表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/161

第29話 ショック・ドクトリン

「う~ん、凄い馬鹿でござる」

「バカタローは、馬鹿な事しか考えられないのか?」

「っていうか、むしろ普通の事を考えられないのかもね」

 馬鹿な事を渾身のドヤ顔で話す真太郎には、イナバも刹那もみこも開いた口が塞がらない。

 

 しかしアダーは、呆れる彼らとは違って、真剣な顔で真太郎の話を聞いていた。

「……成程。『アレ』は、そうやって使うのか。つまり、真太郎は、ショック・ドクトリン(惨事便乗型改革)を起こそうとしている、と……ふむ、上手く扱えば、そう悪い話ではないかもしれないな」

 真太郎の口から『アレ』という単語が出た事で、アダーは何か思う所が出来た様だ。


 そんなアダーに目ざとく気付いたエリーゼが、たしなめる様な声を出す。

「なつきさん。貴女、一体何を考えてるのかしら? また真太郎さんに、たぶらかされでもしたのかしら?」


「ははは。恵璃華は面白い事を言うなぁ。このボクが、真太郎にたぶらかされただって? よしてくれよ、ボクが真太郎をたぶらかす事はあっても、ボクが真太郎にたぶらかされるなんて事は、決してありはしないよ」

 アダーはエリーゼをそう言ってあしらうと、悪戯を企む顔でクスリと微笑んだ。


「しかし、真太郎は本当に、ボクが想像もできない様なバカな事を考える。まったく、だからキミといるのは楽しいんだ」

 真太郎を愛しげに見つめたアダーは笑い終わると、不意に手をパンと叩いた。


「よしっ! ボクは真太郎の話に乗るよ!」


「「「はぁ?」」」

 アダーが耳を疑う様な事を言い出すなり、真太郎以外の全員が変な声を出した。


「な、なつきさん……貴女、今何とおっしゃったのかしら……?」

 我が耳を疑うエリーゼが、楽しげに微笑むアダーに、震えながら声をかける。

 しかしアダーは、エリーゼなど気にも留めない様子で、再びパンパンと手を叩いた。


「さぁ、皆出て来てくれっ!」

 突然、アダーが、どこかに呼びかける。

 すると、入口のドア、本棚の裏の隠し部屋、天井や床の隠し扉から、数十人の女の子達が一斉に顔を出した。


「「「うわっ!?」」」

 突然、無数の女の子達がどこからともなく姿を現すなり、何も知らなかった真太郎一行が素でビックリする。


「「「お呼びですか、なつきお姉様っ!」」」

 現れた女の子達は、皆アイドルの様に可愛い顔をしている。だが、その手には、女の子が持っていてはいけない様な物騒な剣や弓矢を持っていた。

「いつでも戦闘できますわ!」と言った装いの女の子達は、全員『ポム・アンプワゾネ』のメンバーだ。


「皆、ボクらの話は、しっかり聞いていたよね?」

 ギルドメンバーの女の子達を呼び寄せたアダーが、彼女達に向かって爽やかに微笑む。


「「「はい! なつきお姉様っ!」」」

 アダーが問いかけるなり、女の子達が一斉に元気のいい返事をした。


「な……なんだ、この子達はっ!? つか、こんなに人数が隠れてたのかよっ!」

 一糸乱れぬ動きでアダーに従う女の子達を見た真太郎が、思わず素で動揺する。


「うん、よろしい。と言う訳で、これからうちのギルドは、え~と……真太郎、作戦名はなんだったけ?」

「あ、ああ……『さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一舞闘会!』大作戦」

 呆気に取られながら真太郎が返事をするなり、アダーがニコリと微笑んだ。  


「ボクは、これから『さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一舞闘会!』大作戦に参加する」

「な、なんですってェェェー!?」 

 アダーがとんでもない事を言い出すなり、エリーゼが可憐な顔いっぱいに驚愕を張り付けて絶叫した。


「と言う訳で、キミ達も全員強制参加だ。いいね?」

「「「はいっ! なつきお姉様っ!」」」

 女の子達はアダーに心酔でもしているのか、疑問の一声すら挟む事なく二つ返事で彼女の命令に従った。


「『はいっ!』じゃありませんわよ、貴女達っ!」

 そんな女の子達にエリーゼがツッコむなり、アダーが彼女に話しかけた。


「恵璃華。キミも参加するんだ、いいね?」

「よくありませんわっ! なつきさん、今の台詞は本気ですの? 貴女、ご乱心でもしたのかしらっ!?」

「変な事を言うなよ。ボクはいたって正気だよ」

 ヒステリックに騒ぎ出したエリーゼを、アダーがクールにあしらう。


「いいえ、正気ではありませんわっ! 正気でしたら、あの様な男の口車に乗るなんて考えられなくってよっ!」

 エリーゼがズビシッと真太郎を指さしながら、目の前のアダーを睨みつける。


「そもそも、今のなつきさんは『ポム・アンプワゾネ』の一員! ギルマスであるわたくしを無視した勝手な行動は許さなくってよっ!」

 エリーゼがビシッと指をさすなり、アダーがふっと笑って、銀髪をかき上げた。


「悪いね、恵璃華。ボクは現時点より、『ポム・アンプワゾネ』を抜けて自分のギルドに戻るよ。今からボクは、正真正銘『名無しのギルド』のギルマス・アダーだ」

 アダーがさらりと言うなり、エリーゼが目を丸くして動揺する。

「は、ははは、はぁー!? なつきさん、貴女何をおっしゃっていますのーっ!?」


「かつての仲間達が、このボクを慕ってわざわざ集まって来てくれたんだ、ギルマスとしては復帰せざるをえまいだろう?」

「仲間って言っても、現実では顔も知らない赤の他人じゃないのっ! 本当の理由は別にあるはずですわ、その理由をお言いなさいっ!」

 意外に鋭い所があるエリーゼが、不敵に笑うアダーの魂胆を暴こうとにじり寄る。


「乙女の園での慣れ合いよりも、荒野での刺激を求めたい年頃なものでね」

 アダーが切れ長の目を細めて冗談めかして笑うなり、エリーゼがヒステリーを起こす。

「狂気の沙汰ですわっ! 常軌を逸した行動ですわっ! ご乱心ですわぁーっ!」

 エリーゼが縦ロールの金髪を振り乱してわーわー騒ぎ出すと、入れ替わりで百合子がアダーに話しかけた。


「なつきちゃん。本気で真太郎さんの話に乗るつもりなの?」

「そうだよ。百合子、キミも参加してくれ。ボクには、キミが必要だ」

 アダーが百合子の手を優しく取って、王子様じみた笑顔で誘いをかける。


 次の瞬間、ギルメンの女の子と刹那&みこが、一斉に黄色い声を上げた。

「「「きゃー! なつきお姉様ぁぁぁー!」」」

 女の子達がはしゃぎだすなり、エリーゼがアダーと百合子の間に割って入る。


「ダメですわ、百合子っ! なつきさんの口車に乗ってはいけませんわっ!」

「恵璃華が話に乗りたくなければ、別に構わないよ。キミ以外のメンバーは全員参加するんだから、一人ぐらい欠けても何の支障もないもの」

「それは貴女が勝手に決めただけでしょう! 今から、なつきさんとわたくし、どちらに付いて行くかを多数決で決めますわっ!」

 気位の高いエリーゼがヒステリックに騒ぐなり、アダーが呆れ顔で肩をすくめた。


「言い出すと思った。いいかい? この異世界に来てから、『ポム・アンプワゾネ』を導いてきたのは、このボクだ。対してキミは、ボクにくっついてきただけ。確かにキミは、現実世界では麗しのエリーゼお姉様としてギルメンから絶大な支持を得ていたかもしれない。だが、ここは元いた世界じゃあないんだ。ここで多数決を取ったら、恥をかくのはキミだよ?」

 親切で優しいアダーは、プライドの高いエリーゼを気遣って、勝負の前に負けを思い知らせた。


「……ぐぬぬ!」

 アダーの心中を察した賢いエリーゼが、悔しそうに唸る。

「キミは逆立ちしたって、このボクには勝てん。それは幼稚舎の頃から、今日に至っても変わらないよ」

「むっかー! 言わせておけば、いい気になってっ!」

 そんなこんなで、因縁の仲らしいアダーとエリーゼが、一触即発で睨み合いを始めた。


「多数決が嫌だったら、二人がガチンコで戦って、強い奴に従えばいいんだよ。この世界は現実世界と違って、女の子でも戦えるしね。しかも死なないんだ、無意味な口喧嘩を続けてないで、リアルファイトで決着付けなよ」

 真太郎が脇から口を挟む。

 すると、エリーゼがキッと彼を睨みつけた。


「お黙り、俗物っ! 貴方は静かにしてらっしゃいっ!」

 ぴしゃりと叱りつけられた真太郎が、慌てて口を噤む。


「ぴよぴよ」

 だが、すぐにふざけだした。


「お黙らっしゃいっ!」

 真太郎がふざけた瞬間、エリーゼのビンタが炸裂する。

「あいたーッス!」

 強制的に口を封じられた真太郎が、無様に床に転がる。


「な、殴ったねっ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ