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第2話 アチーブメント獲得とレベル上限突破

「さて、と。無事に魔王城から生きて帰って来れたし、これで一段落って所かな?」

 無事に仲間と再会すると同時に、無事に生き返った事を理解した真太郎は、ようやくここで人心地がついて落ち着きを取り戻した。

 すると、今度は混乱の感情に変わって、怒りや悔しさの様な感情が湧き上がって来た。


(……しかし、悔しいな。勿論、負けも想定していたけど、あんなに一方的にやられるなんて思わなかった……)

 真太郎の脳裏に、イナバと刹那が不死王に一方的に殺される場面がフラッシュバックする。

 そして、自分自身が瞬きすら出来ないまま、あっさり斬り殺された場面も……。


(……足りない。まだまだ全然足りない。何もかもが足りない……!)

 次いで、魔王を道連れに自爆する場面が、圧倒的な臨場感を持って脳裏に蘇る。

(だけど、絶対に勝ち目がないって訳じゃあない。今より、強い装備と強い仲間を集めれば、全然いける……真っ向勝負でも魔王を叩き潰せるッ!)

「……ただ、それをするには、やはりまだまだ全然足りない」


(魔王を倒す事で現実に帰れるかどうかなんて分からない。だが、ゲーム通りに動くこの世界にいる限り、魔王達との戦いは絶対に避けられないはずだ。なにせ、魔王達の目的は『全人類の抹殺』だからな。ゲームのルールが、そっくりそのまま適応されている世界なんだから、魔王達も当然ルール通りに動くはず。実際、問答無用で殺されたしな……)

「となると、人類が抹殺される前になんとかせにゃならん」 


「おい、さっきからどうした? 死んだショックで頭がおかしくなったのか?」

 独り言を続ける真太郎を心配になった刹那が、彼の顔を不安げに覗き込む。

「よし、次にやる事が決まったな! これから忙しくなるぞっ!」

「おい、俺の話を聞いているのか? マジで、ヤバい事になってんじゃねーだろうな? お前だけ復活遅れてたし、不完全な復活の仕方をしたんじゃないのか?」

 真太郎は自爆したショックで、本当にどうかしてしまったのではないか? と心配になった刹那が、あどけない顔いっぱいに不安を広がらせる。


「チュウ。さっきの戦い、よくやったぞ。ggだ」

 真太郎が普通に話しかけた瞬間、刹那の顔から不安が消える。

「おおぅ! なんだ、ちゃんと返事できるじゃねーか。ってか、ggじゃねーよ! 全滅してるじゃねぇかっ!」

 消えるなり、刹那はすぐさまいつもの様に、ぶっきらぼうな態度を取った。


「ggはggでも、『good game』ではなく、『ガチで撃滅されちゃったっ☆』だ。間違った事は言ってない」

「黙れよ、上手くねーよっ! つか、なにが『魔王を倒せば元の世界に帰れる』だっ! 元の世界に帰るどころか、殺されちまったじゃねーかっ!」

 真太郎の提案に乗って死んでしまった刹那が、八つ当たり気味にキレる。


「お前もその気になってた癖に、何言ってんだよ? それにお前は、出発前に自分の意思で魔王退治に出かける、って言って、俺についてきたって事を忘れるなよ?」

「うるーせよ! しょうもない言質を取ったからって、いい気になってんじゃねーぞ! お前があんなアホな事を言い出さなきゃ、俺は殺されないで済んだんだぞっ!」

「殺されたって言っても、お前は死の恐怖を感じる前に死んだんだから、どうって事なかっただろ? 殺された時に痛みを感じたか?」 

「……いや、それは……無かったけど……」

 真太郎の言う通りだったので、思わず言葉に詰まる刹那だった。


「死んだかどうかも分からないうちに死んで、そのまま訳も分からず復活したお前は、本当に死んだと言えるのか? 否、言えない。お前の場合、魔王城からここへ、瞬間移動しただけだ。俺には、お前が必要以上に俺を責めている理由が分からない」

「ぐぬぬ……!」

 そのせいで、真太郎にすぐに丸め込まれてしまう。


 言い負かされてしまって悔しそうにしている刹那を見かねたイナバが、仲裁に入る。

「シンタロー殿。せっちゃんはシンタロー殿を責めている訳――」

 だが、その言葉は最後まで言い終わる事無く真太郎に遮られた。

「なんですか? 師匠まで、自分が死んだ事の責任を俺に擦り付けるつもりですか? さっき、慰めてくれたのは嘘だったんですか?」

「いや、そんなつもりは――」

 言い訳がましい事をイナバが言い出すなり、真太郎が荒ぶった。


「死んだ実感のない奴らが、死んだとか殺されたとか言うんじゃあないッ! それに俺は、何も出来ずに死んだ二人とは違って、みこちゃんをしっかり逃がした上、殺された仲間の仇を討ってから死んだんだ。責められるいわれはない!」

 確かにイナバと刹那を死に追いやった原因を作ったのは、真太郎ではあった。

「「……ぐっ!」」

 だが、一応の責任を取っているだけに、二人とも強く言い返せない。


「そもそも、俺には何故君たちが、グダグダ言っているのかが全く分からない。今こうやって生き返っている時点で、何の問題も発生していないじゃあないか?」

「……魔王に負けた」

 言われっぱなしが癪に障った刹那が、小声でツッコむ。

「何?」


「魔王に負けたっつんたんだよっ!」

「だから何? ゲームなんだから、失敗したっていいじゃない? 余裕が無いねぇ。つか、勇ゲーのボス戦は、初見は爆死がフツーだし、『トライ&エラー&リベンジ』が勇ゲー流なんだよ。そもそも、チュウは、野良パーティーに何を求めてんの? 効率狩りなら身内でやってな」


「ちょ、シンタロー殿! 拙者達は身内でござるよっ!」

「師匠も文句言うつもりですか? ここは、板垣死すともキモオタ死せず、って事で勘弁してくださいよ?」

「意味わからんでござるよっ!」

 既に仇討ちと謝罪を済ませた真太郎は、罪悪感など微塵も持っていない。 それ故、彼は悪びれる事も無く、荒ぶる刹那とイナバを妙な話術で翻弄し続けた。


「いや~。しかし、危うく死んだかと思ったが超セーフだったなっ!」

「「死んだんだよっ!」」

 刹那とイナバが、ふてぶてしい真太郎に同時にツッコミを入れる。

「おいおい、五体満足で生き返った今の状況で、死んだ事をなじって何の意味がるの? つか、さっきの『死』は、『ゲーム的な死』であって、本当に死んだ訳じゃないだろ? いい加減しつこいですよ?」


「こんの~、バカタロー! 皆を巻き込んで爆死したんだ、少しは反省しろよなっ! パーティーはチームワークが大事だって言ったのは、お前だろっ!」

「だとしても、俺もう謝ったんだ。これ以上は、絶対に謝らないぞ。結果的に被害はゼロだし、俺は仇討ちもしっかり果たしているんだからなっ! 」

 殺されたとはいえ全員無事に生き返っているし、みこを逃がして、仇討ちすらも見事に果たした真太郎にこれ以上謝る義理が無い、と言えば確かに無かった。


「……確かに、シンタロー殿の言う通りござる。だが、せっちゃん怒るのも無理ない事をしたのも事実でござるよ」

 だが、そうは言っても、あまりにも無謀な挑戦だったことは否めない。

「怒りたい奴は、怒らせておけばいいんじゃないっスか?」

「むっかー! さっきから言わせておけば、このバカタローがっ!」

 刹那が小動物の様にキーキー喚き出すなり、真太郎が即座に一喝した。


「さえずってんじゃねー! お前が今する事は、俺をなじる事じゃないだろっ! 俺をなじってどうする? いくら俺をなじったって状況は何も変わらない! 最早、過去を語る事は無意味だ……! 今、お前らが成すべき事は未来を見つめて、勝ちを取りに行く事だ。はき違えるな、大事な事を……っ! だから、お前達は敗北したのだ……! これ以上、恥知らずな事を喚くのは止めろ、敗北主義者共!」

 威圧的に言葉を並べる真太郎に、刹那が小動物の様に牙を剥いて食って掛かる。

「もう全滅した後なんだよっ! 適当な事言って誤魔化してんじゃねーぞっ!」 

 少しも悪びれない真太郎に刹那がキレて、キーキー喚く。


 そんな刹那を見るなり、真太郎が呆れ顔でため息をついた。

「チュウと師匠は肝心な事を忘れているようだから、言わせてもらいますがね。魔王城に乗り込む事を提案したのは俺ですが、魔王にいきなり喧嘩を売ったのはアンタら二人だからね。そこを忘れて、俺を一方的になじるのは間違いだよ?」

「ぐぬっ!」

 痛い所を突かれた刹那が、思わず口籠る。

「ござる……」

 彼女と同じ愚行を冒していたイナバも、バツが悪そうな顔をしていた。


「まーまー、皆そんな暗い顔しないで。確かに、いきなりのラスボス戦は大失敗だったよ。だけど、一人も欠ける事無く、皆無事に生き返ったんだ。問題はもう無いよ、でしょ? さ、喧嘩はもう終わり、元気出して次に行こうぜ?」

 気遣いの出来るみこが皆の仲をとりなすなり、不意に鈴の音の様な軽やかな音が鳴って真太郎のステータス画面が自動で開いた。


『女神様からの一言メモ。魔王は倒さねばならない邪悪な敵です。ですが、神である私ですら手をこまねく、強大な力を持っています。勇敢な勇者とは言えど、一人で倒すのは困難を極めるでしょう。魔王打倒の為に、まずは仲間を集めましょう』

 ゲームで死ぬと表示されるワンポイントメッセージと同じものが、ステータス画面に表示された。


「むっ、この世界でも死ぬと、『女神様からワンポイントアドバイス』が貰えるらしいな。しかも、アチーブメントまで獲得してるぞ」

 真太郎がそう言うなり、みこが彼の手元のステータス画面を覗き込んだ。

「どれどれ……『無謀な勇者』、『一番槍』、『ラストマン・スタンディング』かぁ。この三つは、さっきの戦いで手に入ったのかな?」

 みこが、ステータス画面の文字を読み終わると、自動的に新しい文面に切り替わる。


『アチーブメント報酬――金貨・八千万枚獲得。“女神の騎士”の称号獲得。ユニークスキル“勇者の一撃”習得』

 どうやら魔王に挑んだ事によってアチーブメントを獲得し、それによって報酬を得る事が出来たらしい。

 これを知った瞬間、真太郎が得意げな顔をする。


「ほらぁー! これを見てみろ、敗北主義者共っ! 俺の行動は正解も正解、大正解だったんだよっ! 今すぐに、金貨八千万とユニークスキルを授かった女神の騎士であるこの俺を口汚くなじった事を詫びろっ!」

「きーっ! むかつくぅぅぅー!」

 真太郎の蛮行が思いがけない成果をもたらしたという驚愕の事実を知った刹那は、悔しさとムカつきが頂点に達してヒステリーを起こした。


「何をヒスっているのかな、煉獄刹那君? そういえば、君は先程の負け戦を俺のせいにして散々口汚く罵っていた様だが、この結果を見て君は何を思うのかね? 俺はこういう結果になると予想した上で、魔王に戦いを挑んだのだよ? お前の様に考えなしで動いている訳じゃあないんだよ? チュウとは違うのだよ、チュウとはっ!」

「ぐぬぬ! なんでコイツは、こんなに正々堂々と嘘をつけるんだっ!」

「嘘ではない。俺は最初から全てを読んでいたんだよ。いいか、チュウ、よく聞け! 戦いとは常に二手、ないし……ないし三、四手先を読むものなのだッ!」

 いい気になった真太郎が、キメ顔で得意げに語る。


「……キャスバル兄さんの名言が、あやふやになっているでござるよ。この調子じゃ、今のアチーブメントの話は全部偶然の産物でござるな。まったく、運がいいと言うか、なんというか」

「カッコつけよーとして失敗してんじゃねーよ! ばーかっ!」

 決め所を外した真太郎に、イナバがツッコみ、刹那が罵声を浴びせる。


「うっさい人たちだなぁ! 結果良ければ、全て良しなんだよっ! だから、この話はもう終わりだよ! 次行こ、次! 過去に囚われていても前には進めないよっ! ね、みこちゃん?」

「そーだね。過程はどうあれ、結果的に皆無事な上、アチーブメントまで手に入れてるし、これ以上、終わった事をほじくり返していても意味ないよね」

 一応、真太郎に命を助けてもらっているみこは、彼に対して刹那の様な悪感情は無いようだ。


「おい、みこ! 勝手に話を打ち切んなよっ!」

「しっかし、『強くてニューゲーム』ってな感じだったから、調子乗って開幕早々ラスボスを始末出来ると思って意気込んだけど、当てが外れちゃったなぁ~」

「おい、バカタロー! テメーは人の話を聞けよっ! テメーのバカに、俺を無理矢理巻き込んどいて、なんだその言い草はっ! もう一回位謝れ、馬鹿っ!」

「せっちゃんは、さっきから口が悪すぎで過ぎでござるよ。とはいえ、やはりあの時は、もう少し慎重でなるべきでござったな、シンタロー殿」

 打ち切った話を蒸し返された瞬間、真太郎が呆れ顔でため息をつく。


「はぁ。ネトゲ廃人のアンタらの人生、既にどーしようもないぐらい惨めなんだから、ここで負けが一つ増えた所で、どーって事ないでしょ? グダグダ言うんじゃないよ」

「そういう歪な考えが、一人殺すも二人殺すも一緒っていう、シリアルキラーを生み出すのでござるな……」

 不遜な真太郎の毒舌には、呆れて物が言えないイナバだった。


「『魔王を殺したい』っていう、ファンタジーでロマンシングな気持ちで動いているだけの俺のどこが、シリアルキラーなんですか? 妙な言いがかりはよしてくださいっ!」

「ぜ……全然ファンタジーでもロマンシングでもないでござる。言っている事が、まるで殺人鬼でござるよ……っ!」

「そ……そんな気持ちで、あんな事したのかよ。お前、やっぱサイコ野郎だわ……!」

 真顔でとんでもない事を語る真太郎に、『こいつ、マジもんなんじゃねーのか?』、とドン引きする刹那とイナバだった。


「まだ言ってんのかよ、本当にしつこい人たちですねぇ……。何なの? 君たちは人の過ちをあざ笑い、人を責める事が全てなの? 過去は過去、もう過ぎた事なんだ。俺達が見つめるべきは、過去ではなく、未来! 過去はどうだっていんだよ、必要なのは未来と笑顔だっ!」

「やだっ! 殺人鬼から一転、素敵なポエマーでござるっ! こんな台詞を言われたら、有無を言わさず前に進まざるを得ないでござるっ!」

 ドン引きしていた所にポエジーな台詞を叩きつけられたせいで、迂闊にもイナバは乙女心をくすぐられてしまった。


「キッショ! キモオタもバカタローも意味分かんねーよっ!」

 いつもの妙なやり取りをする真太郎とイナバに、刹那がツッコミを入れる。

 すると、みこが彼女をなだめる様にポンポンと肩を叩いた。

「まぁまぁ。終わった事に、これ以上こだわっててもしょうがないよ。シンタローさんを責めるより、魔王へのリベンジを考えた方がいいんじゃない?」

「……確かに、過ぎた事をグダグダ言っててもしょうがねーかもな。死んだとはいえ、こうやって無事に生き返った訳だし」

 友達であるみこの言葉を聞いた刹那が、渋々といった感じで納得をする。


「やっと気持ちを切り替えたか。俺達は若いんだから、失敗したっていいんだよ。つか、お前らゆとりキッズは、失敗を恐れすぎなんだよ」

「おめーも、ゆとりだろっ! つか、失敗したら取り返しのつかねー事も世の中にはいっぱいんあんだよっ! そうそう気軽にしくじってばかりいられねーっての!」

「チュウの癖にまともな事言いやがって。ゲームでは地雷キャラだったのに、リアルでは常識人なんて、どんな冗談だよ」

 真太郎はそこまで言うと、急に妙な事を言い出した。


「そんな事より、俺はレベルアップしたぞ」

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