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仁義なき悪役令嬢   作者: 水銀✿党員
腹黒王子プロローグ
20/59

悪役王子の第四歩:監視対象者VS監視者


 俺は外堀を埋めつつある。檻を用意し、その中に封じ込める事が出来た。次は首輪を銀色の狼につけないといけない。それがまた………大変な作業だろう。






 早朝、私は寝室でメイドに起こされる。起き、支度を済ませ屋敷の中心、赤い絨毯を歩き………メイド数人に「行ってらっしゃいませ」と言われるのを手で応答し。


「おはよう、銀姉」


「………」


 ナイフを投げた。


 パシッ


「堅気に手を出さないのでは? いい挨拶だが」


 渾身で投げたナイフを手で防がれる。棒状のナイフを握って手渡してきた。

 

「か・た・ぎ~~~? ふざけるな監視者。私は自由を愛するの。あなたみたいなのいらないの。敵よ敵!!」


「敵と書いて、かたき……か……」


「ウマイこと言ったつもり?」


「まぁ背後から斬るなら斬れ。それ相応の武器で望むまで」


「背後に大盾を背負って何を偉そうに………」


 ソーマは背中に板のような長方形の盾を背負っていた。背後から刺そうにも邪魔である。


「くっ……ソーマ………」


「さぁ行こうか銀姉。護衛役だからな安心しろよ」


「ちっ………仕方ない。従う」


 悔しさを噛み締めながら、己が行ったソーマドール強化行為を呪う。強いじゃない………ちょっと。





 私は早朝からソーマの顔を拝まないといけないのだが、もう既に気にせずにいる。別れたあと、自分の教室に顔を出した。すると………自分の机がぐちゃぐちゃに散らかっていた。教科書は千切られ。ナイフで「死ね」と書かれている。


 あまりの典型的な方法に私は鼻で笑った。「ちょっと子供すぎじゃないか」と。周りはビクビクと様子を伺っており。それを見て笑みを深める。


「あらあら………」


 面白い。今度は何をするのだろうか。


「……嫌がらせなら他に何かありましたっけ?」


 腕を組んで椅子に座り首を傾げた。思い付くの釜茹や爪剥ぎ、焼き印に指折り。釘差しだけで。非常にむごい拷問ばかり思い付く。「殺さずに苛めるのは難しい事なのだ」と思う。


「罵倒以外の苛めるって結構難しいのですね」


 そんなことを考えながら……次の行動にワクワクするのだった。






「ソーマ……苛めるってどうしたらいい?」


「……」


 午後、俺らはシンシアさんがよく来ていたカフェに顔を出した。銀姉は周りを気にせずに話を振る。


「何を企んでるかわかったけど。いま、苛められてるの君だよね?」


 俺的には「檻に餌を投げ入れないでください」と。「檻に手をいれないでください」と言いたい。


「そうそう。今さっき瓶が目の前に落ちてきて。『しっかり狙えよ』て文句言ってきたところだわ」


「当たったら?」


「当たるわけないじゃん」


 そりゃ~そうかもしれないが。


「……メアリーさんに注意しよう。死にたくなければ手を引けと」


「うーん。生ぬるい」


「生ぬるい言うな……」


「うーん……ん!!」ピコーン!!


 銀姉が唸った後に目がキラキラする。何を思い付いたんだこいつ。胃が痛む。


「銀姉!! 今思い付いたことを忘れろ!!」


「ソーマドール!! 監視者なんだよね!!」


「ああ!!」


「じゃぁ……ちょうど………今ね。メアリーのいる場所わかるから」


 俺は察した。やる気だこいつ。


「銀姉………俺が勝ったら。一つわがまま聞け」


「いいよ。私が勝ったら監視者やめてね」


「いいのか? そんなの賭けて?」


「えっ?」


 俺は真面目な顔をする。


「ど、どうして?」


 銀姉が少し目線を反らした。「ああ、俺も強くなったんだな」とそこで理解する。


「それを賭けると冗談じゃなくなるぞ?」


「………はっは~ん。脅しね。いいわ。冗談じゃないあなたを見せてね」


「いいんだな……カフェのお代はここに置いとこう」


 チャリン


 硬貨をおいた瞬間。俺らは立ち上がり店の出口から勢いよく走り出すのだった。銀姉の思い付いた行為は簡単だ。メアリーが生ぬるいので自分で「彼女を苛めに行く」と言うことだった。







 私はメアリーを見つける。まぁー元々、監視用に特殊な染料でこっそりつけに行っていた。私たち一族でしかかぎ分けられない匂いをつけ、それを嗅覚で辿る。風が強いと結構遠くまで届き。匂いが一本の線のよう目に映る。それに続き、その先を予測し……ちょうど今、見つけた。学園の3階から眼下に新しく出来た級友たちと私の悪口を広める算段をしてい途中だった。


「『既に広まっているのを広めても』と言う結論なのね……生ぬるい」


 私はポーションの空を全力で投げつける。


「フフフフ!!」


 ガッシャーン!!


 ガラスの割れる音がする。メアリーたちは私を見た。いい顔。睨み付ける顔が驚愕に染まっている。


 そりゃ~そうだ~向き直った瞬間にボウガンの矢が体に吸い込まれて。


 キッンッ!!


「あっぶな……銀姉やるって決めたらやるからな……」


「て、ソーマドールさま!?」


「気を付けろ……来るぞ」


 ボウガンの矢を大きな盾で横から防いだ彼。私は飛び降りて、大きなナイフを引き抜く。反り返った刀のように丹精に作られたナイフを構えてメアリーに向かう。


 ギャン!!


 一閃。大盾が横から防ぎ盾に切り傷をつける。


「黒鋼の合金に傷をつけるか……化物」


「邪魔よ」


「あっそ……」


 ブンッドガアアアアアン!!


 ソーマが四方に取っ手のついた盾を振り回し私を退けてから近付き、盾を上から叩きつける。


 地面の綺麗な石畳みが砕け打ち上げられる。少し窪み大きな大きな反響音を学園に響かせた。私は冷や汗が出る。こんなのダメすぎる。


「ソーマ!! 殺そうとしたでしょ!! 叩き潰れるわ!!」


「『冗談じゃなくなる』と言っただろ? 俺は………理由があって監視者を辞める気はない。絶対に辞めないからな……」


「ほ、本気なのね………くっ!!」


 苦し紛れに唖然としているメアリーに向けてナイフを投擲し大盾で防がれる。投擲用ナイフは太股に隠してる9本のみ。どうするか。


「銀姉………俺はその棒状ナイフを投げるのは無理だったけど!!」


 ソーマドールが割れた石畳みの一部を足で蹴り上げてそれを器用に握る。


「投擲なら!!」


「えっ!?」


 盾を左手前方に構えて思いっきり引き付ける。右手の石をそのままオーバースローで叩きつけるように私に投げた。魔力が篭った投擲で非常に重い一撃になることが予見出来る。


 ブォオオオオオオオン!! ドゴーン!!


 私はそれを全力で横へ避けてかわし、背後を見る。学園の壁面の当たった石は砕け散り、壁をボコッと抉った。


 死ぬやん………こんなの。


「ふぅ……力馬鹿ね………」


 私はこのままではじり貧なのを感じ取り駆け足で逃げる。ヘタリこんだメアリーと他の令嬢が抱き合っているのに対して「にやっ」と笑みを向けたままで。







 なんとか退いた。銀姉の正確無比な遠距離攻撃は大盾で防げる。今日はたまたま大盾で来たけどそれがよかったのだ。黒い盾は……仰々しく頼りになることを知った。実戦でも使える。父上に上申してみよう。


「あ、あの……ソーマドールさん……あ、ありがと」


「……ふん」


 ガシッ


「あがっ!?!?!?」


「お姉さま!? ソーマドールさま!? どうして!?」


 俺は振り向いてメアリーの首をつかんで持ち上げる。非力な力で俺の右手を掴んでいた。


「銀姉に『ちょっかい出す』て事は死にたいんだな。だったら俺が首を折って殺しても問題ないだろ?」


「やっ……ご………ひぐぅ」


 メアリーの目に涙が滲む。俺は手を離した。ドサッと音を立て彼女は倒れる。


「げほげほ……」


「メアリーさん。悪いことを言わない。銀姉に謝り、許しを乞え。俺が護っているのは銀姉に学園で『殺し』をしてほしくない事や俺のためだ。もし無理なら………消すぞ」


「………て、ソーマドールさま!? ど、どうしてそ、そんな人に!?」


「堕ちた天使を愛したいなら。己も堕ちる必要があるだろう………わかったら、護衛はするから謝りに行け。それとも………この大盾の初めての血の錆になるのがご所望か?」


「…………」


 メアリーは首を振って震えて泣き出す。俺は……それを見ながら何の感情も湧いてこないことに少し銀姉に近付いた事を感じる。


「そういえば………俺。人を殺ってたな」


 「あのときは苦戦したが。次は苦戦したくないものだ」と思うのだった。








 帰宅途中


「つまらん」


「そうか? 俺は少し楽しかったぞ」


「つまらんつまらん!! ソーマ!! なんで謝らせた!!」


「被害が大きくなる前に手打ちだ。もう二度としないと誓わせる焼き印もしただろ?」


「あれは楽しかった」


 マクシミリアン印の焼き印を手につけることで約束を守らせる習慣を行った。メアリーの家に後で俺が「説明しに行こう」と思っている。きっと、メアリーはボコボコにされるか怒られるか幽閉されるかだろう。


 藪蛇をつついた結果。やられてしまった。


「にしても………ソーマ強い」


「おっ? 銀姉珍しく褒めるね」


「いや………敗走させた時点で気付け。正面からはやり合えない。武器が足らん」


「そうだろうな。槍でもあれば違ってたのだろう」


「そそ……にしてもその盾どれだけ重いんだよ」


「持ってみる?」


 俺は盾を手に持ち替えて銀姉に手渡した。銀姉はそれを掴む。そして少し浮いた。


「!?」


「銀姉………持てるのか……マジか」


「も、持てるけど振り回したり出来ないよこれ!? お、おも……もういい!! もういい!! 重い!!」


「おお、ごめん」


 ふらふらし出す銀姉を愛でながら盾を受けとる。良いもの見れた。


「……まったく。監視役に厄介な奴がついたもんだ」


「いいじゃないか。俺は……別の意味で監視しなくちゃいけない」


「何を?」


「秘密だ」


 銀姉に俺以外の男がついて惚れないようにするために監視役をしなくちゃいけないのだ。そう、そういうことだ。


「むぅ……むぅ……」


 こういうむくれて可愛い姿は俺だけの物にしたい。だから俺は……「堕ちるとこまで堕ちよう」と思うのだった。














 

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