外道な奴らに制裁を6
「それでは、残りの5名の生徒に登場してもらいましょう!」
紫苑たちの組が終わり、遂に女装した俺が出る事になった。観客も可愛い女子生徒を見に来ているんだ、一人男が混ざっている事を知ったら、中村の面目は丸つぶれ。そして俺は中村逆恨みされ、背後から刺されてバッドエンドになりそうだ。
「それでは6番の方から紹介をお願いします」
俺は9番目。まだ俺の出番ではないはずなのに、妙に俺に視線を感じる気がする。もしかすると、もう俺が男だと言う事を分かってしまっているのだろうか。
「緊張しなくていいと思うな~」
通りで俺にばかり注目が集まっていると思ったら、平然と菜摘が横に立っていた。そして遠くの方で立ち見している楠木と木村が、早く菜摘を退場してほしいと慌ただしくジェスチャーを送っていたが、菜摘は気にせずに手鏡を取り出して、自分の髪の毛を整えていた。
「菜摘。どうしてお前もいるんだ?」
「ヒロ君がいる所には、私がいると思って欲しいな~」
この様子だと、菜摘は俺がステージの外に出ない限り、菜摘も移動する気が無いようだ。俺の傍には、基本的に菜摘がいる。それを知っている中村なら、俺の正体に気付くかもしれない。
「正直に答えろ。俺を応援しているのか、俺を邪魔しに来たのかどっちだ?」
「私は、いつでもヒロ君の味方だよ~」
味方なら、空気を読んで俺の傍から離れて欲しい。
「それでは9番の方、自己紹介をお願いします……おや? 何故か9番には2人の生徒が立っているようですが?」
遂に俺の出番になったようだが、俺と菜摘が立っているせいか、司会の大村さんが戸惑っていた。
「どちらが、マリオ・ダルメシアンさんでしょうか?」
誰だよ。
「ヒロ君の事だよ」
俺かよ。
「……俺――じゃなくて、わ、ワタシでーす」
全てを菜摘に任せたのが失敗だったようだ。俺の女装の監修、そしてミスコンに参加する応募用紙も勝手に書いてしまったので、女装で外国人と言う、ややこしい設定を背負わなくなってしまったようだ。片言で裏声で話さないので、尚更大変だ。
「こんな女子生徒、ヤイの学年にいましたか?」
早速、中村に怪しまれている。日本人の名前ならともかく、名前はどこかの国の名前だ。尚更怪しまれるだろう。
「わ、私はー来週からーこのー学校にー転校ーする事にーなっていまーす」
咄嗟に思いついた設定で、中村の疑いを晴らそうとすると。
「それなら、どうして松宮さんも一緒にいるのです?」
やはり、俺の横に立っている菜摘が気になるようで、更に疑っているように見えた。
「ミス松宮とは、私のお母さんの姉の夫の会社に勤める課長のゴルフ仲間の行きつけのキャバクラの店員の子供の従姉と言う関係ですー」
俺はなぜ自分の首を絞めるような、更に面倒臭い設定を思いついてしまったのだろうか。中村に刺されないように、必死に言い訳を考えるために、俺の頭が変な事を思いついてしまったようだ。
「まだ日本には慣れていませんのでー、親交のあるミス松宮についてきてもらいましたー」
「そう言う事なので、私もご一緒するね~」
こういう事には、菜摘は空気を読み、俺の傍にいようとしていた。
「全く接点が分かりませんが、それでは改めて自己紹介をお願いします」
またあの恥ずかしい名前を言わないといけないのか……。確か、マリオ・ダルメシアンだったな。
「来週からこの学校にお世話になる、マリオ・ダルメシアンですー。よろしくお願いしますー」
「アルマジロじゃなかったっけ?」
自分で考えたくせに、このマイペースクイーンは、もう名前を忘れているんだが。
「ダルメシアンさんは、体の発育が良いようですが、どこに自信を持っているのですか?」
菜摘が俺の胸に胸パッドを詰め込んでいたので、中村の目線は、俺の胸の方にあった。
「特に何もありま――」
「胸なのですね。ヤイもそこは評価するのです」
評価した胸が、作り物だと知ったら、中村は例え女でも刺しに来るかもしれない。絶対にバレてはいけないだろう。
「ダルメシアンさん。今日の自分のラッキーカラーは何だと思いま――むぐっ」
「そう言って、下着の色を聞き出そうとしても無駄ですかね」
司会の大村が、俺たちに恥をかかせないように、中村の口を塞いでファインプレーな行動をしてくれた。
「確か、今日は迷彩柄だったよね~」
「迷彩柄……!」
どうして菜摘は、今日の俺のパンツの色を答えてしまうのか。そして菜摘の答えを聞いた中村は、大村の手を払い除けて、拳を上げていた。
「それでは、ヤイに向かって決めポーズをお願いするのです!」
「会場に向けてやってください」
冷静に対処する大村に、どこか親しみを覚えた。このやりとり、俺と菜摘のようだ。
「ヒロ君が可愛いと思えるポーズでやればいいと思うな~」
決めポーズと言われ、俺はどうしたらいいのかと迷っていると、菜摘がそう助言してきた。
だが、こんな場所で冷静な判断が出来る事は無く、俺は血迷って、左手で目を覆い隠して、そして右手を前に突き出す、中二病的なポーズを取っていた。
「……外国の方で中二病とは、更にヤイは気に入ったのです」
会場が凍てつき、中村はドン引きしているかと思ったら、何故か観客、中村には好評だった。男がやるより、女子がやるとギャップ萌えと言うのか、可愛いと受け止められるのかもしれない。
「ヤイは貴方を歓迎するのです。なので今から、ゴスロリの衣装を着ませ――何か分からない事があれば、私に相談するといいのですよ」
菜摘だけではなく、中村の着せ替え人形になるのは、俺も困るが、中村が上機嫌になり、ひとまず俺は中村に殺される事は無くなった。
「この人に関わらない事をお勧めしておきます。それでは、マリオ・ダルメシアンさん、ありがとうござい――」
「待ってください」
このままでは、ただの中二病の外国人転校生の紹介で終わってしまう。何の為にわざわざ女装して、ミスコンに出る羽目になったのか。
見てるか? 俺たちのクラスを妨害しようと企んだ奴。悪い事をしたら、それは我が身に帰ってくる事を、ちゃんと覚えておくんだな。
「私、ここに来る途中、あまり、良くない噂を、聞きました。料理にゴミが入っていた、食べた人が、体調不良者が、出たとかー。どのお店に出たのか分からないですが、皆さんも食べ物を取り扱うお店、過剰なサービスをするお店には、特に気を付けたいと思いますー」
俺の出番までに少し時間があったので、別行動で生徒証を探している葛城に4組のお店について、電話で聞いた。
葛城の話によると、4組も俺たちのクラスとジャンルが丸かぶり。和洋折衷は一緒。だが違うのは、和服の生徒、メイド服の生徒、チャイナ服で接客しているらしい。そして生徒を指名すると、和服などの来た生徒から、その服装にちなんだ料理が食べられて、そしてさらに料金を払えば、あーんして食べさせてもらえるとか、人生相談や、相席してもらえるなど。メイド喫茶のようなサービスを受けられるらしい。
4組のお店を仕切っているのは、1軍や2軍の生徒のみで、3軍、4軍は一日中皿洗いや、ごみ捨て、食材の調達など。楽しい文化祭を1軍たちの奴隷としてこき使われる。
料理は1軍と2軍の交代制でやっているが、誰も料理は出来ないらしい。3軍、4軍は奴隷であり、何か失敗したら店の信頼を失う。なので、すべて4組の上位の奴らで仕切っているらしい。
お店を安定させるために、そしてジャンルがかぶって、売り上げも好調な2組を陥れる作戦に出たのではと、俺と葛城で話し合うと、そのような結論に至った。
「オムライス、一つ700円のお店には注意した方がいいかもしれないね~。割高で、女の子たちに食べさせてもらうより、安定して、みんな美味しく食べられるお店を選んだ方が良いと思うよ~」
菜摘は、いつの間にか実際に行ったらしく、メイドにサービスを受けてオムライスを食べたらしいが、あまり美味しくなかったらしい。行った事を後悔している様子だった。
しかも料金は全て割高。味ではなく、過剰なサービスで売り上げを伸ばそうとしている。料理の店なら、味で勝負しろと思ったので、尚更俺は気に入らなかった。
俺たちがどのような悪足掻きをして、クラスの印象をアップさせようとしても、もう失った信頼は取り戻せない。なら、4組も道連れにしてやろうと思い、今回のような行動に出た訳だ。




