第20話 ロリっ娘海賊王とシスコン兄貴、参加決定!
「おいおい。俺達相手に一人で特攻かよぉ~、ナメてんのかぁ?」
「は~い! こいつ、第一被害者に決定ぃ~!」
「身の程知らずが粋ってんじゃねーぞッ! 女の前で死ぬほど痛めつけて、大恥かかせてやるぜッ!」
カイリが駆け寄って来るなり、侵入者達が一斉に迎撃態勢に入った。
それと同じか否かのタイミングで、真太郎がカイリに補助魔法をかける。
「『クイックネス』、『インビンシブル』、『クリティカルマインド』!」
補助魔法『クイックネス』で素早さを増加させ、『インビンシブル』で一定時間敵の攻撃を無効化させ特攻の準備を整えさせる。
そして、全ての攻撃がクリティカル攻撃に変化する『クリティカルマインド』をかける事で、初撃で仕留められる確率を上げた。
「『烈花狂斬り(れっかきょうぎり)』ッ!」
真太郎のアシストによって完璧な特攻を決める事が出来たカイリが、剣技のスキルを発動する。
身の丈以上の白鞘から一瞬にして刀身が抜刀された次の瞬間、侵入者達が乱れ切りされた。
カイリの凶刃の餌食にされた侵入者達の全身から、勢いよく噴き上がる真っ赤な血は、さながら狂い咲く花のように見える。
「グハァ! い、一撃だとぉ……!?」
「い……痛てぇー! 痛てぇよー……ッ!」
「ま……まさか、死んじまうのかよ……ッ!?」
侵入者達が、それぞれの断末魔を上げる。
声が掻き消えると同時に、彼らの体が光の粒子になって霧散した。
「刃物出した喧嘩は遊びじゃねーんだよッ! 命のやり取するつもりなのに、殺される覚悟もしてねーのかッ!? ったく、馬鹿はこれだから困るぜッ!」
一刀の元に侵入者達を斬り捨てたカイリが、思わず語気を荒くする。
「『烈花狂斬り』のクリティカルヒットで即死効果発動……やっぱ、一撃で死ぬと瀕死状態のカウントすっ飛ばして、神殿送りになるんだな。って事は、これからは即死防止アイテムを装備しないとダメだな……でも、下手に瀕死状態になって、捕獲されたりしたら、それこそヤバいな……ううむ、悩むなぁ」
突然の襲撃の興奮冷めやらぬうちに、考え事に耽る真太郎だった。
そんな妙にクールな真太郎に、カイリが呆れ顔で話しかける。
「おいおい、こんな所で考え事かよ。アンタ、この状況で随分余裕あるな」
「これでも、この世界に来てから連戦続きで修羅場慣れしてるからね。カイリ兄さんを涼しい顔でアシストする余裕ぐらい、十分にありますよ」
「誰がカイリ兄さんだッ!」
兄さん呼ばわりされた瞬間、カイリがブチ切れる。
「海賊王のお兄ちゃんなんだから、間違った事は言ってないでしょ? 何怒ってんの?」
真太郎はシスコンのカイリをからかって遊ぶと、おもむろに杖を握り直した。
「しかし、実際の『戦闘』ってのは、難しいよねぇ。ゲームん時は、プレイヤーが関与しなかった要素――元いた世界とは違う視界の問題、敵との心理の読み合い、更には足場の取り方とかまで、ちょっと戦うだけで、気を配る事が多過ぎだよ。そしてなにより、恐怖感や緊張感から来る手の震えとか、呼吸の乱れとかの心身症が、結構足を引っ張ってくる。後方支援の俺ですらこうなんだから、直接攻撃しなきゃならない前衛職の人の苦労は察して余りあるよ」
真太郎はそう言うと、微かに震える手の平をカイリに見せた。
「現実世界で、殴り合いの喧嘩をした事があれば、何の問題もないさ。シンタロー君、アンタ、喧嘩した事ないのかい?」
真太郎に飄々とあしらわれたカイリが、不機嫌そうに刀を振って血をぬぐう。
「俺ってば、和を以て貴しとなしちゃう所があるから、殴り合いの喧嘩なんてした事ないよ」
真太郎はそう言うと、おもむろに話題を変えた。
「しかし、さっき『またか』みたいな事言ってたけど、ああいう馬鹿共とやり合う機会は多いのかい?」
「この世界に来てからずっとさ。発情した馬鹿共が所構わず、俺のかなこにちょっかいかけに来やがるからな……ッ!」
妹の事になった瞬間、突如として、甘いマスクを修羅の顔に変えたカイリが、腹立たしげに吐き捨てる。
「いや、それはちょっと違うかな? 海賊王狙いっていうか、ギルメンのかわいこちゃん達狙いじゃないのかな? なんか、みんな露出多めでエロいかっこしてるし」
「んな訳ねーだろ! 世界で一番かわいいかなこを狙って来てやがるに、決まってんだろうがッ! 舐めた事言ってっと、叩き斬るぞッ!」
妹のかなこの事になるとすぐにムキになって冷静さを失うカイリは、割とヤバ気なシスコンだった。
「……カイリ君。君は相変わらず、妹の事になると目の色を変えるんだね」
重度のシスコンのカイリに呆れた真太郎が、おもむろに話題を変える。
「さて、妹大好きカイリ君の事はいいとして。今回は、馬鹿が三人だけで済んだけど、次に仲間を三十人位連れて来たらキツイだろうねぇ。この世界では、殺しても死ぬことはないから、一度追い払った馬鹿共は、何度でも復讐しに来るだろうしね」
真太郎は意地悪くそう言うと、自分達と侵入者達との戦闘を、ただ指を咥えて見ていた蒼天海賊団の女の子達にちらっと目くばせした。
「見た感じ、ここの女の子達は、戦闘に慣れてないみたいだねぇ。とすると、このまま今の状況が続いて馬鹿の数が増加すれば、きっとカイリ君はどこかで、ギルメンを守るか、かなこちゃんを守るかの選択を突き付けられるんじゃないのかな?」
真太郎が心をざわつかせる様な事を言って、カイリをじっと見つめる。
「馬鹿がどれだけ増えようが関係ないね。全て斬り捨て、全て守るだけだ」
真太郎の戯言を、カイリはそう言ってあっさり斬り捨てた。
「それは勇ましいね。だけど、この世界の敵は、斬り捨てる事は出来ても、斬り殺す事は出来ないよ? 斬った斬られたを続けて復讐の連鎖に巻き込まれたら、最後は必ず破滅に喰われちまう。この常軌を逸した世界で、最後まで一人で全てを守り続けられると断言出来るのかい?」
「ハッ! 愚問だな」
そう言いつつも、真太郎の言葉に微かに動揺するカイリだった。
(瞬きが増えた……動揺しているな。あと一押しで丸め込める……!)
「仮に。もし、カイリ君が誰かに倒されたら、かなこちゃんはどうなるんだい? ギルメンの可愛い女の子達はどうなるんだい? これは、友達としてのお節介だが、ほんの少しだけ想像力を働かせてみる事をお勧めするよ。だって、この世界は、俺達が元いた世界とは全く違うイカレタ世界なんだからね……」
真太郎が脅す様な口ぶりでそう言うと、かなこが少し怯えた様な声を出して、微かに体を震わせた。
「あんちゃん……」
かなこがあどけない顔に不安を滲ませるなり、カイリが彼女の頭を優しく撫でた。
「心配すんな。かなこはあんちゃんが、絶対守ってやる……!」
カイリは力強くそう言うと、おもむろに真太郎に向き直った。
「シンタロー君。アンタの話、もう一度詳しく聞かせてくれないか?」
「よろこんで!」
思わず心を掻き立てる話術を使ってカイリを引き込む事に成功した真太郎が、にっこりと笑う。
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「――と言う訳で、この街に秩序と平和を築く為に、ゲーム時代のギルド同盟である『魔王討伐軍』を、この世界でも作れればいいな、みたいな事を考えててさ。とりま、人集めて話し合いだけでもしたいんだよ」
ギルド会談について真太郎が話し終わるなり、カイリがふむと腕を組んだ。
「悪くない話だ。だが、お気軽なゲームとは全く勝手が違う今の状況で、赤の他人同士が上手くまとまる事が出来るのかは、甚だ疑問だな」
妹が絡まなければクールなカイリが、冷静な事を言った。
「同感だよ。でも、一度も話し合いをしないのは、それはそれで問題だとも思うけどね。とりま、話をしてみなきゃ、まとまるのか、まとまらないのかすら分からないからね」
「ははっ。確かに」
カイリは真太郎の意見に同意すると、ギルド会談に参加する事を表明してくれた。
「いいぜ、俺達『蒼天海賊団』も、ギルド会談とやらに参加させてもらう。シンタロー君、アンタが関わってんだ。つまらねー事にはならないだろ?」
何気に真太郎を買っているカイリが、面白そうに笑って見せる。
「まぁ、面白く出来るかはビミョーだけど、退屈させはしないよ。んじゃ、詳しくは、チャットで知らせるから、楽しみにしててよ」
蒼天海賊団をギルド会談に参加させる事に成功した真太郎は、そう言って話をまとめた。
「ところで、シンタロー君。有力ギルドなら、アンタが誘っている奴ら以外にもいるだろ? 会談の参加メンバーに選んだ奴らの基準はなんなんだい?」
カイリが発した何気ない疑問に、真太郎がおもむろに答えを返す。
「馬鹿話が通じる、って事ぐらいだよ。規模がデカくてもムキになり過ぎてる効率厨ギルドとか、必要以上に身内で固まる閉鎖的な生産職ギルドとかは避けた。あと、高レベや課金チート系でも、ネットで悪態ついて暴れ回ってる荒しの馬鹿とかは、論外。逆に、いい子ぶって自分ルールを強要したり、自分が挨拶しないのに、人には挨拶を強要したりする様な面倒なのもダメ。要は、リアルでもある程度、話が通じそうな連中をピックアップしてるんだよ」
「成程な。魔王討伐軍には、面倒な連中も随分混ざっていたからな。だが、そういうアレな奴らは、一週間が過ぎた今、大抵は内紛起こして空中分解しているぜ。そいつらを板垣の旦那やテンテンが適当に漁って、面子を増やしてるみてーだ。板垣の旦那はともかく、テンテンは中国のRMT業者とも繋がりあるし、気を付けた方がいいぜ」
得てせずカイリが耳寄りな情報を教えてくれた。これは、彼が心を開いてくれたと考えていいだろう。
「ありがとう、耳寄りな情報だ。テンテンに対しては情報がないから、『インヤン飯店』に行くのは後回しにするよ」
「じゃあ、次はどこに行くのだ?」
カイリにぴったりと寄り添うかなこが、好奇心をのぞかせる。
「さっきカイリ君が、ギルドが空中分解しているって言ってたでしょ? 多分、今はサポート系ギルドの所に、寄る辺を失くした人達が集まってるはずだ。だから、困った時のお助け忍者の『飛龍忍軍』に行ってみるよ」
忍者という単語を聞くなり、かなこが丸い目をぱぁっと輝かせる。
「にんじゃー! いいなー! うちも忍者に会いに行くぞっ!」
そう言ってかなこが無邪気にはしゃいで駆け出すなり、カイリが慌てて彼女を止める。
「おい! ダメだ、あんちゃん抜きで、船から降りちゃダメって約束だろっ!」
「ぶぅえぇぇ~ぃ! にんじゃに会いたいぃぃぃ~!」
カイリに制止されるなり、かなこが超不満顔で変な声を出した。
そんな子供らしい無邪気さを全開にさせるかなこを見た真太郎が、思わず笑う。
「あはは。海賊王は本当に無邪気だなぁ~。そんなに忍者に会いたければ、海賊王もギルド会談に参加してくださいよ。忍者も連れて来るからさ」
「何っ、ほんとかっ!?」
「俺ってば、海賊王との約束破った事あったっけ?」
「ん~……」
真太郎の問いかけに、かなこは眉間に皺を寄せて記憶をたぐった。
「ないっ!」
そして、満面の笑みで答えを返した。
「それが答えです。んじゃ、ギルド会談でまた逢いましょう」
真太郎はそう言って挨拶をすると、蒼天海賊団の船を後にした。




