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第12話 三度目のPK! きらりちゃん☆ショータイム!

『†アキト† レベル99 暗黒騎士』


「出た、クソPK馬鹿野郎」

 真太郎が毒づく相手『アキト』は、真太郎がこの世界に転移してきてすぐに、彼にPKを仕掛けて来た危険人物であり、その後も事あるごとに何回も交戦した因縁の相手である。


「あん? テメーは、クソヒーラーじゃねーかッ!」

 真太郎がアキトに気付いたのに数秒遅れて、アキトも真太郎に気付いた。

「ハッ! こんな所で会うとは奇遇だな、クソヒーラーッ!」


「……」

 アキトが敵意剥き出しで声をかけて来たが、真太郎は相手にするのが嫌だったので、しれっと無視した。


「おいっ! テメー、何無視してんだよ! この間は、訳の分かんねースキル使って俺から逃げたみてーだが、今日は逃がさないぜ!」

 魔王城にテレポートした時の事を引き合いに出したアキトは、何を思ったか、背負っていた黒剣をいきなり引き抜いた。


「つー訳で、この間の借りを返すぜ、クソヒーラー!」

「……やっぱり、こーなるのか」


(こーいう馬鹿がふつーにいる時点で、この街は終わってるわ。早い所、大手ギルドをまとめて治安維持組織みてーなの作らないと、マジで街に住めなくなるぞ)

 戦う気満々なアキトを見た事で、今までより一層、ギルドをまとめる事の必要性を強く意識した真太郎だった。


「え~と……アキト君だっけ? 君が何をはしゃいでいるのか分かんねーけど、今君がやろうとしてる事は、暴行および殺人行為だからね? それ分かってて、今の台詞を言ってるの?」

 話が通じないであろう馬鹿相手にも一応、話し合いの場を作る冷静な真太郎だった。


「はぁ? お前、何余裕ぶってカッコつけてんの? 馬鹿じゃねーの?」

 しかし、話し合いを始めるどころか、アキトには話がまともに通じなかった。


「ああ。やっぱり、話が通じない……。ただ質問してるだけなのに、なんであんな事言うんだよ。どーして、暗黒騎士はこう地雷が多いかなぁ」

 二、三回エンカウントしただけだったが、アキトの厄介な性格には、早くも心底うんざりの真太郎だった。

 真太郎がそんな独り言を呟くなり、隣の刹那がアキトを見て、つぶらな目を見開いた。


「お、おい! アイツよく見ると、『黒剣のアキト』じゃねーかっ……!」

 アキトの事を知っている風な口ぶりの刹那が、戦慄しながら真太郎に話しかける。

「どうした? チュウ、アイツの事知ってんの?」

「気を付けろ、アイツはチートスキルの『神速剣技スピードソードアーツ』を使うぞっ!」

 刹那が妙な事を言い出すなり、真太郎が訝しげな顔をする。


「チュウは、随分アイツの事に詳しいな。俺達とつるむ前の仲間なのか?」

(地雷キャラの暗黒騎士同士だから、そういう事もあるだろう)

「んな訳ねーだろ。アイツは、『黒剣のアキト』は、『暗黒七剣士』の一人だぞっ!」

 聞きなれない言葉が刹那の口から飛び出すなり、真太郎は再び眉を寄せて訝しげな顔をした。


「にゃんにゃん七剣士の親戚か、何かかな?」

「ひこにゃんの親衛隊ごときと一緒にすんじゃねーよっ! 猫見たからって感化されてんじゃねーぞっ!」

 刹那はツッコミを入れ終わると、ゴホンと一回咳をして解説モードに入った。


「よく聞け、バカタロー。『暗黒七剣士』は、この世界に七本だけしか存在しない『魔剣』を使いこなす者に授けられる称号だ。また、『魔剣』を入手するのも、装備するのにも、相当の実力を求められる為、絶対強者でなければ『暗黒七剣士』にはなれないのだ。以上の事から、全ての暗黒騎士に尊敬と畏怖を持たれている存在が、あの『暗黒七剣士』なんだぞっ!」

 どこか脅す様なニュアンスを込めて話す刹那が、アキトを怯えた目つきで見つめる。


「フーン」

 しかし、真太郎は怯えるどころか、驚くぐらい興味の無い態度だった。

「なんだ、そのそっけない態度はっ!? 『暗黒七剣士』の名は、勇者ゲームの世界全土に知れ渡り、全てのプレイヤーに恐れられているんだぞっ!」


「なんだよソレ、初耳だよ。師匠知ってました?」

 馬鹿を見る目で刹那を見つめる真太郎が、勇者ゲームの生き字引であるイナバに話を振る。

「一応、知っておるでござるよ。というか、斬人殿も、『暗黒七剣士』の一人ではごらぬか。シンタロー殿は、知らなかったのでござるのか?」


「へぇ、斬人って何気に凄い奴だったんだな。つか、七本もある剣なんて、レアでも何でもねーや。俺の持ってる『神器・アスクレピオスの杖』なんて、世界に一本しかないんだぞ。本来は、こういうのをレアっていうんだよ」

 真太郎が馬鹿にしたような事を言うなり、アキトがプライドを傷つけられたのか、悔しそうに歯ぎしりした。


「おい、クソヒーラー! 随分と生意気な口、利くじゃねーかッ!」

 アキトは黒剣を真太郎に突き付けると、獰猛な顔つきで牙を剥いた。

「テメーはここで、ぶっ殺すッ!」


「意気込むのはいいけどさぁ、街中じゃPKは出来ないだろ?」

 すっかりやる気になっているアキトが物騒な事を言い出すなり、真太郎が肩をすくめる。


「おいおい、知らねーのか? ゲームと違って、ここでは、街中でPKしても『秩序の守護者ガーディアン』の出現にラグがあるんだよ。だから、奴らが来る前に街の外に逃げれば、何の問題も無くPK出来んのさ」


(……PKの方法に詳しい。こいつ、相当ここでPKしてんじゃねーのか?)

 アキトの言動から彼がPKに手馴れている事を察した真太郎が、警戒レベルを一気に引き上げる。


「……師匠。街の中で、攻撃スキルは使用可能ですか?」

 オリエンスの街の荒れようから、街の中でも攻撃スキルを使用できる事は何となく分かっていた。だが、念の為に確認をする。

 魔王戦での敗戦により、真太郎は以前よりも、戦闘に対して慎重になっていた。


「攻撃スキルも攻撃魔法も、回復魔法と同様におおよそ全ての攻撃系スキルが使用可能でござるよ。ただ、攻撃性のスキルと魔法を他プレイヤーに使用すると、『ガーディアン』が粛清にやって来てしまうでござる」


「成程。これから、まだまだ街の中を歩き回らなければいけない俺達は、ガーディアンから逃げ回って街の外に出る事は出来ないから、下手に戦闘は出来ませんね」

「拙者達の様な平和主義者の為のPK防止のシステムが、かえって拙者達を苦しめ、逆にPKを利する事になるとは皮肉でござるな」

 戦闘態勢に入った真太郎とイナバが、小声で作戦会議を始めた。


「おいおい! 何相談してんだ? さっさとやろうぜ、殺し合いをさァ!」

 真太郎達の会話を耳に入れて、彼らが戦えない事を知ったのだろうか、アキトが余裕たっぷりに振舞いながら挑発を繰り出す。


「チッ、ガキが調子に乗りやがって。ゲームでもガキの煽りはムカついたが、リアルだと三倍増しだぜ……ッ!」

 真太郎がアキトに腹を立てると、イナバが困り顔で腰の刀に手を伸ばした。


「戦闘が出来ない状況で、戦闘をしなければいけないというのは、難儀でござるな」

「難儀ですねぇ、ホント。エリーゼさん所のギルドハウスでの痴漢撃退の時とは、少々勝手が違う感じですからねぇ……。あの人、マジじゃないですか」

 イナバに続いて、みこも困り顔をする。 


「クソ! どーすりゃいいんだよ、バカタロー!? 一方的に殺されるなんて、もう絶対嫌だからなッ!」

 刹那が威勢よく吠えるが、それは彼女の性格的に完全に弱気になっている証拠だった。

 それを知っている真太郎は、刹那がパニックを起こさない様にすぐに安心させた。


「チュウ、そんなビビらなくてもいいよ。相手は一人で、こっちは四人だ。そう簡単に嬲り殺しになんてならないさ。それに、対人戦闘が出来ないだけで、戦闘行為そのものが出来ないって訳じゃあないんだ」

 圧倒的に不利な状況にありながらも、真太郎は楽しげに口元を吊り上げる。

 そんな真太郎を見たイナバが、長年の付き合いから何かに気付いた。


「シンタロー殿、何か妙案を閃いた様でござるな」

「これから、迎撃戦に入ります……師匠、チュウ、みこちゃん、耳を貸せッ!」

 真太郎はそう言うと、イナバと刹那とみこに素早く耳打ちした。 


「なんだソレはっ!? 何馬鹿な事言ってんだよ、死ねよっ!」

 真太郎が作戦を伝え終わるなり、刹那が円らな目を吊り上げて怒り出す。


「いや、これは最高の作戦でござるっ!」

「はぁ!? うぜーよ! 何言ってんだよ、キモオタッ!」

「オウフ! 闘魂注入でござるっ!」

 荒ぶる刹那がイナバのケツに蹴りを入れるなり、みこが訳知り顔をした。


「ん~。あたし的には不満だけど、あたしは最終兵器だからしょうがないよね。悪い作戦じゃないし、いいんじゃない?」

「はぁ!? みこ! テメーまで何アホな事、抜かしてんだッ!?」

 刹那がみこに荒々しくツッコみを入れると同時に、真太郎が叫んだ。


「いくぜ! 戦闘開始だッ!」

「マジかッ!? 本気でやるつもりかよッ! 暴走すんじゃねーよ、バカタローっ!」

 真太郎が行動を起こした瞬間、刹那が激しく動揺する。


「やっとやる気になったか、クソヒーラー! まずは、テメーから血祭りにあげてやるぜッ!」

 真太郎の叫び声を戦闘開始の合図と受け取ったアキトが、黒剣を手に駆けだした。


「『ピンクモンスーン』!」

 それと同時に真太郎が魔法を使用する。

 次の瞬間、真太郎が手に持つ杖から、ピンク色のスモークが噴き出した。

 それを見るなり、三毛の猫人が弾かれたように声を上げる。 


「魔法はダメにゃ! あのPKの着てるコートは、魔法を無効化するにゃ!」

「問題ないっ! この魔法は、味方にかけた補助魔法だっ!」

 真太郎は猫人の注意を一蹴するなり、刹那の背中を叩いた。


「チュウ、いや、星宮きらり! 派手にブチかませッ!」

「か、勝手な事を言うなッ!」


「させるかよッ!」

 刹那が攻撃を仕掛けて来ると判断したアキトが、攻撃の狙いを真太郎から刹那に切り替える。


「うわっ! こっちに来たぁーっ!」

 アキトに狙われた刹那が、咄嗟に逃げる。

 だが直ぐに、近くの建物の壁際に追い詰められてしまった。


「ハハァーッ! 逃げるのが得意みたいだな、マフラー野郎ッ!」

 自分に向けられた凶刃が間近に迫るなり、刹那が意を決した顔をする。

「くそっ! やるしかないのか……っ!?」


「やるしかねーんだよッ! チュウ、いや、きらり! お前の力を見せてやれッ!」

「クソ! 最初は、お手軽な俺TUEEEE物だと思ったのに、なんでこんな奇妙な事になっちまったんだよ……!」

 刹那が苦虫を噛み潰した様な顔をするなり、真太郎が杖を振った。


「きらりちゃん、イッツ・ショータイム!」

 それと同時にピンク色のスモークが、刹那のちんまい体を包み込む。


「またクソヒーラーお得意の目くらましかよッ! 煙ごと斬り殺してやるぜッ!」

 殺意に身を任せたアキトが、黒剣を乱暴に振り下ろす。剣圧でピンク色のスモークが、強引に薙ぎ払われる。


 すると、ピンク色のスモークの間から、胸元を肌蹴させてペタンと地面に座り込む刹那が姿を現した。


「ふぇぇ……あたし、悪い女の子じゃないよぉ」


 刹那がこの世界で新しく習得した『萌え攻撃』をアキトにぶちかます!

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