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仁義なき悪役令嬢   作者: 水銀✿党員
悪役令嬢プロローグ
10/59

悪役令嬢の第十歩: 腹灰色王子


 俺は休日に父上に呼び出された。やっと俺を怒る気になったのか、父上の住む小さい屋敷兼仕事場に顔を出す。厳格な父上だ。覚悟を決め、休日中の父上に会いに怒られに来たのだった。


 トントン


「入れ」


 厳格な厳しそうな声が書斎扉から聞こえる。俺の父上はマクシミリアン帝国遠征騎士団の遠征を任された騎士団長であり、この国の監視を任されたスパイ、または重役でもある。それだけにいつも難しい顔をしている気がする。


 銀姉から教えて貰ったが上に立つには運と実力と頭がないと座り続けられないと聞いていた。考えてみればわかる事だが、俺は「剣の腕だけでなっている」と思い込み。愚かだったと今は反省している。


 銀姉の家が特別黒いわけでもない。俺の家もきっと何かしら悪さをしているだろう。なにかが……運が良かったのは三男坊だったことだった。継がなくていい。


「……失礼します。お父上。元気そうでなによりです」

「……お前も元気そうにやっているではないか………な? ソーマドールよ」


「……お恥ずかしながら。学園生活は楽しいです」


「……『楽しい』と言うか」


 息子にも威厳を見せ続ける父親。昔はよく叱られ怖かった。しかし……殺意がないだけで怖くはないような気がする。銀姉教育万歳。


「……肝が据わったか」


「……はい。学園の噂はご存知で?」


「……お前の婚約者の一人からな。『関わって来ない、挨拶もない』と愚痴を言われた。『仲よくする気はないのか?』と疑われている」


「申し訳ありませんが。今はもっと重要な事があります」


「……お前がいつも一緒にいる。女の事か?」


「……はい」


 沈黙。どうやら「怒られる」と言うよりは近況を聞きたがっているようだ。昔なら「ハイ、イイエ」としか喋らず壁を作ってたが、なんの事もない。もっとヤバイのと会話を学園でしている。


「銀髪鬼と言う者の生まれ変わりだそうで」


 怖がられる理由だろう。英魔族の英雄だ。


「知っているのか? お前はそれを……ワシもそれは聞いた話しか知らないが書と噂、生き証人によって残されている。お前の目でどう見た?」


「……銀姉さんは生まれ変わりではないですが。学園にいるのがおかしい人なのは確かです。あそこの空気はぬるいですから。まるで、戦争中のような雰囲気を持ってます」


「……!?」


「……父上?」


「……お前は『ぬるい』と言ったか?」


「……はい」


「……言うてみろ理由を」


 父上が腕を組んで背を向けて窓を見る。俺はゆっくり言葉を口にした。


「あそこは政略結婚や色んな令嬢と仲良くなり縁を作る場。人、付き合いとそれの繋がりを作る場。しかし、そうですね。死ぬことはないのがいいのでしょうか? 危険も感じませんし、国内の貴族としては素晴らしいでしょうが………騎士としては………物足りないですね」


 そう、授業も結局、剣の授業はあるがそれは決闘だけのような貴族の遊びであり。前線の騎士の「戦術戦法は独学で学べ」と言われている。「卒業後から鍛えろ」と。一応は父上の言う通りに過去の大戦の記録を読んではいる。銀髪鬼はそこで登場した。「個人で殺した人数が最多」と言われるぐらいに苛烈だったと聞く。


「……三男ゆえ。政略結婚の使い道しか考えてなかったが。お前が先に『騎士になりたい』と言い出すか……」


「……?」


「お前の兄たちは学園で貴族の令嬢と遊び呆け。卒業後も家を抜け、貴族のように振る舞っている」


「……」


 自分の父上が「今時の若い者は……」と苦言を呈しているのに少し笑いそうになる。あんな怖かった父が普通の人のように見え肩の緊張が抜ける。


「……仕方ないでしょう。今は平時。長い平和の時です。学園での異国の令嬢と繋がり。信用を手に入れる。外交の時代ですから。騎士はいりません。政治家になるのならいらないです」


「……お前も兄と同じことを………」


「ただし……人は光を見ても影を見ない」


「………」


 銀姉の言葉だ。俺はやはり、彼女に毒されている。価値観が彼女によって変わった。


「……隣に化け物が住んでいる。潜んでいる。誰も彼も何故、今が平和かを知らないでいる。父上のお陰でもあるのにも関わらず。俺はそう思います。政治家なら尚更……黒も白も知っているべきでしょう」


「……そうか。ソーマドール」


「はい」


「……学園を退学しろ。騎士団に編入し鍛えてやろう」


 それはもう。跡取りの話だろう。お断りである。


「……お断りします」


「……父の言うことを断るだと?」


 父上が振り返り白い髭を掴みながら怒りを露にする。俺は冷や汗が出た。昔なら喜んで騎士団に入っただろう。しかし………今では違う目的が生まれている。


「父上。今、自分は銀髪鬼再来と言われる令嬢と一緒にいます。いいえ、答えます」


 俺は父上の目を見る真っ直ぐに、そしてお願いするように言う。


「婚約者よりも誰よりも気になる。そう………令嬢、シャーリー・クドルシュチルが大好きです」


「……ほう」


 俺はたぶん。愚かな話をするだろう。どうなるかわからないが。今は父親の虎の威がほしい。


「学園生活3年で彼女を………彼女と婚約して見せましょう!! 銀髪鬼に首輪をつけてね………どうですか? やらして貰えないでしょうか?」


「………メリットは?」


「メリットは『最強の暗殺者の無力化と治安維持がしやすくなる』と思います。クドルシュチルは裏側の家ですから。手を取り合っても良いのでは? 我々も『反帝国』で彼女の家のルーツも『帝国追放者の帰還者』でしょう?」


 パパッと知っていることを言う。とにかく「これはいい案ですよ」と提案しなくてならない。


「厳格な我が家に。そんな奴を入れると?」


「はい。騎士軍縮に伴う我々の家の威厳を保つためには必要でもあります!! それに……祖国は『英魔国同盟』を組んでおり、魔族に偏見はないでしょう?」


 魔族なのだろうか、彼女は。


「…………」


 父上は眼を閉じて唸る。俺は近付き声を出した。


「お父さん!! お願いします!! 本当に好きなんです!! 何でもします!! だから!!」


「……ああ、うっさい!!」


「父上父上父上父上父上父上!!」


「うっさいなお前!?」


「本気ですから!!」


「わかった。わかった。わかった……」


「やったぜ」


「……それがお前の素顔か……数ヵ月の学園での変わりよう。本当に好いておるのはわかる」


「……はい。父上も母の事は好いているでしょう?」


 父上は肯定もしないが否定はしない。銀姉の所よりも結構、情に脆い部分もある。


「……お前は本当に………大きくなった」


 バシンッ


「……いたい」


 父上が頭を叩く。あの厳格な父上が笑みを浮かべて肩を叩いた。


「絶対に婚約出来る自信があるならば今の婚約を全て破棄し、ワシが頭を下げよう」


「いいんですか!? 父上!!」


「ああ……行ってこい。魔族側のが信用できるからな」


「はい!!」


 俺は喜んでその場で握りこぶしを作った。その日は「泊まっていけ」と言われ。それっきり話はしなかったが。次の日、母から嬉しそうにお父さんが俺のことを話すのを聞いて恥ずかしくなった。


 母曰く、「血は争えない」とのこと。どの兄弟よりも「父親の事を色濃く継いでいる」と言われ。昔の父上の話を聞き。俺は………家族に自信をつけて貰えたのだった。








 学園での午後、僕は学園にある魔法使いの使用する理科室に乗り込み生徒に蒸留用の装置を借りた(強奪)


 木箱にそれをもってテラスで薬の調合を行う。既に家で粉末にしており、布で包み。蒸留装置に入れる。水を入れて封をし、魔力を流すとぬるまなお湯が出来上がり水蒸気が布で包んだフィルターを潜って薬を含んだ水蒸気が冷却されて蒸留水になる。


 それをゆっくり時間をかけて行う。予定としては1日3本。30日分用意しようと思う。ソーマドールは捕まらなかったのでそこら辺にいた学生を使い色々と持ってこさせた。


「ふむ。時間がかかるわねやっぱり」


 ゆっくりと蒸留された薬がコップに貯まる。溜まったら長さ10cmの薬瓶にいれて箱にしまう。


「銀姉。学園で何を……また、変なことを」


「遅いわソーマ。何処に行ってたのよ……」


「令嬢に婚約破棄の謝りの挨拶。それよりも……薬?」


「そう。このまま混ぜて飲むと劇薬だから。少し薄めてね。死にたくないでしょ」


「死ぬのか………」


「私はここの粉をそのまま飲む。でも、ソーマは死ぬからね」


「何故自分で? 学園にも魔法使い専攻や錬金術師もいるだろ?」


「秘蔵の調合品だからだめ。傷もたちどころに消えるわ」


「ポーション?」


「エリクサーもどき」


「まて!? それは錬金術師最高の薬じゃないか!? 勝手の製造はご法度であり。そもそもそんなのは作れないはずじゃぁ………」


「だから………擬きよ。元々暗殺用の薬作って実験してたら逆に癒えてしまった物なの。まぁ~効果は高くて高くて嘘ついてエリクサーとして売って儲けてるけどね。ただ相性がある。頭が破裂する痛みも伴うときもある」


「闇を見た」


 私は顔を押さえるソーマに「一本どう」と言うと拒否される。まぁ、怖いよね。


「銀姉……明後日から夏休みだけど約束覚えてる?」


「覚えてるわ。期待しなさい」


 「私が鍛えろ」と言う約束。そのためにこの薬を作っていると過言ではない。私はワクワクしている。


「楽しみ~2学期。シンシアを力で奪うなんて楽しそう!!」


「ええ、そのために鍛えてください」


「泣いても喚いてもやめないわよ~」


「覚悟の上!!」


 私はニコニコしながら。エリクサーもどきを作り続ける。そして、後で使用人を呼んで学園から家に薬を持ち帰る予定だ。


「何故家で作らなかったんだ?」


「蒸留したあと。残ったカスが臭いのとお父さんに薬物作るの禁じられてるの。盛ったら困るから」


「………あっぶな」


「安全よ。私だけ」


「マジでやめろ」


 私はクスクス笑う。ソーマをバカにしながら。
























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