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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
スクールカーストを実施してもいいですか? ダメですか? けど、実施します。
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放送

 

「今日は雨だね~」


 別のクラスだが、俺の教室に馴染んでいる幼なじみの菜摘。俺の席の横に立って、暢気に菓子パンを食っている。


「雨降ると、髪が湿気るのよね……」


 スマホの内カメラで、自分の髪をいじって、俺の席の上に座っている楠木。


「なあ。菜摘と楠木は自分の席で食ったり、髪をいじることは出来ないのか?」


 せっかく次の授業まで、机に突っ伏して寝ていようと思ったのに、菜摘がまずやって来て、俺に千切って分けたパンを強引に食わされて、そして楠木が俺の机に寄りかかって、スマホを触っていた。

 久々の雨、そしてこの状況に俺は少し憂鬱にだが、美少女2人に囲まれているのは嫌じゃない。すごく嬉しい。

 目の前に楠木が座っているせいか、前から凄くいい匂いがする。化粧水、洗剤の匂いではなく、どう言葉に表せばいいのか。もしかして、女子のフェロモンって言う奴か?


「私の席、占領されているのよ。1軍の奴らに」


 楠木がスマホを触りながらそう言ったので、俺は楠木の席を見てみると。


「あ~あ。雨だとどこも遊べなくない?」

「傘って言う荷物が増えるし、マジで雨とかなくなればいいのに」


 日下部と猪俣が、まだ午前中だと言うのに、チョコスティックを食べておやつタイムに入っていて、大きな声で会話していた。

 出席番号で、楠木の前は嫌な事に日下部だ。なのでよく日下部の周りには1軍の奴らが群がってくる。

 楠木の席には、2軍の広瀬が座っていて、木村の席に猪俣が座っている。そしてその1軍の女子を囲むように、1軍の佐村と、2軍の女子がいた。


「そう言えば、春馬は~?」

「さあ。と言うか、最近休み時間になると、速攻でどこかに行ってなくない?」

「何なん? 他の女に会っていたら、許さないから」


 猪俣は安藤の事が気になるのか、日下部の答えを聞くと、不満そうにチョコスティックを食い千切っていた。と言うか、猪俣はいつの間に安藤を下の名前で呼ぶような、恋人関係のようになったんだ?


「何か、上級生に呼ばれたらしいぞ」


 佐村が猪俣にそう言うと、猪俣は更に機嫌が悪くなった。


「春馬が? 生意気ね。こんなに華麗で美人で、めっちゃ優しい女の子がいると言うのに、上級生の女に会いに行くなんて、帰ってきたら折檻ね」

「折檻する女が、優しいはずない――あ、すんません」


 佐村の言う通りなのだが、猪俣に睨まれると、佐村は縮こまってしまった。


『少し、よろしい、で、しょうか』


 猪俣がキレそうな時、猪俣たちに話しかける女子がいた。今にも爆発しそうな猪俣に話しかける、命知らずの奴がいるのだなと思った。


「……へえ~。……どうしても私たちと話したくないってことなのね。4軍の木村茉莉香?」


 話しているのは木村の肉声ではない。すごく大事そうに持っているスマホから発せられている声だ。


 発音のイントネーション、そしてこの機械的な声。恐らく、大手のネットサービスの一部として運営している、翻訳ツールで聞けるあの声だ。


『退いて。そこ、私の、席』


 一生懸命にスマホに文字を打ち込み、木村は猪俣たちに向けてスマホから出る音声で追い払おうとしていた。


「ねえ。何で話さないの~?」


 日下部の言葉に、木村は言い返そうとスマホで文字を打ち込んでいる時だった。


「スマホ取り上げたら、話すんじゃない?」

「……!」


 女王の猪俣は、こっそりと木村の背後に立って、そして木村のスマホを背後から奪い取っていた。


「……! ……っ!」

「こいつ、スマホ取っても話さないわね。口の使い方、忘れちゃったの?」


 木村は猪俣よりもはるかに背が低い。なので、木村のスマホを猪俣の頭の上に持って行ってしまったら、木村が届かない状態だ。


「気分が悪くなる光景ね」

「……全くだ」


 必死にジャンプしても、一向に届かない木村の姿を見て、1軍の奴らは大笑いしていた。今の光景を見ていた楠木は不快感を表しながら、ようやく俺の席から降りて、猪俣たちを睨んでいた。

 この光景は確かに良くない。いじめの光景だ。他のクラスメイトは誰も助けようとはしない様子で、関わらないように無理に話題を作って話しているか、漫画を読んでいたり、スマホをいじったりしていた。このカースト制度のせいか、このクラスの奴らは薄情な奴が多い気がする。


「命より大事なスマホなんだろ? 命が尽きるつもりで、取り返してみたら?」

「声出した方が、もっとジャンプ出来るかもよ~?」


 そして、猪俣と日下部は再び木村の行動を見て笑っていた。


 以前にも、猪俣と木村はひと悶着があった。あの出来事以降、木村に話しかける者はいなかった。猪俣に机を蹴飛ばされても、無反応で居続けた木村。あの出来事で、木村はどんだけ話しかけても無視され、どんな嫌がらせしても、ずっと黙っている。そんな印象を持たれてしまっている。

 だがそれが1軍の奴らにとっては、好都合となり、例え木村が黒板の分をノートに書き写している最中でも、猪俣はそんな事を無視して、平気に木村の背中に寄りかかって、後ろの席の日下部に話している。それが、今回招いた結果で、最悪な展開となってしまった訳だ。


「あー。腕疲れた。日下部、あげる」


 ずっと猪俣が木村のスマホを持ち上げているのが疲れたのか、木村のスマホを日下部に投げ渡していた。


「要らない。佐村ー」


 木村のスマホを受け取った日下部は、今度は佐村に投げ、佐村は広瀬に投げ、そして広瀬は再び猪俣に戻す。木村に取り返されないように、他人のスマホをおもちゃにして、キャッチボールのように遊んでいた。


「……っ! ……っ!」


 自分のスマホが投げられる度に、木村は猪俣たちに振り回されていた。泣きそうな顔で、木村はどうしても取り返そうと、必死にスマホを追い続けていた。


「私も混ぜて欲しいな~」


 あまりにも悲惨な状況の木村を見て耐えられなくなったのか、いつの間にか菜摘は、猪俣の所に移動していて、菜摘がすんなりとキャッチしていた。


「はい。ヒロ君」


 ここは、俺ではなく、涙目になっている木村に返せよと思いながら、俺は今回の騒動に巻き込まれてしまったので、威圧感のある猪俣に立ち向かうことにした。


「い、いい加減にしろよな……?」

「ヒロ君は、怒ると怖いんだよ~?」


 なぜか、菜摘は猪俣たちを煽る。


「人のスマホを投げ合って楽しいか?」

「全然。投げ合うのは面白くないけど、木村が必死になって取り返そうとする姿は、ご飯が何杯でも行けるぐらい、凄く面白いわ」


 猪俣。こいつは本当に性格が最低な野郎だ。マジで怒ってやろうか。


「あんたら、本当に最低ね。人として最低な事だと思わないの?」


 後からやって来た楠木が、猪俣にそう尋ねると。


「そう? 私はこんな惨めな木村を見過ごしている他の奴らの方が、最低だと思うけど?」

「ああ言えばこう言う奴らね。1軍の皆さんは」


 猪俣を無理に説得しても無駄だと思った楠木は、深く溜息をついていた。


「1軍は一番偉いの。他の奴らは黙って言う事を聞いていればいいのよ。主の犬になって、命令に従えばいい――」


 猪俣が偉そうに話していると、校内放送のチャイムが鳴った。生徒の呼び出しだろうか?



『全校生徒に連絡します。今日の放課後、緊急の集会を行います。繰り返します。今日の放課後、緊急の集会を行います。全校生徒は必ず出席してください』



 この放送が流れると、クラスは一気に静かになって、すぐに授業開始のチャイムがなった。一体何だろうか。緊急の集会ってことは、余程大事なことを連絡するってことだ。

 ……もしかして、どこかの高校みたいに廃校になったとか!? そうなったら、菜摘と楠木たちの色んな女子に協力してもらって、スクールアイドルを――


「ついに、このカースト制度が先生にバレたんじゃない? 猪俣?」

「……うぐっ」


 楠木がそう追求すると、猪俣は苦しい顔をした。こんな制度があると先生が知れば、それは先生が許すはずがない。猪俣たちは処分を受けることにだろう。

 俺の予想より、はるかに楠木の予想の方が当たっているかもしれない。そんな展開の方を思いつくなんて、やっぱり俺はアニメに見過ぎだな……。


「こんなの、クラス全体でやっているいじめみたいなものだもの。そんな事が先生の耳に入ったら、黙っているはずない。……つまり、あんたら1軍は、今日で終わりってことよ!」

「黙りなさい……!」


 もし本当にこのクラスのことで集会するなら、俺らにとってはとても嬉しいことだ。これで普通の学校生活に戻り、カーストの底辺の人たちは、思いっきり羽を伸ばせるだろう。


「精々、今のうちに威張っておきなさい。あんたらの天下は、もうすぐ終わりよ!」


 楠木が猪俣たちにビシッと言ってから、楠木は嬉しそうに笑っていた。今日で解放されると思うと、楠木は笑わずにはいられないのだろう。

 正反対に猪俣たち1軍は、悔しそうにして俺を睨んでいた。なぜ俺を睨むのか。睨むなら、嬉しそうに笑っている楠木じゃないのか?


「何だろうね~。何か一大事な事かな~?」


 授業開始のチャイムが鳴って数分経っても、先生が現れないの良い事だが、未だに俺の横に平然といる菜摘。

 戻る様子もない菜摘を教室に押し戻して、教室に戻ると、運悪く先生がいて、俺は授業を遅刻扱いされてしまった。



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