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仁義なき悪役令嬢   作者: 水銀✿党員
悪役令嬢プロローグ
2/59

悪役令嬢への第一歩:ヒロインを苛めよう


 ドレッド王国のボーラス学園。淑女、紳士を教育し立派な大人にさせる階段のバラの園。僕は憧れの世界に来たようだとその学園に足を踏み入れて悟った。


 恋愛小説の聖域に私は立っている。感動を覚え跪く。これが夢であっても神よ。愛欲の神よ感謝します。周りの目線が刺さるがそんなのは小事。私の目的には石ころ以下の砂である。衛兵の騎士が私に声をかけてくださったが「貧血です。関わらないで」といい。退けた。


「ふふふ。ああぁ楽しみ………」


 ヒロインの名前はシンシア・クローディア。クローディア家と言う地方貴族さまの田舎娘と言う。田舎娘を学園に送るのはもちろん縁を掴むため。王子や御曹司。金持ち貴族と縁談を持ってこいと言われて来るのだ。今の貴族は大戦後によって莫大なお金を持っている。


 そして、シンシア・クローディアはヒロイン属性を持つ化け物。ならば………もちろん出会いはある。


 僕がそれを作ってしんぜよう。私の家も大きく本気を出せばクローディアを消し去れるだろう。そこまでしなかったのはゲーム故の配慮だ。しかし、それでいい。手加減し王子を出現させる。


「おはようございます」


「……あっおはよう」


「行くよ~。なーに田舎娘に声かけられてるのよ」


「あっうん。そうだね」


「うぅ………」


 ゾクゾク!!


 私はイベントを思い出しながら田舎娘のクローディアを見つけた。田舎娘に貴族の社交界なんてない。田舎娘は必死に殿方を見つけるために努力をしないといけない。友達もいない。そんな孤独感の強い場所での………登場は「最高だ」と思う。「ただ友達欲しいだけなのにねぇ~可愛いわぁ~」と思いながら笑みを溢す。


「おはようございます………」


「…………なーに。あなた? だーれ?」


「クローディア家、シンシアです………」


「田舎娘ね。あなたねぇ……誰に構わず関わるのおよし。みすぼらしいわ」


「……」


「わかるかしら? あなたは所詮田舎娘のドブネズミ

よ。だれかあなたなんかに関わろうとする? 汚い汚い泥棒猫になるかもしれないあなたにねぇ~」


 彼女は私に声をかけてしまった。そのまま過ぎれば悪役にならない………徹底的に罵声を浴びせかける。なお、罵声は令嬢らしくないが仕方がない。


「うっ………うう」


 泣きそうになる。シンシアを僕は………はぁ……と吐息を漏らしてしまう。


「かわいいわぁ………」


「えっ!?」


「あっいけない………このドブス!!」


「????」


 つい、まだ何も汚れを知らないヒロインの可愛さに「ドキッ」と胸が高鳴ってしまった。僕はそういえば女の子と添い遂げる事ができた記憶がない。初めて見る生でのヒロインはまるでアイドルのように思えて可愛く思う。流石、田舎娘でも綺麗な主人公。まぁ………恋愛物語を重視するので慈悲はやらないが。


「聞いてるの? シンシアさん? わかる? あなたは田舎へ帰りなさい!!」


「………あの!!」


「シャーリーさん!!」


 ガシッ!!


 僕の名前を呼び手を掴んだ人物を私は見る。「ほうっ」と声をかけてきた王子に感心した。そう、今回の攻略王子様はノブリス・オブリージュ、名門貴族の長男だ。先の大戦で大金持ちになった家の。


 そして、私の婚約者であり先月から関わりがある。このシナリオは私に幻滅する描写があったはずだ。「あああああ、そのシナリオを味わえるなんてなんて僥倖」と舌をなめずる。


「あら、ノブリスさん。彼女を庇うの?」


「ああ、庇わせてもらう。いたいけな少女を苛めるのは耐えられない。君は『そんな人』と思わなかったよ」


「ふーん。私はあなたがそんな人と知ってましたけどね。王子さま」


「言い訳は後で聞こう。周りを見ろ………注目の的だぞ」


「ふふふ。知ってますわ………シンシアさん」


「ひゃい!?」


 小動物のようにビクッとする。ああ可愛いわぁ~この子そういえば百合ものでもヒロインだったわね。危ない気を付けないと、私が食われる。


「覚えておきなさい。私の名は銀。今回はその王子さまに免じて去ってあげるわ。次回、覚悟しておくことね」


「名前はシャーリーでは?」


「ノブリスさん。銀とお呼び……では。また」


 私は彼らの前から走って姿を消した。誰も私を気にせずに平穏が戻る。騒ぎは後で噂になるだろう。物陰に身を潜め、魔法を唱え身隠す。鞄の中から一本の筒を取りだす。それは単眼鏡といい曲面レンズを使うことで遠くを見ることができる。


 もちろん覗くのはノブリスとシンシアの二人。


 会話は聞こえないがこの世界で僕は覚醒している。欲に忠実になれば出来ないことはない。読唇術をフルで発揮する。元々耳もいい。全ての神経をたたき起こす。


「大丈夫でしたか?」


「は、はい……すいません。田舎から出てきたものですから」


「シャーリーさんの言葉を鵜呑みにしてはいけません。何が気に入らなかったのかは知りませんが僕から強く言っておきます」


「は、はい………」


「そういえばお名前を聞いてませんでしたね。ノブリス・オブリージュです。以後、お見知りおきを」「は、はい。シンシア・クローディアです」


「可愛いお名前ですね」


「!?」


 シンシアがイケメンの彼に褒められて顔を真っ赤にする。周りが見えていないのはお前の方だと言いたいぐらいな桃色空間に僕は悶えるのだった。


「ああああ、ああああ………幸せですわ」


 僕は満足し、宝物を心にし舞い込んで単眼鏡を外した。これから始まる学園生活に心躍りながら。








 教室では令嬢の作法や間違った歴史。数学などを学ぶ。数学などを学ぶ理由は会計や経理は女の子の仕事と言われているために男尊女卑のような状況だからだ。「昔から女の子の価値なんてそんなもんでしょうね」と達観した視線で授業中に恋愛小説を読む。この世界の恋愛小説は王道がそれが王道と言われる前の作品郡だ。大好物であるし、英魔族の天使の作品はやけに心理描写が生々しい。


 もちろん、授業中が怒られることはない。読んで、数式をささっと解いて、また本に目を通す。当てられてもささっと黒板に書いて終わり。この僕の体は多分、優秀なのだろう。いいえ、生まれもった才能なのだ。運がいい。最高の体である。


 そして、昼休み。カフェテラスでもお嬢様を楽しませる時間。午後は殿方との………触れ合い。社交場。そう、私は彼を誘わないといけない。それがイベントだから。


 ノブリスがいる教室へ向かい。僕は彼に声をかける。彼は親友のソーマドール・マクシミリアンと言う黒髪の落ち着いた雰囲気の無口ぽい風貌の男と話していた。男なのに長い睫毛と耽った表情と美しい顔。黒と白の美男子が揃うと何とも絵になると思った。両方騎士としてそこそこの剣技を持つ。旧き海の向こうからの血筋がたまに出るらしく黒い艶のある髪らしい。覚えのある資料設定ではだが。


「ノブリスさん。行きましょう」


「!?」


「どうしました?」


「ごめん、ソーマドール。婚約者から来るとは思ってなかったよ」


「ペッ」


「今、なにか?」


「なんでもないですわ。殿方から迎えに来るなんて待ってられません。お話もありますし」


「ああ。僕も君に話がある。今朝の話だ」


「あら………そうですか?」


 僕は願ったり叶ったりとほくそ笑んだ。





「あら……そうですか?」


 俺は親友の婚約者を見た。親友の話があると言ったあと少しだけ笑みを浮かべたのを見たのだが。


「それでは向かいましょうか?」


「……少しだけ待ってほしい」


「あら、まだご用件があったのですね。テルミドールさん。銀です。お初にお目にかかります」


「……ソーマドール・マクシミリアンだ。間違うなよ」


 あまり女性と人と話すのは苦手だ。だが、俺は親友に近付き耳に言葉を伝える。


「……ノブリス、気をつけろ。この女、なにか恐ろしい」


「わかった。忠告を受け取るよ。君がそんなことを言うとは………」


 俺は親友から離れ。一人、空中庭園へ向かうのだった。






 ぜーんぶ聞こえてる。


 「流石はソーマドールさんだ」と僕は設定を思い出した。無口で物静かだが、確かな眼力をお持ちで僕のほんの一瞬の笑みからなにかを感じ取ったらしい。ただし、詰めが甘いのか囁きは耳に入っている。


 「あとで、ちょっと声をかけてみよう」と思う。「発破をかけてもいい」と思う。この攻略王子はシンシアと触れ合い。慣れ、近くなる。最高難易度の攻略だったがそのツンツンクールは人を燃え上がらせる。そっからのツンデレは最高に面白い。フラグはノブリスがシンシアに出会った瞬間に出来ている。


「では、お話とはなんでしょうか?」


 カフェテラスでゲーム内で有名な毒入りサンドイッチを食べながらお話を促す。美味しく。毒なんて入ってるとは思えないが………これが後に毒入りになる。ジェノサイドエンドは面白いネタだった。毒入りで全員が死ぬんだから。歪んでる内容。


「今朝、何故君はあんなことを?」


「何ででしょうね?」


 今朝のあれは「シンシアの無垢さに僕がイラついたから始まった」と言う設定だった。そこから、王子が出て嫉妬や羨ましさ、妬みと自分との関係性などごちゃごちゃしたストレスの捌け口で苛めだすのがシナリオ。だが、僕は違う。王子と姫様の劇場を目の前の観客席1番前………いいえ。当事者で見たいのだ。見るためならお父様役でも親友役でもよかった。ただ割り当てられたのは悪役令嬢。ならば私は私を演じる。いいえ、「僕も私も一緒である」と考える。


「まぁ『嫉妬』とでも言っておきます。田舎から無垢な少女の。王国の泥々した物に染まっていないその無垢な少女が憎らしいと」


「数日前は無口で何を考えているかわからなかったが。そんなことを」


「幻滅しました? 私の血は汚れてるのです。それに婚約者は解消されるでしょう」


「何を言っている?」


「父上に相談しました。自由にしたいと………了承していただきました。私はこれから多大な迷惑かけますから」


「勝手に決められる物では!?」


「悪評、今朝の悪評で十分でしょう? さぁ~ノブリスさんも親に言ってくださいね」


「何故そんなことを? 何が目的なんだ? 僕にはさっぱりだ?」


「シンシア苛めは楽しそう。シンシアを虐めるのは楽しそう」


「な、なに!? 君は今朝ので懲りたのでは!?」


「邪魔が入っただけです」


 心のなかで「ご馳走さま」と「ありがとう」を言う。


「ノブリスさん。邪魔です」


「!?」


「ストレスの捌け口でシンシアを苛めますわ。では、さようなら」


「ま、まて…………くっ」


「シンシアさんにつきまとわないでね」


 サンドイッチを食べ終わり私は獲物を探すために屋上へ向かった。





 何が彼女を変えたかがわからない。だが………恐ろしい程に妖艶に笑い、「苛め抜く」と言った。


 僕はそれは看過できない。何か恐ろしい事が起きそうでナイフを探してしまった。悪い噂の家だ。尚更、警戒する。


「落ち着け。落ち着け」


 蛇。そんなイメージが浮かんだ。だからこそ僕は立ち上がる。


「シンシアさんが危ない!!」


 そう思い、慌ててシンシアさんを探す。数ヶ所あるカフェテラスを回り、見つけた。一人でサンドイッチを食べている彼女を。




  

 

 

 屋上と言うにはあれだが空中庭園と言えばいい場所に僕は鞄を持って現れる。空中庭園のベンチでは幾人もの令嬢と殿方が仲良く会話はしていた。こんな桃色空間の空気を吸い込みながら目的の人物を見つける。


「親友が気になりますか? 春とはいえ肌寒い時期でも暖かいこの学園は素晴らしいですね。ソーマドールさん」


「……シャーリーさんですね」


「あら、名前は間違ってますわ。銀とお呼びください」


「……銀さん」


「そうそう、そうです!! いいですね尊敬する人の名前を名乗るのは………ふふふ。この銀髪もきっと運命ですね」


 ソーマドールの目が細められる。僕の姿は目立つ。目立つが誰も桃色空間で閉じ籠っているために気にしない。


「でっ、あなたは親友の監視ですか? ずっとこの上から見てましたね。ここはいいです。目に前にカフェテラスがあってね。シンシアさんも見えますね。令嬢はあそこのカフェテラス遠くて嫌がるんですけど~静かでいいんでしょうね」


「……何しに?」


「それはもちろん」


 鞄から単眼鏡の倍率が高いのを取り出し覗く。警戒しノブリスがシンシアと会話をするのが見えた。


「二人の観察ですわ。同じ趣味ですね」


「……どこでその情報を?」


「そんな事を教えるバカはいません。おバカさ~ん」


「……それもそうか。しまったな」


「『無口で表情変えている』と思ってました? 残念、動揺したでしょう。ああそれと私の事を『危ない』て親友に忠告したです。良かったです」


 良かったのは目の前でイケメンがささやく動作は心を震わせた。僕は雑食らしい。そっちでもいける。


「……君はいったい何者だ?」


「ふふ。恋愛小説をこよなく愛する愚者です」


「……恋愛小説?」


 腕を組んで彼は余計にわからないと言った様子だった。気にせず口に出す。


「シンシア、すまない。余計だったでしょうか?」


「い、いえ………わ、わたしも一人で………」


「……わかるのか!?」


「読唇術は心得ておりますわ。いいえ、直感です。だから、邪魔したらどうなるか。覚えておいてください」


 僕は実況しつつ。微笑む。えへえへへへ。


「もう。ないけど勃つわ~ふふふ」


「……」(この人は本当に何者だ?)


「あら?ジロジロ見ても何もないですよ。イケメンさん~」


「……」(本当に何者だろうか………)

 

 隣のイケメンの口元の愚痴を気にせずに目の前の桃色空間を眺め続ける僕だった。














 






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