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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
スクールカーストを実施してもいいですか? ダメですか? けど、実施します。
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波乱と結果

 

「……はい。……では、テストの結果を返します」


 1年2組の担任、女性の先生の吉田先生が、暗くて浮かない顔で、俺たちのテストの結果を持って、教卓の前でそう言った。

 運命の中間テストを終え、そしてテストが終わって2日後の放課後。俺たちの命運が懸かったテストが帰ってきたわけだ。


「じゃあ、出席番号から取りに来てね。受け取ったら、速やかに戻るように」


 そして1軍の安藤から、テストを受け取りに行き、淡々とテストの返却が行われて、あっという間に俺の出番になった。

 先生からテストを受け取って、俺は自分のテストの結果を見た。

 自信はある方で、あの勉強会で、楠木たちが帰っても、菜摘が俺と遊ぼうとおねだりしてきても、俺はそれを一向に気にせず、家にすぐに帰って、今までの倍の量でテスト勉強をした。きっと、4軍になるような点数にはなっていないはずだ。


「……よし」


 テストの結果を見ると、数学が60点で少し低いぐらいだったが、他は80点以上で中々の好成績だった。これなら、2軍は無理かもしれないが、4軍は免れるだろう。


「えっと、これから導入される、自由川高校のスクールカースト制度だけど、生徒一人一人に位が分かるのは、明日の朝、玄関に順位が貼り出されると言う事なので、順位に関しては、明日までお待ちくださいって事です」


 吉田先生は、俺たちを不安がらせないように、無理に作り笑いをして、俺たちのこのよどんだ空気を払拭しようとしていた。


「……えっと」


 先生が明るい空気を作ろうとしても、俺たちのクラスは静かなままだった。


「……先生も生徒にこんな辛い思いをさせたくない。けど、校長の方針で決まった事だから、先生たちもそれを逆らうことは出来ない。……申し訳ありません」


 吉田先生は何も悪くない。だが、俺らのこの緊迫した雰囲気を見て、先生は俺たちに頭を下げるとチャイムが鳴り、今日はこれで学校は終わりだ。


「……」


 先生が出て行くと、教室は暫く無音だった。そして暫くして、部活に行く人は大きなカバンや、部活の道具を持ってそそくさと教室を出て行った。


「松原。また明日な」

「……おう。部活頑張れよ」


 部活を色々と悩んだ結果、野球部に入った村田。女子マネージャーに可愛い女子がいたそうで、仲良くなりたいと言う不純な動機で、野球部に入っていた。


 村田にそう言うと、恒例のように楠木が俺の前の藤田の席に足を組んで座ってきた。


「あ、ヒロ、また私の足を見てたでしょ?」

「……見てない」

「バレバレ。ま、ヒロならいいけどさ」


 チラ見程度で、歩いてくる楠木のニーソを見ていたんだが、楠木には気付かれていたようだ。

 あの日以降も、楠木は本当に毎日ニーソを穿いてきている。スタイルの良い楠木が、素晴らしい絶対領域を作ってくれるのは、本当に嬉しくてたまらない。本当に素晴らしいです、はい。

 もう、俺は楠木には、ミニスカニーソ好きの変態だと思われているようだし、そう思われていたほうがやましい気持ちで見なくていいかもしれない。


「ヒロ。どうだった?」

「4軍は免れるだろうと思う結果だった」


 鼻を高くして言うと、楠木はあんぐりしていた。


「……ヒロって、頭良いの? ……ニーソ好きのむっつりさんなのに?」

「ニーソ好きだって、頭の良い奴ぐらいいるだろ」


 俺が高得点を取っているのが、意外だったようで、暫く頭を抱え込んだ後、俺に恥ずかしそうにテストの答案を見せてきた。


「……これは、また悲惨な結果だな」


 楠木は、赤点が3つ。赤点ではない教科も、ギリギリセーフと言う結果だった。


「……まさかと思うが、4軍になるためのワザとか?」

「精一杯頑張った結果よ」


 まあ、0点を取るのは簡単だが、楠木のようにほとんど30点や40点を取ると言うのは、やろうと思ってできる事ではない。本当に楠木は勉強が出来ないようだ。


「ヒロ君、見て見て~」

「……頭に胸を乗せるな」


 本のさっきまでいなかったはずの菜摘が、いつものように突然と現れて、そして俺の後ろから無神経に、頭に菜摘の大きく発育した胸を乗せてきて、すべて赤点の答案を俺に見せてきたわけだ。


「……菜摘。……寝ていただろ?」

「テストの時間って、どうしても眠くなるんだよね~」


 菜摘の答案用紙には、ペンを持ちながらウトウトしていたことが分かる、ミミズが走ったようなひょろひょろとした線が残っていた。


「……まあ、頑張った方だな」


 菜摘の答案を見てみると、俺が土曜日に教えた所の問題はすべて正解していた。結果は赤点だが、菜摘にしては頑張った方だ。今まで全部が0点と言う事は、よくあったので、例え一桁の点数でも、いい成績だと思ってしまう。


「ヒロ君」

「何だ?」

「私はとっても頑張ったよ……?」


 菜摘は俺の横にしゃがんで、頭を俺に差し出していた。俺の頭にあった柔らかい感触が無くなってしまったのは、少し残念だと思いながらも。


「はいはい。よく頑張りましたっと」

「えへへっ……」


 この仕草は、俺に褒められて欲しくて、頭を撫でて欲しいサインだ。全部0点だったら、菜摘としばらく一緒に過ごさないと言うお仕置きがあったんだが。


「ヒ、ヒロ! わ、私にもやって……欲しいかな……?」

「楠木さん。これは、幼なじみの特権で出来ることなんだよ~。ヒロ君が、クラスの中で、私以外の頭を撫でるなんて――」


 菜摘がそんな事を言っているが、俺は楠木の頭を撫でると、楠木は頬を赤く染めて、じっとして俺に撫でられ続けていた。


「……ヒロ君~!」


 これは楠木に対しての嫉妬なのか、菜摘は頬を膨らませて、そして俺の背中をポカポカと叩いていると。


「安藤。お前さ、ふざけんなよ?」


 教室の前で、安藤を取り囲む他の1軍のメンバーがいた。それで佐村が、安藤に詰め寄っていた。


「また、一波乱ありそうね」

「……出るか」


 楠木もこの緊迫した空気が危険だと思ったのか、席を立って鞄を持って教室から出ようとしていた。

 ずっとこの教室にいたら、1軍の騒動に巻き込まれそうだ。ただえさえ、クラスの中では立場が弱い俺らが、さっきみたいに女子2人の頭を撫でていたら、機嫌の悪い猪俣に膝蹴りでも食らわされそうだ。


「菜摘。今日の帰りに、駅ナカのパンケーキでも食うか? テストで一応頑張ったご褒美だ」

「……今日は、アイスの気分」

「菜摘の食いたいものを奢るから、今日は帰るぞ」


 さっきまで俺の背中を叩き続けていたが、奢ると言うと、いつものやんわりとした顔になり、そして俺の腕にくっついて来ようとした時、1軍の安藤が。


「ふざけてる? 俺はふざけたつもりはないぞ」

「その態度がふざけてんだよ!」


 佐村が安藤の胸ぐらを掴み、殴ろうとしたが、安藤は。


「これは減点対象だな。佐村、お前は3軍な」

「てめえに何の権限があんだよ!」

「言わなかったか? 俺はこれからのスクールカースト制度の実行委員長。実行委員長に手をあげてみろよ、お前なんてすぐに降格させるぞ?」


 安藤が佐村を脅すと、佐村は大人しく安藤を解放した。

 カースト制度の実行委員長が相手になると、流石に現時点で1軍の佐村だって、猪俣も手をあげられない。ここで逆らえば、確実に明日の公表に悪影響を及ぼす可能性が高い。


「醜いと思わないか? あのデブをいじめていたこと、渡邊を不登校に追いやった事、いつも佐村が、楠木と仲良くしていた松原を妬んでいたこと。俺たちは高校生だ、もう中学生じゃないんだよ。そんなまだ中学生気分の奴らと同族になるのが、俺は嫌なんだよ」


 つい最近まで、安藤だって楽しそうに佐村と一緒に塚本をいじめていた。一緒に1軍の奴らとワイワイやっていたし、仲良さそうだった。

 だがこの短期間に、安藤は別人のようになり、偏見で語るような、ちゃらちゃらとした考え方が、今ではしっかりとした考えとなっていた。こうなったのは、安藤が生徒会長の、烏丸先輩と話して以降だ。


 一体、安藤は生徒会長に何を吹き込まれたんだ……?


「分かったか? お前らのように暇じゃないんだ。俺は忙しんだ。お前らみたいに、帰り道にゲーセンや買い食いするだけしか出来ない能無しじゃない。これから明日の結果発表の準備をしないといけないんだよ」


 そして安藤は教室を出るかと思っていたが、何故か俺たちの方に歩いて来て。


「松宮」


 何故か俺の腕にくっついている菜摘に、安藤は話しかけていた。


「明日の結果、楽しみにしておけよ」

「そういう事なら、楽しみにしておきます~」


 菜摘にそれだけを言いに来ただけのようで、俺と楠木をキッと睨んだ後、安藤は教室の外で待っていた、見知らぬ顔の生徒と合流し、廊下を歩いて行った。


「何なの、あいつ」

「知らないわよ。春馬の奴、何かカッコつけたくて、一匹狼ぶっているんじゃないの?」


 以前の出来事で、猪俣と安藤の中には確執が出来たようで、猪俣も安藤に腹を立てているようだ。佐村も安藤の今の態度で、二人の関係に亀裂が入った様子だ。


「春馬なんて放っておいてさ、私たちは私たちらしく、能無しメンバーでカラオケでも行きましょ」

「いいじゃん。何なら、他の奴らも誘おうぜ」


 他の奴を誘おうと言っておきながらも、ずっと今の光景を見ていた俺らには声はかからなかった。まあ行きたくはないが、猪俣と安藤は日下部も入れて3人は教室を出て行った。


「……行くか」


 取りあえず、何も起きなかったことに安心して、俺たちも教室を出て、菜摘は俺にくっついたまま歩き、楠木も俺の横にぴったりと歩いていき、帰り道にあったアイスクリームの店に立ち寄って、菜摘と楠木の分のアイスを奢って、そして俺も明日から施行される、学校を巻き込んだスクールカースト制度に不安に思いながら、明日の事を忘れているような、幸せそうな顔でアイスを舐めている女子2人の顔を見ていた。





 そして、運命の日。


「おはよ。ヒロ、松宮」


 いつも通りに菜摘と電車で通学し、そして高校の最寄り駅に降りて改札口を出ると、楠木がスマホをいじりながら待っていて、俺らが出て来たことに気が付くと、俺と菜摘に挨拶してきた。


「ついに来たわね」

「……そうだな」


 楠木は寒くの無いはずなのに、若干体が震えているようだった。緊張しているのか、それとも恐怖で震えているのか。


「今日って、何かあったっけ?」


 そんな素っ頓狂な事を言っている菜摘の言葉に、俺と楠木は駅の券売機に頭をぶつけた。


「……昨日、散々言い聞かせただろ? ……今日から、学校を巻き込んだスクールカースト制度が始まるって。菜摘も、今日から4軍になっているのかもしれないんだぞ!?」

「お~。そうだったね~。私は何になっているのか、楽しみだな~」


 菜摘は絶対にこの状況を分かっていない。多分、菜摘だけがこの状況にワクワクしているだろう。

 それから、楠木と菜摘と一緒に学校に歩くと、玄関にはこれ以上に無いと言う人で溢れていた。

 一斉に自分の順位を見て、見終わった人は、暗い表情をしているか、それか受験に受かったような凄く喜んでいていた。


「……変な光景だ」


 桜が咲いた、マフラーを巻いて、同じ中学の奴らと喜んでいる高校の玄関先の光景は、春先に見られる。

 だが、今はもうすぐ6月。衣替えの季節、ちらほらと半袖の姿が見られると言うのに、受験の合格発表の時のように、喜んでいる光景は、本当におかしな光景だった。


「待っているのは時間がかかるから、強引にでも割って入っていくか」

「了解。ヒロ、頼んだ!」

「……俺が先頭ですか」


 まあ、俺が最初に入らないといけないのは分かっていたが、楠木に肩に手を置かれて頼られるのも悪くない。


「ヒロ君。私はここでパンを食べて待っている――」

「菜摘も来るんだよ……!」


 こんな人ごみだと、菜摘は確実に迷子になる。知らぬ間に校門を出て、近くの喫茶店でティーブレイクでもしている光景が想像できてしまう。

 と言うか、俺が口で菜摘の順位を言っても、菜摘は信じないだろう。クラス分けの時でも、菜摘は俺と別々のクラスになっていることを絶対に信じようとしなかった。もし俺が3軍で菜摘が4軍となっていたら、菜摘は絶対に信じないだろう。


 菜摘は俺の腕にくっついて、そして大勢の人をかき分けて、何とか玄関に張り出されている掲示板の前についた。


「……って、ここは3年か!」


 やっとの思いで着いたと思ったら、そこは3年生の順位が張り出されているところだった。1年生となると、正反対にあるだろう。

 再び人ごみをかき分けて、やっとの思いで1年生のところに着いたので、俺はすぐに自分の名前を探した。

 1軍は無いだろうと思って、1軍の所は見ないで、まずは2軍。だが俺の名前は無い。

 そして3軍。だがそこにも俺の名前がない。

 まさかと思って、俺は4軍の方を見てみると。


「……4軍……かよ!」


 俺らの学年で、全員210人いる。

 そして名簿の一番最後の所、210位の所に、俺の名前があり、そして俺より一つ上には、楠木の名前。そして楠木と同じ順位で、木村の名前もあった。


「……」


 俺の腕にくっついている菜摘は、冷めた目で1軍の方を見ていたので、俺は見向きもしなかった1軍の方を見てみると、1軍の所には、なぜか菜摘の名前が書かれていた。



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