノブリスだったが俺に負けてから努力をするようになった。今までは才能だけで戦ってきたが力で押し潰される事を学び、頑張っている。


 ノブリスは俺を見て稽古をやめる。汗を拭い。ガゼボ(小屋みたいな物)で待っていてくれといい。大人しく待つ。使用人と共に着替えたノブリスが現れてテーブルにコーヒーが用意される。苦味のある飲み物だが何故だろうか俺はこれが好きになった。紅茶と違った匂いがたまらない。ノブリスはこれにミルクと砂糖を加える。それもまた美味ではあるが俺は素を楽しみたいのでそのままだ。


「すまないソーマ。稽古をしていた」


「ノブリス。稽古をするなんて変わったな」


「変わったよ。君に負けて……今までを悔い。『一からやり直そう』と思った。シンシアはそれを応援してくれる。まだ………いつか。君の肩に並べられるようになりたいからね」


 眩しい。実に眩しい親友の笑顔に俺は苦笑いをする。


「たまたま勝っただけだ」


「ソーマ、今までずっと君に勝ってきたから言おう。才能だけで勝てる事に胡座をかいていた。それが負けた理由だ」


「……」


「ずっと努力してきた。いや……上を目指して来たからこそ君は強い。だが……ありがとう。僕を越えてくれて、目標が出来て努力したくなったよ」


「………勝てなくなるじゃんか。また」


「そのときは追いかけて来てくれ。そしてまた……抜いてほしい」


「わかった」


 ノブリスが本当にいい笑顔で手を伸ばし。握手を求める。もちろんそれに答えた。


「にしても………ソーマ。銀姉さんによって変わりすぎじゃないかい?」


「銀姉と一緒なら誰だってそうなる。でも……俺の場合は……愛してるからな」


「愛している人より強くなりたいは普通の事だが。そこまで強くならないといけないのもおかしな話だな」


 ノブリスが肩をすくませる。


「本当に強すぎなんだよ。シャーリーさんは」


「そうだろうね。自分の家が遺伝子がほしいほどに」


「………婚約者だったね」


「おい、ソーマ!! 盾を掴むな!!」


「冗談。殺ると思った?」


「思ったよ嫉妬でな。はぁ………シャーリーさんになってるぞ」


「そりゃ……好きな人だから」


「……変わった人を好きになるんだね君は」


「容姿はいいよ?」


「中身を言っている」


「中身もいいよ?」


「……僕にはそうは思えない。婚約破棄されて安心したほどに」


「勿体ない。俺が今どれだけ苦労を………」


「心中お察しするよ。僕もシンシアと……早く婚約したいんだがね……」


「出来るよ。俺らのあとでいいなら手伝う」


「ありがとう。ソーマ」


 俺は今の所、親友には嫌われてないようだ。安心して手伝ってくれそうだ。






 俺は夜に最後に彼女に会いに行く。迷惑なのはわかっている。そして玄関で待つこと数分、銀姉は顔を出す。綺麗な私服で胸が空いて谷間が見える。しかし、それよりも俺は顔を見たかった。


「夜ですのに。お伺いするなんてなんですか?」


「……少し顔を見たくて」


「顔ですか? まぁ~見た目はいいですからね。どうぞ存分に見てってください。そして早く帰れ」


「すまん。いや………ありがとうか」


「………なにか知りませんが。悩みでもあるんですか?」


 「あなたの事が好きなんです」と言えれば楽だろう。だがまだだ。


「まぁ……ありますね」


「そう……せっかく来たのだし……紅茶ぐらい出すわ」


「いや……帰るよ。また明日迎えに来る」


「……律儀ね。1日ぐらい来なくていいわよ」


「監視役だからな」


「………もしかして監視役で来た?」


「それもある」


 銀姉が近付く。少しドキッとした。


「仕事もたまには休みなさい」


「……肝に命じる」


 銀姉は……同じ強さか同じような人には………本当に優しかった。「本当に出逢えてよかった」と何度も思うほどに。






 



 





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