表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/175

好きな物は嫌いになれない

 リビングから逃げ出した姉貴だが、いつの間にか玄関に移動していた菜摘が、逃亡した姉貴を羽交い絞めにして捕まえていた。


「やっぱり、妃芽さんだったんだね~」


 どうやら菜摘は、俺の姉貴がグラビアアイドルをやっていた事を知っていたらしい。どこで知ったのか……。


「……確かに……ヒロの……お姉さん……」

「……目と、輪郭は一緒」


 菜摘に預けていたはずの一冊のエロ本が、何故か楠木たちの手に渡っていた。、楠木と木村は姉貴とエロ本に載っている女性を見比べていた。楠木はチラチラと恥ずかしそうに見ていたが、木村は平気そうに見ていたので、俺はすぐに取り上げた。


「……舞浜まいはまかおる


 ウィッグを被っているのか、髪色と髪型は全く違うが、よく見比べてみると、確かに目と輪郭は間違いなく姉貴だった。


「昨日、ヒロ君から預かったエロ本を見ていたら、妃芽さんが写っていたから、私もびっくりしたんだよね~」


 俺は全く気が付かなかったが、勘の鋭い菜摘は、すぐに気づいていたらしい。そう言えば、激変した塚本でも、一瞬で見抜いたな……。少しでも似ている所があれば、菜摘はすぐに気づいてしまうようだ。


「おふくろは、知っているのか?」

「言ってんよ」


 となると、姉貴が勝手にグラビアアイドルの道に進んでしまったと言う事になる。うちのおふくろが反対するとは思えないが。


「聞きたいんでしょう? 私がどうして、アニメを嫌うのか」

「今回は、それが目的だからな。話してくれるなら、ありがたい」


 すると姉貴は、まだ明るいのに、辺りキョロキョロと何かを確認してから、カーテンを閉め切ってから、俺たちに理由を話した。


「単刀直入に言う。舞浜薫は、アニメが嫌いと言う事になっているから」


 姉貴の言っている意味が分からなかったが、しばらく話を聞いてみた。


 どうやら、姉貴は高校生の時に、ファッション雑誌のモデルとしてスカウトされ、そして大学まで、モデルの舞浜薫としてやってきたらしい。

 しかし有名になる事も無く、大学卒業後に、マネージャーの勧めで、思い切ってグラビアアイドルデビューをし、今は地方の営業や、少し過激な撮影でも受けて、日々頑張っていると、姉貴は言った。


「姉貴。それがどうして、アニメ嫌いになるんだ? 全く関係ないじゃないか」


 だが、その話では全くアニメを嫌う理由が見当たらない。そう思って、姉貴に尋ねると。


「オタクに成り下がった正義なら、このアニメのキャラを知ってるやろ?」


 そう言って、姉貴はスマホを操作して、スマホの画面に映った小さな男の子のキャラを見せてきた。


「……アイドルキングのキャラ。……真柄まがらじゅん

「あっ、私もそのキャラは知ってる」


 ふわっとしたか金髪。目は大きく、イケメンと言うよりかは、中学生で弟みたいに、可愛い男の子と言った方がいいのだろうか。

 しかし、俺には見覚えが無いので、首を傾げていると、代わりに木村が答えた。そして意外にも楠木も知っていた。知らないのは、首を傾げている、俺と紫苑ぐらいだろうか。

 真柄潤は知らないが、アイドルキングなら分かる。

 アイドルキングは、昔から配信され、今でも人気があるスマホの音ゲーのアプリ。男向けには、アイドルプリンセスと言うアプリがあるが、その女向けのアプリがアイドルキング。最近は、アニメ化もされていたが、女子向けだったので見なかった物だ。


「私も好きな方なキャラね。少しやんちゃで生意気だけど、たまに見せる優しい所が、カッコよくて――」

「そうそう! じゅんがらは、王子様顔だけど、意外と大人びてい何でもありません」

「急にキャラを変えるな」


 楠木も好きなキャラらしく、姉貴と意見が合っていたが、すぐに気を取り戻した姉貴は、落ち着いていた。


「しかし、じゅんがらって何だ?」

「正義、俺の同志なのに、そんな事も知らないのか? じゅんがらは、ファンたちの間で呼ばれている、真柄潤の愛称だぞ。アニメ好きなら常識だからな、今度テストに出るぞ」


 テストには出る事は無いと思うが、田辺の奴、女子向けのアニメでも平気で見るんだな。もしくはアプリの方をやっているのかもしれないが、幼女だけのアニメを重点的に見ているのかと思ったが、そうではないらしい。


「姉貴は、真柄潤が好きなのか?」

「じゅんがら。正義でも呼び捨てで呼ぶのは許されない。じゅんがらとお呼びする事。いいですか? じゅんがらは、忙しい女性プロデューサーの手を焼かせるのですが、プロヂューサーが上手くいかなくて悩んでいた時、第一に相談に乗ろうとした……」

「姉貴がじゅんがらが推しなのは分かったから、話を進めてくれ」」


 このままだと、夜遅くまでじゅんがらの事を語っていそうだ。昨日の説教よりも長くなりそうだったので、話を遮った。


「姉貴も、俺たちと同類って事でいいんだよな」

「……私は、じゅんがらのみ愛してる。……正義みたいに、重度のオタクではない」


 なら、どうして俺を責め、そしてアニメを嫌うのか。そう思い、姉貴に聞いてみると。


「高校の時。じゅんがらの缶バッチをつけた鞄で現場に向かったら、他のモデルにキモイ、ショタコンなど言われる始末」


 ショタコンではなく、ブラコンと言われていたら、姉貴は否定していないだろう。むしろ喜んでいそうだ。


「正義もこれから大人になっていく。大人になっても二次元キャラを好いていると、破滅の道に進んでいく。これ以上、オタクが深刻化し、そして世間に虐げられて、正義が引きこもりのオタクにならないよう、今から約束を守ってほしい。正義も、辛い経験したくなかったら、姉の言う事を――」

「それは違うと思うな~」


 姉貴の意見を、菜摘はすぐに否定した。


「否定されたからって、それで好きなキャラを嫌いになる方が、破滅の道に行くと思うんだよね~」

「いつから菜摘は、私に説教するぐらい、賢くなったん? いっつも先生に怒られ、のほほんとして生きていた菜摘が――」

「嫌な事から現実を背ける。それって、ヒロ君よりも子供で、ヒロ君に劣っていると思うよ~」


 菜摘の言葉に、姉貴は黙って菜摘の顔を見つめていた。ぐうの音も出ない様子だ。


「ヒロ君も、前は嫌な事から背いていたよ? けど、今は私を中心に、傍にいるオタクな友達たちと会話して、関わっていくうちに、学校生活での困難に立ち向かっている。ヒロ君は、妃芽さんが見ていない所で、すごく成長しているよ~」


 俺にはそんな自覚は無いが、菜摘はいつも俺の傍にいるせいか、そう言った箇所も、しっかりと見ていた。楠木や田辺の前で、そんな風に言われてしまうと、俺は恥ずかしくなってくる。


「ヒロ君の様子が分かったなら、今度は妃芽さんが成長する番だと思うな~」


 そう言って、菜摘は缶バッジやぬいぐるみが付いた、オタク女子らしい鞄を姉貴に見せつけた。


「菜摘っ!? いつの間に、私の鞄を持ってきたんやっ!?」


 どうやら、姉貴の鞄らしい。部屋に封印してあったものを、菜摘は勝手に持ってきたようだ。


「この鞄を、堂々と持ち歩けないと、ヒロ君を叱る権利は無いと思うな~」

「……分かった。……菜摘に言われっぱなしなのも癪やから、堂々とミナミで使ってやるわ」

「その意気だよ~」


 菜摘の提案に、姉貴は受け入れ、姉貴は封印されていた鞄を持って帰り、大阪の方で使うようだ。




 暗くなる前に、俺はわざわざ来てもらった楠木たちを帰すために、最寄りの駅まで送り、丁度楠木たちを送ったと思ったら、俺のスマホにメッセージが着た。

 そのメッセージは、今回の姉貴の説得のための助っ人の2人目。内田先輩だった。内田先輩のコスプレをする素晴らしさで、姉貴を納得させてもらおうと思ったが、とっくに話し合いが終わってしまった時に、用事が終わったらしい。


「あっ、ヒビト君だ~」

「それの名前はやめてください、マジでお願いします」


 そして改札口の付近で待っていてくれた、俺よりも先に見つけた内田先輩は、合図として手を振ると、ポニーテールが揺れて可愛らしかった。そして内田先輩と合流すると、内田先輩は気まずそうな表情をして、俺にこう言った。


「貴方の学年のトップ、葛城さんが捕まったよ」


 葛城も、今回の姉貴の説得させるために呼んでいた。しかし、葛城が捕まったと聞いた途端、俺の思考は停止した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ