現役幼なじみと昔の幼なじみ
俺が小学3年生の時。
クラス替えをすると、神様のいたずらか、また菜摘と田辺と一緒になった。
キャラが強い、またこいつらと一緒なクラスなのか。気を落としている時に、俺は紫苑と出会った。
紫苑とは、3年生で同じクラスになり、2年生まで違うクラスだった俺でも、とにかく明るい、ムードメーカーのような子がいると有名だった。
菜摘、田辺の相手に疲れていたそんな時、紫苑が俺に声をかけて、次第に相談相手になっていき、そこから仲が進展していった。その時間がとても楽しく、更に俺と紫苑は互いに惹かれて、両想いになっていた。
仲良くなって数ヶ月、突然紫苑は海外に引っ越すことになった。親が転勤するからだ。
『あっははは……せっかくマロンと仲良くなって、……このまま仲良しで、マロンのお嫁さんならいいなって思った時に、こんな事になってごめんなさいっ!』
引っ越す前、紫苑は俺にそう告白したが、その頃の俺は女子に好きと言うのが恥ずかしく、それと女子と仲良くしているのが恥ずかしかった。
『そ、そうかよ。俺は紫苑ちゃんと離れるのは寂しいとは思わない。何せ男はな、寂しいと思っちゃダメだから、俺は寂しいとは思わないし、悲しいとも思わない。元気で海外で過ごせよ』
そんな強がり、そんな紫苑と別れるのが寂しくないような事を言って、紫苑は表では俺の言葉で笑いながらも、裏では寂しそうにしているのを、後で気付き、それを気付いた時には紫苑は引っ越していた。
それっきり、紫苑とは音信不通となり、小学生の数ヶ月の出来事、楽しい思い出から、苦い思い出になり、元通りになった菜摘と田辺と過ごしているうちに、すっかりと紫苑の事を忘れていった。
「うんうん。私より小さかったマロンが、今では私より大きくなって……そして、格好良くなっちゃいましたよ~」
「……しお――高村もな。……すっかり大人になって、美人になったな」
マロンと言うあだ名。俺の正義の『マサヨシ』が砕けて行き、マヨ、マヨン、訛ってマロンになって、それが可愛いと言う事になり、紫苑だけマロンと呼ぶようになった。
「マロン? 私の脚に、何かついていますか?」
自然に、紫苑の絶対領域を見ていたようで、紫苑に変に疑われていた。スカートと白ニーソで出来る絶対領域。楠木とはまた違う、素晴らしさがある。
「なるほどですよ……。もしかして、マロンは流行りのニーソが好きなんですねっ!? マロンも、すっかり男の子になって、感激なのですよ~っ! そういう事なら、ずっと見ていてもいいですからね~」
紫苑は、俺の顔を自分の胸の所に抱きかかえて、そして子供のようによしよしと頭を撫でて来た。
ああ……。凄く懐かしい……。菜摘たちの愚痴を聞いてもらった後、こうやって慰めてもらったんだったな……。菜摘と同じぐらいに発達した部分が俺の顔中に当たり、鼻血が出そうなんだが……。
「マロンは私の格好はどう思いますか? 髪をずっと伸ばしてツインテールにしてみました。あと、萌え要素として、ニーソを穿いて、日本の高校生デビューしてみました! 日本ではこれが支流だってママが言っていました!」
紫苑の母親は、日本の高校生に変な誤解をしているようだ。今、紫苑が言ったのはごく一部で、しかもアニメの中だけだ。本当にコスプレの時ぐらいしか、ニーソを穿いている奴を見た事しかない。
「……似合ってる。……特にニーソが」
「ありがとうございます~! 穿いてきた甲斐がありますよ~」
変な目で見られると思ったが、紫苑は全く嫌な顔を一つもせず、俺の言葉を誉め言葉して受け止めていた。
「久しぶり。私の事、覚えてるかな~?」
やはりこういう状況で、俺の幼なじみは黙っていない。
菜摘は以前に見せた冷たい眼差しで、紫苑を睨んでいた。今朝の卒アルの写真で紫苑の事を知らないように俺に聞いてきていたが、やはり菜摘はしっかりと覚えていたようだ。
「クイズですか! ちょっと待ってください! 今から思いだしますので……」
廊下の真ん中に座り込み、座禅のようなポーズを取って考え出す紫苑。
紫苑はスカートと言う事を忘れているのか、スカートの中が俺たちに見えてしまっている。その姿には俺は凝視したかったが、勿論顔を逸らし、そして菜摘ははんなりとした雰囲気のままで紫苑の座禅をした姿を見ていた。
「ヒント、欲しい?」
「……お願いしたいです」
「ヒント。私は小学3年生の時、校庭で走っているといつの間にか新宿御苑に入り込んで、先生に怒られました」
今のヒントで分かったようで、紫苑は急に立ち上がって、菜摘に指を差していた。
「思い出しました! あなたは、マロンにいつも迷惑をかけて、いつもマロンが悩んでいた、あの学校の問題児、松宮菜摘ちゃんだっ!」
「正解~」
そんなことあったな……。菜摘の両親が、必死に学校の先生に謝っていて、その傍らでは菜摘はぼーっとしていた記憶がある。
菜摘の武勇伝を聞いただけで思い出すとは、さすが菜摘だ。小学校の時から、菜摘のマイペースは全く変わらない。今は、尚更悪化しているからな。そんな印象が強いせいか、菜摘の事も覚えているようで、紫苑は菜摘を警戒し、菜摘の手に渡らないように、更に俺の頭を抱えていた。
「……こんなにやつれているって事は、まだマロンに迷惑をかけていたりしますか?」
「迷惑なんてかけていないよ? 私はヒロ君を遅刻させたくないから、毎朝私が早く起きて、ヒロ君を起こしているんだよ~」
菜摘がとんでもない嘘をつくと、それを紫苑は信じてしまい、唖然としていた。
「……あれだけ迷惑をかけていた菜摘ちゃんが、今では立派にマロンに尽くしているのですよ」
過去の菜摘のギャップを受けたのか、俺を優しく床に寝かせたから、そして俺の横で膝を組んで落ち込み始めていた。
「高村。今日、菜摘が起こしに来たのは深夜の3時。夜中に叩き起こされた」
「やっぱり全然変わっていないっ!」
俺の言葉を聞くと、再び元気になった紫苑は、菜摘に立ち向かい合って。
「菜摘ちゃん! そんなにマロンをいじめて楽しいですか!?」
「いじめてなんて酷い事を言うね~」
「どう考えてもいじめっ! 夜中の3時に起こすなんて、マロンを想う人がやる事じゃ――んっ」
「少し落ち着こうか~」
菜摘は紫苑の唇に人差し指をやる、変な勘繰りを入れられたくない時にやる、菜摘が他人を黙らせる行動だ。
「私はヒロ君と一緒にずっと傍にいたいだけ。変な誤解はして欲しくないな~」
そして口止めをされた紫苑は、菜摘の手を鬱陶しく思ったのか、菜摘の腕を払うと、紫苑は腕を組んでドヤ顔をしていた。
「つまり、菜摘ちゃんはマロンを何も思っていない! と言う事は、マロンと付き合っても良いって事ですよねっ! マロン、今日からカップルになりましょう!」
紫苑と付き合う……。つまり、俺も勝ち組になれると言う事か。菜摘に劣らない美少女と付き合うことになるのであれば、俺は喜んで付き合いたいが……。一度、本気で付き合うかって話になったぐらいの仲だったからな。
「紫苑。いきなりは無理だ。もしも、仮に付き合うなら、ちゃんと順序を守ってからだ」
「ですよね~」
意外とあっさりと手を引いた紫苑。もう少しグイグイ来ると思ったんだが。
「マロンは、全然変わらないですね~」
そしていつも菜摘がくっついている俺の腕に、紫苑はくっついてきた。
紫苑の発達したものが俺の腕に伝わって来て、思わずにやけてしまう……。やっぱり、女子にこうやって抱き着かれるのは、男子には嬉しい光景だ。
「マロン! 今日は帰りに、私の家に寄って行きませんか? きっとママも歓迎してくれると思います!」
高村の家がどこにあるのかは知らないが、高村が良いと言うのであれば、俺は行きたくないと言えば嘘になる。
「私もぜひ行きたいな~」
他人の家にも、パンケーキを要望してくるとは、流石菜摘と言ったところだ。
目はにっこりしている菜摘。紫苑に向けている目線は、少し冷たく感じる目をしていた。紫苑を恋のライバルと思ったのだろう。




