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第5話 刹那のピンチに、きらりちゃん大覚醒!?

「うわっ!?」

「剣だとっ!? どっから出て来やがったっ!?」

「まさか、刺客でござるかっ!?」

「うひゃあ!」

 剣を突き付けられた刹那に続いて、真太郎、イナバ、みこが揃って声を上げて驚く。


 突如、目の前に現れた剣を良く見ると、その向こう側に人の形をした透明の影の様な何かが見えた。人の形をした透明の影は、輪郭が蜃気楼の様にゆらゆら揺らめいている。

 それを見るなり、真太郎は何かに気付いた。


「透明マントかっ!?」

「やはり、伏兵がいたのでござるなっ!?」 

 人の形をした透明の影の正体を、真太郎とイナバが見破る。

 それと同時に伏兵が一斉にマントを脱ぎ払う。マントの下から現れたのは、厳つい鎧と切れ味鋭い剣で武装した凶暴そうな男達だ。


(マズいな、斬人の取り巻き連中だ。こいつら、気はいい奴らだが、馬鹿でキレやすいから、下手に刺激すると戦いになるぞ……!)

 真太郎が男達の正体に気付いて警戒するなり、斬人が刹那の前にズイと迫った。 


「よ~うやく見つけたぜ、このド腐れ野郎ぉ~……!」

 斬人は獰猛な唸り声を上げると、背負っていた龍を模した白と黒の大剣を乱暴に引き抜いた。

「死んで詫びやがれッ!」

「ちょ! 待ってッ! そいつが何したっていうんだよっ!?」 

 斬人が刹那に剣を振り上げると同時に、真太郎が慌てて止めに入る。


「このクソ野郎は、アマゾネスとの大規模レイドを邪魔しやがったんだッ!」

『アマゾネスとの大規模レイド』――その言葉を聞いた瞬間、真太郎は全てを悟った。


「『目指せ裸族っ! ダッダーンボヨヨン! 魔境の野獣女戦士・アマゾネスクイーン』の事かッ!?」

『目指せ裸族! ダッダーンボヨヨン! 魔境の野獣女戦士・アマゾネスクイーン』は、勇者ゲームに数あるお色気イベントの一つだ。このイベントの勝利報酬は、うら若きセクシーアマゾネス達によるぱふぱふ祭りである。


「あと一歩で、アマゾネスクイーンをぶっ倒して、おっぱい祭りだったのによォ~! このクソガキが散々ヘマしたせいで、逆転大敗北だぜッ! 最低最悪のクソ地雷野郎は、ぶっ殺さねーと気が済まねェッ!」

 しょうもないゲームでの失敗を思い出した斬人がキレる。


 すると刹那が、気が強い所を発揮して、ふんと鼻を鳴らした。

「バカじゃねーの。何ゲームごときでムキになってんだよ」

「ゲームは遊びだ。だが、遊びだからこそ、心底馬鹿みてーに楽しみてぇ。だから、ちんけなカス野郎のせいで、つまんねー思いなんてしたくねーんだよッ!」

 斬人がドスを利かせて睨みつけるなり、刹那が怯えて円らな目を泳がせた。


「お……おい。バカタロー、なんかこいつヤバい奴だぞ……」

 キレる斬人に迫られて命の危険を感じた刹那が、助けを求める様に真太郎の袖をくんくんと引っ張る。


「確か、あの時は……順番に仕掛けを作動していかなければいけないミッションで……馬鹿チュウが突っ走ったせいで雑魚敵が沸きまくって、全滅したんだっけか」

 記憶を手繰り寄せる真太郎が余計な事を口走るなり、刹那が即座にツッコミを入れる。

「おいっ! 火に油を注ぐんじゃねーよっ!」


「クリアまで後一歩って所で、ド下手な地雷野郎に足を引っ張られてしくじる……一番ストレスが溜まる失敗の仕方だ。文句言っても、馬鹿だから理解出来ないし、カスの癖に生意気に言い返してくるし、マジでムカつく。画面の向こうに行ってボッコボコにしたい……長年の夢が、ここへ来てとうとう叶ったみてーだなッ!」

 アホの癖に執念深い所がある斬人が、物騒な事を言い出して剣を握りしめる。


(マズいな、完全にキレてしまっている……! これでは、会談に出席させる様に交渉する事すら出来ないではないかッ!)

「……チュウ。どうやら、貴様の出番が来たようだ」

 事態の深刻さを重く見た真太郎が、対策を打つべく刹那に耳打ちをする。

「出番だと……?」


 最初は小首を傾げた刹那だったが、直ぐに自分の役割を思い出してビクッとする。

「はうあ! お色気かッ!?」

 自分の役目を思い出すなり、刹那が荒ぶった。

「やめろ、お色気攻撃など出来るかッ! このセクハラ野郎がッ!」

 地雷野郎の癖に案外純情な刹那が、恥ずかしがってキレる。


「アホの斬人を荒ぶる修羅に変えてしまったのは、お前なんだ。自分のケツぐらい自分で拭け!」

「……っく!」

 ゲームでの悪行のツケを、思ってもみなかった形で払わされる事になった刹那だった。


「クソ……し、仕方ない」

 無数の厳つい男達に囲まれている状況のヤバさを本能で理解した刹那は、腹をくくる事にしたらしい。

「初めに言っておくが、俺は胸が無いから、パフパフなど出来ないぞ……?」


「お……お前、意外にサービス精神が旺盛なんだな。少し見直したぞ」

 刹那が意外とやる気だった事を知った真太郎が、驚くと同時に感銘を受ける。

「なんだとっ!? おい、どういう事だっ!?」 

  

「刹那隊員。やる気になって乳を寄せて上げている所、誠に申し訳ない。だが別に、パフパフなどしなくていいぞ」

「何っ!? 話の流れ的にそうじゃないのかッ!?」

 早とちりしてしまった刹那が、恥ずかしさ余って思わず荒ぶる。


「お色気担当にもかかわらず、胸無し、尻無し、お色気無し、であるチュウだからな。直接的なお色気攻撃は期待していない」

「なら何故、俺をお色気担当にしたんだッ!?」

 刹那の恥ずかしさが、段々と怒りに代わって来る。


「まぁ、待て。荒ぶるのは後にしろ。今からこの策士シンタローが、星宮きらりのポテンシャルを最大限に引き出す奥義を授ける」

 真太郎が何故かイケメン面で、妙な事を言い出した。

「黙れ、バカタロー! お前は策士じゃなくて、ペテン師だっ!」

 そして、小動物の様に牙を剥く刹那の小さい耳にそっと耳打ちをする。


「――と、言えばたちまち、斬人以下、渾沌騎士団の手練れ共を瞬殺できるであろう」

「……そんなもんが奥義なのかよ? キモオタん時みたいに、また馬鹿な事言ってるだけじゃねーだろうな?」

 真太郎から怪しげな奥義を授けられた刹那が、心底疑いながら彼を睨みつける。


「ここは既に戦場だぞ、馬鹿をやっている暇などないッ! 戦場で現を抜かすほど、俺は俗ボケしておらんわッ!」

「俗ボケ!? お前何者っ!? ネトゲ廃人の浪人生とか、戦場から最も遠い存在じゃねっ!?」

「しょうもない事言ってないで、早くしろッ! 敵が襲い掛かって来たぞッ!」

 刹那のツッコミが開戦の合図になったのか、斬人達が一斉に動き出した。


「死ねィ、クソガキ! エロイベントを潰した罪は、決して赦されないのだァーッ!」

 馬鹿な事で本気でキレる斬人達が、武器を振り上げ一斉に刹那に襲い掛かる。


 次の瞬間、刹那が顔を隠していたマフラーを投げ捨て、すぅと息を吸い込んだ。


「ふぇぇ。お兄ちゃん達……あたしの事、いじめるの……?」

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