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第2化学部

 

「今回の4軍の皆さんのお仕事は、前回の壮行会の催しの準備、それと3階にある、開かずの教室の掃除をしてもらいます」


 夏休みなのに、雑用のために暑い中登校してきた4軍の俺たち。前回、輪飾りなどを作っていた空き教室で、1軍のトップの葛城からそのような説明を受けた。


「ヒロ君。開かずの部屋があるって事は、お宝があるのかな~?」

「知らん」


 マイペースに、菜摘は駄菓子を食べながらそう聞いてきた。今日は菓子パンの気分ではないようで、簡単に買うことが出来る、うんまい棒をちびちびと食べていた。

 この学校にそんな教室があるのか。初耳だ。


「掃除には、私、そしてあなたたちの中から5人選出してもらいたいのですが、誰か我こそは。と言う方はいませんか?」


 俺はそんな面倒な事はごめんだ。それなら、クーラーが付かない、埃っぽい部屋でひたすら催しを作っていたほうがマシだ。


「葛城。推薦する奴らならいるぞ」

「河合君。それは誰?」


 4軍のトップ、安藤の次に偉い奴。昨日俺に空き缶を投げつけた不良っぽい見た目の奴が、俺たちの方を指を差した。


「松原。それで周りにいる女で丁度5人。ほら、これで解決」


 俺に面倒事を押し付けた後、河合たちは仲の良い奴らで笑い合っていた。

 まあ、そうなるとは思っていた。あいつの名前、河合って言うのか。安藤、佐村みたいな嫌な奴として覚えておこう。


「本当ね。なら、0.1秒以内に異論が無いなら、松原君たちになります、はい、決定です」


 俺たちに拒否権は無いようだ。河合が俺たちの名前を推薦した途端、葛城は口元をニヤリとしていた。どうやらこれは葛城の計算通りらしい。


「松原君、松宮さん、楠木さん、木村さん、高村さんは私についてきてください」


 ここで葛城に逆らうと、下手にペナルティで電流を流されそうだ。俺たちは大人しく葛城について行くことにした。


「よろしくね。松原君」


 にこっと微笑む葛城。まんまと葛城の思惑通りになってしまったようだ。


「と言うか、葛城があいつらの監視をしなくていいのか? 絶対にあいつらはやらないぞ」

「後で生徒指導の先生が来ることになっているの」


 今回だけは、河合たちに感謝しておこう。俺とはあまり関わりがないが、厳しいとうわさに聞く先生だ。これだと、ポスターを吟味したり、一狩り行ったりするのは無理だろう。



「ここが開かずの教室」


 葛城に連れられてやって来た場所は、3階の教室棟の一番奥。中は暗幕で閉ざされて、中の様子はさっぱり分からない。

 足元には、何故か埃をかぶった、何年前であろうタバコの吸い殻が数本落ちている。ここは昔、不良のたまり場だったのかもしれない。今では誰も行く事も無いような、ひっそりと佇む教室だった。


「調べたところによると、ここは昔は第2化学部って言う部活の部室だったらしいの」

「……何で、化学部が2つもあんのよ」


 楠木は暑いのが苦手なのか。暑そうに手を膝に置いて、葛城にそうツッコんでいた。

 確かにおかしな話だ。文化部なら1つで良いはず。第2化学部もそうだが、本家の化学部なんて部活は俺たちは聞いた事が無い。今では化学部すら廃部になっているようだが、どうしてこんな場所に化学部があるのか。


「話せば長くなるんだけど……」


 暗い部屋で怪談話を語るような、何かに取り憑かれたような急に無表情になり。俺たちをじっと見て話し始めた葛城。

 この感じだと、この教室は訳ありの教室のようだ。


「第2化学部。何十年前、一人の部員の何気ない一言がきっかけに、部員同士が対立し、喧嘩が後を絶たなかった。そして化学部は分裂し、このような場所に新しい部が出来た」

「何だか、漫画みたいな話だね~」


 葛城がしんみりと話す中でも、菜摘は映画を観ながらポップコーンを食べる感覚のように、うんまい棒をサクサク食べていた。少しは怖がってくれてもいいだぞ?


「第2化学部の活動内容、それは本家の化学部にどうやって残酷な復讐が出来るか。そんな事をして日々部活動に励んでいた」

「ふむふむ……」


 俺の横で菜摘のうんまい棒を食べるサクサクした音がうるさかったので、俺は菜摘の頭を叩いて黙らせた。

 だが、復讐まで企むとなると、余程本家の化学部を恨み、憎んでいたようだ。


「そして13年前の明日。第2化学部は復讐のために部活をしていた。何年もかけて作り上げた、自作の化学兵器が完成間近の時。誤って薬品の配分を間違えてしまい、この部室の中で大爆発が起きた。そして部員は、全員死亡。これで化学部と第2化学部の骨肉な争いが、終焉を迎えた時だった」


 おいおい……。マジでヤバい話じゃないのか……? ちょっと俺も嫌な予感がして、寒気が走った。


「ヒロ君。これは……バッドエンド? って言う物だよね~?」

『初めて、聞いた、とても、興味、深い』


 菜摘は復活して、新たなうんまい棒を食べ始めていて、木村は興味深そうに話を聞いていた。木村は葛城がいるせいか、スマホの音声機能で話している。

 菜摘はお化け屋敷のお化けに平気に挨拶するほど、お化けを全く怖がらない。そして木村のこの様子だと、木村はお化けとかは平気のようだ。少し意外だ。


 葛城の話で怖がっている様子は無い、菜摘と木村だが、その一方。


「……そう言う話は無理」

「……私も……で……す……よ……」


 怪談が苦手な様子の楠木と紫苑は、耳を塞いで、廊下の端で蹲って怯えていた。


「……で、出鱈目でしょ!? どうせ、学校の七不思議とか言う物で、作り話――」

「と言い出す頃だと思ったので、証拠を見せてあげる」


 楠木は信じたくないようで、葛城にそう反論したが、葛城は楠木に紙を見せていた。そして紙を見た楠木は、再び紫苑の横で怯え始めていた。


「本当にコンビニって便利なの。今のコンビニのコピー機って、昔の新聞の一面を印刷出来るの。松原君も覚えておくといいわよ」


 その話は前にテレビで聞いた事がある。本当に出来るんだな……。

 俺も葛城が持ってきた紙を見せてもらうと、紙には13年前の西暦、そして明後日の日付の新聞の一面だった。そして大きく『自由川高 化学部 部室が爆発 部員は全員死亡』と書かれていた。


「嘘じゃないでしょ?」

「そうっすね……」


 俺は、また面倒事に巻き込まれたようだ。こんなの心霊番組で、好奇心で廃墟に乗り込むと同じような事だ。俺たちは罰当たりな事をしようとしているんだ。こう言った場所は、そっとしておいておくのが一番なんだ。


「葛城。好奇心でこういう場所に入るのはどうかと思うぞ。中もどうなっているのか分からない。そっとしておいた方がいいんじゃないのか? 好奇心で入るのは、亡くなった人に失礼だろ」

「このまま、この出来事を忘れ去る方が失礼だと思わない?」


 葛城にそう反論されると、俺は反論出来なくなった。


「このような歴史があった。何気ない一言がこのような悲惨な結果を招いてしまった。この事を後世に伝えるのが、今の私たちがやる事だと思わない?」


 葛城の考えも一理ある。俺らが何もしなければ、このままずっと忘れ去れるだろう。こんな人気のない所に、誰も足は運ばないだろう。そう思うと、俺たちはこの開かずの教室を調査した方がいいのかと思ってしまう。


「先生に確認したのだけど、鍵はあいにく見つからなかった。それで、今は鍵か扉をぶっ壊して、とりあえず鍵を開けようと思っているんだけど……」


きっとこの教室の鍵は隠してあるのだろう。誰にも知られないようにと、わざと隠しているとしか思えない。学校もこの出来事は隠蔽しておきたいようだ。


『ピッキング、なら、出来る』


 この部屋に入る気満々の木村がどこからか針金を取り出して、そして鍵の前に立って、数分が経ったところで。


 ガチャ


 本当に針金で鍵が開くんだな……。ピッキングで鍵を開けるのを初めて見た。


「ありがとう。木村さん」

「……」


 木村は葛城と話そうとはしない。会釈だけして、さっきまでいた窓際の壁に寄りかかっていた。


「今すぐ入りたいところなんだけど……」


 葛城は開かずの教室の扉の前に立つと、口元をニヤリとさせた後。


「夜に調査しましょうか。その方が雰囲気が出ると思うから」


 そうアホな事を言い始めた葛城。さっきの葛城の言葉で感心して、協力しようとした俺がバカだった。


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