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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
スクールカーストを実施してもいいですか? ダメですか? けど、実施します。
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木村が話さない理由

 屋上の扉の前で、俺と楠木はすごく良い雰囲気になっていた。

 顔を赤くして、目をウルウルさせ、少し呼吸が早い楠木。


「……私、ヒロの事が――」


 異性に告白しようとする時に使うフレーズを、俺に言おうとした時に、まさかの展開。

 スマホを経由して、それで翻訳サイトの音声機能を使って話そうとする女子、4軍の木村が冷めた目で俺と楠木を見ていた。


『イチャイチャ、するなら、他所で、やれ』


 きっと一人で屋上にいたのだろう。あの教室では肩身が狭い木村。折角羽を伸ばせる憩いの場だと言うのに、俺と楠木が騒がしくしていたから、こうやって機嫌悪そうにしているのだろう。


『リア充、滅べ』


 どうやら、一人の時間を邪魔されたから怒ったわけではなく、俺と楠木がいちゃついている光景が、気に入らないようだ。


「一人飯だったか? それは邪魔して悪かった」


 木村の頬に赤いジャム、きっとイチゴジャムがついていた。さっきまでパンでも食っていたのだろう。そう聞くと、木村は頷くことなく、屋上の扉を閉めてしまった。木村の気に障る事でも言っただろうか?


「やっぱり感じ悪いわね」


 俺に肩を寄せたまま、楠木はさっきまで木村が立っていた場所を睨んでいた。


「ま、まあ。木村は私たちと関わろうとはしないようだし、ヒ、ヒロさえよければ、わ。私たちだけで、ご、ごごごごごごごごごごご……」


 どこかの漫画のような、スタンドが出てきそうなの音を口に出している楠木。俺と一緒にご飯を食べないかと、誘おうとしたんだと思うんだが、俺を意識しすぎて、こうなってしまったのだろう。


『相変わらず、イチャイチャ、して、いますね。マジで、リア充は、滅べ』


 一人で屋上の広場に戻ったのかと思ったが、木村はスマホで使って、俺らにそう言うと、楠木とは反対の俺の横に座って来た。


「アンタは一人でいたいんじゃないの?」


 木村にまたも邪魔された楠木は、木村の方を睨んでいた。


『リア充は、滅べ。そのために、私は、あなたたちの、リア充、空間をぶち壊すために、仕方なく、ここにいる。二人が、いちゃつかせ、ないように』


 スマホの音声機能で話した後、木村はすぐに菓子パンを食べ始めていた。


「菓子パン一個だけか? それで足りるのか?」

「……」


 木村は、俺の質問に返答しない。やはり、菓子パンを当たり前のように10個以上食べている、菜摘が異常なのだろうか。


「まあ、俺も腹が減ったし、早く食べようぜ」

「……そうね」


 楠木は、不満そうにしながらも、自分の分の昼食を取り出して、不機嫌そうにおにぎりを食べ始めていた。


「ヒロのお弁当って、親が作ってるの?」

「おふくろがな。料理好きだから、作ってくれるんだよ」


 俺が、弁当箱を取り出すと、楠木が俺の弁当の中身をまじまじと見てくる。何の変哲もない、卵焼きや焼いたウインナーなどが入っている、基本的な弁当だ。


「……食いたいのか?」

「卵焼きおねがーい」


 やるとも言っていないのに、楠木は口を開けて、俺に卵焼きを食べさせて欲しいと催促していた。


「ほら。売れっ子メイドに、あーん出来るのよ? こんなオプション、100万円積まれても、絶対やってあげないんだから」

「100万円積まれたら、やらない方が損だろ?」

「ホント、ヒロって女の子の気持ちが分かっていないわね。こういう行為は、心を許した男の子にしかやらせないものなのよ? 松宮だって、そうじゃないの?」


 菜摘の場合は、少し違うと思うのだが、楠木がこう言っている以上、楠木にも失礼だと思ってしまう。


「……そ、それなら」

「あーん」


 俺は、まだ使っていない箸で、卵焼きを掴んで、楠木の口の中に入れようとした時、何か固い物で思いっきり頭を殴られた。


 だ、誰だ!? マジで痛いんだが、まさかこの光景を許さない、菜摘が殴ったのんじゃないのか――



「……マジで、爆発して――あっ」



 俺の隣から、アニメキャラの小学生、妹キャラのような、幼く聞こえる特徴的な凄く可愛らしい声が聞こえた。


 それは、木村の本当の声だった。


 俺の頭を叩いたのも木村のようで、どうやらスマホで叩いたらしい。時には話す道具になって、そして今では鈍器にでもなる。本当、スマホって便利だな。


「ヒロっ!? 大丈夫なのっ!?」

「……めっちゃ痛いな」

「私の卵焼き、3秒以上経っていない?」


 俺ではなく、殴られた衝撃で地面に落ちた、俺の卵焼きを心配していたので、俺は楠木を無視して、木村と話を続けることにした。


「……今って、木村か?」


 俺がそう聞くと、木村は両手で口を塞ぎ、大きく首を横に振って否定していたが、どう考えても、その声は木村だとしか思えなかった。

 ポロっと話してしまったって事は、気が抜けて話してしまったのか、首を振った後、すぐに口を押えて俺たちから顔を逸らした。


 俺、それとクラス全員、木村の本当の声を聞いた事ない。先生に当てられも、寝たふりをして答えようともしないし、どれだけ先生に声を出せって怒られても、絶対に口で話そうとしない。


「……秘密にしているなら、答えなくても良い。もしかして、裏で声優をしているとか?」


 木村の声、俺の好きな声優、木瀬ねがいって声と、全く一緒だったので、つい聞いてしまった。


「……」


 しかし、木村は頑なに話そうとはせず、俺から顔を反らし、目を合わせようとしなかった。これはビンゴだと思って、俺は一度心を落ち着かせるため、深呼吸をした。


「……まさか、俺の学校に声優をやっている人がいるとは」

「そんなわけないでしょ。ヒロ、目を覚ましなさい」


 楠木は、俺の頭を軽くチョップした後、食べれなかった卵焼きを勝手に食べて、すっごく美味しそうに食べていた。


「……冗談はさておき。……実際は、どうなんだ?」


 俺のオタクの一面を見た後、木村はきょとんとしていたが、暫くスマホで文字を入力した後、音声機能で、こう話した。


『声が、コンプレックス、昔から変な声と、からかわれて、それで最近になっては、その声優と、声が似ていると言われる、自分の声が嫌い、だから、高校では、中学の時みたいにならないように、絶対に声を出さないと、決めた』


 それは、木村に悪い事をしてしまった。俺は、木村に頭を下げた。


「ごめん。木村の気持ちを踏みにじるような事をしてしまって、とっても申し訳ないと思っている」


 木村は、ただ俺が頭を下げている姿をじっと見ていた。


「……まあ、無理にコンプレックスを直す必要も無いしな。俺は、木村の事情を知ってしまったし、また猪俣たちにからかわれたら、俺が助太刀する。それと、先生にもちゃんと説明しないとな。ずっと怒られるのも嫌だと思うし、内申点も下げられるのも嫌だろ? どっかのタイミングで、担任の吉田先生には言いに行こうぜ」



「……その必要はない」



 木村は、スマホの音声機能ではなく、木瀬ねがい――じゃなくて、木村の本当の声で話した。


「……松原君って、面白い。……変な人でもある。……やっぱり、私と同じ4軍」


 木村は、俺の事を変な人と認識してしまい、そして俺の弁当の半分以上を食べてしまった楠木も、何故か頷いていた。


「……先生には、私一人で説明する。……けど、学校内では今まで通り、スマホで話す」

「ま、それが一番かもな。木村の声を聞いたら、猪俣と安藤は、絶対に弄ってくるな」

「……だから松原君は、幸せ者……だよ」


 そう言って、木村は少しだけ微笑んでいた。いつも無表情だった女の子が、不意に笑顔を見せる行動は、男は弱い。俺も一気に心臓が早くなってしまったが、すぐに疑問に思った。


「幸せ者なのか……? ……俺たち、これから猪俣と安藤に喧嘩売るかもしれないと言うのに」

「ヒロ君は鈍感だね~。ヒロ君の前では、この子の可愛い声が聴けるって事だよ~」

「そうか。そう思うと、確かに――って、いつの間に菜摘がっ!?」


 ほんの数秒までいなかったはずの菜摘が、俺の目の前でしゃがんで、それに微笑みかけていた。


「ずっといたよ? 楠木さんを抱いて、廊下を走っている時から」


 菜摘と俺の付き合いは凄く長い。小さい時からずっと一緒なので分かる。

 こうやって、俺には優しく微笑みかけているが、少し口角が釣りあがっているように見える。そしてほんの少しだけ目を開けている。


 つまり菜摘は、怒っているって事だ。



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