表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/175

問題だらけの親子

 

「ヒロ君。朝ですよ~。起きて~」


 日付が変わった頃に、自分のベッドの中に入り、ようやく寝れるかと思ったら、すぐに俺の耳元で、小声で起こしに来る人がいた。

 この起こし方は、菜摘ではない。菜摘は、俺が目を覚ますまで声をかけない。おふくろは、そもそも起こしに来ないので、考えられるのはただ一人。


「……今度は何の用ですか、美冬さん?」


 早朝の4時に俺を起こしに来たのは、菜摘の母親の美冬さん。自分の予定通りにならないと、強引な手を使って自分のペースに合わせようとする、菜摘並みに厄介な人だ。こう言った行動は、菜摘と本当にそっくりだ。


「ヒロ君は、菜摘と一緒にしないの?」

「……何の話ですか?」

「菜摘、一人でランニングしに行ったの」


 菜摘は、学校帰りにランニングをしている。まあ、日中はあれだけお菓子や菓子パンを食べているからな。昨日は帰りも遅く、そして美冬さんがいたから、夜のランニングが出来なかったから、早朝に起きて、走りに行ったのだろう。


「ここだけの話。ヒロ君は、まだ菜摘の事が好き?」


 急にそんな事を聞かれたので、俺はむせた。

 生まれた時から菜摘とはずっと一緒。幼稚園の頃は、菜摘が本気で好きで、折り紙で作った指輪を渡したぐらいだ。だが、年月が過ぎて行くうちに、菜摘への見方も変わり、ただのマイペースな幼なじみと言うイメージしかなかった。

 見た目、おっとりとした雰囲気。菜摘は年頃の男子高校生にはモテる、可愛い女子高生になっていた。


「……どうでしょうね」


 俺は美冬さんの問いかけに、曖昧な回答をした。

 菜摘は、確かに可愛い。だが、今の菜摘をどう思うのか、俺自身にも分からない。


「そっか」


 今の俺の回答で納得したのか、これ以上に深い事は聞こうとしなかった。これは俺も助かる、あまり俺と菜摘の関係を模索されても、曖昧な回答しか出来ないだろう。


「ヒロ君に聞きたい事があります」

「何ですか?」

「ヒロ君と菜摘が通っている高校って、突然保護者が来ても、見学させてもらえると思う?」

「無理だと思います」


 俺たちが通う学校は、普通の高校ではない。それは、スクールカースト制度と言う、おかしな制度があるからだ。

 一応、保護者にもスクールカースト制度がある事は知らされている。成績、生活態度を数値化して、1軍から4軍に一人一人を振り分けて、身分を明らかにする。学力向上、学校全体の風紀を良くし、ペナルティも教師のみが許されて、校則を破った際にペナルティ執行としか言われていない。

 けど、それは殆どが嘘。烏丸親子が学校を私物化し、校長よりも偉い立場になっている。階位の振り分けは、風紀をさらに悪化させ、ペナルティは主に生徒が執行し、1軍の奴らが威張り、俺たち4軍は肩身の狭い思いをしながら過ごしている。そして保護者が、いきなり学校を訪問と言ったら、先生も困惑するだろうし、まず生徒会長の烏丸先輩が許可しないだろう。


「保護者会にも参加出来ていないから、この機会に菜摘の事を知ろうかなっと思ったんだけど、仕方ない……」


 諦めてくれたようで、ようやく俺の部屋から美冬さんは出て行った。ようやく出て行ってくれたので、再びスマホのアラームが鳴るまで、しばらく寝ようと思い、再び布団をかぶって、目を瞑った数分後。


「ヒロ君。まだ話は終わっていませんよ~」


 せっかくかぶった掛布団を剥がされた。どうやらまた美冬さんが部屋に入ってきたようで、まだ俺に用があるようだ。流石の俺も我慢の限界だ。菜摘のように締め出した方が良さそうだ――


「これなら、大丈夫と思いますか?」

「歳を考えてください……」


 恐らく菜摘の制服を勝手に借りて来たのだろう。自由川高校の制服を着た美冬さんの姿があった。美冬さんの見た目は若いので、3年生と偽れば奇跡的にバレないかもしれないが、高校生の娘を持つ親が、こんな事を平気にしないで欲しい。


「制服を着たって、すぐにバレると思いますよ」

「今日の予定には、菜摘の通う学校を見学するって予定が決まっていますから、これが実行出来ないとなると、ヒロ君の皮をかぶって、学校に潜入するしかない――」


 そう言って、ポケットからスタンガンを取り出そうとしていた。このままでは、俺は美冬さんに殺されてしまうので、俺はまずは学校に一報を入れてから考えて欲しいと言ってから、この場を何とか乗り切った。




「菜摘。今日から授業中の居眠りを禁止。菓子パンなど、間食する事も禁止。放課後は図書室、もしくは家に帰って勉強会だからな」

「せめて菓子パンは許可してほしいな~」


 結局寝ることは出来ず、そのまま学校に行く事にした。菜摘とは俺の家の玄関先で合流して、菜摘と共に学校に向けて歩いていた。自分が危機的な状況だと言うのに、マイペースな幼なじみはグミを食べながら歩いていた。


「アメとムチだよ? あまり厳しすぎると、私は勉強しないかもね~」

「美冬さんと岡山に行きたいと言うのなら、俺は何も言わいだだたっ!」

「ヒロ君。それは本気で言っているの?」


 頬を膨らませて、菜摘は俺の頬を思いっきりつねった。爪が頬の肉に食い込むほど、本気の力でつねっているので、痛くて涙が出てきた。


「菜摘こそ、自分の状況が分かっているのか?」

「分かっているよ? これからもヒロ君と一緒にいたければ、もっとヒロ君とくっつけって言うんだよね~」

「何も分かっていない……」


 自分が危機的な状況だと言うのに、菜摘は平常運転だ。


「来週には中間テストがある。それで70点以上取らないと、菜摘は俺たちとおさらばしないといけない。菜摘の意見を尊重しないで、勝手に連れて行くのは俺も納得出来ない。だから、俺たちと別れたくなければ、菜摘は受験の時みたいに本気を出してほしい」

「頑張ってみるね~」


 ずっとグミを食べ続けている菜摘は、本当に分かっているのだろうか。


「菜摘。正弦定理とは?」

「国語の問題かな~?」

「数学だ」


 ダメだ。もしかしたら、最初から教えないといけないかもしれない。とてもじゃないが、俺だけでは教えきれないし、あと一週間で菜摘が覚えると思えない。となると、俺と菜摘が離れてしまう、5組にいる時にも、教えないといけないかもしれない。

 俺の知り合いの中で、一番勉強が出来るのは元トップの葛城だ。今でもすべての教科で満点を取り、定期テストではいつも1位を取っている。だが、葛城は4組の生徒だ。わざわざ4組から5組に来てもらって、数分の休み時間に教えてもらうのは、大変だろう。


「菜摘。数学の法則を国語と勘違いしている時点で、状況は最悪。この調子だと、ずっと俺が菜摘に勉強を教えないといけない状況だ。だが、毎回の休み時間に俺が菜摘の所に行くのは大変だ」

「それなら、私が行くよ~」

「どうせ、菓子パンぐらいしか持ってこないだろ」


 菜摘は、毎日のように俺のクラスにやって来るので、毎回俺の所に来て、勉強を教えてもらう事は反対しないだろうが、勉強道具を持ってくるとは思えない。


「俺が見ていられない時間は、菜摘と親交のある、5組のトップ、斉藤にお願いしようと思う……って、不満か?」


 斉藤の名前が出た途端、菜摘の表情は一気に嫌そうな顔になった。菜摘はそんなに斉藤の事が苦手なのだろうか。


「斉藤に勉強を教わったら、もしかしたらお菓子をくれるかもしれないな~?」

「そう言う事なら、教わってみようかな~」


 菜摘にアメを与えてみたら、すぐに食いついた。

 だが、ここで一つ問題が出来てしまった。俺は斉藤と話した事は無い。菜摘と入れ替わってしまった、菜摘の姿で話しただけで、松原正義の姿ではあまり話したことがない。少し気が強い一面があるので、俺のお願いを聞いてくれるとは限らないだろう。


「つまり、斉藤さんと話す機会を設けて欲しいって事ね? 松原君?」

「どわっ!!」


 家から歩き、そして最寄りの駅に着いたところで、何故か葛城がいつの間にか俺たちの横を歩いていた。


「どうして葛城がいるんだよ⁉」

「今日、会長さんと面談するんじゃないの?」


 そう言えば忘れていた。美冬さんの襲来によって、生徒会長と面談すことをすっかり忘れていた。


「その事で、話をしながら、松原君とデートしようかと思ったのだけど……。まさか、斉藤さんにも手を出したいとは、私も予想外。ねえ、斉藤さんのどこが気に入った――」


 菜摘や楠木、木村、紫苑がいるのにも関わらず、新たな女子生徒に興味を持ったと勘違いしている葛城の頭をチョップした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ