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第21話 『名無しのギルド』初のギルド戦!

 しばらく歩くと、真太郎達の前に、大きな門が立ちふさがった。

 女神らしき彫像が来訪者に睨みを利かせる頑強な門と、鋭い棘が見るだけで痛い茨が絡みついた鉄の柵は、許可無き人間は何人たりとも通しはしない、といった風に見える。


「ポム・アンプワゾネ――毒林檎の意味だっけ? 茨で毒林檎を守ってるって、どういう事だよ。なんか怖いなぁ」

 真太郎が茨を見ながら言うなり、アダーが皆に声をかけた。


「その茨には絶対に触っちゃダメだよ。棘に刺されたら石化しちゃうからね」

「ねぇ、アダー。ゲームの中だと、ポムって女キャラしかいないギルドだったよね? こっちのリアル版だとどうなの? 実はみんなネカマのおっさんだったりするの?」

 アダーの後を追う真太郎が、何気なく尋ねる。


「そんな訳あるか。皆、紛れもない女の子だよ」

「女の子って言いつつも、ババアばっかりだとか?」

「失敬な! 何を言うか、ババアなどいない。『ポム・アンプワゾネ』は、天使の様に無垢な乙女しかいないギルドだ。ギルドのメンバーは、女子校の女子高生か女子大生の女の子達だけだよ」

 アダーがムッとした様に言うなり、何故かイナバがはしゃぎだした。


「女子校のJKとJDでござるかっ!」

 ロリコンの気があるイナバがはしゃぐなり、真太郎が冷めた顔でツッコむ。

「JKだJDだなんとか言って期待させても、実際は腕白相撲女子の部とか、勘違いブスかメンヘラ女みたいな奴らしかいないに決まってるでしょ。女子校に可愛い子はいない、全世界共通のあるあるネタですよ」

「こら、失敬な事を言うなっ! 『ポム・アンプワゾネ』は、可愛い子達しかいないっ!」

「女が言う『可愛い』は、信用ならないからなぁ」

 などと真太郎がしょうもない事を言うと、突如女の子の悲鳴が聞こえて来た。


「いやッ! 離してっ!」

「嫌だね! 折角捕まえたのに、離すわけないだろ?」

 声の聞こえて来た方を見ると、四人の女の子グループが、ガラの悪い男達に絡まれていた。

 しかも、そのうち一人の女の子は、男に手を掴まれてしまっている。


「またかっ!」

 そんな光景を見るなり、アダーが切れ長の目を細めて腹立たしげに舌打ちをした。

「またかって、どういう事?」

 剣呑な雰囲気でやりあっている女の子達と男達から目を離さずに、真太郎がアダーに尋ねる。


「三日ぐらい前から、のぼせ上がった馬鹿共が、うちの女の子達にちょっかいをかけて来ているんだよ」

「確かに、ちょっかいかけたくなる感じの女の子達かもねぇ……」

 男達に絡まれている女の子達は、先程アダーが言った通り、確かに可愛かった。

 ゲームのキャラクターと容姿が混ざるこの世界の都合上、可愛いのは当然であるのだが、元の素材がいいのか、女の子達は揃いも揃って美少女ばかりだった。


「女の子を無理矢理手籠めにしようとは、許しがたい無法でござるッ!」 

 義憤に駆られたイナバが刀に手を伸ばすなり、アダーが素早く制止する。

「待ちたまえ! 迂闊にPKをすると、『秩序の守護者ガーディアン』によって排除されて一日牢獄に入れられてしまうよ!」


『秩序の守護者ガーディアン』――街の内部や公共施設などの戦闘行為禁止区域で、プレイヤーがPKや行き過ぎたいやがらせなどの違反・迷惑行為を行った時に出現して、不逞の輩を牢獄送りにする一種の治安維持システムだ。


「師匠はすぐに粗ぶり過ぎです。義憤に駆られるのもわかりますが、少し冷静になりましょう。いくら師匠が俺TUEEEEの最強プレイヤーといえど、ガーディアンには勝てませんよ」

『秩序の守護者ガーディアン』は、その役割上、最高レベルのプレイヤーですら歯が立たない強さを持っている。下手に歯向かおうものなら、為す術もなく瞬殺されてしまうのだ。


「……くっ! 厄介なゲームシステムでござるなっ!」

「手が出せないからって、あの女の子達を見捨てる訳にはいかないよね?」

 心配そうな顔のみこが、泣きそうになっている女の子達を見つめる。

「あの女どもを助けるのか? あいつらにちょっかいかけてるクソ男どもは、皆レベル90台だぞ」

 刹那の言葉を聞いたアダーが、苦々しそうに端正な顔を歪めた。

「しかも、数はこちらと同じ五人か……厄介だな」

 すると、真太郎が何かに気付いた顔をする。


「無理矢理、腕を掴むのはOK。両手で突き飛ばすのもOK。で、チュウが師匠のケツを思いっきり蹴飛ばしてもOK、か……」

「どうしたんだい、真太郎? 何をぶつぶつ言っているんだい?」

 真太郎の独り言に気付いたアダーが、彼に声をかける。 


「予想だけど、この世界のルールだと、武器やスキル・魔法などによる『致死性の攻撃』以外なら、PKにカウントされないっぽいね。ま、ゲームだと、素手で殴ったり蹴ったりする機能は無かったから、その部分が反映されているのかな」

 訳知り顔で真太郎が言うなり、要領を得ないアダーが訝しげな顔をする。


「何を一人で分かった気になっているんだ? ボクにも分かるように言ってくれ」

「強引なナンパ野郎達をPKせずに倒す方法が見つかりましたよ、なつき先生。とりあえず、武器や魔法を使った致死性の攻撃以外は、この世界ではPKとして認識されないみたいです」

「何、それは本当かいっ!?」

 アダーが驚いた顔をして尋ねて来るなり、真太郎は男達にビンタをしたり、蹴りを入れたりして激しく抵抗している女の子を指さした。


「御覧の通り、あの程度の攻撃ならば、PKにならないみたいです。という事で、俺と師匠とチュウがナンパ野郎達に思いっきり体当たりでもして、女の子達からナンパ野郎達を引き剥がしたその隙に、なつき先生とみこちゃんが女の子をギルドハウスの敷地中に逃がすという作戦を提案します!」

 出来のいい生徒風な事を真太郎が言い出すなり、アダーがふむと考え込む。

「……成程、悪くない提案だ」

 アダーに褒められるなり、真太郎がにんまりする。


「だが、それだけでは手落ちだ。ナンパ野郎達は、撃退した後に追ってこない様、魔法の茨にぶつけて石化させよう」

 アダーがそう言って、鉄の柵に絡みつく茨を指さす。

 そこには、苦悶や驚愕の表情で固まる石像が散見された。

「なつき先生、アレは何ですか?」

「乙女の園に侵入しようとした不埒者の共の成れの果てだよ」


「マジかよッ!? 大丈夫なのかよあれ、石になってるじゃんっ!」

 見事に石化した不逞の輩達を見た真太郎が、目を丸くして驚く。 

「問題ない。回復魔法で元に戻せるし、放っておいても二、三日もすれば元の姿に戻る。それより、女の子達が危ない、真太郎の作戦を迅速に実行しよう」

 アダーがそう言うなり、真太郎がステータス画面を表示させた。


「なんだ、お得意のホールドエネミーでも使うのか?」

 刹那が尋ねるなり、真太郎が首を横に振った。

「あれは使えない。攻撃性の魔法を使うと、PK認定される可能性があるからね」

「じゃあ、どうすんだよ?」

「ダメージゼロの目潰し魔法『ブラインドフラッシュ』をチュウにかける」

 真太郎が妙な事を言い出すなり、刹那が円らな目を細めて訝しげな顔をする。


「あん? あれは敵にしか使えない魔法だろ?」

「今の俺達は、パーティーの様になっているが、システム的にパーティー登録している本物のパーティーではない。故に、仲間じゃないチュウに魔法を使う事が出来るんだ。その証拠に、お前に何回もホールドエネミーをかけてるだろ?」

「クソ! だから、お前は俺にあのムカつく魔法を使えたのか! つか、なんで俺に魔法をかけるんだよっ!?」

「そりゃ、敵が魔法無効化とか反射の能力を持っていたら、作戦が失敗するからだよ」


「……むぅ。暴走していると思いきやしっかり考えていたのか、ムカつくな」

 刹那が渋々納得するなり、真太郎が話を戻す。

「作戦はこうだ――この中で一番素早いチュウが、ナンパ野郎共に突っ込み、奴らの視線を集める。そこに俺が『ブラインドフラッシュ』を使う。そして、ナンパ野郎共が閃光で目潰されている間に、師匠が女の子の手を掴んでいるナンパ野郎に体当たりを食らわせ、彼女を解き放つ。そして、自由になった彼女の手をアダーが掴んで、女の子を助け出す」


「あたしっ! あたしはっ? みこちゃんはっ!?」

 作戦に名前が出て来なかったみこが、ぴょんぴょん跳ねてアピールする。

「みこちゃんは、アダーに続いて、目潰しされたナンパ野郎共に強烈な蹴りを喰らわせて茨に叩きつけてくれ」

「よっしゃ、任せてよっ!」

 全ての人員に作戦を伝え終えた真太郎が、最後に確認の為にアダーを見る。

 

「急ごしらえにしては上出来だ。よし、それでいこう!」

 ギルマスの了解が取り付けられた事により、真太郎達の女の子救出作戦がスタートした。


「では、新メンバーみこちゃんを加えた『名無しのギルド』初のギルド戦開始だ。作戦名『囚われのお姫様を助け出せ、なつき王子様!』開始ッ!」

「なんだ、その作戦名はッ!?」

「バカタローの馬鹿な作戦名にツッコんだら負けだぞ、ギルマス!」

 アダーが真太郎にツッコみを入れるなり、刹那が地面を蹴って駆けだした。


「おらァー! こっちを見やがれナンパ野郎ォォォーッ!」

 ナンパ野郎達の中心に飛び込んだ刹那が、手近にいた男に蹴りを喰らわせる。

「グオッ! なんだ、お前ッ!?」 

 刹那が初撃を成功させ、ナンパ野郎達の視線を引きつけたのを確認するなり、真太郎が大声で叫んだ。


「皆、目を瞑ってッ!」

 真太郎が叫ぶなり、『名無しのギルド』の面々が一斉に目を瞑る。 


「『ブラインドフラッシュ』!」

 音声入力で魔法を起動させた次の瞬間、真太郎の杖の先端が光を発し、魔法のターゲットである刹那の目の前で強烈な光が炸裂した。


「「「うわっ!」」」

 辺り一面を真っ白に照らし出す強烈な閃光を直視してしまったナンパ野郎達が、一瞬にして視界を奪われる。 


「師匠、今ですッ!」

「御意ッ!」

 真太郎の合図でイナバが駆け出し、女の子の手を乱暴に握っていたナンパ野郎に思いっきり体当たりを喰らわせる。


「うおッ!」

 イナバの体当たりをまともに食らったナンパ野郎が大きく後ろに吹き飛び、鉄の柵に絡まる茨にぶち当たる。

「なッ!? か……体……がッ!」

 次の瞬間、鋭い茨の棘に刺されたナンパ野郎の体が、見る見るうちに石化していった。


「なんだ、何が起こったッ!?」

「それをキミらが知る必要はないッ!」

 イナバと一緒に駆け出していたアダーが、ナンパ野郎達に強烈な回し蹴りを食らわせ、茨に叩きつける。

「グアッ! か、体が、動か……ないッ!?」


「二人撃沈! 残るは三人っ! どりゃぁぁぁー!」

 アダーに続いて飛び出したみこが、二人のナンパ野郎に華麗なドロップキックを食らわせ、茨に叩きつける。

「「ガハッ!」」 

 二人同時に蹴り飛ばされたナンパ野郎達が、茨の棘に刺されて石化する。


「な、何だッ!? 一体何が起きてやがるッ!」

 訳も分からぬうちに仲間達が全員やられてしまったナンパ野郎達の最後の一人が、目を白黒させて戸惑う。


「誰だテメーらッ!? 調子乗りやがって! テメーらぶっ殺してやるッ!」

 パニックを起こすナンパ野郎が、そう叫びながら剣を抜いた。


「「「俺らが誰かだって?」」」

 剣を取り出した敵には容赦する必要は無いと判断した真太郎達が、全員同時に蹴りを放つ。


「グハァーッ! な……なんだテメーら……はッ!?」

 ギルメン全員による強烈な蹴りを技を喰らったナンパ野郎が、茨に叩きつけられた。


「「「名無しのギルドだッ! バカヤロウッ!」」」

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