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幕間1-4 招かれざる侵入者

「なんだ、この光はッ!?」

 目も眩まんばかりの強烈な光に思わず目を閉じた物部が、次に目を開いた時、彼はだだっ広い草原の真っただ中に立っていた。

 

 頬に当たる風が髪を揺らすと、物部は顔を青ざめさせながら口元を手で押さえた。

「ここは……どこだ……?」


(……『World Transition』)

 頭の中に答えの様なモノが閃くなり、物部は頭を掻きむしって声を荒げた。


「おいおい、まさか! まさか! 止めろ、止めてくれ! 勘弁してくれよ! まさかこいつが、失踪事件の真相だっていうのかッ!?」

 そう叫び声を上げる物部が見つめるのは、『勇者ゲーム』の中に出て来る光景とそっくり同じ光景だ。


『あたらしい冒険をはじめますか?』


 最後に見た文字が、急に頭の中にフラッシュバックした。

「まさか……ここは『勇者ゲーム』の中……なのか……?」


 物部は愕然とした顔でそう呟くと、急に弾かれたように大声で笑い出した。

「はははっ! どこを探しても見つからないはずだっ! 失踪者達はゲームの中にいたんだからなぁっ!」


 自分が置かれている状況が理解出来ないあまり、物部は思わず混乱して爆笑してしまった

 笑いが収まるなり、ふと妙な違和感に気付く。


 着ている物がスーツではなく、粗末な布の着物に変化しているのだ。

 しかも、履いていた靴下は今は無くなり、代わりに草履を履いている。


「……成程。これが私の『ここ』での姿か」

 近くの池の水面に自分の姿を映した物部が、訳知り顔でニヤリと笑う。


 今の物部は、皺だらけのスーツの代わりに粗末な着物を着て、長く白い髭をた

っぷりと蓄えた仙人になっていた。


「あはは! こいつは凄いっ! このジイさんは、私がゲームで使っていたキャラクターじゃないかっ!」

 自分の姿がゲームで操作していたキャラクターそっくりになっている事に気付いた物部が、沸き立つ感情を暴発させたかの様に再び笑う。


「まったく、一体全体これはどういう事なんだ? 私は、『勇者ゲーム』の世界に来てしまったとでもいうのか? よしてくれ、子供の妄想じゃああるまいし。私は、もう50近いんだぞ? これは、私の妄想の産物だとでもいうのか……」


 物部が水面に映るゲームキャラの自分に語りかけていると、不意に空から何か

が降りて来た。


 それは、機械で作られた天使の様な得体の知れない何かだった。

「……なんだこいつらは? 天使……なのか……?」


 機械仕掛けの天使は空から舞い降りて来るなり、侵入者を包囲する衛兵か何かの様に、物々しく物部を取り囲んだ。


「なぁ、天使さん達。ここは天国なのかい?」

 物部が問いかけた瞬間、機械仕掛けの天使達が、合成音声の様なぎこちない不気味な声を上げた。


「不正転移体を発見」

「我々『セーフガード』は、申請無き転移体である貴君を承認する事が出来ない」

「不正に侵入した者には、とても厳しい罰が与えられる」


「な、なんだお前らは……っ!?」

 突然現れた機械仕掛けの天使が物騒な事を言い出すなり、物部が思わず動揺する。


「「「侵入者を粛清する!」」」

 次の瞬間、機械仕掛けの天使の目が、ギラリと紅い光を放った。


「こいつは大ピンチってやつだ……!」

 機械仕掛けの天使に死の影を見た物部が、無意識的に妙な言葉を発した。


「来てくれ、筋斗雲っ!」

 すると、空の遥か彼方から、金色の雲が猛スピードで物部の所に飛んで来た。

 それを見るなり、物部が訳も分からず笑い声を上げる。

「はははっ! なんだこれはっ!? 本当に筋斗雲が飛んで来たぞっ!」

 

 ゲームと同じ演出で、ゲーム時代に愛用していた乗り物の『筋斗雲』が飛んでくるなり、機械仕掛けの天使達が大きく羽ばたいた。

 羽ばたきと同時に、ナイフの様に鋭く尖った羽が物部に襲い掛かる。  


「嘘だろッ!?」

 ナイフの様な羽を間一髪で躱した物部は、そのまま筋斗雲に飛び乗ると、一目散に逃げ出した。

 筋斗雲のスピードは。スポーツカーや新幹線かと思うぐらいの猛スピードが出て、あっという間に機械仕掛けの天使達から逃げ出す事が出来た。


「ははは! こいつは凄い! 空を飛んでいる! 私は空を飛んでいるぞーッ!」

 雲に乗って空を飛んでいるという夢の様な体験にテンションが上がった物部が、思わず雄叫びを上げる。 


 そして、一通り叫び終わると、筋斗雲の上に胡坐をかいてどっかりと座った。

「なんだか、訳の分からんうちに、良く分からん事になってしまったなぁ~」

 仙人の様に長く白い髭を撫でながら、物部が物思いにふける。


(う~む……これが、『勇者ゲーム』にまつわる同時多発失踪事件の真相なのか……?)


「これはあれかな? 俗にいう『異世界転移』ってやつかい?」

 ふと何気なく下を見ると、眼下にゲームに出て来るのとそっくりな街が見えた。

 強固な城壁にグルリと囲まれた中世西洋風のファンタジックな街は、紛れも無く『勇者ゲーム』で、物部がホームタウンにしていた『オリエンスの街』だった。


「……街まで存在するのか。本当に『勇者ゲーム』にそっくりだな。ここは一体どこなんだ? まさか、本当にゲームの中なのか……?」

 ゲームに出て来る『オリエンスの街』にそっくりな街を眺めながら、物部は物憂げな顔で白い鬚を撫でた。


「まぁいいか。折角だ、異世界漫遊と洒落込むのも悪くない」

 などと能天気な事を物部が言うなり、機械仕掛けの天使が後を追って来た。


「「「侵入者に粛清を!」」」


「って、追って来たァァァーッ!」


 こうして、招かれざる最後の転移者が、この世界にやって来た。


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