第24話 ござ無慈悲! イナバ、再びの死!
真太郎は、昨日自分が実体験したモンスターとの戦闘について、魔王と四天王の姿形、そして死んでから輪廻の神殿で復活した事の顛末を、出来るだけ事細かにエリーゼと百合子に話して聞かせた――。
「全くもって理解出来ないお話ですわっ! 死んでも生き返るですってっ!?」
真太郎の話を全て聞き終わったエリーゼが、縦ロールの金髪を振り乱してヒステリックに叫ぶ。
「なんだか、めまいがしてきたわ……。ああっ、なんでここにロザリオが無いのかしらっ!?」
死んでも生き返るという事実を聞かされた百合子が、俄かに取り乱す。
「混乱する気持ちは分かるよ。でも、百合子。そんなお守りに頼っても何の意味もないよ。お守りは守ってくれるだけで、助けてはくれないのだからね。現実を直視するんだ」
既に真太郎達から一連の話を聞いていたアダーは、死んでも生き返るという話を聞いても落ち着いたものだった。
「ま、俺の話はこんな所かな。信じる信じないは、貴女次第ですけどね」
真太郎は話を終えると、取り乱すエリーゼ達をアダーに任せて、自分は部屋の中を観察する事にした。館に入る前に感じた視線に嫌なものを感じたからだ。
(いきなり命を奪いに来るようなイベントはないだろうけど、脅威になるものがあったら回避しなきゃなんないもんね)
などと考えながら、真太郎が部屋の中をグルリと見回す。
白を基調とした内装は、嫌味にならない豪奢さと品の良さが調和して清楚で静謐な空間を作り出している。ところどころに配置されている花瓶やら人形やらに、何かが仕掛けられている様子も無い。
(……何も変な所はないな。だけど、見えない人間の気配をそこら中から感じるぞ……)
勇者ゲームのシステムが反映されているからなのだろうか、真太郎は現実世界よりも優れた知覚を発揮する様になっていた。
(ここに入る時、窓から感じた視線は、気のせいなんかじゃなかった……。扉の向こうや、壁の向こうに人がいる、それも複数だ。ま、ギルドだからメンバーがいるのは当然か)
真太郎はここまで考えると、ふと頭を振った。
(……いや、これは俺らが敵だった場合に備えての伏兵って事だろうなぁ。いかにも、エリーゼさんの考えそうな事だ)
「……面倒な事をするね。全員一か所に集めて話を聞かせればいいんだよ。どうせ、話して聞かせなきゃなんねーんだからさ」
真太郎が独り言を呟くと、不意にエリーゼが声をかけて来た。
「真太郎さん、今のお話に嘘偽りはあって?」
「ないですよ」
あまりにもあっさり真太郎が答えた事が、逆にエリーゼの不信感を煽る。
「信じられませんわね」
「何故です?」
「だってそうでしょう? 死んだ人が生き返るなんて事は、絶対にありえませんもの」
「まぁ、確かにそうですよね。おっしゃる通りです」
普通に考えれば、エリーゼの反応は当然至極だ。故に真太郎も、彼女の言い分を認めざるを得ない。
「ですが……この世界では、人は死んでも生き返る。これは揺るぎない事実です」
だが、また死んで生き返るという事も当然至極なのだ。これを否定する事は出来ない。
「真太郎さん。そこまで断言するのでしたら、証拠を見せて頂けませんか?」
百合子はそう言った後、自分がとんでもない事を言っている事に気が付いてすぐに訂正した。
「あ、ごめんなさい。それは無理ですわよね……」
すると、刹那が妙な事を言い出した。
「証拠が見たいのなら、私が見せてあげますよ」
刹那は言うなり、おもむろに袖から仕込み剣を飛び出させた。
「殺ッ! 『デッドリースマッシャー』!」
次の瞬間、刹那が必殺の一撃を放った。
デッドリースマッシャーは、大ダメージに加える即死効果付きの攻撃スキルだ。
「ござァーッ!?」
これを不意打ちで喰らったのならば、イナバの死は確定したも同然だ。
『イナバは力尽きた』
「きゃっ!」
「えっ?」
「なんだとッ!?」
突然、刹那がイナバを惨殺するなり、エリーゼ、百合子、アダーの三人が揃って動揺する。
「刹那ッ!? 何をしているんだっ!?」
「本当に生き返るのかどうかの証拠を、皆に見せてあげようと思ったんだ。これから『証拠』が見れるぞ」
まるで親切をしたとでも言わんばかりの態度の刹那が、アダーに向かって得意げに微笑む。
それをアダーがすかさず咎めようとするなり、真太郎が口を挟んだ。
「皆さん、落ち着いてください。問題は何もありません」
「問題は何もないだと? 刹那がイナバさんを斬り殺したんだぞっ!?」
アダーが何を言っているんだとばかりに、真太郎に掴みかかる。
すると、瀕死状態に陥ったイナバが今にも死にそうな声を出した。
「シ……シンタロー殿……お、お助けを……!」
(チュウの暴走によって、得てせずエリーゼさん達を一発で説得できる材料が手に入ったな。ここは師匠に犠牲になってもらおう)
「師匠。ここはどうか一つ、皆に『死と再生』の仕組みを見せる為に、犠牲になって下さい」
イナバを助けるよりも、ここで死んで貰う事で話を円滑に進める事を選んだ真太郎は、心を鬼にしてイナバに犠牲になって貰う事にした。
「そ……そんなのって有りでござるの……?」
真太郎に見捨てられたイナバの頭の上のカウントが、残り一ケタになる。
「おい、キモオタ。生き返ったら、ダッシュで帰って来いよなっ!」
「せっちゃん、ござ無慈悲……ッ!」
刹那がそう命令した瞬間、イナバの頭の上のカウントがゼロになった。
次の瞬間、イナバの体が光の粒子に変化して、アイテムを撒き散らしながら霧散した。




