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幼なじみと一緒にいたら、スクールカーストの底辺になった  作者: 錦織一也
スクールカーストを実施してもいいですか? ダメですか? けど、実施します。
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急々接近

 

『私のスマホ、返して』


 4限目の授業が終わり、大きく溜息をつくと、無言で俺の席の前に立ち、ノートに大きな字を書いて俺に見せつけて来たのは、4軍の木村だった。

 さっきの緊急放送をやって、そして菜摘を教室に送って先生に怒られたせいで、ずっと木村のスマホを持ったままだった。

 もし、授業中に携帯が鳴ったり、触っていたりすると、携帯は没収されてしまう。木村のスマホを俺のせいで没収されてしまったら、俺は一生木村に恨まれるだろう。なので授業が終わったらすぐに返そうと思っていたが、木村がすぐに返してくるとは思っていなかった。


「……」

「分かったから、その無言の圧力をかけるのをやめろ」


 制服のポケットの中で預かっていた木村のスマホを渡し、そして木村はぺこりとお辞儀をした後、すぐに教室を出て行った。


「感じ悪いわね。木村」


 木村が去った後に、木村が俺から離れるタイミングを見計らったように、俺の所に楠木がコンビニのレジ袋を持ってやって来た。


「何で話さないのかしらね。何か、ああやって道具を使って話すって言うのが、何か腹立つ。私とアンタらは違う、同族にするなって感じがするわ」


 そう愚痴りながら、コンビニからおにぎりを取り出しているんだが。


「楠木さん? 何で平然と俺の前の席の藤田の席に座って、おにぎりを取り出しているんですかね? ちょっとは、藤田の気持ちを考えてやってくれないか?」


 楠木が座っているせいで、俺の前の席の、確か3軍だったはずの藤田が座れないって顔で立ち尽くしているんだが。


「許可は貰っているのよ。ぜひ座ってくださいって」


 そういう所はちゃっかりしているんだな、楠木は。


「……あっ。飲み物買うの忘れた」


 楠木のコンビニの袋からは、おにぎり2つと、おしぼり、そしてさっき1軍の奴らが食べていたものと一緒のチョコスティック、ぽーきーしか出てこなかった。


「ヒロ。自販機」

「持ってくるのは無理だぞ」

「違うわよっ! 自販機まで付き合ってって話よ!」


 勿論意味は分かっている。ちょっとボケてみて、楠木がツッコミを返すのか試したかっただけだ。


「あっ、そうだ。こんな1軍のテリトリーの教室で食べるんじゃなくて、購買の方で食べない?」


 1軍の奴らは、他人の机を勝手に拝借して、そして1軍と2軍の奴らで固まって、騒がしく昼食と、菓子を分け合っている。俺たち4軍は、いつもあのやかましいリア充たちの会話を聞こえながら昼食を食べているから、今回は楠木の提案には賛成だった。


「まあ、俺はどこでもいいんだが」

「なら決まり!」


 楠木はおにぎりとぽーきーを袋の中にしまい、俺も弁当箱を持って、楠木と共に購買に向かう事にしたんだが、俺は教室を出ようとした時、目を疑うような光景を見てしまった。


「へへへ……! 楠木が今まで座っていた俺の椅子……! まだ、温もりが残ってる……」


 藤田が、さっきまで楠木が座っていた自分の椅子に頬を擦り合わせて、嬉しそうにニヤニヤとしていた。


「ヒロ。どうした……えっ?」


 俺は教室の中を覗きそうだった楠木を、廊下の壁に追いやって、咄嗟に楠木に壁ドンをしてしまった。

 藤田のあんな光景、楠木に見せたら絶対に泣く。藤田が楠木の間接ケツをして喜んでいると知ったら、どうなるか。楠木は絶対に傷つくし、もう藤田に楽しい高校生活は無いだろう。両者とも悲しむだろう。


「……ヒ、ヒロ」

「……あ、ああっ! す、すまん……!」


 すぐに壁ドンを止めて、お互い顔を真っ赤にしていると、楠木は。


「……壁ドンされたら、もうヒロと結婚するしかないじゃない~!」


 そんな事を1年2組の外の廊下の真ん中で叫んで、そして顔を覆い隠して体、足をもじもじさせていた。


 何て言う事を、楠木は廊下の真ん中で告白するんだよ……! こんな事、1軍の奴らや菜摘に聞かれたら――


「へえ~。4軍同士が、公衆の面前で壁ドンとわね……。生意気な事をしてくれるじゃない……!」


 一番聞かれたらマズイ奴、きっと購買でパンでも買ったのだろう。買ってきたパンを握りつぶしそうなほど、俺たちが壁ドンしたことに怒っている猪俣の姿があった。


「……もう、結婚するしかないじゃない」


 楠木は体中を真っ赤にして、恥ずかしさのあまりにずっと体をもじもじさせて、ずっと同じフレーズを繰り返している。

 この様子だと、本当に恋愛にはうぶのようだ。メイド喫茶でバイトしているのに、中身は凄く乙女。俺の知っている人の中では、ピュアの中のピュアなのかもしれない。ピュアクイーンかもな。


「私ですら、まだ春馬とかに壁ドンってやってもらった事無い……っ! 私より先にやるなんて、凄く屈辱的よっ!!」

「す、すいませんでした~!」


 俺たちは怒りだした猪俣から逃げようとはしたが、楠木はまだ体をもじもじさせているため、全く動こうとはしなかった。猪俣に捕まったら、何をされるか。きっと恐ろしいことが待っているだろう。


「……楠木、暴れんなよ!!」

「ちょ……! ヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒロ~~!」


 猪俣に捕まる前に、俺の弁当箱は包みの結び部分を口で持って、そして強引ではあるが、楠木をお姫様抱っこで、楠木を担いで猪俣の前から逃げ出した。

 この時の俺はどうかしていたとしか思えない。猪俣をさらに怒らせるようなことをしたんだ。

 もう、クラス中で菜摘と浮気をした、楠木と不倫をしたなど、俺の悪評が広まってしまうだろう。そして男子には一生恨まれて過ごす事になるだろう。


「……もう、子供の名前を決めないといけないじゃない」


 お姫様抱っこされたら、楠木にとってはもう結婚は確定のようだ。恋愛、無知過ぎるだろ。



 取りあえず、俺は楠木が落ち着くまで、人気の少ない屋上の扉の前に、お姫さま抱っこをして連れて来た。

 みんなの妬ましい、特に男子の視線は十分に浴びた。もう何を言われる覚悟がある。楠木を抱えながらここに来た訳だが。


「……」


 き、気まずい……!


 人気が多い場所に連れて行くと、また楠木が変な事を言いだすかもしれないし、かえってこんなに人気が無い所に来ても、今度は楠木と凄く気まずくなってしまう。だが今は凄く気まずい。ずっと俺の事をチラチラ見ている。俺は連れてくる場所を間違えたようだ。


「……」


 楠木は、もう顔から火が出そうなぐらい、顔を真っ赤にして、頭からは煙が出ているようにも見える。さっきよりも顔が赤い気がする。お姫さま抱っこが恥ずかしかったのかもしれない。


「……嫌だったか?」


 壁ドンは好きな男子、カッコいい男にされたい、女子にとっては憧れのシチュエーションだ。

 俺は大してカッコよくもない、全く冴えない。物語のモブキャラのような顔つきな男子に壁ドンされて、そしてお姫さま抱っこ。楠木は本当は嫌だったのかもしれないが。


「……ぜ、全然! ……ヒロなら……むしろ……嬉しい」


 顔を真っ赤にして黙り込んでいる楠木だが、ようやく口を開いて話した。大分落ち着いた様子で、俺の肩にぴったりとくっつけて来た。


「……ヒ、ヒロ」

「な、なんだよ……」


 楠木は、目をウルウルさせ、顔を真っ赤にして、吐息が聞こえるほど、俺の顔に近づけてくる。

 楠木は、アキバでメイド喫茶でバイトしている。バイトして働けるのだから、顔はすごく可愛いし、容姿もいいし、足も長い。菜摘とはまた違った可愛さがある。


「……あのさ」


 前に聞いたんだが、楠木はバイトしているメイド喫茶の中では結構人気の方らしいと言っていた。

 そんな可愛い楠木が、俺に体を密着させて、目をウルウルして俺を見つめている。

 俺も、顔が熱くなってきて、心臓が破裂するんじゃないかと思うほど、鼓動が速くなっている。きっと楠木も同じ状況だろう。


「……私、ヒロの事が――」


『すみません。少し、黙って、くれま、せんか』


 楠木が告白しようとしていた時、後ろの屋上の扉が開かれ、そしてスマホで会話する女子、木村がいた。


 よく恋愛マンガで、告白のシーンで妨害が入ることはよくある。あんな運良く妨害なんて起きないだろうと思ってバカと思いながら見ていたんだが、まさか本当に起きるとは思っていなかった。こうやって妨害が入ると、すごく腹立つ。


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