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泣きっ面に蜂

 

「目、覚めたか」


 昼休み。俺は保健室で眠っている葛城のところに行った。

 葛城は、俺たちが受ける電流よりも強く、そして続けて7回も受け続けても、生徒会長に白を切り続けた。そして葛城は気絶をし、保健室に運ばれたが、数時間、葛城は目を覚ます事は無かった。俺は心配で、毎時間葛城のところに行き、様子を伺い続け、そしてようやく昼休みの時間に目を覚まし、体を起こした。


「大丈夫か?」

「……まだ、体中が痺れている気がする」


 そして葛城は、自分を抱きかかえるようにして、そして小刻みに体を震わせていた。ずっと烏丸先輩を見つめ、じっと答えているようだったが、この様子だと、余程の恐怖だったらしい。さっきの事が、トラウマになりつつあるようだ。


「松原君。私、どうなったのかしら?」

「……覚えていないのか?」

「……誰かに名前を呼ばれた。……それ以降は覚えていないわ」


 俺が駆け寄ったところまでしか覚えていないようだが、誰に名前を呼ばれたのかは分かっていないようだ。ここで、俺だと言うのも違うと思うので、俺は黙っておくことにした。


「ヒロ君。葛城さんの調子はどうなの?」

「……どうやったら長方形の紙で、そんな綺麗な鶴が折れるんだ?」


 俺の声が聞こえたのか、菜摘は長方形の紙を、鶴の形に折って、葛城の所にやって来た。と言うか、長方形の紙で鶴が折れるんだな。正方形の紙じゃないと無理かと思っていた。


「生徒会便り。号外だってよ」


 保健室に向かう途中、生徒会の人と新聞部の人が、駅前で配る号外の新聞のように、通りかかる生徒に、菜摘が鶴にしてしまった紙を配っていた。俺も受け取っていたので、俺の紙を葛城に見せた。


「……あらあら。私、すっかり悪者ね」


 葛城果歩は、エリートを装った反逆者。便りには、大きな見出しでそう書かれていた。

 生徒会便り内容は、今まで葛城を恨んでいたのかと思うぐらい、葛城の事をぼろ糞に言い、批判されていた。


「……3軍の最底辺ね」


 そして葛城は、3軍に降格されたことを知らないようだ。その言葉を見ると、葛城は手を額に置き、大きな溜息をついていた。


「4軍の松原君に、ペナルティ執行」


 俺たちにペナルティを課すことが出来るのは、1軍のみ。しかし、葛城がそう言っても、俺のバッチから電流が流れる事は無かった。と言うか、俺で試すな。


「……やっぱりね。よく見たら、バッチも変わっているもの」


 いつも金色に輝いていたバッチも、今では地味な色に変わり果てていた。3軍のバッチは、色がくすんだ10円玉のような色をしている。いつも俺たちに金色に輝くバッチを見せていたせいか、輝きを失った葛城は、違和感があった。


「それで、これからはどうするんだ?」

「すぐに3軍から脱出して昇格。そう言いたいところだけど、しばらく様子を見るわ」


 今回の場合、葛城は失態を起こして、降格と言ったパターンだ。成敗、下剋上勝負で負けたわけではないので、3か月間は昇格が出来ないとか、そう言う物ではなかったはずだ。

 以前に安藤も失態をして、スクールカースト制度の最底辺になり、一時的に俺より下になったのだが、定期テストの結果で、4軍のトップに上り詰めていた。昇格することは出来なくても、3軍のトップなら狙えると言う事だ。


「今の私では、下剋上勝負で勝てる気がしない。演説、選挙、そして小テスト。小テストなら勝てるかもしれないけど、演説や選挙では勝てると言う保障がない。勝負はせず、定期テストで上り詰めてみようと思うの」


 今回の出来事。そしてこの生徒会便りによって、葛城の印象は最悪と言えるだろう。きれいごとを並べて演説しても、葛城に選挙で投票する人は少ないだろう。


「松原君は、どう思う?」

「葛城は、5教科を満点で取るほど、賢いんだろ? 俺なんかの意見より、自分の考えを信じてみたらどうだ? 今まで、自分を信じて行動してきて、成功して来たなら、他人の意見なんかで流されず、自分の意思で行動する方が、吉だと思うぞ」


 他人の色に染まらず、自分の色を守り続ければ、葛城は葛城らしい行動が出来るはずだ。俺たちの色に染まってしまったら、葛城は昇格を目指さなくなり、ぐうたらと底辺でアニメオタクに成り下がっているだろう。


「……私は、3軍に成り下がった。……けど、3軍でも貴方たちを助けたいと思う気持ち、スクールカースト制度を無くしたいと思う気持ちは変わらないわ」


 そして葛城は、俺に向けて拳を突き出したので、俺も拳を突き出して、葛城の拳と合わせた。


「3軍に成り下がっても、私のおもちゃ――戦友として、よろしくね」

「あいよ」


 やはり、俺の事をからかうためのおもちゃだと思っているようだ。そのせいで、一気にやる気が下がったので、適当な返事になってしまった。


「松原君は、ずっと4軍の底辺だけど、いつになったら昇格するの?」

「そのうちにな」


 菜摘たちは、昇格する気がないが、俺は昇格したい気ががある。しかし下剋上勝負をやるとなると、凄く面倒な事をする事になる。テストなら猛勉強すれば、勝てるかもしれないが、菜摘と法田の勝負を見て、演説や選挙が面倒だと思っている。

 定期テストでも、例え俺が好成績を残しても、4軍から脱出する事は出来なようなので、やはり下剋上勝負で昇格するしかないのだろうか。


「私みたいに、定期テストで満点を取れば、せめて3軍にでも入れると思うわ」



「そんな、まどろっこしい事はせず、堂々と下剋上勝負で、上の奴と戦えばいいんじゃないのか?」



 藪から棒に、葛城の意見に横槍を入れるのは、ここに現れるはずのない人物だった。


「あら。最近見ないから、てっきり渡邊さんみたいに、不登校になっていたと思っていたわ。久しぶり、安藤君」


 俺たちの前に現れたのは、俺がこの学校で一番嫌いな人物、葛城の前のトップ、安藤春馬だった。


「俺のメンタルは、あのアホみたいに弱くねえよ。松原、ちゃんと第4の彼女に言っておけよ」

「それはどうも、すみませんでしたね」


 俺と安藤の関係は、水と油。決して交わる事ない、仲良くなる事も無いだろう。やはり、安藤にも、俺と葛城が仲良くなっていることを知っていたようだ。


「それで、私に何の用?」

「葛城。俺の下剋上勝負に付き合え」


 安藤は、葛城に勝負を申し込んでいた。突然の安藤の言葉に、葛城は目を丸くしていたが、すぐに冷静な雰囲気に戻っていた。


「確か安藤君は、今では4軍のトップ。昨日までの私に勝負を申し込むなら分かるけど、今の私は3軍の最底辺。私にとって、安藤君にとっても、あまりメリットを感じられないんだけど?」

「メリットならたくさんある。もし、葛城が俺に勝てば、俺は最底辺。そしてしばらく勝負を申し込めなくなる。葛城と松原にとっては、嬉しい話じゃないか?」


 安藤が再び最底辺になれば、俺も少し気が楽になる。安藤は何を考えているか分からない。ここで葛城が勝てば、俺と葛城にとって嬉しい話となるだろう。


「そして俺にもメリットはある」


 そう言うと、安藤は免許書のような小さなカードを、葛城に渡していた。


「葛城。お前は新しい成敗、下剋上勝負の実験相手として、勝負してもらう」


 どうやら、安藤が渡したカードを利用して、これから勝負いて行くらしい。


「勝負は放課後。その時に、内容を説明――しなくても、お前なら知っているか」

「あらあら。バレていたの? 全部は知らないけど、勝負内容が大きく変わる事は知っているわ」


 俺たちには知らない事が、裏では着々と進んでいたようだ。全く俺には、安藤と葛城の話についていけなかった。


「勝負、受けるよな?」

「もちろん。返り討ちにしてあげる」


 葛城は意気込んで、安藤の下剋上勝負を受けて、そして放課後に勝負し、すぐに勝負の結果が、俺の耳に入ってきた。


 新たな下剋上勝負は、安藤が圧勝し、葛城が一瞬で負けた。そう言う一報だった。


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