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仁義なき悪役令嬢   作者: 水銀✿党員
腹黒王子プロローグ
19/59

悪役令嬢の第十六歩:悪役令嬢と正ヒロイン (餌)


 私は次の日の午後自由時間にソーマドールを尾行した。もちろん昨日の令嬢と一緒に。ソーマドールは廊下を巡回し、令嬢に声をかけて羊皮紙を渡していた。その後は教員室に向かい先生に話をしたのだろう。職員部屋から出てくる。本当に仕事してるんですが……こいつ。こいつ。


「ああ……愛しの王子さまです……ああ~」


「何してるんだろう?」


 羊皮紙渡された令嬢に聞けばよかった。いや、後で直接聞けばいいかソーマに。「私は顎で行ってこい」と言う仕草を隣に見せる。「全力でぶつかれ」と囁く。


「行きます!!」


 メアリーが私の後ろから勢いよく飛び出し。走る。そして………そのままソーマドールに。


「ああああ!! ごめんさあああああいい!!」


 ぶつかった。背中に当たってそのまま跳ね返されて尻餅をつく。そこはそのまま抱きつけよ。ぺっ。


「ぐへ………痛い」


「……すいません。大丈夫ですか?」


「ごめんさい……目の前見てなかったんです」


「……お怪我は?」


「な、ないです」


 メアリーが顔の頬を赤らめソーマが伸ばした手を掴む。そして……そのまま立ち上がり。


「あっ……」


 ポスッ


 足を滑らせ胸の中に。ありきたりなイベントだけど僕は口を押さえて震える。「それよそれ」と声を漏らすほどに最高な気分。「やれない」と思っていた彼女がしっかりとやってくれているために喜ぶ。手のひらはクルクルするためにある。千切れそう。


「いいじゃん!? この………ああ……見つめ合ってる。最高!!」


 廊下の角から覗き見て恋愛現場を目の当たりにした。嬉しくて嬉しくてしょうがない。新しい玩具の登場に。


「あ、あの………お名前は………」


「……ソーマドール・マクシミリアンです。お嬢様」


 きゃあああああああっと私は叫びたいのを我慢する。


「ソーマドール!! やれば出来るじゃない!! かっこいいわよ!!」


 声を漏らし続ける。


「……わ、私はメアリー………メアリー・デビルローズです………ああ。ソーマドールさま。なんと凛々しい方なのでしょうか………」


「……ありがとう。あとそろそろ離れて欲しい」


「す、すいません……」


「……では。用事が御座いますので……ああそうです。これを」


「はい?」


 何かまた羊皮紙をソーマドールが渡している。


「……護衛にはマクシミリアン騎士団をどうぞ」


「あっ……はい!! あの!! ソーマドールさんは護衛についたりしないのですか!!」


「……します。交渉しました」


「そうなんですか!! だったらその!! 私の騎士になってください!!」


 告白のような力強い主張。私は「うんっ」と頷いてその場を後にしようと立ち去る準備をする。この先は後で聞こう。もうお腹がいっぱいである。


「……すいません先着がいるんです」


「そ、そうですか………あぅ……すいませんでした」


 なんか聞こえた気がしたけど。気にせず、ホクホクした状態でいつもの場所へ向かうのだった。





 なんとか名前を覚えられてくれたらしいメアリーが私の元へ戻ってきた。いつもの場所で私は読書に耽る。


「出る幕なかったわね」


「ふふふ~そうですねぇ~そうですねぇ~ふふふ~」


「まぁ……良いもの見れましたし、頑張ってください。あと、もう二度と来ないでください」


「ふふふ~来ないわよ。性悪女。私はシンデレラストーリーをかけ上がるの~」


「めっちゃ痛いので耳塞いでいいですか? 耳が腐りそうです。ソーマドールの前は………すごく乙女なのになんで………腐ってるように見えるんでしょうか?」


「ひど~い!!」


「すいませんね。全方位敵を作るが心情です」


「……あなた。本当にスゴいわね。そこまで徹底して悪役令嬢するかしら?」


「本能です」


 最近思った。これは私が頭がおかしいからなのだろう。しかし、治す気も起きない。生前の記憶さえあっても薬にもならなかった。


「どうせ……『恋愛出来る』とは思ってませんし」


「あら~~枯れちゃって」


「枯れちゃってるから他人の恋愛眩しく見えますし楽しいですわ。自分があれになるなんておぞましくておぞましくて無理です」


「枯れちゃってるというより………あんまり好きじゃないのね」


「家のために身を捧げる方が楽でいいんですよ。楽しいですし。戦うの」


 やっぱり私は歪んでいる。


「ふ~ん………まぁいいですわ~これからソーマドールさんと一緒に~あっ!? ソーマドール様ですわ!!」


 目の前のメアリーが幸せそうな顔でうっとりしている中、バラ園をソーマが駆け寄ってくる。メアリーではなく私に向かって。


「私に向かって!? なんで!?」


「久しいな銀姉。ちょっと話がある」


「えっ!? えっ!? メアリーさんじゃなくて?」


「メアリーさん? …………あっ、居たんですかメアリーさん。どうしてこんな奴の前に?」


「えっと………」


「変なことは言いません。銀姉は何するかわからないので近付かない方がいい。俺が居るならいいが……いない場合は噛まれて保証はしません。狂犬病に感染しますので気をつけてください」


「ええ~噛まないわよ~こんなの腹壊すわ。私から願い下げよ」


「銀姉が嫌がった!? メアリーさんは一体………こわ」


「ソーマドールさん……そのぉ……その方は悪役令嬢ですよね」


 私は居心地が悪くなるのを感じる。メアリーの目が冷たい。その視線に………ゾクゾクする。


「いい臭いだ。臭い臭い。嫉妬の目!! ああ~いい!!」


「銀姉うるさい。ええ、知ってます。破滅願望者なのも。だから……今日から彼女の正式な護衛役。いいえ監視役としてクドルシュチル家に雇われましたよ。銀姉……いや……シャーリーお嬢様」


「は?」


 私は言葉の意味を考える。


「は!? うそ!? 私は知らない!! そんなこと!! 聞いてない!!」


「知らないでしょう。銀姉の妨害を受けないように秘密裏での交渉と先生方の助力で決まりました。学園生活で暴れる場合。『剣を抜いてもいい』と了承を得ています」


 私は立ち上がり胸ぐらを掴んだ。ニヤッと笑うソーマドールを睨み付ける。こいつ、そのために動きまわってたのか。


「なんで、あなたなんかに監視されなきゃいけないの? ええ!!」


 脅しをかけるが効果は無さそうだ。


「学園生活だけです。銀姉……あなたはやり過ぎた。俺が大きい武器を使う事を許される程に。先生も危険視したんです。しかし………俺が居るなら好き勝手にしてもいいでしょう。他の誰よりも君を知ってますから」


「……それもそうね!! 納得できるところがあるのが癪よ!! でも!!」


 私は彼女を指差した。


「あなたを慕ってここまで来てる彼女をどう思うの!! 彼女のこと好きなんでしょ!! 私は強いんだから護衛なんか要らないわ!! それよりも彼女を優先してあげなさい!!」


「……今日、初対面ですし。好きな人は彼女じゃないです」


「!?」


 メアリーが驚いた顔をする。もちろん私もだ。


「それに……彼女……そこまで好みじゃないですから。好意があるのか知りませんが……いきなりそれを言われても何も感じませんよ? 普通はもっと親身になって相談して、しっかりと答えてくれる人とこう………仲良くなっていくものじゃないですか?」


「あ、あっ………」


「あなた……結構酷いこと言うわね。いや、勘違いだったのね私も………まぁうん。ソーマ……ちょっと席外して」


「わかりました。また、来ます」


 ソーマドールから私は手を離し彼はその場を去っていく。最初は笑顔だったのに今では絶望の顔をしているメアリーを見つめる。


「………ねぇ、どうして。あなた………彼と仲がいいの?」


「まぁ、夏休み前から知り合ってるから……どうしたの? いい顔ね」


 嫉妬に醜い顔はそそる。口元が歪みそう。


「答えて……」


「答えた。夏休み前から知り合ってるのよ。まぁ……その。残念ね。他に好きな人が居るみたいよ」


「くぅ……せっかく……せっかく……異世界に来たのにどうして……どうして? ヒロインは私よ? 夏に思い出したのに!? 目覚めたら、王子さまが他の人を好きになってたなんて!!」


「まぁ、これがリアル。ゲームのようにうまくは行かないのでしょうね。私もそう。みーんな生きてますし思い通りにならないからいいんでしょうね。嫌ですけど。そーだ!! 可哀想なのでこれをどうぞ」


 私はナイフをテーブルに置いた。


「………えっ?」


「自害したくなったらお使いください」


「………………はいぃ?」


「堅気に手は出さないですけど。介錯はしますわ」


「誰が『死ぬ』て言ったのよ!! 自害しないわよ!!」


「あら残念ね~」


「くっ!!」


 メアリーがナイフを持って私に投げつける。スナップがしっかりと効き真っ直ぐ飛ぶ。それを指で挟んで止めて返して貰ったナイフを仕舞った。


「筋がいいわ。真っ直ぐ飛ばせるなんてソーマ以上よ」


「くぅ……ソーマドールさま………どうして………」


「まぁ、今日は楽しめたし。あなたは彼と恋愛出来ない仲ならもう興味はないわ。さようなら」


「ちょっと待ちなさい!! ソーマドールを寄越せ!!」


「寄越したいのは山々だけど………彼の目。本気だった。監視役は絶対やめない………はぁ……夏に鍛えたのが仇になるとは………力で説き伏せるのは難しいかもしれない」


「…………夏に鍛えた?」


「ええ、夏にね。強いわよ彼は………元から肉体は出来てたからドーピングをねしたの。人外のね」


 どうしようか………監視役とかちょっとムカつくが。仕方ないとも思い諦める。


「仲いいじゃない!! この悪役令嬢!! 黙っていたわね!!」


「黙っていたわけじゃないわ。聞かなかったから答えなかった。だ~け~」


「くぅ……いいわ!! 私の家や金……戦って勝ち取ってやる!! 悪役令嬢なら正ヒロインに敵うわけないわ!! 見てなさい!!」


 私はすっごく嬉しい事が出来た。喧嘩を売ってくれるらしい。


「喧嘩を売ってくれるの?」


「売りましょう!! 覚悟しなさい!! 悪役は滅びるの!!」


「ふふふ!! はははははははははははは!!」


「!?」ビクッ!!


「買った。買いました!! いいでしょういいでしょう!! 最近つまらなかったの………楽しませてね!! ヒーヒヒ」


 目の前のメアリーが少したじろいた。ソーマドールが遠くから伺っていたのを私の笑い声で剣を抜きながら近付く、私は「何でもない」と言い剣をおさめてもらう。そして……その日はそれっきりお開きになったのだが。


 私は私で……すっごく明日が楽しみだったのだった。












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