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外道な奴らに制裁を4

 そして文化祭の演目である、バンド演奏を飛び込みでやる事になった俺たち。

 これも俺たちのクラスの印象をアップさせる事、そして人が多い所でやって来るデマ情報を流す奴らをおびき寄せる為だ。


「楽器、どうすんの?」


 俺の作戦に乗ってくれた楠木は、そう聞いて来た。

 体育館でバンド演奏をしていているのは、昼休憩までの約1時間半。それまでに楽器を探し、曲も何をするのか決めないといけない。限られた時間で、俺たちはどのような行動をするか。


「とりあえず、今演奏している人に聞いてみるか」


 今は、思いついた事はすぐに行動だ。事情を話して、何としてでも楽器を貸してもらえないかと、さっきまで演奏していたバンドに交渉してみたが。


『愛用している楽器を、得体の知れない人に容易く貸すバカがどこにいる? 自分たちにとって、楽器は体の一部なんだよ』


 その言葉を聞いて、俺は自分が考えた作戦をどうかと思った。バンドの人が言う通り、バンドにとって楽器は体の一部、魂と言えるものだ。そのような物を、簡単に貸す人はいないだろう。しかも俺たちは楽器に関しては、ほぼ素人。尚更貸してくれないだろう。


「……早速行き詰ったわね」

「……すまん」


 断られた後、体育館の片隅で、俺たちは違う作戦を考えてみる事にした。やはり地道に探す、もしくは人が集まっていそうなところをしらみつぶししていくしかないだろう、


「松原君の作戦、私は悪くないと思うけど?」


 違う作戦を頭の中からひねり出そうとしていると、俺たちの前には葛城が現れた。さっきまでの亡霊のような立ち振る舞いではなく、いつもの凛とした態度だった。


「高村さんから話は聞いたわ。松原君たちで、即興で結成したバンドで、飛び込みでライブに参加するそうね。人の注目は集められると思うわ」


 楽器を貸してくれる人を探している時、紫苑が葛城に協力してほしいとお願いでもしたのだろうか。


「そして後先も考えないから、早速行き詰っているって訳でしょ? 本当に、松原君はおバカさん――松宮さん、本気で睨まないでほしいんだけど?」


 俺を侮辱したと思ったのか、いつもやんわりとした表情でいる菜摘が、凍り付いたような表情で葛城を睨んでいたので、葛城もビクッとしていた。


「私がアドバイスしてあげる。作戦は簡単、中村さんに松原君が、何としてもライブに出させて欲しいと、土下座するの」


 なぜ俺が土下座をして、あのトップにそんな態度を取らないといけないのか。俺だってプライドがある。そんな簡単に土下座するか――


「と言う事なので、早速中村さんを体育館裏に呼び出しておいたわ。絶対に来ると思うから、早く行かないと放送でペナルティを課されるかも?」


 何て気が利く元トップなんだろうか。中村を怒らせないため、急いで体育館裏に行く羽目になった。




「ヤイは男に興味はないのです。ペナルティを受けたくなければ、さっさと用件だけ言って、校庭の片隅で体育座りしていて欲しいのです」


 俺が体育館裏に着いた時には、まだ中村はいなかったので、しばらく待っていると中村がやって来て、中村の目に俺が視界に入ると、心底から嫌そうな顔をされた。


「葛城さんはどこに行ったのです?」

「何かお前に渡したいものがあるから、教室に取りに戻った」


 俺だけに面倒事を押し付けさせない。なので、こんなシチュエーションを作った葛城も巻き込んでおこう。


「中村。今体育館でやっているライブがあるだろ? それに俺――」

「却下なのです」


 やっぱりな。あっさりと却下された。


「男だけのライブはヤイにとって目に毒です。少しだけ陳腐なライブは観ていたのですが、男女が仲良く演奏しているのを見たら、殺意を覚えたぐらいなのです。命が欲しいなら、諦めた方がいいのです」


 もしあのまま飛び込みで参加していたら、中村に刺されていたかもしれない。考えも無しでライブに参加しなくて良かった。


「俺、菜摘、楠木、木村、紫苑で出ようと思っていたんだがな。中村にとって俺が邪魔なら、葛城に代わって入ってもらうと思ったんだが?」

「許可するのです」


 そう言うと、中村は態度を急変させて、即オッケーを出した。北欧人と日本人のハーフ、そして1軍の中村だが、中身はただのおっさんだ。


「ボーカルは誰がやるのです?」

「た、多分葛城だな……」

「それなら、尚更許可するのです!!」


 本当に葛城の事が好きなんだな……。次に葛城が中村の視界に入った時には、飛びつかれるだろう。


「ですが、どうして急にライブに出たいと言ってきたのですか?」

「俺たちのクラスのイメージアップのため」


 理由を言うと、中村は意味が分からなそうに首を横にしていた。


「どこかの1軍、どこかの2軍のせいで、俺たちのクラスは営業妨害を受けている」

「詳しく聞かせるのです」


 ウキウキしていた中村は、自分の学年で営業妨害あると知ると、中村の態度が変わった。


「人が集まる場所で、俺たちのクラスが出す料理は不味いとか、食中毒が出たとか、ゴミが入っていたとか、嘘を言いまくっている奴がいるらしい」

「そんな事を言う輩がいるなら、1学年のトップとして許せないのです」


 この調子だと、もしかすると中村も協力してくれるかもしれない。トップの中村も協力してくれるなら、ライブをせずに犯人が見つかる可能性もある。


「ですが、ヤイは松原さんの話を完璧に信じるつもりもありません。ヤイにその料理を提供してほしいのです」


 と言っている中村だが、口元からきらりと光るものが見えた。もしかすると、俺たちのクラスの料理を食べたいのだろうか。




「美味なのです」


 校舎の陰から見ていた菜摘、葛城、紫苑たちに事情を話し、そしてすぐに教室に戻った。試食と言って、俺たちが作っているナポリタンを俺の奢りで食べ、そして完食すると、中村は満足そうな顔をして、口をハンカチで拭いていた。


「この料理を作ったのは誰なのです?」

「それは某――むぐっ」


 このナポリタンは塚本が店番している時に作った物だ。男が作ったと発覚したら、中村は吐き出す可能性もあるので、もう一人の当番ある紫苑に手を向けた。


「紫苑――高村紫苑が作った」

「こんな美少女が作った料理が食べられるのは、その営業妨害のおかげかもしれないのです」


 そして中村は俺に空になった容器を渡すと、中村はこう提案をしてきた。


「残念ですが、ヤイの力でもライブに飛び込みで参加させるのは不可能なのです。ですが、貴方たちが提供する料理を宣伝させることは可能なのです」

「どうする気だ?」

「ミスコンなのです」


 中村は、俺にミスコンを提案してきた。そんな考えは、俺には到底思いつかない。と言うか、ミスコンをやるつもりなのか。あの生徒会長が許可するとは思えない。


「成敗、下剋上勝負の余興にやるのですが、ヤイが主催するので、ヤイに言ってもらえば、すぐにでもエントリーは可能なのです。どうしますか?」


 俺には楠木に木村、そして紫苑がいる。彼女たちが出て優勝したら、俺たちのクラスの印象をアップすることが出来るだろう。


「と言う事で、高村さんは出てくれますよね?」

「私だけでは恥ずかしいので……、皆さんが出るなら考えますよ~」


 流石の紫苑でも、簡単にはミスコンに出るとは言わないようだ。ラテン的な性格なので、すぐに照るというと思ったんだが。


「楠木さんはいかがですか?」

「パス」

「木村さんはどうですか?」

『断る』


 全員の断られた中村は、ショックを受けて床に座り込んでしまった。こうなったら紫苑に頼むしかないのか?


「ヒロ君は、女装したら結構可愛いんだけどな~?」


 そして暢気にクレープを食べていた菜摘が、余計なひと言を言うと、中村の目は再び輝き出していた。


「もし、松原さんが女装して出てくれるというのなら、高村さんたちは出てくれるのですか?」

「マロンが出るなら、私もあまり緊張しないかもしれませんね~」


 紫苑。俺の事を思うなら、そこは否定してほしかった。


「男の女装は不本意ですが、これも高村さんたちの水着姿――この学校の美少女を拝む為なのです。ここは松原さんに協力してもらいます。クラスの印象をアップさせたいのですよね?」


 やはり、中村に助けを求めたのは間違いだったようだ。中村に刺されてでもよかったから、飛び込みでライブに参加した方が良い結果を招いたかもしれない。


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