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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
幼なじみに頼るのは恥だが、役に立つだろうか。
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メイド喫茶にて

 

 スクールカースト制度が実施されて、数週間経った頃。


 4軍になりたいと言っていた菜摘の願いは叶えられたようで、あの安藤と対立した時の放課後には、菜摘は4軍に降格されていた。俺らと同属になって、1軍が『ペナルティ執行』と言えば、菜摘も電気を受けることになっていた。


 スクールカースト制度が実施されて以降、俺たちの学校は凄く変わった。

 1軍の奴らが威張り散らしていると思いきや、なぜか2軍、3軍の奴らが威張り散らしている訳だ。

 1軍は下手に行動すると降格されると思ってか、大人しく高みの見物をしている。

 しかし2、3軍の奴らは今のところそんな事は無い。俺たち4軍が歩き、4軍のバッチを見た瞬間、汚い物でも見るような顔つきになり、俺らから距離を取る。避けられるぐらいならまだ我慢できるが、流石にゴミを投げられる、罵声を言われるのは正直辛い。


「……こういう所だけだな」


 俺らが落ち着ける場所、それは学校以外の場所だって事だ。

 家でも良いが、家だともれなく菜摘も一緒に付いてくる。菜摘の面倒を俺がずっと見ていないといけないので、全くゆっくり出来ない。


「旦那様~。他に欲しいものはありますか~?」

「……じゃあ、飲み物のおかわりを」

「かしこまりんりんっ! 旦那様のために、紗良、頑張っちゃいます~!」


 俺は菜摘、そして木村と一緒に、楠木が働くアキバのメイド喫茶に来ていた。これは楠木に招待されたので来た訳だが。

 来てみると、メイドの演技を演じているメイド喫茶で働く楠木。俺らは素の楠木を知っているせいか、何故だろう。凄く違和感がある。


「ヒロ君。私もここで働いて、ヒロ君にご奉仕してもいいかな~」

「やめろ。菜摘がここで働いたら、確実に店が潰れる」

「ひどいよ? ヒロ君?」


 ノースリーブの服に、俺を喜ばせるためにまた短いスカートを穿いて、黒ニーソを穿いている菜摘。俺の横の席に座っているので、菜摘の方を見るだけで、足に目が……。

 そ、そんな事よりだ! もしマイペースクイーンの菜摘が、このメイド喫茶で働いたとしたら?

 まず、ずっとぼーっとしていて、注文は聞きに来ない。俺以外の男性に興味なく、絶対に俺以外には奉仕をしない。そして俺にだけ奉仕をして、他の客に妬まれて、俺に向けてナイフやフォークを投げられるだろう。

 菜摘にジト目で見られていると、ジュースを持った楠木がやって来て。


「はい旦那様! 旦那様の為に作った、紗良特製のシュワシュワメロンソーダー! 召し上がれっ!」


 ダメだ……!

 俺は素の楠木の性格を知っているから、このメイドの演技をしている楠木が面白くて、笑いそう……!


「楠木さん」

「どうしたんですか~? お嬢様~?」

「私もここでアルバイトしたいな~」

「それは絶対にやめた方がいい」


 菜摘の発言に、一瞬だけ普通の楠木に戻っていた。どうやら、俺の予想は間違っていなかったようだ。


「……と言うか、聞いてもいいか?」

「何ですか~? 旦那様~?」


 一瞬だけ素の楠木に戻っていたが、すぐにメイド喫茶の店員モードに戻っていた。これがプロの店員って奴だろうか。


「俺にだけ旦那様と呼ばないでくれるか? 俺もご主人様って言ってくれないと、他のご主人様にフォークとナイフを集中砲火される」


 楠木は、このメイド喫茶では、トップって言っていいほど人気がある。

 髪型はポニーテール。黒と白が主体のミニスカメイド服。いつも穿いている黒ニーソも悪くないが、今は白いニーソだ。潤った艶やかな肌で出来る絶対領域。この格好を可愛くないと言う男子がいるだろうか。

 とにかく、めちゃくちゃ可愛いメイドに、俺にだけ旦那様と言われているので、楠木目的で来た他のご主人様が、俺に殺意を向けた目で見ている。


「いいじゃないですか~! こんなカッコいい男性を、旦那様と呼ばないなんて、勿体無い――」

「メニューガード!」


 危なかった……。

 あと1秒でも遅かったら、俺の背中はフォークや、ナイフが刺さっているところだった。メニューには、数十本のナイフとフォークが刺さっていた。


「……ちっ」


 俺がガードしたのが気に入らないのか、楠木目的で来たご主人様は、俺を妬ましく見て、舌打ちをしていた。


「すまんな、楠木。メニューがダメになった」

「気にしないない! メニューは後で交換して、他のご主人様は、あとで紗良が埋めておきますから~」


 おっと。今の出来事で、楠木は他のご主人様に殺意を覚えたようだ。顔は笑顔だが、怒りを堪えて口元をぴくぴくさせていた。


「……ん? どうした、木村」


 気が付くと、俺の前に座っていた、『メイドの愛が詰まったキュンキュンシュークリーム』を食べていた木村が、もう一個置いてあったメニューで顔を隠していた。


「……あそこ」


 木村が指さす所は、今入って来た4人組も男性グループだった。はて、何故木村が顔を隠す必要があるのか。


「お帰りなさいませ、4名のご主人様~」


 他のメイドが接客に当たり、メイドが4人のご主人様を席に案内すると。


「ここがメイド喫茶かよ……。ぶりっ子している女ばかりでキモくね?」

「キモいわ~。こんなキモい女ばかり見て、オタクはブヒブヒ言っているんだろ? それが4軍の塩田、違うか?」


 4軍と言う言葉に、俺と木村、そしてずっと俺の傍から離れないメイド服の楠木は、あの4人の男子グループの言葉に反応した。


「ブルーベリーのソースで、パンケーキを食べるのも悪くないかも~」


 そして関係なしに、マイペースにパンケーキをもぐもぐ食べている菜摘だった。聞きなれた言葉に、少しは反応しろ。


「……木村。……顔を隠した理由って」

「……1年4組の4人。……2軍の榎本、法田、森本。……それで、少しぽっちゃりした人が、4軍の塩田」


 どうやら、あの男子4人は俺たちと同じ境遇、自由川高校の同級生のようだ。人見知りの木村が通りで、メニューで顔を隠すわけだ。


「木村、よく知っていたな。俺なんて、他のクラスの奴なんて全く話したこと無いぞ」

「……情報収集は得意だから」


 これは木村の意外な特技だ。いつもスマホばかり触っているから、自然と調べることが好きになったのかもしれない。


「塩田。俺たち友達だろ? お前の知識で俺らにこのキモい店のルールを教えてくれよ」


 誰が榎本や法田なのかは知らないが、2軍の奴が、塩田の背中を思いっきり叩いて、そして塩田が痛がった反応を見て笑っていた。


「ご主人様、メイドの愛を受け取る方法は決まりましたか?」


 さっき席の案内をしていたメイドが、あの男子グループに注文を伺っていた。

 あのメイドが気の毒と思ってしまう。何事も無ければいいんだが……。


「なあ、塩田。この頭沸いた女、何言ってんの?」

「……これは、注文を聞きに来ただけ」

「そんなら、普通に聞けばいいだろ。何遠回しで聞いちゃってんの? 別にお前のようなキモい女の愛なんていらねえよ~!」


 こいつら、塩田をいじめたいのか、それとも営業妨害をしに来たのか。兎に角、このバカにした高笑いは腹が立つ。


「俺たちさ、塩田と同じのにするわ。さっさと選べよ」

「……じゃあ、メイド特製のガトーショコラを4つ」


 塩田が注文を頼むと、メイドは注文を承ったあと、逃げるようにあの席を後にしていた。頭の沸いてるって言われたら、それは傷つくだろう。


「ああいう客、たまに来るのよね」


 今の光景を見て、メイドの演技を忘れている楠木。やっぱり楠木は、こっちの方がしっくりくる。


「店に支障が出たら嫌だし、さっさと出て行かないかしらね」

「……当分出て行きそうにないぞ」


 あの様子だと、完全に俺たちをバカにしに来たのだろう。4軍と言うおもちゃで、2軍の奴らは完全にこの状況を楽しんでいる。塩田が2軍の奴らを満足させるまで、このバカにした笑いは治まらないだろうし、店は出て行かないと思う。


「……そうだ、松宮」

「何? 私、今はパンケーキを食べることに忙しんだよね~」

「さっき、ここで働きたいとか言っていたわよね? 短時間だけ働かせてあげる」


 さっきまで菜摘が働いたら店が潰れるとか言っていた楠木が、突拍子に変な事を言ってきた。楠木は急にどうしたんだ?


「やっぱりいいかな~。私、今はパンケーキを食べていたい気分なんだよね~」

「少しだけ働いたら、松宮にヒロを奉仕する権利をほんの少しだけ――」

「ぜひやらせて!」


 楠木がそう提案を持ち掛けると、菜摘はパンケーキをそっちのけにして、目をキラキラさせて提案に乗っていた。

 と言う訳で、菜摘はこのメイド喫茶で短時間だけ働くことになった。どうして楠木がそう思ったかは分からないが、何か考えでもあるのだろう。


 菜摘のメイド服か……。

 まあ、菜摘のメイド服を見たくないと言ったら嘘になる。

 楠木のような服装を、菜摘が着たら……。

 黒と白が主体のメイド服。そして菜摘の事だからスカートは短く穿くだろう。そして白のニーソに絶対領域……。


 俺はその菜摘の姿を見たら、絶対に可愛いと言ってしまいそうだ。



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