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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
幼なじみに頼るのは恥だが、役に立つだろうか。
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菜摘の弱点

 2日間行われた、菜摘と法田との成敗勝負。最後の項目の小テスト勝負で、菜摘は1問だけ正解しただけで負けた。


 それが響いたのか、菜摘は法田に仕掛けられた2日間の成敗勝負に負けた。


 投票では、菜摘は勝っていたらしい。菜摘は4票。それは俺と楠木、木村が投票した物だけだと思っていたが、誰か一人だけ投票した物好きがいるらしい。そして法田は0票だった。

 誰も投票に来ていないと思ったが、まさか誰も投票に見向きもしない、誰も興味が無かったと思われる。投票は自由、もし強制しておけば、勝負の結果はどうなっていたか分からなかったが。


「今日は暑いね~。まるで夏みたいだね~」


 体操服に着替えて、手で汗を拭う菜摘。暑いと言っているが、どことなく心の中が晴れたような、清々しい顔をしていた。


 そして俺は4軍の菜摘が負けたので、校内と学校周りの草むしりと言うボランティア活動と謳っているペナルティが、菜摘に科されていた。


「おーい。雲よりも、下で元気に育っている草を眺めていた方が、楽しいと思うぞ?」

「草はつまらないよ~。微妙に動いている雲を見ている方が楽しいと思うな~」


 本当は菜摘だけなのだが、ここで勝負に勝った法田は、菜摘が自分の言いなりになったのを利用して、安藤の案で、俺と楠木、そして木村までもが強制参加で草むしりをする羽目になったのだ。


「今日はバイトだったのよ……。草むしりして、虫に刺されるぐらいなら、変な目線で見る客を接待したほうがマシよ……」

「……そうなると思って、蚊取り線香持ってきている」

「普通、虫よけスプレーじゃない?」


 こう言った事には、絶対にやる気を出さないと思っていたが、楠木と木村は案の定、嫌々と草むしりしていた。


「今にも死にそうな顔をしているね~。それなら、私はミニスカ、ニーソでやろうかな~?」

「違う意味で、俺の集中力が無くなる」


 ずっと菜摘の絶対領域を見てしまい、そして楠木に摘ままれ、木村にスマホで頭を叩かれているだろう。


「……松宮。……あんたは勝負に負けて悔しくない――って、松宮が一番頑張るのっ!」


 楠木は嫌々言っていても、ちゃんと根っこから雑草を抜いて草むしりをやっていると言うのに、菜摘は相変わらず、雲をじーっと見ていたので、楠木が怒って菜摘の頭を叩いていた。


「負けた事には、悔いはないかな~」


 頭を叩かれて、頭を押さえながら、菜摘は楠木にそう返事をしていた。


 菜摘が勝負に負けたと結果が出ても、菜摘はケロッとした態度のまま、暢気にパンを食べていた。全く悔しがっている、悲しんでいる様子は無かった。


「私はヒロ君の傍が良いから、この結果でいいと思っている。それと、ヒロ君たちの上には立ちたくないからね~」


 もし勝っていたら、菜摘は俺らよりも偉くなるのは確実だ。俺らは、学年でのスクールカーストの底辺の集まりなので、菜摘はその底辺の集団から抜け出すことになる。


 菜摘は俺らと一緒にいたいから、わざと負けたとか……は、無いな。元々、やる気は微塵も無かったからな。


「おい、あれって昨日勝負って言うものをしていた、4軍の松宮だろ? 何で草むしりしてんだ?」

「……もしかして、負けたから、バツでも受けているんじゃね?」


 しばらく黙々と草むしりをしていると、休日に学校に来て部活をしている生徒の会話が聞こえた。


 成敗勝負以降、菜摘はちょっとした有名人となっていた。1年で可愛いマイペースな女子がいると。


「そんで、あれがヒビト君だろ?」

「おーい! 今日は黒いコートを着ていないのか~!?」


 それで俺は、この学校で中二病の痛い奴、ヒビト君と言う変なあだ名がついてしまって、違う意味で俺は有名になっていた。




 学校の校門付近、中庭、そして休憩を挟んで、昼からこの広大な校庭の草むしりをやる事にした。


「……もう、草と地面を見るの、飽きた」


 ずっと草むしりをして心底嫌になったのか、楠木はそう愚痴って、抜いた雑草に八つ当たりするように、地面に思いっきり投げていた。


「……草に罪はない。……こんな命令をした、安藤君たちを思いながら、地面に叩きつければ、結構ストレス発散できる」

「いい考えね」


 そして楠木は、安藤たちを思い浮かべながら、草を地面に叩きつけていた。


「……何で、私たちだけで学校中の草むしりをやらないと――きゃっ!」


 楠木は急に悲鳴を上げて、そして楠木は咄嗟に俺に飛びつき、俺の腕に抱き着いてきた。


「……ど、どうした?」


 楠木に、急に抱き着かれ、そして俺の腕に前と同じく楠木の発達したものが当たり、動揺しながら聞くと。


「……ご、ごめん。……草と同時に、ミミズが急に出て来たから、それでびっくりして」


 確かに、うねうねとしたミミズが楠木の目の前に出てきていた。


「気にすんな。地面を這うだけだから、飛んできたりはしないから、安心しろ」

「それぐらいは分かっている」


 楠木は急に出てきてびっくりしただけのようだ。

 まあ、誰かさんのように苦手ではないようだが……?


「おーい! そんな短距離選手もびっくりな、どうやったら一気に100mをそこまで移動できるんだ~?」


 ほんの数秒まで、菜摘は俺の横にぴったりといたのに、なぜかほんの数秒で100mのコースを走り抜け、菜摘が小さく見えるまで離れていた。


「……ヒロ。……松宮って」

「……虫が苦手?」


 楠木、そして木村が、今の出来事で勘付いたようで、俺にそう聞いてきたので、俺は頷いた。


「……菜摘は、お化けとかホラー映画とかは平気なのに、虫だけは絶対に無理なんだよ」


 菜摘は小さい頃から、虫が大の苦手。そして最大の弱点でもある。


 俺はその時にいなかったのだが、小さい頃、公園で遊んでいたら、頭の上に何かの幼虫、芋虫が頭の上に落ちてきて、そしてその芋虫が服の中に入り、体中を這いずり回った後、セミが顔に止まって、リアルの虫の構造を見て気持ち悪くなった。それから虫はダメになったらしい。

 小さい頃の菜摘は、絵本やアニメの、可愛くディフォルメされた中でしか見たことがない。それでいきなり、リアルの虫なんか見たら絶対に怖いだろう。実際の虫って、結構エグいから、分からん事は無い。


「……い、嫌な季節になったね~」


 そして菜摘は少し動揺しながら戻ってきたが、俺の後ろに隠れたまま辺りを見渡していた。


「……ヒロ君、もういない?」

「今のところは。虫が嫌なら、菜摘も集中してやれ」


 そう言うと、俺の背後で草むしりをし始めた。虫がいないと、菜摘はやる気を出さないのかよ……。


「まあ、私も虫は嫌だし、さっさと終わらせるかな」

「……私も協力するね」


 女同士、菜摘が無視で怖がる気持ちは分かるのだろう。嫌々やっていた楠木と木村も、せっせと草むしりをし始めた。



「ほらよ」

「ありがと、ヒロ君」


 中庭の涼しい風が吹き始めた頃、日が暮れる頃に、何とか草むしりを終えた。

 むしった草は、ごみ集積所に置きに行き、制服に着替えた後、俺は協力してくれた楠木と木村にジュースを奢るのは良いのだが、なぜかこの草むしりをやるきっかけを作った菜摘にジュースを奢らされる事には納得は行かなかったが、頑張ったは頑張ったので、菜摘にもジュースを奢った。


「……こうやって終わると、嫌だったけど何だか楽しかったと思えるのよね」


 楠木がその呟きには、俺も同感だった。

 嫌な事でも、こうやって仲の良い奴らとやると、なんやかんやで楽しかったと思えてくる。もし、俺と菜摘だけだったら、俺は菜摘のマイペースに嫌になり、俺は逃げ出していたかもしれないが。


「またやりたい。とは絶対に言わないけど、ヒロと松宮、木村と一緒に何かをするのは楽しいから、4人でまたどこか行かない? 夏休みも近いし、海とか?」


 もうそんな季節か……。

 楠木の提案に俺は悪いとは思わないが、俺は果たして生きて帰れるのだろうか。


 海。


 海と言えば海水浴、海水浴と言えば水着。水着と言えば、女子の水着。

 そして俺の周りにいる女子のレベル。レベルが高すぎて、俺は海を赤く染めないか、気が付くと、病院に入院していないか心配だ。


「勿論、私はいいよ~。私の水着姿で、ヒロ君を興奮させたいからね~」

「ぬ、抜け駆けはさせないわよ! 松宮より、私の方がヒロの好みの体系なのよ? 松宮より、私の方が魅力がある女子だって、ヒロに教えてあげるんだから!」


 俺をめぐって、菜摘と楠木が火花が散らしていると。


「……私の水着も見たい?」


 俺の耳元でそう囁く木村。


「……木村が良いなら」

「……ふふっ。……いいよ、期待していてね」


 こういった木村の少し悪戯っぽく、お茶目な行動は男心をくすぐる。歳の離れた、高校生とは思えない、あどけない顔を見せる木村は、菜摘や楠木には持っていない可愛さだ。


「あれ? もう私への反論は良いの?」

「……」


 菜摘と楠木が言い争いは、菜摘が勝ったのか、楠木は菜摘の方を見て固まっていた。


「……あ、あのさ。……驚かないでよ?」

「何?」

「松宮の頭に、蜘蛛が乗っているんだけど」


 楠木に言われるまで気が付かなかったが、確かに結構大きめの蜘蛛、ジョロウグモが菜摘の頭に乗っていた。


「……ひ、ヒロ君~!! と、取って~!!」


 菜摘は俺に取らせようとして、俺の元に駆け寄ってきたのが最悪の結果を招いたのかもしれない。

 蜘蛛は、菜摘が駆け出すと、蜘蛛は菜摘の頭からポロリと落ちて、そして菜摘の目の前の道に落ちて。


 ぐしゃ。


 と、菜摘が上履きで蜘蛛を踏んずけて、そして蜘蛛はモザイクレベルのグロさに変わり果てていた。


「……」


 そのグロイ光景を見て、踏んずけた本人の菜摘は、フラフラ足取りで俺に寄りかかると、菜摘は俺の中で気絶してしまった。


 こんな事があったら、尚更菜摘の虫嫌いが深刻化してしまう。

 今の出来事の方が、菜摘にとって、草むしりよりもペナルティだったのかもしれない。


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