第6話 我が良き友よ!
「「「やだ! この子、可愛いっ!?」」」
マフラーを脱ぎ捨て、可憐な美少女の姿を露わにした刹那が、突然超萌え萌えなロリボイスを出すなり、斬人達が驚いて動きを止める。
「あ、あのね……ゲームでの事はごめんなさい。あたし、ゲーム始めたばっかで良く分からなかったの……。だから、皆の邪魔する気は無かったんだよ、ほんとだよ?」
刹那がおねだりする様に小首を傾げて、つぶらな瞳を潤ませる。
余談だが、その時の刹那は、とっくに初心者を脱していた。
「そ……そうなの……か?」
刹那の可愛さに動揺した斬人が、思わず毒気を抜かれる。
「そうだよぉ。きらり、嘘つかないもん……」
「そ、そうか。疑ってすまない」
ロリっ娘さを全開にした刹那を前にした斬人が、割と簡単に丸め込まれた。
「チュウ、ここから先は俺に任せろッ!」
それを見るなり、真太郎が素早く次の手を打つ。
「斬人、刀を収めてくれ。俺達は、勇ゲー最難関のお色気ミッション『ドキッ! 丸ごと水着! 女騎士だらけの水泳大会』に共に挑んだ義兄弟ではないか」
「黙れ! 貴様は、その最重要ミッションに、何も知らない初心者のきらりちゃんを無理矢理、連れ込んだ大罪人! ある意味では、貴様が最も悪質な存在だ! まずはテメーをぶっ倒すッ!」
刹那が可愛い過ぎて斬れない斬人は、怒りの矛先を真太郎に向ける事で認知的不協和を解消しようとした。
「それもいいだろう……」
「ふん。貴様が自分の罪を認めるとは、珍しい事もあったものだな」
真太郎が神妙にすると、斬人が偉そうな事を言って、鼻で笑った。
「じゃあ、早速……罪を償ってもらおうかーッ!」
斬人の雄叫びを合図として、彼の取り巻きが一斉に剣を振り上げる。
「「「死にやがれェェェーッ!」」」
無数の剣が振り下ろされる刹那、真太郎がカッ! と目を見開いた。
「だが、貴方達の中で、エロイベントでテンションが上がるあまり暴走した事の無い者だけが、この私をお斬りなさいッ!」
カッと目を見開いた真太郎が、荒ぶる斬人達に聖人的な言葉を投げかける。
「「「……くっ!」」」
すると、罪深い斬人達は、真太郎の言葉を前にして何も出来なくなった。
「えっ、誰もいないのッ!? お前ら全員馬鹿なのッ!?」
馬鹿共に驚いた刹那が、思わず素でツッコミを入れる。
「男は皆、愚か者なのです。だが、それがいい」
刹那のツッコミが終わると、真太郎がおもむろに話を再開した。
「皆は知らないでしょうが、攻略サイトの掲示板に『水泳大会』での女騎士たちのポロリシーンのキャプ画をアップしたのは、何を隠そうこの私です」
まるで聖人の様な眼差しの真太郎が、荒ぶる斬人達に優しく微笑みかける。
「「「流石、流浪の辻ヒーラー! いつでも俺達を癒してくれるッ!」」」
凄腕ヒーラーの真太郎はゲームの内外問わず、迷えるプレイヤー達をその慈愛で癒していたのだ。
「その事実を知って貰った上で、兄弟達よ。其方らの力を借りたいのです」
「力を借りたいだとォ~!? 地雷の分際で何ナマ言ってやがるッ!」
怒りを持って行く場所を失くした斬人が、とりあえず荒ぶってみる。
「荒ぶるのはお止めなさい、まむしの子よ。天から主が見ていますよ」
しかし、信念によって突き動かされている真太郎は、その程度の恫喝に心を乱されはしなかった。
「其方らも知っている様に、この世界は『勇者ゲーム』に非常に酷似しています」
「はぁ? それがどうした?」
斬人が間抜けな声を出すと、真太郎がカッ! と目を見開いた。
「つまり、『ドキッ! 丸ごと水着! 女騎士だらけの水泳大会』も現実に存在するって事ですよッ!」
「「「な、なんだってーっ!」」」
真太郎が突き付けた驚愕の事実に、斬人とその仲間達はガクブルが止まらない。
「はわわわ……! シ、シンタロー君? それは、ほ、本当なのかい……?」
「魔王が実在するのです、女騎士もいて当然でしょう。実際に魔王をこの目で見て来た私が言うのだから、間違いありません」
「ヒュー! 流石、キラーヒーラーだぜッ!」
話を聞いていた取り巻きが、「やるじゃん」みたいな感じで口笛を吹く。
「よっしゃ、野郎共ッ! 早速、女騎士んとこに乗り込もうぜッ!」
嬉しい知らせを聞いた斬人が、早速はしゃぎだす。
しかし、真太郎は哀しげな瞳をそっと伏せるだけだ。
「残念ですが、それはなりません。私達が『ドキッ! 丸ごと水着! 女騎士だらけの水泳大会』に参加する事は、今のままでは叶いません……」
真太郎が切なげに言うなり、先程までただの馬鹿だった斬人が、ギルマス的凄みを見せ、何かを悟った。
「……その言葉の真意。現在の混沌とした街の状況では、聖戦に赴く事はおろか、戦の準備すら出来ないという事だな?」
馬鹿から、大ギルドを率いるカリスマに戻った斬人を見た真太郎が、満足げに微笑む。
「その通り。しかも、『ドキッ! 丸ごと水着! 女騎士だらけの水泳大会』は、一度戦いに負けてしまった場合、福音騎士団の女騎士達が今後一切口をきいてくれなくなる、というペナルティーが存在します。故に、私達は、この聖戦に絶対に負ける訳にはいかないのです。この中で、福音騎士団の女騎士達に再戦を申し込んで、悲惨な目にあった者もいるでしょう?」
真太郎が優しく語り掛けると、斬人以下何名かの男達が涙を流して鼻を啜った。
「あいつら、NPCの癖に、魂削る様な暴言吐くんだよ……」
そう泣く斬人は、女騎士によほど手酷い扱いを受けた事が窺い知れる。
「斬人。そして渾沌騎士団の猛者達よ。落ち着いて、そして心して聞いてください」
聖人の様に優しく語り続けていた真太郎が、不意に真剣な眼差しをする。
すると、斬人達も彼の気持ちを汲んで、真剣な目つきをした。
「俺は、この勇者ゲーム風異世界で、『ドキッ! 丸ごと水着! 女騎士だらけの水泳大会』の聖戦に挑み、そして勝利しようと思っているッ!」
「「「なんだってェーッ!?」」」
思いがけない真太郎の言葉に、斬人達が俄かにざわつく。
「皆が、この勇ゲー風異世界に来てから、もう一週間になるんだろう? なのに、一向に元いた世界に帰れる気配がない。ならば、廃人になるまでやり込んだ勇ゲー風異世界へ異世界転移した状況を最大限に楽しませてもらおうじゃないかッ!」
真太郎が大胆不敵な事を言い出すなり、斬人が「やるねぇ」みたいな感じで口笛を吹いた。
「その為には、まずこの世界での生活基盤を作らねばならん。友よ、この無謀な俺に力を――」
真太郎がそこまで言うと、斬人がサッと手を上げて言葉を遮った。
「皆まで言うな、シンタロー。貴様と交わした義兄弟の契りの盃の味を忘れた訳ではない。ゲームでの失敗の借りは、この世界で返す。そして今度こそ、女騎士達に勝って奴らを全員丸裸にするッ! そうだろ、お前らッ!?」
斬人が意気揚々と尋ねると、彼の取り巻き達が一斉に声を上げた。
「その通りだッ!」「俺達に負けは許されない!」「この世界で俺は生まれ変わる!」
取り巻き達が戦意を高揚させるのを見るなり、斬人が満足げに頷く。
「シンタロー。俺達『渾沌騎士団』は、テメーの誘いに乗って、ギルド会談に参加するぜッ!」




