文官少女と2トップ
お久しぶりです。やっとの事で出来ました。これからもぼちぼち更新を続けていこうと思います。
題名変更しました!
中庭で先輩と別れた私。ウームと唸りながらお馬鹿さんが行きそうな場所を考える。
・・・・・後、城の中で探していないところは何処だろう・・・・・ていうか、総務省の人員全員を動員してもまだ見つからないなんて。さすが師匠と言うべきか?凄く迷惑なんだけど。全く嬉しくない。
しっかし、あまり大事にするのは望ましくないので、堂々と探せないのが痛い。
今は、外国との関係が不安定になっているのに、こんな悠長なことはやっていられないんだよ。と、決して師匠の前で口に出来ない言葉を心の中で呟く。湧き上がる苛立ちに思わず舌打ちをし、据わった目で当たりを見渡し、視界に誰も居ないのを確認する。
スッ・・・・・・
徐に目を伏せ、深呼吸を一つする。そして、自分の意識を末端にまで行き渡らせる。そのまま、自らの意識を押し広げるように、外に出していく。自分の存在をできる限り・・・消える寸前まで薄く伸ばしていき、周りの空間を侵食していく。
この技は、とある武術の呼吸法から生まれた、気配を察知する技である。
やり方は簡単だ。自身の体の動きと呼吸を同調させ、自らの気配を極端に、ギリギリまで抹消し、周囲の気や気配、存在を感じ取るというものである。
魔法を使わず、自身の鍛錬になる上に意外と便利で、しかも自分の技量によって意識を広げる範囲が変化するときた。
・・・・・これはやるっきゃねぇだろ。
ちなみに、私はこれに嵌りに嵌まった。気配の察知を毎日のようにしていたお陰で、動かなくてもすぐに体の動きと呼吸を同調させる事が出来るようになった。
これは、全ての武術に通じる基本中の基本。
これを完全なる興味から極めた私は、武術の腕が大幅に上がった。今では、最高峰の堅さを誇る古竜を一撃で狩ることが出来るようにもなったほどに。
・・・・・ちなみに、それでも修行(と言う名の虐待)では、師匠にボコボコにされるのだ。もうなんなんだよ、あの人。泣きたいんだけど。つーか、泣いてもいいよね。
その時、
「・・・・・・っっ!!」
私の絶対領域の中に師匠の気配と思わしき微かな気配を捉え、ある場所へと走り出した。
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「失礼しますっ!」
久しぶりに全力で走って息切れしながらたどり着いたそこは、先程まで私が居た中庭とは正反対の所に位置する騎士達の訓練場だった。普通なら、大人の足で30分は掛かる距離。それを私は子供の足で、たったの5分でたどり着いたのだ。我ながら凄いと思う。これも、絶対に師匠の虐めのお陰だ。
・・・・・・・・・・・・・全く嬉しく無いんだが。逆に、今までの素晴らしき心的外傷に、目から水が溢れそうになる。私の記憶の底にあるブラックボックスに封印していた、立ち直れなくなりそうなあれこれを思い出しそうになり、慌ててそれを封じ込める。
「リ、リア!?おい、どうしたんだ!?」
ゼェゼェと荒い息をついている私にビックリして、知り合いの騎士のレオが駆け寄ってくる。狼の獣人の彼は、私より8歳年上の、騎士団のエースである。私は彼の言葉に答えず、徐に手を伸ばす。
ガシッ
「・・・・・・・へ?」
「師匠、知らない・・・・・?」
私は、レオの胸ぐらを掴み、にこやかに語りかける。
心配してくれている彼に悪いが、私は悠長に問答をしている場合ではないのだ。一刻も早くあのお馬鹿さん・・・・・もとい、ストレス・トラブル製造機を発見・捕獲し、書類地獄に戻らせねば、私達の残業もとい修羅場での拘束時間が右肩上がりに増えていく。私だって、そんな苦行は全力で遠慮したい。
・・・・・・もう、手遅れっぽい気もするが。
い、いやっ!ま、まだ間に合う・・・筈。今からかなり悲惨な未来が見える気がするが、気のせいだろう。
さてと、いきなり胸ぐらを掴まれて呆然としているレオを、どう復活させようか。
「知らねぇよっ!!」
遅まきながら、復活したレオ君。ある意味不幸な彼は、顔色を変えて絶叫する。
チッ、何だ、知らないのかよ。確かに一瞬、師匠の気配を感じたのになぁ。
「おっ!リアじゃないか!!」
「久しぶりだな!!元気にしてたか?」
レオの声が聞こえたのか、私達に気付きガヤガヤと騎士達が来る。何やかんやと周りをガタイのいい兄ちゃんに囲まれた私は思わず顔を引き攣らせ、一歩後ずさる。何というか・・・・・暑苦しいのだ、彼等は。その時、この場にそぐわない・・・・・つーか、聞こえてはいけない声が聞こえた。
「おや、リアは相変わらず大人気ですね。可愛い妹分の見学となれば、皆も熱が入るでしょう。」
「ハッハッハ、おぉ!リアは今日も可愛いな!・・・・・野郎共!!リアにいいところを見せるぞぉ!!」
背後から聞こえた優しげな声と、力強い声に、オォ!と声を上げて騎士達は訓練に戻っていく。・・・・・何故か、去り際に私の頭をグシャッと撫でて。ピシッと体が思考と共に固まってしまった私にはどうでも良かったが。
何 故 こ こ に 居 る ・ ・ ・ ! !
お 前 ら 近 衛 団 長 と 騎 士 団 長 だ ろ う が ・ ・ ・ ・ ・ ! !
本来なら此処にいるはずもない二人の声を聞いて、私は外聞も何も無く、頭を抱えたくなった。
「な、何でこんな所にいるんですかっ!近衛団長さん!!騎士団長さん!!」
「アハハッ、久しぶりだなぁ。リアは相変わらず小さいなぁ。」
「ちょっ、騎士団長さん!ウギャァァァァァァァァァァッ!!」
嬉しそうに破顔した熊のような親父(30代)にヒョイッと持ち上げられ、そのままグルグルと振り回される。
騎士団長 アレクシス・ラージル
これでも、魔獣や幻獣退治を主とする騎士団のトップであり、生きた伝説なんだぜ?・・・・・まぁ、生きた伝説などこの国にはゴロゴロ居るーー何故か文官の中にも魔獣退治や幻獣退治の方面でいるーーが、この人は、その中でも国で知らない者は居ないほどだ。・・・・・どう見ても、親父だが。言い方によってはダンディ何て言い方は・・・・・うん。似合わないな。無理だ。どう好意的に見ても熊だ。ちなみに独身。彼の将来というか、彼女(及び嫁)事情が心配だ。
遠慮も欠片もなく思いっきり振り回されてグロッキーになった私は、肩をバンバン叩いて全力でギブアップする。
・・・・・うぇえええええ。気持ち悪い・・・・・。
すると、三十路のオッサンは渋々ながら下ろしてくれる。彼はたいした反省も見せず、豪快に笑ってやっと質問に答えてくれた。
「アッハッハ。今日は近衛と騎士の合同訓練の日でなぁ。それで俺らも一緒に此処にいるわけだ。それにしてもリア、大きくなったか?」
「昨日会ったよっ!一日でそんなに変わるわけがないじゃん!!成長期でもあるまいし!」
「そうかそうか~。この年頃の子は、よく背が伸びるんだなぁ~。」
「話を聞いてぇぇぇぇぇっ!!」
何処までも噛み合わない会話に、思わず涙目になる。その時、フワリと頭の上に手をのせられ、撫でられる。
「騎士団長殿。そこら辺にしてあげてください。リアが困っていますよ。」
優しげな声がこの場に響く。それが私には、天の声に聞こえた。
「おおっ、近衛団長か。貴殿もリアには甘いなぁ。」
・・・・・そう。私を助けてくれたのは、今まで空気だった近衛団長様だった。
近衛団長 レイン・アルディーク
全員が貴族出身であり、王族の護衛を主な仕事とするなど、騎士の中でも花形のエリート集団を率いる、アルディーク伯爵家現当主。その仕事柄故、個人の功は騎士団長に譲りがちだが、その実力は近衛のトップに相応しく、騎士団長と同等の力を誇る。そんな彼は、我が国屈指の英雄だ。騎士団長と共に国の軍部のトップ2を担う英雄様。見た目は麗しく、中性的なお顔だが、騙されてはいけない。
私は昔、ニコニコと、常に天使の微笑をその顔に浮かべている彼が笑いながらドラゴンを素手で引き裂いたのを見たことがある。ニコニコの天使の笑みに、返り血が飛び散っているのは、とても凄絶だった。
・・・つーか、恐かった。特に、その笑顔は変わらないのだ。余計恐かった。まあ、それをケラケラ笑って見ていた近衛団員達もどうかと思ったが。
「・・・・・リア」
「はいっ!!」
「リアはいつも頑張り屋さんですね。今日は、此処に何の用があったのですか?」
私に目線が合うように屈んで、穏やかな笑みを見せる近衛団長。
・・・・・・・もう、大好きっ!!
総務省では有り得ない私の扱いに、思わず興奮する。
いやぁ、この人、いつ会っても紳士だよっ!ジェントルマンだよ!
総務省では、呼び捨て、パシリは当たり前。下手をすると、先輩権限で残業に付き合わされ、一睡も出来ずに20回目の朝日を拝むこともある。
・・・・・あれ?何、この差。何故か、目から汗が出てきそうになったよ?
「えっと・・・・・王族の皆さんの健康確認と、師匠を探しに来ましたっ!」
ついでとして先輩に頼まれた用事を思い出し、二人に伝える。
およ?何故か二人とも、深刻そうなお顔をしていらっしゃるが。どうしてだろう。ちょっと、聞いてみますかっ!
「二人とも、どうされたんですか?」
ちょいちょいと二人の袖を引き、注意をこちらに向けてみる。二人は顔を見合わせ、苦笑した。
「いえ・・・・・リアは良い子ですねぇ。」
近衛団長はしみじみと呟き、私を抱きしめ、ほおずりをする。
・・・・・へ?何、ナニ?近衛団長さんどうしたの!?普段の貴方なら絶対にやりませんよねっ!本当にどうしたの!?
頭の上にハテナを浮かべ、慌てる私に気が付いたのか、騎士団長が複雑そうな顔をして口を開く。
「いやなぁ。こないだ、王族の方々に謁見したんだよ。するとな、王も王妃も、寵姫様も、最近、使える金が少ないとおっしゃるんだよ。しかも、その為に俺らの活動資金や規模、その他諸々を削れとまで行ってきてな・・・・・・。」
「・・・・・あぁ、ご苦労、お察しします。」
遠い目をして話す騎士団長さんの口に出していないところまで自ずと色々と察してしまい、思わずいたわる。すると、彼は”分かってくれるのかっ”と。感極まったように私の肩を掴み、がくがくと揺さぶる。心なしか涙目の彼に、我が親+αの事ながら、思わず頭痛がする。
・・・・・・・・・・・・・本当に、この人に何を言ったんだ。あの人達は・・・!!
頭を抱えたくなるのをぐっと堪え、思わず半笑いを浮かべてしまう。というか、身内の馬鹿さ加減に、それくらいしか出来ないのだ。ふと、近衛団長がこんな状態になっている理由に思い至り、恐る恐る騎士団長さんに聞く。
「・・・・・・もしかして、近衛団長さんにも・・・」
「ああ・・・まあ、な。近衛団長は、最も王族の方々のおそばに控えるからな・・・・・。口に出せぬ苦労もあるんだよ。」
騎士団長さんが同情した目で近衛団長さんを見やりながら話した内容に、やはり予想が大当たりしてしまったと知って、泣きたくなる。すると、徐に、近衛団長さんが低い声で笑い出す。
「ク、クククッ、いやぁ、あの時間は地獄ですね。我々の苦労も知らずに好き勝手言いやがって・・・・・旅行に行きたい?夜会を開きたい?こちとら、警備もあるのに・・・ククッ、ククククククククククククッ」
怪しいどころか、完全に壊れてしまった近衛団長さんに、騎士団長さんと二人で生温かい視線を送る。そうか、疲れたんだね。可哀想に。
近衛団長さんの目を見て、連徹35日目にして、途切れぬ書類の量にブチ切れて世界を滅ぼそうとした先輩の目を思い出す。
世界の敵として(主に書類に対して)立ち上がった先輩ーー彼は、”書類仕事なんてある世界、ぶっ壊してやるよっ!!”と叫んでいたーーと、同じ目をしてるよ。
彼の目は、完全にあっち側に逝っちゃっていた。
・・・・・・・・・・・・・ちなみに先輩の場合。あの時は、書類がどんどん増加して、途切れる瞬間が無かった時。人はそれを『修羅場』と言う。あんのクソ忙しい時に、先輩は、いきなり世界を滅ぼしてやると叫びだし、部屋を飛び出そうとしたのだ。
数十日間一睡も出来ず、途切れない書類に対するイライラとストレスと、自棄になってヤケクソ気味にハイになったテンションがピークになっていた私達は、それはもう、ブチ切れた。
それまでヤケクソのように張り上げて、部屋の中を飛び交っていた怒号が一瞬で止み、全員の顔から表情が抜け落ちる。このクソ忙しいときに、一人でも抜けると、とんでもないことになり、ベットに飛び込む日が一週間は先になることが火を見るよりも明らかな状態だったのだ。
そんな中、大声を挙げて書類地獄から逃げだそうとした愚か者の登場。
即座に全員で先輩を捕獲。そして、思う存分、ストレスを発散するように殴る蹴るの暴行をした。
『このアホみたいにある書類を全部済ませてから、死ぬなり世界滅ぼすなり何なりしろやボケェ!!』
『残業終わらせてから、心ゆくまで死ねぇ!!一人だけ逃げようとすんじゃねぇぞ!』
『お前の事情はどーでもいいから、さっさと仕事やれや!!死ぬのは書類が終わってからが本番だ!おら、きりきり働けぇ!お前の人権とか、ゴミ以下だ!書類仕事をしないお前は、そこらのゴミ以下と思え!!』
これは、その時の私達の心からの叫びである。あの時の臨場感がうかがえる、素晴らしい台詞だ。思う存分ボコった後、治癒魔法を掛けて先輩をイスに縛り付け、すっきりして晴れ晴れとした気持ちで私達は書類仕事に戻った。
・・・・・勿論、先輩は、書類10倍の刑である。自業自得だ。ちなみに、その先輩は、総務室で死のうとし、仲間に無自覚にトドメを刺されたお人である。
「・・・・・それに、フローラ王女の問題もあるのになぁ。」
つらつらとあの時の話を思いだしていた私の耳に、そんな台詞が入る。唐突に出てきた自分の名前に驚き、意識を目の前に向ける。目の前の騎士団長さんは、顔を歪め、手を爪が食い込むほど硬く握りしめていた。
「・・・・・そうですね。」
え、何かシリアス展開?なんで、二人とも、そんな険しい顔をしてるの??
私が戸惑っているのを察しているのか、近衛団長さんが丁寧に説明してくれる。
「リアは、現在の王族の問題を知っていますか?
・・・・・現在、王女はこの国に二人居ます。王や王妃、寵姫殿に溺愛されている第二王女、フルーラ王女に、誰もその姿を見たことがないと言われる第一王女、フローラ王女。確かに、第二王女は素晴らしい方です。」
「そうでしょう!?」
「「!?」」
近衛団長さんの言葉の中に、私の愛しの妹の名前があり、思わず食い気味に声を上げる。私の可愛い可愛い妹のフルーラ。年は違わないがーー王妃の子と寵姫の子でありながら、同じ年、同じ日、同じ時間に生まれたのだ。ある意味奇跡だーーあの子は私の妹である。顔は私に似ず、数百年に一人レベルの絶世の美少女だ。だから、実の親の王と寵姫だけではなく、敵であるはずの王妃からも溺愛されまくっているのだ。ちなみに、姉妹仲は超良好。
馬鹿共がまともに教育せず、溺愛するばかりだったので、このままじゃ王族としても人としてもヤバイ、個人的な感情で権力を振り回す甘ったれたお馬鹿になりそうだったので、慌てて私が同い年ながらあの子を教育したのだ。
私も精神年齢が高かったので、問題は欠片もなかった。只・・・・・私と共に居ると言うことは、様々な悪意を私がぶつけられるのを幼いときから見ていたわけで
・・・・・・・・・・・・・結果、超シスコンになりました☆テヘッ
私も、大切に育てていた妹が私を慕って”姉様、姉様”とちょこちょこと後ろを着いてきてくれるのが嬉しかったのもあって、あまり気付いて無かった。つーか、私も相当なシスコンだったから、気にしていなかったとも言う。
しかし、最重要な問題があったのだ。それは、数年前に発覚した・・・・・
『姉様、凄いですの!!フルーラの使えない綺麗な魔法をどんどん使えるなんて!姉様、大好きですの!!』
『えへへ。ありがとう、フルーラ。これは、私のオリジナル魔法だからね~。ちなみに階級はSSランク!フルーラの(喜ぶ顔を見る)為(だけ)に、この(超魔力無駄遣い&無駄に精密な魔力操作が必要な)魔法を(10日10晩不眠不休で)開発したからね~(実用性は一切無し)。私もフルーラのこと、大好きだよ!!』
『姉様!』
『ん?』
『私、姉様のお嫁さんになるのですの!』
『あはは、ありがとう。でも、姉妹では結婚できないんだよ?(そういう問題でも無いけど、私もフルーラ好きだし、問題な~い。性別の差は関係ないよね♪)』
『大丈夫なのですの!教育係のクリスが言っていたのですの!!私が本当に好きな人が出来たら、さっさと適当に都合のいい人を娶って、本当に好きな人と愛し合いなさい、って!!子供さへ生めば、大丈夫だそうですのよ!
姉様、大きくなったら、姉様のお嫁さんにしてくださいですの!!適当に都合のいい人も、フルーラ、今、頑張って探してるのですよ!姉様、式の日取りはどうしますの?』
『(クリスの馬鹿野郎っ~~~!!!後でしばくっ!フルーラめっちゃ本気じゃねえか!!)』
ふと知ってしまった妹(同い年)の理想の結婚相手事情。私も相当シスコンで、常々『フルーラ天使!!俺の嫁!!』と叫んでいるが、これは・・・・・・・・・・・・いや待て。ありなのか?私の隣に、絶世の美女になったフルーラが並んでいるのを想像する。
・・・・・・・・何これ。幸せすぎて軽く死ねる。
どうしよう。私、フルーラの花嫁姿、見れないかも知れない・・・尊すぎて。ヤバいな、割とマジで。今から、鼻の血管を鍛えておかないと。フルーラの結婚式で鼻血をだすなんてことはしたくない。
・・・・・とにかく、フルーラの婿候補には、私の屍を超えていって貰おうかなっ!何、少々肉体的にも精神的にも効くお話(意訳)をしようとしてやるだけさ。ちなみに、今の時点で私に勝てるのは、このぶっ飛んだ国でも師匠を始めとする、人としてのナニカを遙か彼方にぶっ飛ばしたごく僅かな、両手で足りるほどの人数だけである。さすがに私もそこまで行け・・・つーか、逝きたくねぇ。あそこまで逝ったら、もう(色々な意味で)終わりだと思うんだ。
そんな私が数年後、どうなっているか・・・・・うふふ、フルーラに懸想するような不届き者には、不可能だなんて言ってないヨ☆死ぬ気で来れば、私も妥協して・・・・・命までは奪わないかも知れないじゃないかっ!可愛い可愛い妹を簡単に渡すわけねーだろ。お馬鹿さんめっ☆
とにかく!結論は『フルーラは可愛い!フルーラは天使!フルーラは俺の嫁!!』これに限る!!
・・・あり?騎士団長さんと近衛団長さん、何か引いてねぇか?トリップしていた思考を引き戻し、意識を二人に向ける。
「そ、そうですね。・・・・・ところでリア、貴方はフローラ王女と会ったことはありませんか?」
「え・・・・・」
気まずそうに咳払いをした近衛団長の問いに、思わず顔が引き攣り、固まる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、本人です。
当たり前だが答えられず、曖昧に頷く。・・・うん。”会ったことは”ありませんよ?本人なので。
「それがなぁ。俺ら、これまで一度もフローラ王女に会ったことがねぇんだよ。王族の方々に聞いても、碌な答えは返してくれねぇし・・・・・リアは王女様が何て呼ばれてっか知ってるか?妹姫のあまりの美しさに、王からも忘れられた可哀想な姫、『幻の王女』。あまりに表に出ねぇもんで、最近では存在すら怪しいとと囁かれてるんだ。」
悔しそうに言う騎士団長さん。近衛団長さんも、顔を歪めて俯いている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、『幻の王女』、目の前に居るんですが。
総務省で働いて、騎士団でじゃれ合って、近衛団と駄弁って、魔術師団で(怪しい)実験して、その他諸々・・・・・。
超、(口に出せないことを色々と)やらかしてるんですけど。
超、王から忘れられた快適&自由ライフをエンジョイしてるんですけど。色々な人に顔もバッチリ覚えて貰ってますよ!・・・問題児的な意味で。
どうせ彼等は、王にさへ忘れられた私を護れない的な意味で責任を感じているんだろうけど・・・今まで、そんなに悲しいと思ったことはないんですけど。逆に、めっちゃフィーバーして自由に生きてるんですけど。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・何、この認識の差。
別に私が悪いんじゃないんだけれどーー一番悪いのは、勿論、クソ親父とクソ女だーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・何、このとてつもない罪悪感っ!!
優しい二人を騙しているようで、とても居心地悪い!つーか、罪悪感半端ねぇ!ついつい視線を泳がせながら、私は二人を慰める。こんなに落ち込んでる原因が私なんて・・・・・・・・死にたい。割と切実に。
つーか、私がこんないらんことをしてるのって、そもそもの原因、師匠が逃げ出すからじゃね?何なのもう。泣いていい?
慰めながら、別の意味で泣きそうになった私に、通信が入る。頭にハテナを浮かべながら通信に出る。
「はいはーい。こちら可愛い可愛い、総務省のアイドル、リアちゃんでーす。」
『遅い!!長官の居場所の特定が出来ました。さっさと総務室に来い!!!』
渾身の(?)ネタをスルーされた上に、怒鳴られて通信を一方的にぶち切られる。
・・・・・キレていい?キレていいよね?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・師匠、ぶっ殺す!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふと、今まで、師匠に一発入れようとして、仕返しされてきた心の傷を思い出す。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、やっぱ後が恐いので、荒れ狂うこの感情は先輩にぶつけようと思います。
意気込みを胸に、騎士団長さんと近衛団長さんを置いて、全力で走り出した。
「(待ってろぉ!!師匠!!今度こそ、一発入れてやる!!)」
新キャラ登場!!彼等は、これから主人公と絡んでいく・・・はず!
今回は、主人公の昔の話多めでした。リクエストや疑問があれば、それの詳しい話や後日談、又、昔の話なども番外編として投稿していこうと思います。