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外道な奴らに制裁を1

 菜摘との入れ替わりという、不思議な体験をする事になった文化祭1日目が終了し、そして文化祭2日目。今日は日曜日なので、更に多くの人がやってくると思われていたが。


「……お客さんが来ないのです」


 夏祭りで、綿あめを持って、はしゃいでいそうな着物姿の紫苑が、暇そうに欠伸をしていた。

 だが、俺たちので店は、ぺんぺん草が生えそうなぐらい物凄く暇だった。昨日とは打って変わって、俺たちの出店だけではなく、2組に誰も入って来ようとしなかった。


「……暇な方がいい」


 のんびりしていたい木村にとっては、この状況の方がいいようだ。椅子に座って、いつもの光景のように、スマホを触っていた。木村にとって、何もしないよう平凡な時間を送っていたいようだが。


「ナポリタン。1つ」


 文化祭が始まって1時間後、ここでようやく初めてのお客。早速売れたのは、ナポリタンだった。


「確認しても良いですか?」

「何でしょうか?」

「木村さんのスマイル1つ下さい」


 こいつ、もう学校に来たのか。


「太陽。普通に来いよ」


 本日初めてのお客は、中学生まで一緒の幼なじみだった、やかましい田辺だった。パーカーのフードを深くかぶって、正体を分からないようにしているようだが、鞄につけているロリキャラの縫いぐるみストラップと缶バッチが決め手だ。

 前から来ると言っていたので、そのうち来るんだろうなと思っていたが、まさかこんな朝早く来るとは思わなかった。


「なぜ、分かった?」

「いきなりスマイル頼む奴なんて、俺の知っている中では、お前ぐらいしかいないからな」


 このまま正体を隠して行けると思っていたのか、少し驚いている様子だったが、すぐにパーカーのフードを脱いで、茶髪の整えられた髪を露わにしていた。


「おっす! 正義、遊びに来たぞっ!」


 田辺と会うのは、あの遊園地以来か。家は近いが、遠い高校に行っているため、平日は中々会わない。休日もどこかに行っているようで、会う機会が減っていた。


「菜摘様も、おっす!」

「どうも~」


 綿あめをゆっくり食べている菜摘に挨拶をした田辺に、俺は話しかけた。


「何度も言っておくが、ここに幼女はいないぞ」

「何を言っているんだ。こうやって部外者も入って来れるのだから、どこかに幼女はいるはずだぞ」


 そう言って笑っているが、俺はいつか本当に手を出して、田辺が警察に補導されないか心配だ。


「ところで、木村さんの愛情がこもったナポリタンと、スマイルは?」


 木村も意地になって、椅子から移動しようとせず、田辺とは目を合わせず、ずっとスマホを触っていたので、気の毒だと思った紫苑が、田辺にスマイルとナポリタンを提供していた。


「そう言えば、さっき学校に入ろうとした時、このクラスの悪口を言っている奴らがいたぞ」


 買ったナポリタンを早速食べている田辺が、気になる話を言っていた。


「その話、詳しく聞かせろ」

「確か、1年2組の出している料理を食ったら、腹を壊した奴がいるとか、食った料理に、虫やゴミが入っていたとか。色んな人に聞こえるように、わざと大袈裟に話していたな」


「その話、詳しく聞かせなさい」


 田辺の話を聞いていると、このクラスのトップ、猪俣が話に入ってきた。

 この様子だと、猪俣が俺たちの出店の人気を落とすため、裏で工作している様で、田辺の話を聞きたがっていた。


「正義、また新しいヒロインを作ったのか?」

「怒り出す前に、早く事情を話した方がいいぞ」


 お客が全く入って来ないので、すでにイライラしている猪俣。早く話した方が、田辺の身のためだと思う。


「その話していた奴の特徴を言いなさい」

「俺は、幼女以外興味は無いー。だからチラッと程度しか見ていないがー、短髪の男子生徒が2人ー、正義の同じ制服を着ていたー。以上ですー」


 猪俣は性格は悪いが、見た目はすごく良い。菜摘と同じく、裏で人気があると村田が言っていた。そんな美少女の猪俣を見ても、田辺はぶっきらぼうに返答していた。


「それだけの情報があるなら十分。と言う事で松原、早く犯人を捕まえて、私の所に連れてきなさい」


 何を考えているのか。猪俣は相当怒っているようで、不気味に笑っていた。


「俺も探すか」

「ロリキャラを探しにか?」

「それも兼ねてな」


 こいつは転んでもただでは起きない奴だ。まあ、目撃者がいた方が、早く見つかるし、この閑古鳥が鳴く教室もすぐに解決に向かうだろう。店番は楠木たちにお願いして、俺と田辺、そしていつも通りに、綿あめを食べている菜摘もついてきて、犯人を捜す事にした。





「あの幼女、素晴らしいな……」

「盗撮だけはするなよ」


 この勢いだと、どさくさに紛れて小さな女の子を盗撮する可能性もある。


「……って、菜摘はどこ行ったんだ」


 そして数秒前までいた菜摘の姿は無く、またどこかに行ってしまったらしい。菜摘が興味を持つ、何か面白い物でもあったのだろう。気が済んだら、そのうち俺の横に立っているだろう。


「それで、相手はどんな奴だったんだ? 短髪の男なんて、たくさんいるぞ」

「親友が困っているんだ。なら、さっき言わなかった事を、正義だけに教えてやる」


 それが徹底的な証拠になればいいんだが。田辺の事だ。妄想したら、こんな感じのロリキャラになるとか言い出すんじゃないよな?


「一人の男子は、カッターシャツに透けた黒いTシャツだった気がする。確か、龍かドクロだったか。もう一人は覚えてない」


 短髪の男子生徒だけの情報より、まだ的が絞れる。こっちの方を先に言って欲しかったんだが、どうして猪俣の前では言わなかったのか。


「あれは……」


 その黒いTシャツの男子を探そうと思った時、廊下を一人で歩く見慣れた女子生徒、葛城が歩いていた。今日は何か用があるのか、俺たちに顔をまだ出していなかった。

 スクールカースト制度を廃止にする為、日頃の諜報活動をしている葛城。もしかすると、そう言った人物を見ているかもしれないと思い、俺は葛城に話しかけようとしたが。


「……ない。……私の……生徒証」


 いつもの凛々しい葛城の姿ではなく、死んだ魚の目をしていた。昨日、重藤の部下だと思われる田村に生徒証を奪われたことが、物凄くショックだったようだ。

 重藤に生徒証を奪われた葛城。葛城に起こされた後、しばらく校内を探し回ったが、重藤と田村の姿は無く、下駄箱を調べると、もうすでに学校を出てしまっていた。このままでは、葛城は準決勝で戦うことが出来ない。そもそも、出場が出来るか分からない。もし紛失した事が発覚したら、そのまま棄権になる可能性もある。あの重藤が優勝してしまう可能性も大だ。


「……大丈夫か?」

「……あら、松原君。……今日の天気は生憎ね」


 思いっきり太陽が見えて、雲が一つもない空なんだが。今の葛城の心の天気の事らしい。


「まだ見つからないのか?」

「……それもある。……けど、もっと大変な事が起きてしまったの」


 葛城が言うもっと大変な事とは一体何なのか。昨日の一件で、葛城の居場所がなくなってしまったとかだろうか。


「……トーナメント大会、準決勝の相手。……相手は日下部さんと――」


 意外な対戦相手だ。日下部は、こう言った勝負には全く興味が無いと思っていたのだが。


「……い、猪俣さんなの」


 これは俺と葛城にとって、決勝戦と言えるだろう。前に出ると言っていたので、出るのは知っていたが、まさか準決勝まで進んでいるとは思わなかった。初戦で負けていると思っていたんだが。


「……あ、当てにしているわよ」


 やはり猪俣に苦手意識があるようだ。強がっている様子だが、猪俣の名前を出した途端、葛城の足は震え始めていた。


「ちょ、ちょうど松原君を迎えに行こうと思っていたの。準決勝まであと15分。早く向かいましょう」


 猪俣が勝負相手だと思って、心を取り乱しているのか、がっちりと俺の腕を掴んだ後、無理やり体育館に向かわされた。



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