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第22話 みなさん、ご機嫌よう。気高きお嬢様エリーゼ登場!

「す……スゴイ」

「一瞬で、みんな倒しちゃった……!」

 驚くべきチームワークの良さで、ナンパ野郎達をいとも簡単に退治した『名無しのギルド』の面々を、女の子達が驚きながら見つめる。


「みんな、大丈夫かい?」

 そんな女の子達に、アダーがおもむろに声をかける。

 すると、女の子達が一斉に黄色い声を張り上げた。 

「「「きゃー! なつきお姉様ーッ!」」」

「どうやら、大丈夫そうだね」 

 女の子達のはしゃぎようを見て、アダーは彼女達の無事を即座に確認した。


「なつきお姉様、私達を助けに来てくれたんですねっ!?」

「そうだよ。キミ達みたいな可愛い女の子が困っていたら、助けない訳にはいかないだろう?」

 アダーがそう言って王子様の様に爽やかに微笑むなり、女の子達が一斉に黄色い声を上げた。

「「「キャーッ!」」」


「……なんやねん、アレ」

「アダー殿はすっかり王子様でござるなぁ」

 女の子に囲まれてキャーキャー言われているアダーを、真太郎とイナバが呆気に取れながら見つめる。

「奴らの気持ちは分からないではない」

「うんうん」

 対して、刹那とみこは、二人して訳知り顔をして頷いていた。


 そんな四人の視線に気づいていないアダーが、おもむろにチャット機能を起動させてどこかに連絡を取った。

「エリーゼ、ボクだ。客人を連れて来たよ、門を開けてくれ」

 アダーがチャットを止めてから一拍の間を置いて、門がゆっくりと開き始める。

 巨大な門の扉が開ききると、アダーは助けた女の子達を率いて門の敷居を跨いだ。

「みんな、ボクの後に付いて来てくれ」

 アダーに言われて、真太郎達が彼女の後に続いて門をくぐる。


「なつき先生、なつき先生。今回の救出作戦の功労者である僕にご褒美を下さい」

 アダーの元にトコトコとやって来た真太郎が、生意気な事を言い出した。

「ん? 真太郎は、ご褒美が欲しいのかい? では、はなまるをあげよう」

 アダーが妙な事を言い出すなり、真太郎が体をビクッとさせる。


「はなまるっ!? ここでも『はなまるポイント』があるのッ!? 十個たまったら、プリンアラモードをおごってくれるのっ!?」

「ふむ、そういえばそんな事もしていたね」

 家庭教師時代を思い出したアダーが先生ぶって、真太郎の頭を撫でる。 

「よし、真太郎。ここでも『はなまるポイントカード』を作ろう。頑張ってポイントを溜めた子には、とっても素敵なご褒美が待っているよ」

「わーい!」


「流石はアダー殿。あの不遜なシンタロー殿を完全に手なづけているでござる」

「ギルマスが凄いっていうか、バカタローが馬鹿なだけだろ」

「シンタローさんって、基本不遜だけど妙な所がピュアだよねぇ」

 アダーにじゃれつく真太郎を見て、各々感想を呟くイナバ達だった。 


「よーし、ここでも頑張って百点溜めなくっちゃ!」

 などと馬鹿な事を言って気合を入れる真太郎が、何気なく『ポム・アンプワゾネ』のギルドハウスを眺める。

 すると、白亜の館の窓から刺す様な視線を感じた。


 光が反射しているせいで、窓の向こうにどんな連中がいるかは判然とはしなかった。だが、彼らの視線に敵意が籠っている事だけは、良く分かった。

(……敵かどうかはともかく、歓迎されてない事だけは確かだな。ま、アダーの側にいれば殺される事はないだろう)


「真太郎、何をしているんだい? 早くこっちへ来たまえ」 

 真太郎が考え事をしている間に、白亜の館の入り口に辿り着いていたアダーが、彼を呼び寄せる。


「アダー。俺、なんか嫌な予感がするんだけど……?」

 窓から自分に注がれる視線を気にする真太郎が、不安げな顔でアダーに話しかける。

「気のせいだろう」

 しかし、アダーは銀髪をかき上げて素気ない事を言うだけで、相手にしてくれなかった。 


(……こいつ、気付いててとぼけやがったな。ますます嫌な予感がするぜ)

 アダーの何気ない仕草から、彼女がとぼけている事を察した真太郎が心の中で毒づく。

 そうこうしている間にも、アダーは白亜の館のドアを開けて中に入ってしまう。

 そして、そのまま館の中を歩くと、一番奥のドアの前で足を止めた。


「このドアの向こうに、『ポム・アンプワゾネ』のギルマスが待っている。彼女を敵に回すという事は、それ即ち、ここにいる全ての女の子を敵にする事と考えて、お上品にするんだよ?」

 アダーが注意すると、刹那とみこが緊張した様子でそわそわと体を動かした。

「特に真太郎。キミはボクの教え子らしく、お利口にしているんだよ? いいね?」

 アダーはそう言って真太郎に微笑むと、ドアを勢いよく開けた。 


「ただいま帰ったよ。そして、客人を連れて来た」

 俄かに緊張した一同を出迎えたのは、天使の歌声の様なソプラノボイスだった。


「ご機嫌よう、皆様。よくいらっしゃってくださいましたね。わたくしが『ポム・アンプワゾネ』のギルドマスターを務めさせて頂いております、エリーゼですわ」

 天使の様な声に相応しい美しく整った目鼻立ち、桜の花びらのようなピンク色の唇、豪奢なドレスの上からでも分かる女らしい豊満な肢体、そして何より目を引くのは、夜明けの空の様な輝きを持つ縦ロールの金髪だ。


「うわぁ……スゲー、本物のエリーゼ様だっ!」

 男子禁制の乙女の園『ポム・アンプワゾネ』を取り仕切る麗しのギルドマスター・エリーゼ――その楚々としながらも毅然とした立ち振る舞いと、画面越しからも溢れ出る高貴さと優雅さで、刹那をはじめとする多くの女性プレイヤー達の憧れの的となっている『勇者ゲーム』のアイドル的存在だ。


「クソッ、ビンゴだぜ。悪い予感がドンピシャだ。毒林檎を喰っちまったっ!」

 そんな誰もが憧れるアイドル的存在のエリーゼを見た瞬間、何を思ったか真太郎が苛立ちながら舌打ちをする


「ご機嫌よう」

 エリーゼに微笑まれるなり、真太郎がアダーの首根っこを引っ掴む。

「この野郎っ! とんでもない所に連れて来てくれたなっ!」

「ボクは野郎ではない」

 野郎扱いされるなり、アダーが拗ねた様な顔でツンとする。


「そんな事はいいんだよっ! なんでここにあの女がいるんだっ!? アダーは、俺を殺す気かっ!」

「そんなつもりはないよ」

 エリーゼに対して怯えるかの様な態度を取る真太郎が、急に取り乱した。


「おい、バカタロー。お前、エリーゼ様と知り合いなのか?」

 そんな彼を隣で見ていた刹那が、小首を傾げて訝しがった。

「別に知り合いじゃない。いつの間にか、知ってただけだよ」

「はぁ?」

「あの女と初めて出会った時、俺は気が付くと十数人の女の子に袋叩きにされていた」

「はぁっ!?」

 耳を疑う様な事を真太郎が言うなり、刹那がつぶらな目を丸くして驚いた。


「そんな事より! エリーゼさんって、どう見てもアダーの友達の『あいつ』だよねっ!?」

 刹那をあしらった真太郎が、アダーに掴みかかる様にして問い詰める。

「いかにも。『ポム・アンプワゾネ』のギルドマスター『エリーゼ』は、真太郎の知っている『鳳凰院恵璃華ほうおういんえりか』だ」

 アダーが『鳳凰院恵璃華』という言葉を口にするなり、真太郎がクルリと踵を返した。


「僕、お腹が痛いからお家に帰るね」

「ダメだ」

 真太郎が逃げ出そうとするなり、アダーが彼の手をガシッと掴む。

「嫌だよ、俺は帰るっ! 俺、あの人嫌いだもんっ!」


「そんなにハッキリと嫌悪感を示さないでくれ、アレは一応ボクの友達なんだ」

「知らないよっ! あの人と一緒にいるなんて絶対嫌だからねっ! もう帰るっ!」

 何を思ったか、真太郎が突然子供の様に駄々をこねだした。

「こら! 駄々っ子になるんじゃないっ!」

 そんな真太郎をアダーが、弟に手を焼くお姉さんの様な態度で叱りつける。


「い……一体、何がどうなっているのでござるの?」

「俺が知るかよ」

「なんだか、また妙な事になってるねぇ~」

 状況についていけないイナバと刹那とみこが、駄々をこねる真太郎と彼を叱りつけるアダーを唖然としながら見つめる。


「真太郎、安心しろ。ボクが隣にいる限り、彼女に手は出させない」

「信用できないねっ! 前もそー言ってたけど、結局俺はあのクソお嬢様とその取り巻きに死ぬほど殴られたんだからなっ!」

「「「ファッ!?」」」

 真太郎が物騒な事を叫ぶなり、刹那達が揃って驚愕する。


「いいじゃないか。そのおかげで、このボクに付きっきりで看病して貰えたのだからさ」

「全然よくないッ!」

 真太郎とアダーが、リアルでの出来事を巡って人目もはばからずに喧嘩を始める。

 すると、それを遮る様にエリーゼが真太郎に声をかけた。


「真太郎さん。貴方、よくもわたくしの前にのこのこと出てこられましたわね」

 エリーゼがどこか敵意を滲ませる声音で、真太郎に微笑みかける。

「勘違いしないでください。出たくて出た訳じゃあない、と最初に断っておきます。出来れば金輪際、アナタには会いたくなかった、それが俺の偽らざる正直な気持ちです」

 真太郎が敵意に対して敵意で返すなり、アダーが叱りつける。


「こら、真太郎! いきなり喧嘩腰になるんじゃあないっ!」

「奇遇ですわね、わたくしも同じ気持ちですわ。昨日、なつきさんの口から貴方の名前が出た時、わたくし、卒倒しそうになりましたのよ?」

「恵璃華! 真太郎はボクの客人だぞ、愛想良くしろっ!」

 アダーが語気を強めてエリーゼをたしなめるなり、真太郎が部屋から出ていく。


「先方のご機嫌が麗しくなさそうなので、俺は帰るよ」

「ダメだ。真太郎には、話して貰わなければならない事があるんだ。まだ帰す訳にはいかない」

 逃げ出す真太郎の手をアダーが掴むなり、エリーゼがお澄まし顔でふんと鼻を鳴らす。


「真太郎さんのお話ごときに、わたくしが耳を貸す価値なんて無くってよ」

 エリーゼはそう言って、縦ロールされた金髪をサッと手で払った。

「いい加減に黙れ、恵璃華。真太郎が持っている情報は、この異世界で生き残る為に必要不可欠な情報だ。金を払ってでも聞く価値がある」

 アダーは語気を強めて言うと、エリーゼの目をじっと見つめた。


「今から、真太郎には、この世界における『モンスターとの戦闘』、『魔王と四天王』そして『死と復活』について話をさせる。この異世界で惨めな目に遭って死にたくなかったら、彼の話を黙って聞くんだ……!」

 アダー語気を強めて言い終わるなり、嫌な沈黙が部屋を包み込んだ。

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