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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
幼なじみに頼るのは恥だが、役に立つだろうか。
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本当にカッコいい人

 

「この箱を持てば良いの?」

「……それを安藤にプレゼントすればオッケー」


 昼休み。俺たちは安藤に反撃するために、木村は菜摘に虫のおもちゃがたくさん入ったお菓子の箱を手渡していた。

 作戦は至ってシンプル。ただ菜摘が安藤に虫が入ったお菓子の箱をプレゼントとしてあげるだけ。菜摘に好意を持っている安藤なら喜んで菜摘がくれた物をあげるだろうと睨んでやる作戦だ。


「食べるなよ? 絶対に箱の中身を開けるなよ?」


 箱のパッケージに書いてある、大阪のクレープロールというお菓子を見て、菜摘は美味しそうに涎を垂らしそうにしていた。

 中身に虫のおもちゃが入っている事を菜摘には内緒にしておく。もし中身が虫まみれだと知ったら、菜摘は気味悪がって決して持たないだろう。


「ヒロ君。私が食べ物を目の前にして食べないと思う? あのナルシスト君に全部あげるのも嫌だから、少し味見を――」

「開けるな!!」


 俺の忠告を無視した菜摘に、つい俺は大きな声で怒鳴ってしまうと、菜摘はびっくりしたようで、肩をビクッとさせていたが、すぐにはんなりとした顔に戻り。


「……成程~。……この箱の中には違うものが入っている。……女の私に見せられない物、つまりナルシスト君にエロ本をあげるんだね~」


 俺が安藤にエロ本をあげるためのカモフラージュだと思い込んだ菜摘。


「男の子だからね~。こう言う物を共有する気持ちは分かるよ~」


 変な誤解をされてしまったが、中が虫だとバレなければいいだろう。後で修正しておくが。

 菜摘は俺にニヤニヤとした表情で見ながら、俺たちは安藤がいると思われる、生徒会兼ね、スクールカースト制度実行委員会も設置されている生徒会室に向かった。


「菜摘。もう一度確認するが、菜摘は今から何をする?」

「生徒会の人と遊んでくればいいんだっけ?」


 菜摘。お前はニワトリか?


「……安藤にお菓子の箱を渡しに――」


 菜摘のマイペースに呆れながら、俺は菜摘の方を見てみるとある事に気が付いた。


「おい。箱はどこにやった?」


 菜摘の奴、たった教室から生徒会室までの間で、見事に箱を無くした。その代わりに菜摘の手には、塩キャラメルパンと、コロッケパンを両手で持っていた。


「急にパンが食べたくなったんだよね~。パンを食べる時に邪魔だったから――痛いよ、ヒロ君?」


 本当に菜摘はマイペース過ぎる……!

 こんな事になるぐらいなら、安藤の目の前まで俺が持っておくべきだった。他の人が見たら、あの箱を誰だってお菓子が入っていると思ってしまうだろう。そして開けて虫がたくさん入っていたら絶叫ものだろう。


「そんなに怒らない怒らない~」


 俺が怒り出す前に、菜摘は俺の顔の間近まで接近させ、そして俺の口に菜摘の食べかけの塩キャラメルパンを突っ込まれた。


「最後まで話は聞こうね、ヒロ君?」


 菜摘に突っ込まれたパンを出して、そして俺がこのパンで菜摘と間接キスをしたと気づいて、少し顔を赤くしてしまうと、菜摘は俺の気持ちを察して可笑しそうに笑うと、菜摘は急に夏服のカッターシャツの下の方のボタンを外して。


「食べる時に邪魔だったから、ここに入れておきました~」


 菜摘の奴、スカートのウエストの部分とお腹の間に箱を挟んで、カッターシャツの下に隠し持っていたらしい。平べったい箱だったから、このような事が出来たのだと思うのだが。


「……と、と言うか、そんな場所に挟んでおくな」

「あれあれ~? もしかしてヒロ君は、私のへそチラで興奮し――」


 変な勘繰りを入れられる前に、菜摘の頭を叩いて菜摘を轟沈させた。スタイルの良い菜摘。すべすべとした肌、そしてちらりと見えたへそを見たら、少し興奮してしまった。


「……ここに、安藤は居ない」


 俺の制服の裾をちょいちょいと引っ張る木村は、窓越しから部屋の中を確認したようだ。俺も様子を見てみると、そもそも部屋の明かりがついていない。どう考えたって不在と考えた方がいいだろう。安藤がいないならこの生徒会室には用は無い。再び安藤を捜す作業に戻ったわけ――


「……誰だよ。……やかましいな」


 生徒会室のドアが開いて、そこには不機嫌そうに俺らを睨む安藤がいた。

 この様子だと安藤は生徒会室を私物化し、そして静かな場所で昼寝をしていたようだ。廊下からの窓越しからは見えない、死角になる場所で寝ていたのだろう。


「……松宮か」


 しかし安藤は菜摘の姿を見た瞬間、一気に目を大きく開いて、菜摘の方に歩み寄っていた。


「俺に用でもあるのか? それなら二人っきりで話そうじゃないか」

「ナルシスト君。これ、ヒロ君から」


 おい! 俺の名前を出したらダメだろ! 菜摘だから安藤は怪しまれずにこの箱を受け取るのに、俺からだと分かると、安藤は警戒して受け取らなくなってしまうじゃないか。


「何を企んでいる?」


 俺からだと分かると、安藤は俺の方を睨んできた。


「まあそんな怪しむなよ。ちょっと前に大阪に行ってな。それで1軍の安藤や猪俣たちのために、土産を買ってきたまでだ。こういう行動は4軍として当たり前じゃないのか?」


 そう嘘をついても、安藤は菜摘から差し出された箱を受け取ろうとはしなかった。


「それとな、その箱はさっきまで菜摘のスカートとお腹で挟んであったものだ。まだ菜摘の温もりが残っているかもしれないぞ?」

「……なら、受け取るしかないな」


 やはり男は変態だ。好きな女子が絡んでくると、男って言う生き物は弱くなる。例え、床に落ちた消しゴムを拾ってくれたとか、ただ名前を呼んでくれるとか。男って言う生き物は小さな事でも嬉しい物だ。


「はい。どうぞ」


 菜摘が安藤に箱を差し出したが、安藤は受け取ろうと手を伸ばす前に。


「受け取る前に、少し話でもしようじゃないか。松宮」

「特に話す事は無いかな?」


 少し決めた顔で菜摘に話しかける安藤だが、すぐに菜摘に顔を逸らされていたが、安藤はめげずに話しかけていた。


「そんな事言わずになあ、今週の日曜日は暇か?」

「残念でした~。日曜日はヒロ君の家でゴロゴロするって決めているんだよね~」


 菜摘の話を聞いた安藤は、俺を妬ましそうに見ていたが、俺がここで早朝に起こされてそれからずっと菜摘の相手をしないといけないと話したら、きっと安藤も嫌な顔をするだろう。


「じゃあ、俺が松宮が好きなパンケーキをご馳走してやるよ。原宿に良い店があるんだが、行かないか?」

「それも無理かな~? ヒロ君と近くのお店でパンケーキを食べる予定が入っているから~」


 安藤のどんな誘いでも、俺と一緒にいると言う理由を付けて断っていた。と言うか、俺はそんな約束は聞いていないぞ。


「……ちっ」


 全ての誘いを断られた安藤は、忌々しそうに俺と木村を見ると。


「4軍の松原、そして木村にペナルティ執行」


 完全に安藤の逆恨みだろう。バッチから放たれる電撃を俺と木村に浴びさせ、電撃の痛みに苦しんでいると。


「松宮。この箱の中身を見てみろよ」


 安藤は中身を知っていたかのように、悠々と箱の蓋を開けて、虫のおもちゃがたくさん入った箱の中身を見せつけていた。


「ひっ!」


 そして箱の中身を見た菜摘は、俺の後ろに隠れてしまった。虫が大の苦手の菜摘は、こんなにびっしりと詰められたおもちゃを見ただけでも、怯えて掃除用具をしまうロッカーの後ろに隠れてしまった。


「これが将来を誓った女にやらせることか? 松原? お前、最低だな」


 それだけは俺も反論が出来なかった。菜摘が大の虫嫌いを知っておいて、菜摘を道具として使ってしまった。安藤を反撃するためにやる行動と言っても、流石に菜摘にやらせるのは最低だ。もし何かのハプニングで安藤にあげる前に菜摘が中身を知ってしまった時、何て言い訳をすればいいのか分からなかった。


「中身が何かは知っていた。嬉しそうに教室で打ち合わせをするのが失敗だったようだな、松原」


 確かに安藤がいない事を確認をしたつもりで木村と打ち合わせをしていたのだが、どうやら話が盛り上がっているうちに安藤が教室に戻り、盗み聞きをしていたようだ。


「俺は別に虫が嫌いでもなく、苦手でもない。普通に虫ぐらいは触れる」


 普通に芋虫のおもちゃを触る安藤。俺たちの予想は大きく外れ、俺たちの安藤への反撃は失敗に終わったようだ。


「松原。こんなセコい手を使わずに堂々と下剋上勝負を仕掛けてこいよ。俺はいくらでも相手になってやるよ。まあ、俺はお前より頭は良いんだ。勝てないと思うが」


 電流がようやく治まった頃に、安藤は痛みを堪えている俺の胸ぐらを掴んで、見下した目をしていた。


「負けるのが恐いのか? ハーレムになった、せっかく仲良くなった女子たちに惨めな姿を見せたくないのか? 嫌われたくないのか? お前、本当にクズだな。最底辺にふさわしい生徒だ」


 安藤にぼろ糞に言われ、俺は何も言い返す事が出来なくなっていた。

 今の出来事は、姑息と言えば姑息。卑怯と言えば卑怯だ。最初の猪俣たちに一泡吹かせたのが爽快で、調子に乗って安藤にも仕掛けてしまった。そうなると、安藤たちが考えた勝負の方が正しいと思えてくる。正当な方法だと思い始めた。


「それでも、松宮はこのクズオタクに好意を持つか?」


 俺を散々否定し、そして俺の評価が下がり切ったところで止めに菜摘に意見を聞く。これだけ俺の事を否定しておけば、菜摘も考え直して安藤に興味を持つと考えたのだろう。


「私のヒロ君の想いは変わらないな~」


 だが菜摘は俺に対する気持ちは変わらなかった。今まで通りに菜摘は俺の横にぴったりとくっついていた。


「ヒロ君は自分の勝手な見解で語らないし、他人を見下すことはしない。それに比べて、ナルシスト君は自分が絶対に正しいと思い込んで、トップにに立って、弱みに握るために絞り出すように相手の悪い所を探して批判する。それって、勉強や運動が出来ない人よりかっこ悪いと思うよ?」


 安藤、猪俣など。兎に角1軍の奴らは優劣をつけて、トップに立ち、高みの見物をしている奴らばかりだ。底辺の気持ちも分からず、ただ俺たちの事を何も知らずにただ悪く言う。それは菜摘の言う通りにカッコ悪いことかもしれない。


「みんなは顔、見た目で決めるって言うけど私は違うかな~。私が思う本当にかっこいい人って言うのは、他人を想い、気遣いが出来て、常に笑っている人。それにすべてに当てはまるのがヒロ君。ナルシスト君には一つも当てはまらないから、私はナルシスト君はどうでもいい。むしろ嫌いだな~」


 最後の方の菜摘は、安藤にあの冷ややかな目で見て、そして唾でも吐き捨てるような勢いで、淡々と話すと。


「今回のヒロ君の行動は、まあ人としてどうかなって点もあるけど、つまりそれをされるって事は、みんなナルシスト君に反感を持っているって事だよ。みんな、この変なカースト制度に賛成じゃないって事。それも気づかないから、貴方はヒロ君に勝てないんだと思うよ」


 菜摘がそう言い切ると、安藤は精神的にダメージを受けたようで、フラフラになり、ずっと掴んでいた胸ぐらを離すと。


「……しろよ」


 かすれながら安藤は何かを話したが、俺はあまりにもかすれていてよく聞こえなかった。


「……勝負しろよ。……俺とお前で、勝負しろよ」


 俺を憎むように見る安藤は、確実に俺と勝負したいと思っているようだ。その目は恐怖を感じるほどの鋭い目だった。プライドをズタズタにされ、菜摘ではなく、何故か俺に怒りの矛先が向けられていた。


「ああ。丁度いい機会だからな」


 俺はRPGでラスボスの前に立っているような感じで、安藤との成敗勝負を受けることにした。


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