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外道な奴らに制裁を……?

 

「……まさか、あんな事になるなんてね」


 文化祭のすべての日程が終了した後、俺たちは学校から駅の道の途中にある公園に立ち寄ると、藤棚の下のベンチに座った葛城が、哀愁を感じさせるような雰囲気でそう呟くと。


「いや、あれだけ行事を無茶苦茶にしたら、普通怒るでしょ」


 楠木が冷静にツッコんでいた。楠木がこうツッコむのも無理はない。誰だって、あの現場にいたらそう思うだろう。


「松原君。私はどこで間違えたと思う?」

「……よく振り返って見ろよ」


 葛城は分かっていない様子だが、俺はなぜ生徒会長の烏丸先輩が怒っているのかは分かっている。


 なぜ葛城は、こんなに落ち込んでいるのか。事は数時間前に遡る――




「決勝戦は無効とし、貴様らは失格とする」


 試合の最中に、急に割り込んできた生徒会長。その様子はご立腹で、いつも氷で凍てついたような表情が、尚更凍り付いているような顔をしていた。


「地域住民に楽しんでもらう、そして地域住民と生徒たちとの親睦を深めるために行われている祭り。それを、個人の争い、醜い喧嘩で勝負をつけるとは何事だ?」


 重藤は優勝賞品のプラチナバッジを貰うために、裏で卑怯な手を使って、何としてもトーナメント大会に優勝しようとしていた。


「貴様らの勝手な行動で、来賓の方々も呆れてしまっている」

「……それは、貴方の勝手な行動でむぐっ」


 生徒会長を良く思っていない葛城は、唾を吐き捨てるような言い方をして、会長に火に油を注ぐ様な発言をしていたので、俺は咄嗟に葛城の口を塞いだ。

 いたのは知っていたが、このトーナメント大会には、PTA会長、区役所の区長、教育委員会の委員長など、とても偉い人がこのトーナメント大会に観戦しに来ていた。予選の時にはいなかったが、一番注目が集まる決勝戦には、そのような顔ぶれがあり、興味を持って勝負を観に来たはずだ。


 それを、俺と葛城は特に攻撃する事無く、ただ重藤たちの攻撃をかわすのみ。そして重藤の悪事を暴くために、葛城は4軍のみんなで俺たちのクラスの悪評を流していた2人を連れて来て晒し、大勢の目撃者で重藤は罪を認めざる負えない状況になっていた。どう考えたって、これは成敗、下剋上勝負ではない。寸劇になりつつあった。


 よく考えてみると、この勝負は重藤より、俺たちの方が悪くないか……?


「内田。準決勝で敗退した生徒の名は分かるか?」

「はい! えっと……重藤君の試合は、相手方が体調不良のためで出場を辞退し、重藤、田村ペアが不戦勝しています」


 重藤の奴、もしかすると準決勝の相手にも裏で工作していたのかもしれない。


「葛城、松原ペアは、同学年の猪俣、日下部ペアと戦い、猪俣さんは試合途中で棄権しましたが、日下部さんのみ、正当な勝負で葛城さんに負けています」

「それなら、日下部を今回のトーナメント大会の勝者とする。日下部をここに呼べ」


 そんな試合結果を不服に思った重藤、そして葛城は生徒会長に詰め寄った。


「おい! 俺は真面目に戦おうとしたんだぞっ!?」

「嘘をつくな。重藤忠、貴様の噂は聞いている。1軍は、品行方正で生徒の見本となるような生徒が就ける階位だ。真面目な生徒なら、なぜ最近は部活動をサボっている?」

「そ、それは……」


 こんな怖そうな見た目な重藤でも、ちゃんと部活には入っているらしい。腐っても1軍と言う事か。


「一緒に戦っている女と遊びたいなら、いくらでも遊べばいい。だが、1軍の座は降りてもらう事になるが、貴様はどちらを選ぶ」

「千賀。今すぐ別れ――」


 彼女より、自分の地位を優先させるようだ。それを聞いた田村は怒ってしまい、重藤に強烈なビンタをしてどこかに行ってしまった。これは、俺も田村に同情する。どうやら、重藤と田村の恋路はここで終わってしまったようだ。俺的には、勝負で勝つより、このような結果で終わった方がすっきりした気分になっている。


「重藤君の話が終わったなら、今度は私が話す番ね。会長さん? 私たちはちゃんと戦おうとしました。けど、重藤君は絶対に優勝したいという思いで、私に妨害をしてきました。それが――」

「生徒証は、学校にいる時は必ず携帯し、紛失したのなら実行委員会に紛失届を提出する。生徒証を持たずに、勝負に挑むのは反則とし、強制的に負けとなる。元トップの貴様なら、この事は知っているはずだが?」


 そんなルールがあったのか。スクールカースト制度の事なら調べ尽くしているはずの葛城が、紛失した際の対応を知らないはずがない。生徒証を持っていないとどうなるかを知っていたから、葛城は死ぬ気で探していたのか。


「会長の椅子に長く座りたいなら、後輩の私が忠告しておきます。地域住民、生徒との親睦を深めるためのお祭り事なら、そんな細かい事は気にしない方がいいと思います」


 これ以上話が通じない事が分かったのか、すぐに手を引いた葛城。会長から目を逸らし、俺に何も言わず、機嫌悪そうに試合会場から出て行った。



 そして文化祭の全日程が終了し、体育館で文化祭の閉会式が行われていた。

 各クラスの出し物の売り上げの順位。1年は菜摘のクラスの5組が勝ち、明日学校に来なくてよくなったようだ。トップの斉藤は喜んでいる事だろう。

 文化祭は楽しかったのだが、色んな事がありすぎて疲れている。早く家に帰してくれと思いながら、閉会式に参加していると。


「それでは、スクールカースト制度、トーナメント大会で優秀な成績を収めた生徒の表彰を行いたいと思います。1年2組の日下部さん。前に来てください」


 日下部の名前が呼ばれると、日下部は訳が分からなさそうにオドオドしながら、前に出て、ステージの上に立つ榊原先輩の前に立った。


「……1年2組。……日下部仁奈。……あなたは、スクールカースト制度を積極的に参加し、優秀な成績を収めた事を、ここに表します。……スクールカースト制度実行委員会委員長。……榊原四季」

「あ、ありがとうございます……」


 あの顔は、負けたのにどうして自分だけが表彰されているのだろうと思っているのだろう。猪俣は棄権したと言う事なので、俺と同じく失格扱い。文化祭が終わりかけた頃に戻ってきた猪俣だが、日下部だけが表彰される事を知ると、般若のような顔をしていた。


「……それと。……これは記念品」

「もしかして、プラチナバッジですか?」

「……そう」


 プラチナバッジの存在は猪俣から聞いているようで、それを嬉しそうに受け取っていた。


「これを付けていると、勝負が免除されて、いろんな生徒に電流が流せて、学食も食べ放題になるって、本当ですかっ⁉」

「……何の話?」


 葛城が警戒していた優勝賞品のプラチナバッジ。それはどの学年の生徒にもペナルティを課せられて、1軍のような扱いを受けられる。他にもいろいろと尾ひれが付いているようだが、その話を聞いた榊原先輩は首を傾げていた。


「……これはただのバッジ。……勲章のような物」

「……じゃあ、成敗、下剋上勝負は免除されないって事ですか?」

「……トーナメント大会で優勝した証拠になる。……校内で身に着けておけば、強者と称賛されると思う」


 プラチナバッジを欲していた生徒たちは、榊原先輩の話を聞いた途端、一斉にズッコケさせて閉会式は終了した。




「……つまり、あのバカ会長のせいって事でいいわよね?」

「……そう思っとけ」


 俺がそんな感じでさっきの出来事を振り返ると、葛城の結論は、すべて生徒会長が悪いと言う事になっていた。


「……そもそも、そんな都合のいい物はない」

「そんなもの作るなら、さっさとカースト制度を無くせって話だけど」


 木村と楠木の会話を聞いた葛城は、深い溜息をついていた。木村の言葉で目が覚めたのか、更に心が病んでいた。


「まあ、結果はともあれ、楽しかったから良かったんじゃないかな~」


 安定で、俺の横で焼きそばを食べている菜摘の言葉に、俺は同感していた。

 結果はどうであれ、文化祭は楽しかった。菜摘との入れ替わり、菜摘のクラスメイトと交流出来た事、犯人を捜すため校内を走り回った事。何故かミスコンに出されて、恥をかいた事。トーナメント大会で決勝戦で勝てるかと思ったら、まさかの失格になった事。


 ……やはり、俺の文化祭は楽しいと思ったが、ただ菜摘の行動に振り回されて、心身ともに疲れるだけの学校行事で終わった。


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