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トーナメント大会

 

「あんたらさ。自分が、何のジャンルか覚えているの?」

「和食だろ」


 放課後の、学校祭の準備に取り掛かる前に、2軍、3軍、そして俺ら4軍の代表が、猪俣に呼び出された。どうやら、それぞれの進捗状況を確認したいようだ。


「和食なら、どうしてプリンアラモードを出そうと思っているのよ」

「和食だからだ」

「あんた、頭おかしいの?」


 猪俣に、更に嫌われている様子だ。俺をゴミを見るような目になっていた。


「ちゃんとした理由がある。俺たちの方針は、実は日本発祥の物。メイドインジャパンのテーマで行こうと思った。海外から伝わってきた料理だと思ったら、実は日本だった。そんな意外性があったら、みんな興味を持って、やって来ると思うんだが?」


 そう言うと、猪俣は黙り込んだ。


「これは、学校の行事だ。一般客もやって来るって事は、子供連れや、カップルでも来るかもしれない。多くの人に知ってもらえるチャンスだと思って、俺たちは、この方針で行く事にした」

「……ナポリタンに、冷やし中華。……そしてデザートにプリンアラモード。……あんたたちの好きにしなさい。所詮4軍なんだから、まともな料理が作れるとは思えないけど。底辺で、足掻いてみなさい」


 猪俣の許可は下りたが、やはり俺たちを下に見ている。1軍のスイーツには、敵わないと思っているのだろう。


「農民を舐めていると、痛い目に会うぞ」


 そう言っておいて、俺は猪俣と別れ、4軍の出し物を進める事にした。

 今日は、楠木はバイトで不在だ。なので、木村と紫苑で、出し物の準備をしていくしかない。料理の練習は、週末にしか出来ないので、あとは当日のシフトや、どのような感じで料理を提供するのか、考えないといけない。


「マロン。そう言えば、私たちのお店の名前は、どうするのですか~?」

「そう言えば、決めていなかったな……」


 料理の次に大事な物。それは、俺らの店の名前だ。『4軍の出店』なんて名前では、誰も寄ってこないだろう。


「最近覚えた、四字熟語の中で、カッコいいのがあったので、それがいいと思うのです」

「それは何だ?」

「焼肉定食なのですよ~」

「却下だ」


 それは四字熟語であるが、四字熟語ではない。その店名にした方が、余計客が来なくなりそうだ。


「他にあるだろ? 国士無双、疾風迅雷、電光石火――」

「流石、中学校の頃に中二病をこじらせていたヒビト君。カッコいい四字熟語は覚えているのね」


 俺たちの邪魔しに、ひょっこりと表れた葛城をチョップで黙らせておいた。


「……ちなみに、意味は分かっているの?」

「国士無双は、比べる物がいないぐらいの、優秀な人物。疾風迅雷は、行動が素早く、激しいこと。電光石火は、動きがすごく早い事」


 葛城は、言葉だけを知っていて、意味は知っていないと思っていたのだろう。そして知らないと恥をかいた俺に、ドヤ顔で意味を説明しようとしたのだろう。ぷくっと、頬を振らませていていた。


「……じゃあ、竜吟虎嘯りょうぎんこしょうは?」

「聞いた事ない」

「それじゃあ、私の勝ちね」


 なぜ葛城と四字熟語勝負になっていたのだろうか。すぐに嬉しそうにドヤ顔になっていた。そこまでして、俺の上に立ちたいのだろうか。


「無知な松原君に、教えてあげる。竜吟虎嘯と言うのは――」

「4軍の葛城に、ペナルティを執行」


 悠々と語りだす前の葛城にペナルティを課したのは、不機嫌そうな猪俣だった。もしかすると、さっきの俺の一言が余計だっただろうか。それとも、ただ単に葛城が視界に映って、目障りなのか。


「まだ、諜報活動でもしてるのかしら? 前の公開処刑で、懲りたんだと思ったんだけど?」

「私はバカの4軍だから、死んでも、この習性は直らないかもね」


 電流を流され、痛みで顔を歪ませているが、葛城は腕を組んで見下ろしている猪俣の方に、向き直し、対峙していた。

 これは因縁の対決と言っても良いのだろうか。葛城と猪俣も、かつては幼なじみだった存在だ。俺と菜摘との関係とは違い、ずっと猪俣にいじめられて、嫌な日々を送っていたようだ。


「前の威厳は、どうしちゃったの? 今の電流と一緒に、体外に流しちゃったのかしら?」

「そうみたい」


 因縁の相手だ。今でも葛城は、猪俣に怯えている。前回で、払拭出来たかと思ったが、やはり怖い物は怖いようで、足は小刻みに震えていた。

 前に再会したときは、葛城が1軍で、猪俣と同等の立場だったが、今では葛城は4軍。ずっと1軍の猪俣に逆らえない様子だ。


「あんた。トーナメントに出るのよね?」

「そのつもり」


 猪俣が言うトーナメントと言うのは、週末に葛城が言っていた、成敗、下剋上勝負で行うトーナメント大会の事だろう。


「けど残念ね。学校祭のトーナメント大会、2人で出場しないといけないから、ボッチのあんたには出られないわ」

「私、松原君と出るつもりだけど?」


 おい。そんな話、俺は全く聞いていないんだが。

 だが、猪俣が成敗、下剋上勝負に興味を持つなんて意外だ。学校全体が取り組んでいるスクールカースト制度には、全く興味を持っていないと言っていたはずなんだが。どう言った心境の変化だ?


「私と松原君が組んだら、貴方たち1軍なんかいちころ。猪俣さんも出るつもりなら、それなりの覚悟をしておくこと。首を洗って待っていなさい」

「それはこっちの台詞。精々、観衆の前で恥を晒さないことね」


 互いににらみ合った後、猪俣は自分の席に戻って、クラスメイトの女子が猪俣に話しかけていた。


「遂に話す時が来たわね。今年の学校祭のメイン行事。成敗、下剋上勝負のトーナメント大会が開催されるの――って、どうして耳を塞いでいるのかしら?」


 聞きたくなので、耳を塞いでいたら、葛城に耳を引っ張られた。

 葛城と絡むと、いつも厄介ごとに巻き込まれる。ただえさえ、各階位で出し物で料理を提供し、これからも準備をしないといけないのに、これ以上に俺に負担が増えたら、俺は学校祭当日にぶっ倒れるだろう。


「これは、全学年の人が、地獄を見るかもしれないの。そうならないために、私たちで阻止するの」


 耳を塞がれないように、俺の片腕に、2つ柔らかい物を押し当てて、話しかけてくる葛城。本来は、嬉しいはずなのに、厄介事に巻き込まれると知っているので、素直に喜べなかった。


「どうして、あの用心深い猪俣さんが食いついたか。それは、優勝賞品にあるの」

「髙橋の時みたいに、どんな願いを一つでも叶えるとか、言っているのか?」

「そんな幼稚な事で、猪俣さんは食いつかないわ」


 髙橋をさり気なくディスる葛城。そう言えば、最近髙橋の姿を見ないが、髙橋は今どうなっているのだろうか。


「プラチナバッチ。それが、今後の学校生活に、悪影響を及ぼすの」


 プラチナと聞くと、金よりも高価なイメージがある。名前だけを聞くと、1軍よりも偉くなれるとか、そう言う物だろう。それなら、猪俣たちが、食いつくはずだ。


「一応聞いておくが、どんな効果があるんだ?」

「私が聞いた話だと、身に着けているだけで、成敗、下剋上勝負を免除される。そして、すべての階位、すべての学年にペナルティを執行出来て、命令も出来る。そんなものが、良からぬ事を考えている人の手に渡ったら、松原君は、学校に来る?」

「……やるしかないのか」


 学校、そして生徒会は、そんな物を作るなと言いたい。だが、実際に作ってしまったので、万が一に変な奴らに渡ってしまったら、全学年が不登校になりかねない。このまま、高校が廃校になってしまうのも嫌なので、俺たちが止めるしかないようだ――


「……正義君」

「ん? どうした?」


 気が付くと、木村が、俺の制服の袖を引っ張っていて、呼んでいた。


「……お店の名前」

「ああ……。そう言えば、決めないといけないんだったな」

「……高村さんが、焼肉定食と言う名前で申請するって、生徒会室に――」


 そんなカオスな店名にさせないために、俺は猛ダッシュで、紫苑の後を追いかけて、紫苑に追いつくと、何とか説得させて、また後日に決める事にした。


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