第13話 ああ、無情! 見えそうで見えない、あの子の絶対領域!
「な、なにィーッ!?」
類いまれなるロリっ娘さを全開にした刹那の『萌え攻撃』の不意打ちを喰らったアキトが、動揺のあまり思わず攻撃の手を止める。
「よし! 対象プレイヤーの『魅力値』を爆上げさせる『ピンクモンスーン』が、上手くハマった! 今のチュウは、普段の三倍可愛いぞッ!」
補助魔法で普段の三倍可愛くなった刹那が、アキトの動きを止めたのを見るなり、真太郎がぐっと拳を握った。
「ア、アキトお兄ちゃん、止めてよぉ!」
小生意気な中二病少女から、ロリっ娘きらりちゃんに変化した刹那が、涙で潤んだ瞳でアキトを上目遣いに見つめる。
「ふぇぇ。 あたし、悪い女の子じゃないよぉ~!」
更に、極上の萌えロリボイスで泣きつかれてしまったら、流石の凶悪PKアキトも攻撃の手を止めざるを得ない。
「や、やめろっ! 俺をそんな目で見るなっ!」
可愛いロリっ娘きらりちゃんに変貌した刹那の『萌え攻撃』の直撃を受けたアキトが激しく動揺する。
「グスン。酷い……! アキトお兄ちゃん、あたしの事……嫌いになっちゃったの?」
刹那が再び『萌え攻撃』を繰り出すなり、アキトが迷いを振り払うかの様に剣を握り直した。
「うるせぇーっ! 俺はお前のお兄ちゃんなんかじゃねーっ!」
「ちっ! 立ち直りが早いッ! 奴は、ロリコンではなかったのかッ!」
刹那の『萌え攻撃』のスタン効果が切れたのを確認するなり、真太郎が舌打ちをする。
「所詮はチュウ、奴は戦力にならん! 最終兵器みこちゃん、追撃用意ッ!」
「ほい、来たっ! やっと、あたしの出番だねっ!」
使えない刹那に代わって、みこが攻撃を開始する。
「このPKやろー! こっちを見ろぉぉぉーっ!」
「あん? 今度はなんだよっ!?」
大声を出してアキトの注意を引きつけたみこが、突然ミニスカートの裾を持ち上げた。
「喰らえ! セクシーパンチラアタックっ!」
「なにィーッ!?」
何を思ったか、突然みこが自分の手でスカートをめくった。
「クッ! 見えそうで見えないッ!」
だが、みこはスカートをめくり上げるのを絶妙な位置で止めており、生足は見えても肝心のパンツは見えない様にしていた。
「見えないもの程、見ようとするのは人の性っ! これぞ、『みこの見えそうで見えない絶対領域アタック』だっ!」
何気に策士な所を見せたみこが、アキトの注意を引きつけると同時に大きな隙を作る事に成功した。
「ディ・モールト(非常に)良いぞッ! 次は師匠です!」
「オウフ! 一体何が起こっているのでござるか……ッ!? 確かにスカートはめくりあげられているというのに、パンツが見えそうで見えないでござるッ!」
意外ッ! というかやはり、イナバもみこの罠に引っかかっていた。
「師匠ッ! みこちゃんの罠に引っかかっている場合じゃあないですよッ!」
「わ、分かっているでござるよっ!」
真太郎が注意すると同時に、我に返ったイナバがギラリと目を光らせ、腰に下げている刀を抜刀した。
「『遠間斬(とおまぎり)』ッ!」
電光石火の早業で発動されたイナバの斬撃が狙うのは、刹那が背にしている建物に取り付けられている看板だ。
「せっちゃん、避けるでござるよっ!」
イナバが刹那に声をかけるのに一拍遅れて、建物から切り離された看板が、アキトの頭に直撃した。
「ガハッ!」
高い位置から真っ逆さまに落ちて来た看板の直撃を喰らったアキトが、白目を剥いて気絶する。
アキトが白目を剥いて地面に倒れるなり、何を思ったか、真太郎が魔法『ブラインドフラッシュ』を発動させた。
「K.O.! シンタローチーム、WIN! PERFECT!」
アキトを倒した真太郎が閃光をバックに、妙に良い声で高らかに勝利宣言をする。
「またつまらぬものを斬ってしまったでござる……」
真太郎に続いてイナバも、妙に良い声で勝利宣言をする。
どうやら、アキトとの勝負は、真太郎達の勝利で幕を閉じた様だ。
「おいっ! 何格ゲーみたいな勝利宣言してんだよッ!」
真太郎とイナバがはしゃぐなり、刹那がすぐさまツッコミを入れる。
「オウフ……。せっちゃんが、萌え萌え美少女から、元の毒舌地雷娘に戻ってしまったでござるよ……」
魔法の効果が切れた刹那が、ロリっ娘きらりちゃんから、小生意気で凶暴な元の姿に戻るなり、イナバが切なげな声を漏らした。
「うっせー! キモオタは黙ってろッ!」
「さっそく、ごっちゃんですっ!」
元の姿に戻った刹那が、早速イナバといつものやり取りをする。
「あはは~。きみ達ってば、ホント緊張感ないよねぇ~」
戦闘直後にも関わらず、気の抜けたやり取りをする刹那達を見たみこが、呆れ顔で笑う。
「しっかし、ゲームじゃあんまり使えなかった魔法を使って、即座にあんな作戦を思いつくなんて、シンタローさんは相変わらず妙に凄いねぇ」
「ちょっと、みこちゃん~。褒めるなら、しっかり褒めてよ」
みこに雑に褒められた真太郎が苦笑いしながら、本当にアキトが気絶したかどうか確かめに動く。
「あ~、こりゃ酷い。白目剥いて口から泡拭いてら」
アキトは、頭に大きなたんこぶを作って白目を剥いて口から泡を吹いている。
そんなみっともないアキトの姿を見た真太郎は、彼が完全に気絶したと判断して勝利を確信した。
「どうやら本当に、この勝負は俺達の勝ちの様だな。しかし、ゲームとは違ってHPをゼロにしたり、デバフをかけたりしなくても、敵を無力化出来るようですね」
「ここは勇ゲー風の世界とはいえ、拙者らの体は現実世界と同じ仕組みで動いているみたいでござるから、頭に強い衝撃を受ければ現実世界同様に、気絶してしまうのでござろう」
真太郎の何気ない言葉に、イナバが訳知り顔で応える。
「それに、このオブジェクトを使って攻撃する戦い方だと、『守護者』が出て来ないみたいですね。となると、先のポムでの素手での応戦の経験と今回の戦闘を合わせて考えてみるに、戦闘禁止の街中でPKに襲われても、十分に応戦ができるって事ですな。ま、それを知っていたからこそ、俺はこの作戦を実行したんですけどねっ!」
真太郎がわざとらしくそう言うなり、刹那が目ざとくツッコんだ。
「おい、バカタロー。お前、本当は全部思い付きで、何が起きるかは半信半疑だっただろう?」
「ギクリ!」
「ギクリじゃねーよ! 思い付きで動くなよっ! 前に、お前の暴走に俺を巻き込むなつったろっ! もしテメーの馬鹿な作戦が失敗してたら、俺はアイツにぶっ殺されてたんだぞっ!」
またもや真太郎の無茶な暴走に巻き込まれてしまった刹那が、キーキー騒ぎ出す。
「まーまー、そう怒らないでよ。結果的にチュウがお色気大作戦で大活躍して、戦いに大勝利出来たんだからいいじゃない。それより、チュウ」
「あ? なんだよ?」
「ナイスお色気攻撃だっ!」
真太郎がいい笑顔で、刹那に親指を突き立てる。
「早くも『お色気担当』が、板についてきたみたいだな。ひょっとして、これがお前の適役なのか? ゲーム時代より、はるかに良い動きをしていたぞ」
「ふっざけんなっ! あんな馬鹿みたいな事させやがって、何偉そうに語ってやがるっ!」
やりたくもない破廉恥な役をやらされた事を思い出した刹那が、シャーと牙を剥いた。
「させやがって、って。俺は『萌えっぽい台詞を敵に言って隙を作れ』って言っただけで、服を肌蹴させろとか、何を言うかまでは指示してないよ?」
「くっ!」
怒りのあまり墓穴を掘ってしまった刹那が、かぁーと顔を赤くして思わず口籠る。
「とはいえ、妹キャラを押していくスタイルを独自に生み出した事は、賞賛に値するよ。そーなると、『お色気担当』というよりも『萌え担当』の方が的確な表現かもしれないな」
「おい、止めろっ! 冷静に分析してんじゃねーよっ!」
荒ぶる刹那が真太郎にツッコミを入れると、先程まで物陰に隠れていた猫人がおもむろにアキトに近づいた。




