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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
スクールカーストを実施してもいいですか? ダメですか? けど、実施します。
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スクールカースト崩壊

 

「……余計、状況が悪化したじゃない」


 俺たちは集会が終わると体育館から出て、教室で俺の横に椅子を持って愚痴りながら座っている楠木。スマホで何か検索して、今日で懐いてしまった木村。そして、俺の前の席では、あんな事を告げられたにも関わらず、呑気にパンを食べている菜摘がいた。


「ヒロ君。どうしてみんな暗い顔をしているの?」

「……菜摘。……お前は、菜摘以外の人類が滅んでも、一人でやっていけるな」

「それは無理かな~。私、ヒロ君がいないと、食欲がわかないね~」


 食欲が無くても、生きていけるみたいだ。


「……いいか菜摘? 来週のテストで、菜摘の高校生活が天国となるか、それとも地獄となるか。命運が懸かっているんだ」


 俺たちの通う自由川高校の生徒会長、烏丸光徳先輩が全校生徒、全先生に宣言していた。


『この自由川高校、全学年、全生徒にスクールカースト制度を運用することを決めた』


 会長は言ってやった感を出して、メガネをクイっと上げて、そう宣言していた。


「……まあ、私たちにとってはありがたい話よね。……もしかしたら、4軍から抜け出せるかもしれないって事でしょ?」

「そうだな」


 会長は全校生徒に資料を配り、そして俺も一通りに目を通しながら、会長の説明を聞いた。


 全学年で行うことになったスクールカースト制度。

 各学年ごとに分かれてやるが、制度に関しては、俺たちがやって来たスクールカーストとあまり変わらない。

 1軍が偉く、そして4軍が一番弱くて立場も弱い。4軍はどのような命令も聞き入れ、上位の人、先生の手伝いにも積極的に参加しないといけない。

 だが、1軍もずっと威張り散らすことは出来ない。1軍は成績も良く、人柄、下位の位の生徒の手本になるよう、日々行動しないといけない。もし4軍を故意にいじめ、1軍の尊厳にかかわるようなことをすれば、即降格となる。そこがちょっと違う。

 今回のカースト制度の位置決めは、1軍の好き嫌いで決まる訳ではなく、ちゃんと考査して決める。


 まずは成績。

 成績、つまり日頃のテストの結果だ。好成績を残すとプラスになり、赤点や、悪い成績を残すと、マイナス点となる。


 2つ目は容姿。

 これは俺らの時と全く同じ。

 イケメン、美女は優遇され、そしてブスや、肥満体型の生徒は冷遇され、マイナス点となる。


 3つ目は人柄、つまり人間性だ。


 明るい性格、何事に積極的に行動する行動性、いじめはしない心優しい性格。委員会に参加しているか、部活動に取り組んでいるか。それらがプラス点となる。だが、根暗、消極的な性格、いじめ上等、帰宅部の奴らはマイナス点。


「相変わらず、俺たちには厳しいな」

「本当よ。アニメの何がダメなのよ」


 そして何故か、アニメ、ゲームオタクは特にマイナスと書かれてあったのが一番気に入らなかった。俺の呟きに楠木が賛同していた。


「……そう言えば、楠木は何のアニメを見るんだ?」

「そんな見ていないわよ。私は、うたの王子様とか、甲冑乱世。あとは、面白かったらヒロが好きそうな、ラブコメ系も見る」

「ほう。なら、ラノベ原作の何のアニメが好きなんだ?」


 やはり女子向けのアニメを見るんだな。うたの王子様、甲冑乱世は女子に人気のアニメだ。俺はあまりそう言うのは見ない。

 俺みたいに、生粋のオタクではないようなので、きっと最近入っていた『すべてゼロから始める漁師生活』とか、『ソードアーチャーストーリー』など、有名な物を上げるだろう――


「何だっけ? ……確か、『俺の友達の彼女が可愛くてしょうがないんだが』、と言うのが、一番面白かった」

「同志っ!」

「ひゃっ、ひゃい!」


 まさか、俺友を上げてくるとは。楠木って、結構昔からのアニメオタクだな? つい嬉しくて、楠木の肩を掴むと、楠木は顔中が真っ赤になった。


「楠木は高間アリサか、四ノ宮ルリ。どっち好きだ?」

「わ、私はルリちゃんかな……。主人公に面倒見が良くて、それでアリサと喧嘩した時、主人公の背中を押してあげた優しい所。そういう所が良いと思う……」


 こんなに楠木と気が合うとは……。もっと早く、楠木と出会っていたかった……!


「……」

「木村は、マニアックだな……」


 木村は、無言で新井ちとせの画像を見せてきた。

 新井ちとせも、俺友のキャラクター。普段は地味で学校に行っているが、本当は売れてるモデル。ちとせの正体を知ってしまった主人公は、半強制的に、付き合うことになる。ちとせは結構好き嫌い分かれるので、木村みたいに好きと言うのは、俺の周りでは初めて聞いた。


「じゃあ、ヒロはどっちなの?」

「四ノ宮ルリは、俺の嫁――」


 横に立ってパンを食べている菜摘が、俺にアイアンクロウをしてきそうだったので。


「って思いたいぐらい、とても魅力のあるヒロインだと思っている」


 そう言い直すと、菜摘は再びパンを食べ始め、ここから先生が来るまで、俺友について語ろうと思った時だった。



「あんた、何考えてんのよっ!!」



 廊下の方から、皆がびっくりするほどの大きな怒鳴り声が聞こえて来た。


「……今の声、猪俣か?」

「……そうね。……誰よ、1軍の猪俣を機嫌悪くさせたのは」


 楠木が野次馬のように廊下の様子を伺おうとして、教室の扉からひょっこりと顔を出して、様子を伺ってみると、楠木は俺の方に手招きをしていたので、俺は面倒だと思いながらも、楠木の横に行った。


「……何だよ。……猪俣に絡まれるのはごめんだそ」

「……見つからなければ平気よ。……ほら、見て」


 廊下には、廊下の壁に押し付けられ、胸ぐらを掴まれている安藤と、そして凄い顔で安藤を睨む猪俣がいた。


「……そりゃそうだよな」


 そしてあの集会で、俺たちのクラスではもう一つ衝撃を受けていた。



 それは、安藤がこのスクールカースト制度の実行委員会の会長に抜擢されていた事だ。



 きっと、安藤が会長に話したのだろう。どういう関係で知り合ったのかは知らないが、安藤は会長に気に入られて、猪俣よりさらに上の位についたようだ。


「春馬。私は、クラスだけでいいの。他のクラスも巻き込んだら、つまらないじゃないっ!!」

「うるせえな。あ、あとさ、手、離してくれるか? 猪俣の近くにいると、すっげー香水臭いんだよ。不快不快、便所の中にいるのと変わんないんだよ」


 猪俣は安藤を解放し、安藤は猪俣の前から離れようとしていたが、猪俣が安藤の肩を掴んでいた。


「なあ猪俣。入学式の時に言っていたよな? 冴えてる猪俣と、冴えていない根暗な女。俺みたいにカッコいい男に、デブでキモオタの男。そいつらと一緒って言うのが嫌だから、優劣をつけて身分を明確化にするって」

「……言ったわよ」

「そういう事だよ」


 そして猪俣の手を払い除けた安藤は、猪俣を鋭い目つきで睨んだ。


「俺もその理由で烏丸さんに相談したんだよ。ハエのようにまとわりつく鬱陶しい女。何もしていないのに、異様に女子にモテるあそこで盗み見ているバカ共。お前と松原と同族って言うのが、俺もカースト制度の中で暮らしていると、嫌に思っただけだ」


 安藤に俺の名前を呼ばれると、俺と楠木は咄嗟に扉の裏に隠れた。どうやら安藤には気付かれていたようだ。


「あとさ、俺の事を馴れ馴れしく呼ぶな。ブス」


 猪俣にそう言い放った後、安藤は見た事ない、きっと他のクラスの奴らで、ワイワイ楽しく歩いて行った。


 今の状況を見ると、安藤と猪俣の関係は崩壊した。つまり、今回の出来事で俺らのクラスのスクールカースト制度は崩壊したって事だ。

 だが、俺はこんな学校を巻き込んだ事になるぐらいなら、クラス内で馬車馬のように、1軍の言いなりになっていたほうが良かったのかもしれない。


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