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動乱

 

「おい。お前、今の学校に不満はないか?」

「……スクールカーストが実施されているぐらいだな」


 こうやって話しかけて来たのは初めてだろう。佐村がそう聞いてきたので、俺はそう答えると、佐村はつまらなさそうに、俺から離れた。

 葛城が俺に警告した、一年で暴動が起きるという話。朝は、佐村の事以外、特にそう言った事は様子は見られなかった。しかし、どこかピリピリとした空気が、学校中にあると思いながら過ごしていると、待ちに待った昼休みになった。午前中に体育で走ったせいか、腹が減っていたので、早速食べようとすると。


「お前ら!! 行くぞ!!」


 クラスの半分以上の生徒、主に男子だが、佐村が率いるクラスメイトが、一気に教室から出て行った。


「……今日、何かあったっけ?」


 突然の出来事に、横に座っている楠木が、口を開けてあんぐりしていた。


「知らん。俺たちには関係ない事じゃないのか」


 恐らく、髙橋に対するデモを起こすのだろう。髙橋のやり方には、俺も気に入らない事はある。だが、デモを起こしてまで、髙橋を引きずり落としたいとは思わない。安藤や葛城みたいに、不祥事を起こして解任される方がいいと思うんだが。


「春馬。今日は何かあるの?」


 楠木と同じ疑問を抱いたらしく、猪俣は、珍しく教室にいる安藤に話しかけていた。


「俺らの学年の、半分以上の奴らが、お祭りに参加するらしいな」

「祭りなり、私も参加したいんだけど、今から参加できる?」

「やめとけ」


 猪俣の様子だと、本当に知らない様子だ。そしてすべての事情を知っているのか、安藤は猪俣にこう言った。


「参加したら、バカがうつる祭りだ」


 安藤は、今回の暴動を快く思っていないようだ。そして、今回のデモに参加する生徒を、バカ扱いしていた。


『髙橋っ!! 出てこいやーっ!!』

『お前だけは、絶対に許さないっ!!』


 そして廊下からは、多くの生徒の怒号が響き渡っていた。今から髙橋に抗議しに行くのか、それとも高橋は雲隠れしたのだろう。


「松原。お前は参加しないのか?」


 そして安藤は、俺に話しかけて来た。俺は、前からスクールカースト制度に反対してきているので、このようなデモに参加すると思っていたのだろう。


「バカをうつされるのは、困るからな」

「これ以上、バカになりたくないなら、賢明な判断だと思うな」


 嘲笑うように言われ、カチンと来たが、ここは堪えて、大人しく昼食を食べることにしようとした時、教室の後ろのドアが、大きな音を立てて開かれた。


「君たち、本当に暇なんやな」


 今回のデモの渦中の人物、そして別のクラスの髙橋が、何故か俺らの教室に逃げ込んできた。行き場を失った髙橋が、教室の隅に追い込まれると、今回のデモに参加している生徒がたくさん入ってきた。

 どうして、俺らの教室でやるんだよ。俺は、ゆっくりと昼食すら食べられないのか。


「……2軍、3軍ばかりだな」


 大勢の生徒の胸元についているバッジを確認してみると、ほとんどが銀色か、銅色。さっき出て行った、佐村たちもここに戻って、髙橋を睨んでいる。どうやら、2軍や3軍ばかりで、今回のデモを計画したようだ。

 だが、昨日デモに参加しようと誘ってきた葛城の姿は無かった。また、別行動でもしているのだろうか。


「髙橋っ! お前は俺たちの頂点に立つのに、相応しくない! 今すぐ、トップを辞任しろ!」

「まあ、そう焦らんといてや。まず、理由を聞かせてくれへんか?」


 本人は自覚が無いのか、それともわざと聞いているのか。大勢の生徒に、しらを切るような態度で、理由を聞いていた。


「お前は、トップの立場を悪用して、様々な事をしてきた。毎回、休み時間には、パシリに、肩を揉む、ツボを押すなどの、マッサージを強要。女子には、スキンシップと言って、体を触るセクハラ行為。これが、トップがやる事か!?」


 恐らく髙橋と同じクラスの男子生徒なのだろう。今までの鬱憤を晴らすように、大きな声で、髙橋を問い詰めていた。

 俺の知らない一面で、髙橋は色々と問題を起こしていたらしい。しかもセクハラは、犯罪だ。トップがやるべきではない行為だ。


「君たち雑魚を、パシリに使い、セクハラをして、すいませーん。これで良いんやろ?」


 全く反省していない態度で、ふざけて謝る髙橋の姿に、髙橋に文句を言っていた生徒が、胸ぐらを掴もうと、近寄ったが。


「2軍の赤塚君に、ペナルティ執行や」


 髙橋が、赤塚にペナルティを執行すると、赤塚は電流に慣れていないのか、痛そうに地面に蹲った。


「僕がやって来た行為より、暴力の方が、よっぽど悪いと思うんやけど」


 蹲る赤塚を見て、髙橋は可笑しそうに笑っていた。


「目の前の敵を倒すのは良い事やと思うよ。けど、もし僕を倒した後、次は誰が僕の後任になるの?」


 その髙橋の言葉に、デモに参加している生徒が、騒がしくなった。


「僕以外に、誰がふさわしい? こうやって、今は団結しているけど、僕を倒したら、雑魚たちは醜いトップを賭けた争いをする。ちゃんと、後の事は考えているの?」


 首が折れたように、急に首を傾げる髙橋の行動に、全員が凍り付き、そして誰も反論出来なくなっていた。


「ヤイはちゃんと考えているのです」


 静かになった中、一人の女子生徒が、髙橋の前に立った。


「そんな事を言い出すと考えていたヤイは、ちゃんと策を考えているのです」


 先陣切って出て来たのは、前にバトルロワイヤルで、俺と手を組んで、そして裏切り、葛城や菜摘のような美少女をこよなく愛する1軍、中村だった。どうやら、葛城がいないのは、中村が参加しているからだろう。


「どんなん? どんな方法で、僕の首を狙うつもりなん?」

「ヤイたちは、髙橋さんに下剋上勝負を申し込むのです」


 そう中村が言い切ると、髙橋はニヤッとしていた。髙橋は、バトルロワイヤルを開くぐらい、成敗、下剋上勝負を好んでやりたがる。実際に戦っている所は見た事は無いのだが、実際に戦っても、1軍のトップなので、戦い慣れをしていない2、3軍には歯が立たないだろう。


「下剋上勝負に、人数制限はないのです。髙橋さんに反感を持っているヤイたち、そして高橋さん1人で下剋上勝負をしましょう」

「どうして、その手段を選んだん?」


 これも聞かれるのを予想していたようで、中村は、すぐに返事をした。


「学校が推奨する制度を利用する。つまり、この方法は合法化しているのです。卑怯、卑劣なことをしない限り、ヤイたちが提案する下剋上勝負は、何も文句を言われないはずなのです。むしろ、この制度を利用した方が、学校も生徒会長も喜んでくれるはずなのです」


 生徒会長が喜ぶ。その言葉を聞いた途端、髙橋はニヤッと不気味な笑みを浮かべていた。


「ええよ。けど、普通の勝負じゃつまらん。なので僕は、鬼ごっこのように逃げ回る。何人でもいいよ、無事に僕を捕まえられたら、君たち雑魚の相手になったる」


 髙橋が勝負を承認すると、背後にあった窓を開けて、そこから飛び降りた。2年生の教室は2階にある。こんな所から飛び降りたら、下手したら怪我するだろう。


「……急いで、下に降りるぞ。……俺たちには、あの野郎に借りがあるっ! リンチにすれば、俺たちにだって勝てるはずだっ!」


 髙橋が窓から逃げ出した後、みんな動揺していたが、赤塚がみんなを鎮めた。どうやら、男子のリーダーは、さっき髙橋に文句を言っていた赤塚のようで、多くの男子生徒、そして佐村たちも、赤塚の指示に従い、素早く教室を出て行った。


「ヤイたちも、すぐに追いかけるのです。恨みを持った女の子は恐ろしいと言う事を、教えてあげるのです」


 女子は男子より多くはないが、中村の指示に素直に従い、男子とは別方向に向かって、髙橋を追いかけて行ったが、中村は教室に残ったまま、髙橋が飛び降りた窓をずっと見つめていた。


「松原さん。1軍からのありがたい指示なのです」


 ずっと見ていたのはまずかったのか、中村は、俺の視線に気が付いたのか、俺を呼んだ。こんな事になるなら、気にせず飯を食べておくべきだった。

 無視すると、ペナルティが怖いので、仕方なく中村の所に行くと、中村は微笑んでいた。


「松原さん。また、ヤイに協力してほしいのです」

「断る」


 そう言うと、中村に電流を流されたので、結局、俺はこのデモ活動に参加しないといけないようだ。葛城がいないので、このまま参加しなくても良いと思っていたんだが……。


「ヤイは別行動を取ります。もし失敗したら、もう二度と松原さんは、学校に来れないと思って欲しいのです」


 にっこりとしたまま、恐ろしい事を言う中村。素直に従った方がよさそうだ。


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