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文化祭6

 文化祭1日目が終了した。

 来校者がいなくなると、俺たち生徒は後片付け。俺は菜摘のクラスのお化け屋敷の掃除をして、解散になった後、俺はすぐに俺のクラスに戻ると、俺たちのクラスの4軍だけが、後片付けをしている光景だった。猪俣の事だから、嫌な予感はしていたが、やはりこうなっていたか。


「正直に答えて。あんたは松宮? それとも、ヒロ?」

「私は私だよ~」


 その片付けをしている最中、中身が菜摘の俺に話しかけている楠木。まだ俺たちが入れ替わっていると知ると、楠木は落胆していた。


 文化祭の1日目。最初からありえない事から始まり、散々な文化祭だった。いきなり菜摘と入れ替わるわ、いきなり菜摘と入れ替わるとか。もう、菜摘と入れ替わった事が、一番の不幸だと思う。


「……朝眠かったし、私の想い違いだと思っていたけど、そうじゃないようね」

「ずっと眠かったの? それなら早く寝る事をお勧めするな~」

「……間違いなく、松宮ね」


 この口調と、菜摘の考えで確信したのか、再び大きな溜息をつく楠木。


「お客を呼ぶための戦略。松宮の、経営の手腕は認める。けど、やっぱりヒロはヒロ。松宮は松宮じゃないと、調子狂うのよ。あんたら、いつになったら元に戻るのよ」

「キスとかどうかしら? キスで戻ったら、ロマンティックだと思うわ」

「あんたは、黙って掃き掃除してなさい」


 なぜか、葛城も俺たちのクラスの掃除をして、変な提案を楠木にすると、楠木に怒られていた。恐らく、葛城は、この教室に向かう時、それか教室に忍び込んでいた時に、猪俣に見つかり、強制的に掃除をさせられたのだろう。

 楠木が不安に思うように、俺たちはいつ戻るのか。その方法が分かっているなら、俺だってすぐに戻っている。


「焦らなくていいと思うけどな~」


 菜摘は、この様子だと、まだ元に戻る様子はなさそうだ。俺の体がお気に入りらしい。


「私の好きなヒロはこうじゃないのよ。……たまに女々しくて、アニメ好き、ニーソ好きのスケベだけど、話が合うし、頼りになるし、幼くも感じるけど、たまに見せる凛々しい表情が好きで……」


 楠木は、段々顔が赤くなっていくと、途中から何を言っているのか分からなくなっていた。恥ずかしくなるなら、話さなければいいのに。本当に、恋愛には初心だ。


「その気持ちは分かるわ。私も松原君じゃないと、面白くからかえないわね。こうやって、チラッとスカートの裾を持ち上げたら、松原君は、目を釘付けにして、鼻息を荒くしてみるのに」


 こいつ、俺が教室の後ろのドアから覗き込んで、入るタイミングを見計らっているのを気付いているのだろう。俺が見えるように、スカートの両方の裾を持ち上げて、スカートの中が見えるか見えないぐらいに持ち上げていた。


「貴方の教室なのだから、遠慮せずに入ればいいのに」


 やはり、葛城には気づかれていたようで、クスクスと笑いながら、俺の方を見ていると、楠木も俺の存在に気が付いていた。


「えっ……。ヒロ、今の聞いてた……?」

「聞いていたから、ああやって遠慮しているんじゃない――」


 楠木が、これ以上恥ずかしさのあまりに屋上から飛び降りないように、とりあえずこの空気の読めない葛城の頭にチョップして、葛城を黙らせた。


「……聞いてた?」

「ごにょごにょとしか聞こえなかった。安藤とか、いないか確認していたんだよ」


 今日は、安藤の姿を見ていない。菜摘に好意を抱いている安藤に絡まれ、そして口説かれたら、俺は思いっきり吐く可能性がある。喜ぶのは、木村ぐらいだ。


「……やっぱり、ヒロは女々しいわね」


 俺の回答はあまり良くなかったようで、少し不満そうに、頬を膨らませていた。もしかして、俺がいる事に気が付いて、あのような事を言っていたのだろうか。


「邪魔すんぞ」


 そんな中、俺たちの教室に、ズボンのポケットに手を突っ込み、そして俺たちにガンを飛ばしながら入って来る丸刈りの男子生徒がいた。


「おい、松原はお前か?」

「そうだね~」


 思いっきり菜摘にガンを飛ばされても、菜摘はマイペースにカステラを食べていた。


「これは重藤しげどう君。2組に何の用かしら?」

「知り合いか?」


 俺のチョップから復活した葛城は臆する事無く、重藤に話しかけていた。制服を着ているが、暴力団にいそうな見た目なので、俺は少しビビった。


重藤しげどうただし君。こんな見た目でも、私のクラスのトップ、1軍なの」


 これが葛城のクラス、つまり4組のトップの重藤。どう見たってトップではなく、俺たちのような4軍にいそうな奴なんだが。どうしてこう言う奴らを、4軍にしてくれないのだろうか。


「松原に用があんだよ。お前、最底辺のくせに、トーナメント大会では、この落ちこぼれと共に、準決勝まで行っているじゃないか」

「そうだね~。頑張っているからね~」

「頑張っているところ悪いが、辞退しろ」


 この様子だと、重藤もトーナメント大会に出て、そして準決勝まで行っているようだ。


「それもいいかも~。もう勝負するの飽きたかむぐっ!」

「そんな無粋な提案は受けないわ」


 マイペースに話す菜摘の口を手でふさぎ、重藤の提案を却下していた。


「優勝賞品のバッジが欲しいなら、正々堂々と決勝まで這い上がってきたらどうかしら? もしかして、負けるのが怖いから、ここで保険をかけておく――ひゃっ!」

「こいつ、こんな所に隠してた」


 俺も気が付かなったが、いつの間にか背後には、女子生徒が葛城のニーソの中に手を突っ込み、そして葛城の生徒証を取り出していた。葛城の奴、そんな所に隠していたのか。少しドキッとしてしまった。


「か、返してっ!」

「この教室にいる4軍。ペナルティ執行」


 この教室にいる4軍。つまり、俺と菜摘、楠木と葛城にペナルティを課したと言う事だ。


「落ちこぼれの生徒証さえ奪っておけば、決勝に勝ち上がってくる事は無い。田村、退散だ」

「ばいびー」


 自分が勝つなら、この1軍はどんな卑怯な手を使ってくるようだ。重藤は、女子生徒の田村と共に、教室を出て行った。


「……待ちやがれ」


 葛城は重藤の事を言っていたのだろう。1軍のバッジよりも力を持つプラチナバッジが、重藤の手に渡ってしまったら、俺たちの高校生活は終わりだ。このままでは、重藤の思惑通りになってしまうので、まだ体中が痺れているが、俺はすぐに追いかけると。


「ちょっと、私も許せないかな~」


 当たり前のように、菜摘も俺についてきていた。流石の菜摘も、あの卑劣な行動が許せないようだ――


「まだカステラを食べている最中だったのに……!」


 どうやら、カステラを床に落とされたことに怒っているようだ。流石、菜摘だと思っていると、追いかけてこないと思っているのか、ゆっくりと廊下を歩く、重藤と田村がいた。


「しばらく起き上がれないと思っていたんだが」

「生憎、もう電流には慣れているんでな」


 俺たちは、スクールカースト制度の始まってから、電流を受け続けているんだ。どれだけの強さなのか分かっているせいか、すぐに復帰できるようになっていた。


「電流が効かない。なら、田村と遊ぶといい」

「了解」


 重藤の前に田村が出てくると、田村は戦闘態勢に入っていた。どうやら、田村を倒さない限り、重藤に近づくことは出来ないようだ。


「明日が楽しみだ」


 この場を田村にませた重藤は、ゆっくりと廊下を歩いて行ってしまった。だが、今は重藤より、葛城の生徒証を持っている田村を倒す方が最優先だ。


「葛城果歩の生徒証なら、私は持っていない。重藤が持ってるから」


 やはり、こいつを突破するしかないようだ。

 だが、俺には菜摘がいる。一瞬で移動して田村を突破すれば、すぐに重藤に追いつくことが出来る――


「行かせない」


 いつの間にか移動することが出来る菜摘の行動も読んで、菜摘の手首を掴んでいた。菜摘の行動が読まれるのは、恐らく人生初めてだろう。驚いた顔をしていた。


「重藤には逆らない方がいい。怒らせると、重藤は怖い」

「そんなに怖いなら、一度拝見してみたいな」


 こうなったら、強引にでも突破するしかないだろう。田村を突き飛ばすつもりで、田村にタックルしたが。


「つまらない行動」


 田村に手首を掴まれた俺は、同じく田村に手首を掴まれていた菜摘の頭に、思いっきりぶつけられて、そして互いに廊下で気絶した。




「……目覚めた?」


 目を覚ますと、目の前には心配そうな顔をしている葛城がいた。


「松宮さん。重藤君たちはどうしたの?」

「逃げられた……って、松宮さんだと?」


 俺と菜摘が入れ替わっているのを知っている葛城。さっきから俺の名前で呼んでいたのに、急に見た目通りで菜摘の名前を呼ぶのはおかしい。

 ずっと重く感じていた前が、凄く軽く感じる。菜摘の艶やかで、細く感じる手先は、男らしくごつごつした、太く感じる手になっていた。


「……葛城。……俺たち、戻ったらしい」


 俺の横には、おでこにたんこぶを作っている菜摘の姿がある。どうやら、俺たちは、おでこをぶつけて元の体に戻れたようだ。


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