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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
幼なじみに頼るのは恥だが、役に立つだろうか。
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勝負はドッジボールの中で

 

「さあ、始まりました! 皆さんが待ち望んでいた1軍と4軍の直接対決! しかもトップと最底辺との勝負が今、開幕しようとしています!」


 昼休みの体育館。梅雨の蒸し暑い体育館の中でも、お馴染みとなったこの放送委員の女子生徒。結んだポニーテールを揺らして、マイクを握りしめて熱い実況をしていた。


 1軍への対抗としてやったことが発端とになり、そして俺は1軍のトップ、安藤と戦う事まで発展した。


 今回の成敗勝負は、以前の菜摘の勝負の演説と選挙は行わない。スクールカースト制度の実行委員長の権限で、違う勝負方式になった。

 今回は俺と安藤、単独で勝負するのではなく、団体戦で戦う事になった。その団体戦で、3回に分けて勝負をする。そして勝ち点が多い方が勝ちと言う勝負だ。


「まさか、こんなに早く最終決戦が来るとはね」


 1グループ6人で戦う。その中の一人、同じく4軍の楠木が、少し緊張した様子で、俺に話しかけて来た。

 俺、菜摘、楠木、木村。まだどこにも属していない紫苑だが、俺たちの勝負に参加して、4軍として戦ってくれ、4軍ではないが、元4軍と言う事で、塚本で俺たち4軍は1軍に立ち向かうことにした。


「ま、丁度いい機会だし、あいつらを見返しましょ、ヒロ」


 楠木は俺に微笑みかけ、そして俺の背中をポンと叩き、俺に激を入れていた。


「ヒロ君、私はヒロ君を精一杯応援するから、戦わなくてもいいかな~?」

「ダメだろ」


 安藤は、俺と菜摘は絶対に参加しろと言われている。俺は分かるが、何故菜摘も参加しないといけないのか。そもそもなぜ今回は団体戦なのか。安藤の考えが分からない。


「さて、まず1回戦は球技対決! そして内容はドッジボール!」


 ドッジボールとか小学生の体育かよ。高校生なら、バスケとかバレー、フットサルでもいいんじゃないのかと思う。


「ルールは普通のドッジボールと一緒です。敵にボールを投げて、そして内野の人が先にいなくなった方が勝ちとなります!」


 安藤なら変にルールをいじるかと思ったが、ここは誰もが知るドッジボールと一緒のようだ。


「ですが、外野が内野の人に当てても復活にはなりません。そこだけ注意です!」


 サバイバル方式って事か。当たったらそこで試合が終了って事のようだ。懸命にボールを当てながら、そしてボールを避ける。かなりハードな戦いになりそうだ。


「じゃあ、私は外野でヒロ君を応援しているね~」

「待て。菜摘は内野確定なんだよ」


 菜摘はドッジボールでは一度もボールに当たった事が無い。小学校の時は、色んなクラスの人が、強い菜摘を取り合っていたぐらいだ。そして異常な身体能力のおかげで、存在も消すことも出来る。ある意味、菜摘はドッジボールでは最強だ。


「……私はすぐに退場しそうだから、外野に行く」


 木村が外野に名乗り出た。木村がドッジボールで相手にボールをぶつけて点を取るとは思えない。木村は外野でいいかもしれない。


「マロン! 茉莉香ちゃんだけでは、外野は大変だと思うので、私も外野に行きまーす!」


 外野は、内野の人にプレッシャーを与える目的もある。外野が多いほど、外野に強い人が居るだけで、内野も大変になってくる。ボールを機敏に投げてくれそうな紫苑がいれば、少しは1軍にプレッシャーを与えられるだろう。


「じゃあ、決まりだな。この勝負で、1軍の奴らに一泡吹かせようぜ」


 俺は皆にそう呼びかけて、今から始まる1軍対4軍の成敗勝負が始まった。


 勝負がドッジボールだと言う事を知らなかった俺たちは、当然制服のままだ。男子はズボンなのでまだ戦いやすいかもしれないが、女子が大変だろう。スカートで戦い、動けば当然スカートも翻るし、チラチラと動く。思わぬラッキースケベが発動し、俺が鼻血で倒れないか心配だ。


「……知らない奴ばかりだな」


 1軍のメンバーは安藤、猪俣。他に各2人ずつの男女の生徒。他のクラスの奴は全く知らないので、きっと他のクラスの1軍の奴だろう。


「あの野郎、逃げたな」

「逃げてるわね。ホント、ヘタレね」


 勝負を持ち掛けて来た安藤。安藤、猪俣は外野にいた。先日は俺に堂々と勝負しろとは言ったくせに、自分も堂々と勝負しないじゃないか。楠木のヘタレに同感だ。


「ヘタレで結構。俺は外野の方が好きなんだよ」


 今の俺と楠木の話が聞こえたらしく、安藤は怒る事は無く、どこか不気味な微笑みをして俺たちを見ていた。


「松原氏。某はドッジボールが嫌いだ。苦い思い出しかない」

「だろうな」


 太っていてメガネだったら、当然小学校のドッジボールではいい標的となる。塚本はドッジボールと聞いた瞬間、頭を抱えるほど、トラウマしかないようだ。


「避けるのは得意だろ?」

「それがな、開始1分も満たないまま、某はいつも外野に送られていたので、避ける事は全くの苦手なのだ」


 こんなお荷物がいるなら、木村を内野にしておいた方が良かったかもしれない。


「まあ、昔のお前とは違うんだろ? 身軽になった体で、取りあえず避けまくれ」

「承知した」


 取りあえずコートに残っていてくれれば、あとは俺と楠木で向こうの奴らに当てる。菜摘と塚本は避ける専門でいいだろう。


「楠木……紗良。俺たちで相手に当てる。思いっきり当ててくれ」

「了解。あいつらの今までの恨みを込めて投げつけるわ」


 楠木と相槌して、そして俺は審判の生徒からボールを受け取った。先行は4軍から。女子は楠木に任せるとして、俺はスポーツ刈りの男子を狙うとするか。何かリア充オーラが出ていてムカつくし。


 ふーっと体の中にあった空気を抜くように息を吐いて、俺は集中してボールを投げようとした。横の楠木は俺の様子を見守り、塚本はいつボールが飛んでくるかが怖くてビクビクしている。


「頑張れ~ヒロ君~」


 菜摘なんて、いつものように片手に菓子パンを持って、もぐもぐと食事中だ。試合中によく食えるよな……。

 ツッコみそうだったが、俺はグッとこらえて、男子に向けてボールを投げたが、見事にかわされて、外野にいた紫苑の足元に転がった。


「私に任せてください~!」


 ボールを拾い上げて、紫苑は勢いよくボールを相手に投げるのではなく、何故か内野の俺たちの方に投げてきた。きっとパスのつもりで投げて来たのだと思うのだが、どう見てもパスとは思えないスピードで投げて来たので。


「ぐはっ!」


 本当に避けるのも苦手なんだな……。紫苑から飛んできたボールは、塚本の顔面にぶつかり、塚本は崩れ落ち、ボールは外野の猪俣の所に転がって。


「キモオタは、さっさと外野に」


 猪俣は容赦なく塚本の腹にボールを当てて、塚本は退場になった。そしてボールは菜摘の足元に転がって行った。開始数秒で、俺たちの戦力が一つ減った。


「高村ーっ! そう言うボールは、相手に投げんのよっ!」


 楠木は外野にいる紫苑に怒りつけていたが、ゆっくりとはしていられない。まだ試合の最中だ。


「はい。ヒロ君」


 パンを食べながら、俺にボールを渡してきた菜摘。菜摘はこの勝負に微塵も興味を持っていないようだ。少しは早く終わらせるために、菜摘もこのドッチボールの勝負に協力してほしい。


「ヒロ。私に投げさせて」


 そう楠木が言ってきたので、俺は楠木にボールを託した。


「少しはヒロにカッコいい所を見せないと……ねっ!」


 楠木はひょいと投げて、内野の後ろにいた1軍の女子にボールを当てて、その女子は外野送りになった。


「よっ」


 1軍の内野に転がったボールは、すぐに1軍の男子が拾い上げて、それを楠木に当てようとしていたが、楠木は普通にボールをキャッチして、そのボールを投げた男子に当てて、その男子を外野送りにしていた。


「あと2人。さっさとこの勝負を終わらせましょ」


 こういう時に楠木はとっても頼りになる。暢気に座り込んで、パンを食べている菜摘とはえらい違いだ。


「すまんな。こんな事に巻き込んでしまって」

「気にしないの。こういう時に、松宮より私の方が頼りになって、魅力がある女の子だって教えてあげないと」


 二っと微笑みかけてくる楠木。だが今は勝負の最中。すぐにボールが飛んでくると思って、真剣な顔になっていた。

 今の俺に笑いかけてくれた楠木、可愛かったんだけどな……。


「おいおい。そんな簡単に俺たちの外野に仲間を呼び込んでいいのか?」


 俺もすぐに切り替えて、1軍の内野の方見たが、いつの間にか1軍の外野にボールが渡っていて、安藤は俺に目がけてボールを投げて来た。

相手の内野が減るほど、相手の外野に人が増える。どちらかと不利になるのは俺たちの方だ。


「ドッジボールっていいよな。当てられたメンバーは、こっちにやって来て一緒になって生き残っている奴の援助をし、そして多くのメンバーで相手をリンチすることが出来る。さて、誰が生き残るんだろうな?」


 だから安藤は外野に行ったのか。内野にいるといつ当てられるのか、避けながら相手の内野の人に当てないといけない。スリルがあり大変かもしれない。だが外野はとにかく相手の内野の人にひたすら投げればいい。避ける手間が無い分、安心して狙いも付けて投げられる。

 そして自分を当てた人にやり返すことも出来て、いじめっ子はいじめられっ子にボールと言う手段で虐めも出来る。それが学校で行われるドッジボールだ。


「いつまで残っていられるかしらね。クズの木」


 猪俣、楠木は互いに嫌っている。

 避けたボールは猪俣の手に渡り、そして楠木を忌々しそうに睨みながら、楠木に投げていた。


「あんたに当てられるだけは絶対に嫌。屈辱だわ」

「あら~。これは4軍の楠木が1軍の私に、暴言を吐いたと受け止めればいいのね~」


 安藤からボールを受け取った猪俣は、口元をニヤリとさせて。


「4軍の楠木。ペナルティ執行~」


 1軍の特権。それは4軍に電流を流して苦痛を与えるペナルティが出来る事。4軍の素行が悪いと、電流を流すことが出来る。ただ単に気に入らないと理由で電流を流すことは出来ない。

 カーストの地位を示すバッチから、強い電流が楠木の体に伝わり、楠木は耐えられずに地面に膝を着かせた。


「クズはさっさと退場~」


 痛くて動けない中、猪俣は楠木の顔を目がけてボールを当てて、楠木はこれで外野行きになってしまったのだが。


「おい! これは反則じゃないのか!」


 痛くて動けなくなっている所、楠木は猪俣にボールを当てられた。こんなの、誰が見たって反則だと思うが。


「全然。正当だと思うが? 楠木が、自分より偉い猪俣に対して悪く言った。そして今はドッジボールの試合中。ペナルティを受けながらも避けるのがもっともじゃないのか?」


 安藤に意見を求めた俺がバカだった。安藤は完全に俺の敵。敵が下位の味方をするわけない。そして意味不明な事を言っている。


「おい楠木。さっさと出ろよ。勝負の邪魔だ」


 電流を流され、そして顔に当てられたと言うのに、楠木を邪魔者扱いしていた。


「これは正式な成敗勝負だ。松原の他に文句が言う奴がいるな出て来いよ。1軍に反抗する者と受け止めて降格させるぞ」


 今の出来事に、勝負を見に来ていた生徒も、勿論ブーイングが出始めていたが、そう脅しを付けておいて他の生徒を黙らせていた。本当に安藤はクズ野郎だ。絵に描いたような悪役だ。


「ちょっと悪ふざけが過ぎると思うな~」


 動けなくなっていた楠木を体育館の端に移動させて、さっきまで微塵もこの勝負に興味を持たず、マイペースにパンを食べていた人とは思えない言葉だった。


「ヒロ君。いなくなった楠木さんの分と、私とヒロ君の幼なじみパワーで、悪役を成敗しようか~」


 菜摘はそう言って、俺の背中と菜摘の背中をぴったりと合わせて、そう言ってきた。


「楠木を死んだように言うな。それとそんなパワーは知らん。だが、菜摘の作戦には賛成だ。本気出せよな」

「は~い」


 1軍の肩書きを名乗っているこのクズたちに、俺は菜摘と逆に安藤たちを成敗することにした。



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