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第23話 自己紹介タイム。って、やだ、この子、キラキラしてるッ!?

「なつきなちゃん~。僕ぁ、こんな気まずい空気じゃ話せないよ」

 真太郎が割と早い段階でツッコミを入れる事で、重くなった空気を軽くしようとする。


「……すまない。恵璃華が突っかかって来るから、ついムキになってしまった」

 真太郎にツッコまれるなり、アダーが己の失言を後悔する。

「参ったな。こんな予定ではなかったのだが……」

 アダーがこれからどうするか考えようとして眉間を揉むなり、不意にふんわりとした柔らかな声がした。


「恵璃華ちゃんも、なつきちゃんも、どうか熱くならないで、ね? 二人が喧嘩するせいで、お客様たちが驚いてしまっているわ」

 場を取り持つ様な言葉を言い放ったのは、エリーゼの隣に座る巻き毛の女性だ。

 綿菓子の様にふわふわとした亜麻色の巻き毛、宝石の様に青い瞳、西洋人形のような可憐な容姿、そして聖母の様に穏やかで慈愛に満ちた雰囲気――この優しそうな美少女は、白鳥百合子。ポム・アンプワゾネのナンバー2だ。


「ごめんなさいね。驚いたでしょう? でも、本当に喧嘩している訳じゃないのよ。いつものじゃれ合いだから、あまり気にしないでね」

 百合子は手慣れた様子で刹那達にそう言うと、柔らかく微笑んだ。

 すると、彼女に見惚れた刹那がため息を漏らす。


「……マジかよ。エリーゼ様に続いて百合子様まで出て来たよ」

 まるで憧れのアイドルに遭遇したかの様な表情でぼーっとする刹那に、百合子が優しげなウィスパーボイスで話しかける。

「皆様。そう緊張なさらず、どうぞお楽になさって下さいね」

 百合子がそう言うと、アダーがしめたとばかりに気を取り直した。


「百合子、ありがとう。助かった」

「喧嘩をするのは、なつきちゃんと恵璃華ちゃんの仕事。それを取り持つのが私の仕事。いつも通りの事をしただけだわ。お礼なんていらないわよ」

 気遣いのできる百合子の優しい言葉を聞いたアダーが、目元を緩めて嬉しそうに微笑む。


「皆、立ちっぱなしでは落ち着いて話が出来ないだろ。椅子に座ってくれたまえ」

 場を取り仕切るアダーの合図で、真太郎達が用意された椅子に座る。

真太郎達が全員座るのを見届けると、百合子がゆっくりと話を始めた。


「それじゃあ、中断されちゃった自己紹介を再開しましょうか」

 長机の向こう側に座る百合子が、穏やかな雰囲気で場を仕切り始めた。

「私は白鳥百合子。一応、このギルドのナンバー2という事になっているわ。あ、でも、別にかしこまらないでくださいね。姓でも名でもお好きな様に呼んでください」

 百合子が朗らかに自己紹介を終えると、刹那がまたため息を漏らした。


「なんかスゲー……。キラキラしてて、おとぎ話に出て来るお姫様みたいだ」

「刹那。良ければ、百合子たちに自己紹介してやってくれ」

 アダーにそう促されると、刹那がドギマギしながらおずおずと自己紹介を始める。


「あ、あの、俺……いや。私は煉獄、じゃなくって! 星宮きらりです」

 いつもの蓮っ葉な感じとは違って、女の子みたいな声を出す刹那が、もじもじしながら妙な事を言い出した。


「「「「はぁ?」」」」

 それを聞くなり、真太郎、みこ、アダー、イナバの四人が揃って変な声を出す。


「き……きらり? それ、チュウの本名か?」

「え? どゆこと? 刹那じゃなくって、きらりだったの?」

「ほほぅ、随分と可愛らしい名前じゃあないか」

「せっちゃんったら、本名がギザキラキラスっ!」

 思いがけない形で刹那の本名を知る事になった真太郎達は、驚きのあまり開いた口が塞がらない。


「き……きらりって、お前、正気なのか? ハンドルネームより、本名の方がインパクト強いじゃねーか……!」

 中二ネームな刹那の本名が、キラキラネームだったという事実を知った真太郎が、呆気に取られながらツッコむ。

「う、うるさいっ! 人の名前にケチをつけるなっ!」

名前をからかわれたと思った刹那が、小動物の様にシャーと唸って真太郎を威嚇する。


「真太郎、からかうのは止めるんだ。非の打ち所がない可愛い名前じゃあないか」

 場が荒れるのを嫌ったアダーが、気が立っている刹那の頭を優しく撫でてなだめる。


「それより、次はキミが自己紹介する番だよ」

 アダーに言われるなり、真太郎が面倒臭そうな顔をする。

「二人とも、俺の事は既に知ってるだろうから、自己紹介なんていらないでしょ。そうですよね?」

 真太郎はそう言うと、長机の向こう側のエリーゼと百合子に同意を求めた。


「ええ、貴方の事は良く存じ上げておりますわ」

「そうね。真太郎さんの事は、なつきちゃんを通して既に知っているわね」

 アダーを通して既に知り合いである真太郎の自己紹介は、自己紹介をするまでも無く終わった。

「じゃ、次。師匠ね」


「オ、オウフ! せ、せせせ、拙者の番でござるかっ!?」

 絶世の美少女たちを前にして、女性経験がゼロ、しかも最後に女の子とまともに話したのは幼稚園以来という筋金入りの童貞のイナバが、思いっきりテンパる。

「た、たたた、只今、ご紹介にあずかりましたァん!」


「彼は、イナバさん。ゲームで有名だった『剣聖のイナバ』だ。侍になりきっている為、口数が少ないが、勘弁してやってくれ」

 イナバがキモオタである事が露見するのを恐れたアダーが、本人に先んじてイナバの自己紹介を強引に終わらせた。


「ほ、ほえ? えっ……、これって、どういう事でござるの?」

 思いがけない事態に対応できないイナバが、真太郎に助けを求める。

「師匠。アダーの気遣いを無駄にしないでください」

 真太郎が、混乱するイナバをやんわりと黙らせる。イナバが自己紹介をすると、エリーゼ達が、今までの女の子達の様に逃げ出すと思ったからだ。


「そ……それってどういう意味でござるの?」

 真太郎が皆まで語らなかったせいで、イナバは彼の言葉を理解する事が出来なかった。

「お前がしゃべると、皆がキモがってドン引きするだろ。分かったら、黙ってろ」

 真太郎と違ってイナバに対して容赦のない刹那が、冷たく斬り捨てる。

「オ……オウフ……」

 刹那の言葉によって事の次第を理解したイナバが、切なげな声を漏らして黙り込む。


「剣聖のイナバ……? あぁ、あの時代がかったござる口調のお侍さんねっ!」 

「まぁ! 鎧武者の格好に面頬まで付けるなんて、本当にお侍になりきっているんですねっ」

「うふふ、面白い人ねぇ」

「本当ね。なつきちゃんが連れて来る人は、いつも面白い人ばかりだわ」

 イナバにしゃべらせなかった事が功を奏した様で、エリーゼと百合子は彼がキモオタだという事を知る事はなかった。それどころか、ちょっと面白い人と思われて好感すら抱かれていた。


「……よかった、バレてない。真太郎の提案で顔を隠した甲斐があったね」

「いや、アダーのフォローがあってこそさ」

 キモオタ隠ぺい作戦を成功させたアダーと真太郎が、二人揃って笑顔を交わす。


「おっ! 次はあたしですな」

 みこはそう言うと、元気いっぱいに自己紹介を始めた。

「どもども、はじめまして。あたし、みこっていいます。気軽にみこちゃんって呼んでくださいね、よろしくどうぞっ!」

 初対面の相手にも関わらず、みこはめっちゃフランクな調子で挨拶をした。

「まぁ、元気な子ね。貴女の様な子、嫌いじゃなくってよ」

 誰にも物怖じしないみこの底抜けな明るさが伴っていればこそ、一見無礼な振舞いも全て許せてしまうのだろう。エリーゼは、彼女を気に入ったようだ。


「そして、ボクが化野なつき。この世界では、アダーと名乗っているよ」

 自己紹介が一通り終わるなり、アダーが咳払いを一つする。

「さて、と。お互い自己紹介も終わった事だし、早速本題に入ろうか? 真太郎、話してくれ」


「ん? 本題? え~と、この世界での戦闘の仕組みと魔王の事だっけ?」

「死と再生についてもだ。これが一番大事だよ」

 アダーはそう言うと、真太郎の背中をポンと軽く叩いた。


「出来る限り大きい声で、ハッキリゆっくりしゃべってくれたまえ。では、どうぞ」

 それを合図に、真太郎がゆっくりと話を始める。


「じゃあ、一つ聞かせてしんぜましょう。この奇妙過ぎる世界について――」

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