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天空で語る想い

 謎の少女、マケドニアからやって来た、アイリーンが仲間に加わった俺と紫苑。

 さっきの人形焼きの店で、再び人形焼きを買って、それをアイリーンにあげていた。


「マロンも、どうぞなのですよ~」

「……すまんな」


 しかも俺にだけちゃんとカスタードクリームの人形焼き。紫苑とアイリーンは餡子が入った物を食べていた。


「それで、どこに行きたいんだ?」


 それがそう尋ねると、アイリーンはハムスターのように、人形焼きをもぐもぐと食べながら、西の方を指差していた。


「……タカイ、トコロ」


 高い所。と言うと、この辺りだと一つしか思い浮かばない。


「スカイツリーか。なら、あっちだぞ」


 アイリーンは真逆の方を指差していたので、俺がそう訂正すると、アイリーンは恥ずかしそうに顔を赤らめていた。


「スカイツリーですか~。実の所、私もマロンと一緒に行きたいと考えておりました。そうなれば、早速行きましょう~!」

「くっつくな……」


 こんな人前、幼いアイリーンも前でも、紫苑は俺の腕にくっついて、そして胸を押し当ててきて、そして俺ははぐれないように、アイリーンの手をつないでスカイツリーを目指した。


 歩いていると、途中に金色の変わったオブジェが見える。それが紫苑にとってツボだったらしく、しばらく腹を抱えて笑い転げてしまい、しばらく待った後、ようやくスカイツリーの麓に到着した。


「ここでいいのか?」


 アイリーンにそう尋ねると、アイリーンは首を傾げていた。


「……アカク……ナイ」


 どうやらアイリーンのお目当ての場所ではなかったらしい。スカイツリーは白い。あり得るのなら、ライトアップされたスカイツリーか、それとも芝浦の東京タワーの方を言っているのか?


「もしかして、こっちの方に行きたかったのか?」


 口では説明できないので、スマホの画像検索で、東京タワーを見せたが、アイリーンは首は横に振った。


「……ココデ、アテル」


 なら、なぜ赤くないと言ったのか。スカイツリーは元々白い。何があってスカイツリーを赤い建造物と認識してしまったのか。


「まあまあ~。とりあえず上りましょう~」

「ノボリタイ」


 何だろうな。これって、俺が妹2人と引き連れてスカイツリーに来たとしか思えないんだが。まあたまにはこう言った時間もあってもいいかもしれない。

 いつも菜摘のマイペースに振り回されているし、こういうまったりとした時間もたまには必要だ。

 まあ早く上りたいと、紫苑が俺の頬に擦り付けてくるので、さっさとチケットを買うか。

 夏休みのせいで、スカイツリーの受付は長蛇の列。待っているだけで日が暮れそうだし。


「……上るだけでも時間がかかるぞ」


 上の展望デッキに上るためのエレベーターの前でも、親子連れと外国人でいっぱいだった。しかも展望デッキには入場規制がかかっている。ここにいるだけで、一日が潰れそうだ。


「心配は無用なので~すよ~。こんな事もあろうかと、私はちゃんと用意しておいたので~すよ~。マロン」

「おお。気が利くな、紫苑」


 さっき行く予定だったと言っていたので、紫苑は事前に展望デッキに上るためのチケットを取っていたようだ。


「褒めてくれて光栄ですよ~。さあ、どれが良いですか――」

「アイリーン。スカイツリーに上るのは諦めてくれないか?」


 紫苑の奴、ポケットからチケットを取り出すと思ったら、トランプをかっこよく取り出した。列を待っている間、3人でトランプをして待つ。この行列に長期戦に臨むようだった。


「ノボリタイ」


 だが、アイリーンは絶対に上りたいようだ。さっきから上りのエレベーターの方に乗っていく人たちを羨ましそうに見ている。


「時は金なりっていう諺を教えておこう。時間はお金のように貴重なもので、無駄に使ってはいけないって事だ」

「ノボリタイ」

「光陰矢の如しと言う諺も教えておこう。時間って言うのはあっという間に過ぎてしまう。こうやって並んでいる時でも時間はあっという間に進んでしまう。つまり、こんな長い列を並ばず、さっさと諦めた方がいいって事だ」

「ノボリタイ」


 ダメだ。この子、凄く意志が強い……。


「マロン! 私がいるから大丈夫で~すっ! 私がマロンの話し相手になりますよ~」

「ノボリタイ」


 どうも、俺はこの長い列を並ばないといけないらしい。こう言った行列は嫌いなんだ。並ぶぐらいなら、俺は潔く諦める。


「ニーソ。触らせてあげますよ~?」

「……ったく、仕方ないな」


 紫苑のニーソが触りたくて承諾した訳ではない。これ以上俺が、ニーソ好きの変態野郎だと周りに思われないために、仕方なく承諾したんだ。決してニーソが触りたいとか、そういう訳ではない。



「ふっふっふ。マロン、アイちゃん。見るといいです! まるで町がゴミのようですよ~!」

「大声で、そんなみっともない事を言うな……!」


 チケットを買うのに10分並び、そして展望デッキに上るために30分以上は待たされた。

 渋谷から浅草に移動、雷門を通って、仲見世で買い物をして、そしてマケドニアのアイリーンと出会い、スカイツリーの展望デッキで東京の街並みを見る。

 そして現在、正午。何やかんやでかなり時間が経っていた。


「マロン。私たちの家ってどこにあるのでしょうか~?」

「そもそも、俺は紫苑の家は知らん」

「下北沢で~すっ!」


 多くの人が居る中で、自分の住所を言いふらすな。変な奴が聞いていたらどうするんだ。


「……家、近いんだな」

「そうですよ~。あえてそうしたんですよ~」


 俺がそう気づくと、紫苑はウインクをした。

 俺が住む代々木から、紫苑が住む下北沢まで、電車で2駅で着く場所。近いと言ったら近い場所に、紫苑は住んでいる。


「まだ小学生の時でしたが、私とマロンはお互いに好きでした。転校して、海外を転々とする時でも、私はマロンを一時も忘れませんでした。海外で辛い事もありました、嫌な事もありました。けど、私はマロンのニッと笑う、あの小さな時のマロンの顔を思い出して、それで元気をもらいました」


 例え、紫苑が海外に行っても、俺の事を絶対に忘れていなかった。だが、俺は紫苑をすっかりと忘れていた。すっかりと忘れていた俺が、凄く恥ずかしかった。


「……紫苑が、俺をマロンと呼ぶまで、俺は紫苑をすっかり忘れていた。以前、卒業アルバムで紫苑が写った写真を見ても、俺は思い出せなかった。普通のクラスメイトだと思っていた。……本当に、今まで紫苑を忘れていて、申し訳ない」


 頭を下げようとすると、紫苑は俺の腕ではなく、俺の体にしがみつくように抱き着いてきた。


「気にしない、気にしない~。覚えていないのは仕方がないです。だって、私はこんなに髪が長くなくて、そして名前も違いました。覚えていませんか~? 私、高村じゃなくて、美島みしまって名字だったんですよ~」


 そう言われると、俺は『美島紫苑』と言う名前ははっきりと覚えている。高村紫苑って聞いても、俺は白ニーソが素晴らしい美少女って印象だった。最初から、美島紫苑と名乗っていたら、俺は席を立って、すぐに紫苑との再会に感動していただろう。


「海外暮らしを転々とする生活に、ママが嫌になったんです。それでママとパパは離婚です。私も正直、海外に暮らすのは嫌でした。日本が良かった、日本にいるマロンに会いたかった。それでママについて行って、ママの旧姓、高村紫苑に進化したんですよ~」


 紫苑の家庭は、意外と複雑だった。こんなおおらかな性格、どんな人にも明るく接する紫苑は、海外の生活を満喫していたと思っていたんだが、意外と紫苑は苦労して、そして辛かったようだ。


「学校はたまたまでしたが、下北沢に住んでいるのは、ちゃんとした理由があったんですよ~。それは、私が下北沢に住みながら、マロンを探そうと思ったんです~。そしたら、まさかの学校での運命の再会! 本当に、結果オーライですよ~! 再びマロンに会えてよかったです~!」


 嬉しそうに語る紫苑。目尻には涙を浮かべている紫苑の様子を見ていると、本当に俺と会いたいと想い続け、そしてまだ俺を好きだと思い続けているようだ。


「コレガ、アオハル、デスカ?」


 俺たちの光景を不思議そうに見ているアイリーン。幼いから、こういった紫苑の感情が読み取れないのかもしれない。


「そうですよ~。アイちゃんも、マロンのような素敵な男の人を見つけるといいですよ~」


 紫苑の言っている意味が分からないのか、アイリーンは首を傾げていた。


 そして俺は人ごみに疲れ、展望デッキにあるカフェで一休み。アイスコーヒーを飲んで一息つき、紫苑もコーラ、アイリーンは疲れたように若干カフェの席でウトウトしていた。


『臨時ニュースです』


 カフェの中にあったモニター。通常はスカイツリーのおすすめ情報、イベントなどを流しているモニターが、何故か臨時ニュースを流していた。

 何だ、大臣が突然辞任したとか、どこかが変な物を飛ばしたとかじゃないよな?


『昨晩から、マケドニアの駐日大使の娘が、行方不明になっていると言う情報が入ってきました。誘拐も視野を入れて、警視庁が捜索しております』


 アナウンサーが慌ただしく言い、そしてモニターに写された顔写真には、俺の前、紫苑の隣にいるアイリーンの顔が写っていて、それを見た瞬間、俺と紫苑は、飲み物を吹き出した。


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