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王女は普通を主張します!  作者: 火宮魅月
政務編
1/5

驚きの宣告

 暇つぶしに読んで戴ければ幸いです。

 主人公は、自覚はありませんが転生しています。話には直接関係はありませんが、少し頭の隅にでも置いといてください。

 北大陸、南大陸、東大陸、西大陸、中央大陸。5つの大きな大陸があるこの世界。今日も概ね平和である。 しかし、5つの大陸の中央に位置する中央大陸。その大陸の中にある数多の国の中の一つ、レイノルド王国の王城では、国・・・・・否、世界を揺るがす決定が行われていた。


---------------------


 ・・・・・・・・何だと?

 私・・・レイノルド王国王位継承権第一位王女、アストイス・レイノルド・フローラ、7歳は父・・・現レイノルド国王から飛び出した言葉に耳を疑った。

「と、父様・・・それは誠ですか。」

 思わず聞き返してしまう。暗に正気か?と問うているのである。

 しかし、王は隠れた言葉の意味に気付くこともなく、応接室のソファにふんぞり返って重々しく頷く。

「うむ。お前は8歳から、この国の政務を担いなさい。それが第一王女であるお前の使命だ。」

 

 ・・・・・・いや、ねーだろ。つーか、ふざけんな。床に跪く私を見下ろす王に見えないように拳を握る。

 普通、8歳からホイホイ政治が出来るわけねーだろーが。経験不足を通り越して、仕組みさえ満足に分かっているのかさへ不安な餓鬼に忠臣や保身第一な貴族共が政治を任せるわきゃねーだろ。国が割れんぞ。

 つーか、8歳まで後何ヶ月だと思ってるんだよ。二ヶ月だよ。もう泣きたいよ。

 目の前に居るこの男は、この国を滅ぼしたいのか。国の中の豪華絢爛なところにしか目を向けず、その裏に流れる多くの血や涙、溢れる怨嗟や恨みの声を無視し、民の不安を、真っ当な貴族達の苛立ちに目を向けることはなく、国庫を食い潰して忠臣達の言葉を聞かず・・・・・・・・・・・・・・正に愚王。

 こんな男と血が繋がっていると考えただけで、吐き気がする。さっさとこんな男、王座から引きずり下ろしたいが、今は無理だ。腐りまくったこの国の立て直しが先だ。

「これは勅命だ。・・・・・・・・・・分かったか?」

「はいっ!!お父様のお役に立てるように私も頑張ります!」

 本音を偽りの笑顔で隠し、愛想良く返事をする。その言葉に満足したのか、王は手で退室するように命じる。



 ・・・・・・・・・・・・ついぞ、私が部屋を出る瞬間まで王の視線が私の方へと向くことはなかった。



ーーーーーーーーーーーーーー

 応接間から自分の部屋に戻った私は、簡素な部屋の中に申し訳程度に置かれている小さなベッドに腰掛けて唸る。とりあえず、今、私が置かれている状況を整理する。


 ・・・・・私が王女として生を受けたレイノルド王国。この国は様々な種族の者が手を取り合って住む国だ。この国には、獣人族、人族、妖精族、森の民・・・・・と、沢山の種族の者が住んでいる。

 この国の王族は人族だ。・・・だから、私は人間になるというわけだ。


 

 ・・・・・・・・・・・・まあ、王族云々言う前に、今すぐにでもこの国は滅びそうだが。



 理由は簡単。当代国王である我が父がどうしようもないほど愚かだったからだ。

 周りの貴族共の甘言に惑わされ、真に民のためになる法を施行せず、それなのに、自分の周囲だけ儲かったことにより自分は国を豊かにしたと満足する・・・・・・・本当に、最悪なのだ。

 城下では人攫いや強盗、盗みや殺人などの犯罪が横行し、城では売位売冠、賄賂、汚職は当たり前。酷い者は、城の中でも奴隷を連れて歩き、完全に王族(王と王妃、寵姫を除く)より豪華な服を着たり、豪華なものを食べたりしている。・・・・・・しかも城内で!!!!!

 そんな中、ポッと出の王女(8歳)が政治を行い始めたら・・・?





 ・・・・・・・・・暴動どころか、反乱が起こるな。







 まあ、私もそんな状況をただ放っておいた訳ではない。今までにも出来ることはやってきたし、更に私は、2年前の5歳の時から城の下働きとして働いてきた。今は、文官“リア”としてそこそこ文官や騎士、魔術師達の間で有名になっていた。

 ・・・・・・・この2年間で私は沢山のことを学べたと思う。

 ・・・・・・・いやあ、当時、城の中でもまともで優秀な師匠に何の身分もない“リア”として土下座して良かった。めっちゃ厳しかったけど、その分、力と人脈を得られた。

 ・・・いや、師匠は今でも厳しいけど!!!



・・・私も、自分の言動が7歳の餓鬼に相応しいものだとは思っていない。良くいえば大人びている。悪くいえば枯れている・・・・・否、達観していると言ったところか。私がこんなに冷めているのにも理由がある。その理由は簡単だ。



・・・幼い時・・・大体3歳の時から沢山の暗殺者に襲われてみ?

 又は、毎回食事に毒や異物を入れられているのでも可。

 勿論、毒にも苦しんだし、私は父から疎まれている。だから、幼い時から護衛の兵士一人も付けてもらえなかった。味方して、護ってくれるものもいたが、それでもすべての襲撃を防げたのではなかった。

 では、その残りは誰のところに来るのだろうか。



・・・・・勿論、標的()の所だよなあ?



そんな状況で生きてきた私に子供らしさなんて期待すんな?御伽噺(おとぎばなし)を信じていられたのも、3歳までだったな。・・・・・我ながら泣けてくるんですけど。


 さて、

「・・・・・ライク」

「はっ」

 私を常に陰から護衛してくれている直属の暗殺部隊の頭領の名を呟くように呼べば、部屋に気配と共に姿が現れる。

 ・・・・・直属暗殺部隊(略して暗部)は、完全なる非公認、非公式で、国内外問わず誰も知るものは居ない。

 ・・・・・ん?王にさへ許可を取っていないだろうって?



 バ レ な き ゃ い い ん だ よ 、 そ ん な も の 


 ぶっちゃけ、この国の暗部達は腑抜け揃いだからね。・・・・・使えねえんだよ。(つたな)すぎて。

 ん?本気であいつらを使っている王達はどうなのかって?



 




 ・・・コッソリうちの暗部と闘わせてボロボロにして、陰で思う存分嘲笑ってやりましたが何か? 







 まあ、何も知らずに襲撃だ!って喚いていた馬鹿達を、皆(私+うちの暗部のメンバー)で陰で爆笑してやったな。

 うん。一年経った今でも後悔は欠片もない。

 へ?罪悪感?

 ・・・・・・・・あるわけねーだろ。

 逆に、あまりの情けなさに、(笑いすぎて)涙が出たな。

 勿論人ごとでっせ!!あまりある哀れみ(と蔑み)に、しばらく私は生暖かい目で過ごしたが。

 感情で言えば、哀れみが一割、残りの九割は・・・・・多大なる悪意と悪戯心と蔑みからだな!!!

 こほん。そんなことはどうでもいい。私はライクに『命じる』。

「私のこれからの活動を邪魔しそうな奴と、私の力になりそうな才媛をそれぞれリストアップして私に報告して。」

「了解。」

 端的に伝えると、ライクも短く返してその姿と気配が消える。フウ、と、私は詰めていた息を吐いて体の力を抜く。


・・・・・・・・じゃ、やるか。

「よいっしょ。」

 ベットの下にある木箱を引きずり出し、その中から綺麗に畳まれた文官服を引っ張り出す。それを着て身だしなみを整え、鏡の前で深呼吸を一つする。そして、今まで無意識の内と言っても良いほどに被っていた心の仮面を外し、性格を、心を切り替える。




 “父である王に見切りを付け、自らの敵には暗殺も躊躇わない年の割に早熟した冷酷な『王女』”から、

 “明るくて賢いが、幼くてドジな素の自分としての『リア』”に。



 鏡の中から私を見返す少女は、幼くあどけない雰囲気を纏って立っていた。

 ・・・・・王や家族の前ではなく、正体を明かしていないとは言え、城に勤めている皆の前での方が素の自分が出せるって・・・・・どうなんだろう?

 そんな自分に心の中で溜息をつき、ふと、窓の外を見る。



「ゲッ」

 ・・・・・・・・・思ったより、窓の外が明るいんですけど。

 一瞬で顔から血が引き、ギギギッと音が聞こえそうに成る程ぎこちなく時計を見る。



・・・・・・出勤時刻一分前だった。




「遅刻だぁぁぁぁぁぁぁ~っ!!!」

 絶叫しながら、圧倒的な身体能力を誇る獣人も真っ青のスピードで部屋を飛び出した。



 ダダダッと音を立てて廊下を走る。すれ違う城に勤める人たちが皆ギョッとした顔で飛び退くが、構わずに走る。

 そして、『総務室』と書かれた部屋のドアを蹴り破る。

「師匠ぉ!文官リア、只今(ただいま)参上しま・・・・・・・・へぶぅ!!」

「やかましい!!」

 瞬間、師匠の怒号と共に素晴らしく凄まじい速さで一直線に飛んできた巻物を見事に顔面でキャッチする。驚きの巻物の威力で、一瞬足が地から離れ、文字通り空を飛んで地面に叩き付けられる。



 ・・・・・・・・・ヤッベェ。今、意識が飛んだよ。オイ。

「ゲホッ、ゲホッ!!し、師匠!!巻物は立派な凶器だって、この前、言ったじゃないですかぁ!!」

 軽やかに飛び起きた私は、憤然と抗議する。しかし、師匠はフンッと鼻を鳴らし、冷たく私を見下ろす。

「朝っぱらからドタドタ喧しい馬鹿を黙らせるには、手元にある巻物を投げるのが一番手っ取り早いでしょうが。それとも何です?





・・・・・・・・・私の愛用している扇をくらいたかったんですか?」

「え゛っ」

 師匠の言葉に顔を引きつらせる。

 師匠は、東大陸から輸入した扇というモノを愛用している。それ本来の用途は風を送る送風機だ。・・・・・・本当はな?

 師匠が愛用しているのは、たおやかで優美な、繊細な扇である。触れたら壊れそうな程だ。

 ・・・・・・・・・・しかし、しかし!!師匠は、それを気に入りすぎて、師匠の余りある魔力でガッチガチに数十個の魔術で固めているのだ。

「いやいやいやっ!師匠の扇って、今、師匠の懐に入れているソレですよね!?」

「ソレですよ?」

「死にますって!あれ、すごく強化しまくってて、ドラゴンに踏まれても、数多の攻撃魔法を一斉に受けても、世界中の武器で攻撃されても耐えきる上に、傷一つ付かないシロモノになっちゃていますよね!?あれは、扇ではないです!!

 

 世界一頑丈な鈍器(凶器)ですっ!!」



 必死に師匠の提案を拒めば、師匠は酷くつまらなそうな顔をする。

「何言っているんですか。私の弟子を名乗るのなら、この扇くらい、受けきってみなさいよ。」

「私、知っているんですからねっ!この間、師匠、憂さ晴らしと称して、ドラゴンハンティングに行ってたでしょう!!師匠にその扇で横っ面張り飛ばされたドラゴン、めっちゃ吹っ飛んでいましたよね!?

 私に、種として世界一の堅さを誇るドラゴンより堅くなれと!?

 大体、私は子供ですよ!子供!!魔法を使って防御すればともかく、その扇は魔法を無効果するでしょうが!!つーか、そのドラゴン、結局どうしたんですか!!」

「もうこの際、年なんて関係ありませんよ。特別に特訓してあげますから。

・・・・・ドラゴンですか?おいしく頂きましたよ。」

「食べたんですか!!ドラゴン!!!」

 ・・・・・衝撃の事実発見。師匠が殴り飛ばしていたのは、ドラゴンの中でも上位に位置する古竜だった気がするのだが。

 ・・・・・そりゃおいしいだろうよ。伝説級の幻獣を喰ったんだから。

 そして師匠は、私の話を逸らそうという必死の抵抗をさらっと無視して、無理矢理話を元に戻す。

「ええ、おいしかったですよ。さあ、特訓しましょうよ。あっ、そうそう、新しい魔法を開発してこの扇に付加してみたんですよ。楽しみですねぇ。」

「無理ですっ!そんなことになれば、年とか性別とかそんなものどころか、生物として大切なナニカを思いっ切り投げ捨てることになりますよね!?師匠は私に死ねと!?つーか、あんた、新しい魔法を試したいだけだろうがよ!!」

「それの何が悪い。大丈夫。一回だけですよ。はたくのは。


  


 ・・・・・・・ね?殺すわけでもありませんし。」





 「それは立派な殺人宣言ですっ!!!!!」

 私は、思いっきり絶叫した。

 さすがフローラの保護者。師匠は最強です。実は、フローラのぶっ飛んだ性格の大部分を形成したのはこの人。

 この人には、フローラも逆らえません。フローラの胃に穴が空く原因の9割。


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