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開かずの教室のお宝

 葛城は、夜にやって来て、肝試し感覚でこの教室を調べるとか言っている。俺はそんな事にならないように、菜摘のように、葛城の頭を叩いで轟沈させようとしたが、上手くかわされ、そして葛城に手首を掴まれて、そして掴んだ手をそのまま、自分の胸に置いた。


「松宮さんたち、多くの女子の前で、私の胸を触るなんて、どれだけ女子の体に飢えているの?」

「お前が勝手に置いたんだろうが……!」


 菜摘、楠木や木村がジト目で俺を見始めたので、俺はすぐに葛城から手を離して、一旦深呼吸をした後。


「夜に調査するのは冗談。1軍のトップが、夜な夜な学校に忍び込んだら、即降格になっちゃうもの。それじゃあ、この開かずの教室の中に入りましょうか」


 俺が動揺して、顔を赤くしている表情を見て、可笑しそうにクスクスと笑う葛城。凄く腹が立つ。


 この部屋の鍵が行方不明で、しばらくこの教室に入る事は無かった。そして木村がピッキングしたことによって、長らく閉まっていた部屋がついに開かれた。


 中はどれだけ悲惨な事になっているのか。13年前の出来事のようだから、中は整理されていると思うが、俺も覚悟して葛城の後に入ると。


「……これが、部屋の中で大爆発が起こり、死者が出た部屋か?」

「そんな部屋があったら見てみたいわ」


 騙されていた俺たちの反応が面白かったらしく、この部屋の鍵を俺たちにちらつかせながら、クスクスと笑っていた。どうやら俺たちは葛城にからかわれていたらしい。


 中は埃だらけ。山積みとなった本、机やいすが乱雑に置かれていた。


「じゃ、じゃあ、あの新聞は何なのよっ⁉」


 あんなに怖がっていた楠木は、さっきの新聞の記事が嘘だと分かると、楠木は血相を変えて葛城に詰め寄っていたが。


「少年漫画の中の一コマをちょちょいと細工した物。夏っぽくてひんやりしたでしょ?」


 今は梅雨も明けて、ムシムシとした夏真っ盛りだ。夏と言えば怪談。人気のない場所で、あのような話をされたら、誰だって信じ込むだろう。俺も信じてしまい、教室の扉が開かれる前まで、ドキドキしていた。


「ヒロ。停学覚悟で、ぶっ飛ばして良い?」

「そんな事したら、停学だけじゃなくて、松原君よりも下になるわよ?」


 楠木がキレる寸前で、俺にそう相談してきたが、葛城にそう言われると、拳を握りしめ、楠木はグッと怒りを堪えていた。


「けど、この教室が元々は部室だった事は嘘じゃないの。ここは5年前に廃部となった文芸部の部室。この山積みの本も、文芸部が使っていた物よ」


 この学校、文芸部もあったのか。俺が見るアニメとかでは、文芸部には文学少女がいて、その少女と恋に落ちるとか。変なキャラが入部して、そして文芸部ではなくなって、変な話に向かっていく。大人しく本を読んでいるイメージとはかけ離れてしまっているのが、俺の中の文芸部のイメージだ。


「この教室はもう使わない。なら、私が利用させてもらおうと思って。あなた達4軍の皆さんに、教室の整理を手伝ってもらいたかったの」

「何に使う気だ?」

「それは秘密」


 何としても、俺たちを雑用として使いたいらしい。人気のない場所にあるこの教室を何に使うのか。葛城の行動が読めない。


 そして俺たちはこの埃だらけの部屋を掃除する羽目になった。窓を全開にして、埃はちり取りで穿きとって、そして床や壁を雑巾やモップで拭いた。


「ヒロ君。ファイト~」


 こんな埃っぽい部屋なのに、菜摘はマイペースにうんまい棒をサクサク食べて、俺がせっせと掃除をしている姿を応援していたので、俺は菜摘の頭を叩いて轟沈させた。


「もしもし~。この本はどうするのですか~?」


 紫苑は、埃をかぶっていた多くの本を抱えて指揮する葛城に話しかけると。


「そうね。とりあえず、この部屋に置いておくと荷物になるし、図書室に預けましょう」

「了解で~す……って、菜摘ちゃん。こんな難しそうな本を読みたいのですか~?」


 マイペースな菜摘は、紫苑が抱えていた本を一冊取って、ページをパラパラとめくっていた。

 菜摘が取った本は、有名な文学小説。ラノベ以外の字だらけの本を読むと、メガネの少年レベルで、菜摘は数秒で寝てしまう。国語の時間で即行で寝るので、よく先生に怒られていたな。


「……ほうほう」


 だが、菜摘は文学小説を興味深く読んでいた。寝ないなんておかしい。


「ヒロ君~。見て見て~。これ、ヒロ君が好きそうな本だよ~」


 菜摘が読んでいた本を、俺に嬉しそうに見せつけてきた。一体、何の本なんだ――


「ぶっ!」


 見た瞬間、俺は吹き出した。どうやら、俺が見た本はエロ同人誌らしい。俺が観ていたアニメが、二次創作によって、変な方向に進んでいる世界だ。ねこのあなに置いてありそうな本だ。


 どうやら、見た目は真面目そうな本のカバーを着けておいて、中はエロ同人誌にしておく。このカバーは、エロ同人誌だとバレない為のカモフラージュのようだ。

 文芸部の人、どうやら文芸部と言う肩書だけを名乗っておいて、本当は同人誌を読む、同人誌の同好会のようだ。


「……ほうほう。……この本は、男同士が、何か抱き合っているのもあり――」

『見せて』


 この部屋、BLも置いてあるのか。

 紫苑が別の本の中身を読み上げると、木村が目を輝かせて紫苑から本を取り上げて、興奮気味に読み始めていき、興奮したのか、鼻からは鼻血が垂れ始めて。


『wたしの、いしょ、に、いpっぺんの、きい、なす』


 鼻血を出しながら文字を打ち込んでいるせいか、文字を打ち間違えて、変な言葉でスマホの音声機能で話していた。こんな時でも、スマホで話す木村の執念は凄い。


「ふぅ……」


 そして嬉しそうに木村は鼻血の海に沈んでいった。今回は木村が暴走しなくて良かったが、木村の鼻血で再び床が汚れてしまったので、また掃除しないといけない。

 だが、今までに見た事無いぐらい、満足そうに鼻血を流して倒れている木村。木村が満足なら、それでいいんだが。


「……この本は、数年前の保健体育の教科書ですね~」


 紫苑が持っている本には、保健体育の教科書もあるようだ。教科書がしわくちゃになるほど読み込んだのか、それとも経年劣化でしわくちゃになったのか。経年劣化の方だと思いたい。


「これは……。美しい男性の体の描き方……? ですね~」

『見せて』


 題名を聞く感じだと、デッサンの本だろう。その本は、堅苦しい表紙の文庫本のカバーで隠している訳ではなく、その本は堂々と置いてあったようだ。

 紫苑の『美しい男性の体』と、言う言葉に反応した木村は、復活してフラフラな足取りで紫苑が読み上げた本を取り上げて、そして吸い付くようにその本を読み始めた。


『悪くない』


 男の体に関するデッサンの本でも、木村は興奮してしまうらしい。


「ちょ、木村! それ以上読むと、死ぬわよ⁉」


 確かに、もう致死レベルの血が木村から出ている気がする。それを心配したのか、楠木は木村に話しかけていた。


『大丈夫。これぐらい、日常、茶飯事、だ』

「あんたは一体どう言う日常を送ってんのよっ⁉」


 木村の事だから、きっと毎日のようにBLを読んで、そして毎日のように血を流しているのだろう。


「……し、幸せ」


 そして遂に体力が尽きたのか、木村はデッサンの本を片手に持って、鼻血を流しながらも満面の笑みで倒れた。今日は、木村にとって幸せな一日だったのだろう。


「松原君の周りの女子って、個性豊かな子ばかりなのね。その本は、木村さんのために、この部屋に保管しておきましょうか」

「木村のために思うなら、その本はさっさと焼却しろ」


 こんな本を保管していたら、木村はこっそりとこの教室に訪れて、一人で鼻血を出して倒れているのが目に浮かぶ。木村の命の為にも、さっさとこの本は焼却した方がいい。

 とてもじゃないが、この教室にあった本は、図書室には持っていけない。と言うか、このような本を何故この教室に置いていったのか。未来の部員のために、残しておいたのか?


「私とヒロ君も、このような関係になりたいな~」


 壁に寄りかかって、菜摘は未だにエロ同人誌を読んでいたので、俺は菜摘の頭を叩いて轟沈させて、取り上げた。

 この本は俺が後で俺がじっくりと……ではなく、さっさと変態の田辺の奴にあげてしまおう。



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