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第2話 はじめてのお誘い 

「……やはり狂人。いや、ただの馬鹿か」

 異世界転移してから数時間足らずで魔王に挑み、自爆して生き返るという意味の分からない行動をしていた真太郎には、クールな紅も感情を顔に出して呆れ返る。


「なんだよソレ、意味分かんねーよっ! 何で異世界に来て早々、嵐を巻き起こしてんだよっ!? つか、魔王とバトルとか、何面白そーな事一人でやってんだよっ! 俺を誘えよっ!」

「なんか妙な期待している所、悪いけど。ゲームと違って死ぬほど怖いし、実際殺されるから、この世界でも現実同様、ガチバトルなんてやらない方がいいよ」

 実際の魔王の恐怖を知る真太郎が、俄かにはしゃぐ斬人をやんわりたしなめる。


「アホか! この『双龍剣』の斬人様を舐めんなよっ!」

「魔王は多分、新宿のヤクザよりも怖いよ」

「……あ、あぅん。そなの……?」

 真太郎がトラウマを抉るなり、勢いづいていた斬人が変な声を出して止まった。


「それに、この世界はゲームの世界じゃないから、『痛み』があるんだ。ここでは、バトルは娯楽じゃないんだよ。本当に戦う必要が無い時以外は、戦いを避けるのが賢明だと思うね。俺達はゲームでは最強だけど、この世界では最弱かもしれないんだから」

「なにそれ。ヒャッハー感ゼロって、この異世界転移、最悪なんだけど……。チート無双で俺TUEEEEでチーレムだと思ってたのに……」

 さらに追い打ちをかけるなり、色々と幻想を打ち砕かれた斬人が完全に黙り込んだ。


「なんて馬鹿な奴なんだ。この期に及んで、何を阿呆な事を言っているんだ?」

 馬鹿を見る目で斬人を眺める紅が、不意に真太郎に話しかける。

「シンタロー。君の話が全て本当だとして、その証拠は?」

 必ずして来ると思っていた質問が、紅の口から飛び出すなり、真太郎は簡易ステータスをくいっと指で指し示した。


「俺のレベルを見てください」

「……ほぅ」

 真太郎のレベルを見た紅が微かに目を見開いて驚くと、その横で斬人が大声を上げた。

「110レベルだとッ!? どーいう事だっ!?」


「どーもこうも、見たままだよ」

「ふっざけんな! なんでこの俺が、昨日やっと100レベになったばかりなのに、テメーは110もいってんだよっ!」


(思った通り、大ギルドの連中はレベル上げを開始してたか……。これからの事を考えると、下手に戦闘経験を積まれると厄介だな。話はここで無理矢理にでもまとめないとダメだな)

 斬人達が戦闘経験を積んでいる事を知った真太郎が、ふむと唸る。


「魔王と四天王と戦った時、殺される寸前に自爆したから、そん時に誰か倒したんじゃないのかな?」

「自爆だとっ!? マジかよっ!?」

「マジだよ。魔王と戦ったら、ゲーム同様にモンスター図鑑に、魔王と四天王の姿が新しく登録されたよ」

 真太郎は、話をいまいち信じていない様子の斬人と紅に、ステータス画面とモンスター図鑑を見せた。


「二人ともこの世界が、勇ゲーの仕様にそっくりな事は、もう知っているよね? だったら、俺が今見せているコレを見れば、俺の話が本当だって信じるでしょ?」


「……確かに。これを見ちまうとなぁ」

 筋金入りの廃人ゲーマーの斬人だけに、『勇者ゲーム』のシステムに沿った証拠を見せられてしまった以上、認めざるを得ないのだろう。

「本当に、この世界には魔王がいるのか?」

 魔王の姿を見た紅が、大きな胸の前で腕を組んで考え事をする。


「魔王は、確実に存在します。しかも、厄介な事にゲーム同様、人間に悪意と殺意を持っています。顔を見た瞬間、問答無用で殺しにかかってきましたからね」

「ゲーム通りだな。確か、勇者ゲームでの魔王の目的は、人間の根絶だったかな?」


「そうです。よくあるRPGの魔王と違って、勇者ゲームの魔王は人間を支配して世界征服を目論むのではなく、人間を根絶して世界を我が物にしようとしています」

 真太郎がここまで言うと、紅が不意に赤い唇を閉じて黙った。


「……どう思う?」

「何がです?」

「私達が、魔王と戦う可能性だよ」

 紅が目をじっと見つめながら質問するなり、真太郎は真顔で即答した。


「魔王との戦いは避けられないと思います。それが今日になるのか、明日になるのか、あるいは一年後になるのかは分かりませんけど。いずれにせよ、そう遠くない日に魔王と顔を合わせる日が来ると、俺は考えています」

 真剣な表情で語る真太郎の言葉を聞いた紅が、また思案顔で黙り込んだ。


「とはいえ、今は魔王の事はひとまず脇に置いておいてもいい、とも俺は思っています」

「何故、そう考える?」

 紅が話を聞く姿勢に入ったのを見取った真太郎が、本題を切り出し始める。


「というのも、俺達がやるべき事はもっと他にあるからです。俺達は今現在、何故この世界に来たのかも、この世界がどういう所なのかも、そしてこの世界から元いた世界に帰る事が出来るのかどうかも、何もかもが分からない状況なんです。そんな状況なのにもかかわらず、俺達が滞在を余儀なくされているこの『オリエンスの街』は、落ち着いて考え事が出来る様な雰囲気じゃない」

 真太郎はそこまで言うと、様子を窺うように紅の顔を見た。


(……さて、そろそろ本題に入るとするか。まずは、話に喰いついて来るか調べよう)


「実は昨日、暴漢に襲われている女の子を助け出したって出来事があったんです。で、その際、PKと戦ったんですよ。あっ、勿論、勝ちましたからね」

 

 真太郎は、『女の子を助ける為に戦った』という情報を出す事で、『自分は女の子を助ける様な人間だ』という事と、『PKに負けないぐらい強い』という情報を紅に与えて、『自分達は悪人ではない』という事と、『敵対した場合は厄介』と思わせた。


「まぁ、こんな訳の分からない状況ですから、PKみたいな行為に走る奴がいるのは、それほど不思議じゃあないんですけど、そういう奴らが出て来ているって状況は大いに問題ですよね?」

 真太郎が水を向けるなり、紅はつまらなそうにふんと鼻を鳴らした。


「問題などない、ただ状況があるだけさ。どこにでもアホは存在する。そして、そのアホが危害を加えて来るようならば、斬り捨てればいいだけの事だ」


(紅さんは、アダーと一緒でクールでクレバーだなぁ。これは、結構簡単に話がまとまるかもね)


「既にこの状況になってから、一週間が過ぎた。ここへ来て『狂人使い』が動いたという事は、そろそろ他の奴らも動き出す頃合いか……」


(おっ。この感じは、喰いついたかな?)

 紅の態度から本題を切り出しても平気だと判断した真太郎が、大胆に一歩踏み込んだ。


「紅さん、実は俺はアダーの使いでここに来ました。アダーは現在『名無しのギルド』のギルマスであると同時に、『ポム・アンプワゾネ』の参謀でもあります。その『彼女』が現在、オリエンスの有力ギルドを集めた会談を計画しています。つきましては、三大ギルドの一つである『渾沌騎士団』に是非、この会談に参加していただく、参上した――」


「ちょっと待てっ! アダーって、女だったのかッ!?」

 アダーが女だと言う情報を聞くなり、先程までの難しそうな話を完全スルーしていた斬人が急に喰いついてきた。


「そ……そーだけど。それが何か……?」

「美人かッ!? いや、可愛いかッ!? どっちだッ!?」

「び……美人だと思うよ」

「そうかっ! 『ポム・アンプワゾネ』の連中はどうだ!? エリーゼちゃんとゆりっぺは、可愛いのかっ!? ネカマだったりしないよなッ!?」

「み……皆、女だよ……」

 女の子の情報に対してメッチャ前のめりになった斬人に、真太郎が思わず引く。 


「このクソガキがッ! 質問にはちゃんと答えろォーッ! 俺は可愛い女なのか、と聞いているんだッ!」

 勇ゲーの中で最も武闘派なギルドを率いる元ヤンの斬人が、その凶暴なオーラを全開にして、真太郎を斬り殺さんばかりの勢いで問い詰める。


「か……可愛いよ。エリーゼさんも百合子さんも、ゲームよりも数倍見た目がいいと思うよ。た……多分、斬人君の好みドストライク……だと思う」

 真太郎が恐る恐る言うなり、斬人が目をキラキラと輝かせた。


「しゃーおらァ! そこまでこの俺を誘うのならば、その会談とやらに参加してやろうじゃねーかっ!」

「話を途中で遮られたから、まだ一回も誘ってはいないけど……参加してくれるならば、ありがたい!」

 思いがけない形でいとも簡単に『渾沌騎士団』の会談参加が決定するなり、真太郎が上機嫌になる。


「おい、ボンクラ。話を勝手に決めるな」

「グハッ!」

 斬人が会談への参加を大はしゃぎで表明するなり、紅がすぐさま蹴りを繰り出し、止めに入った。


「悪いが、私達『渾沌騎士団』は、会談には参加しない」

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