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第23話 驚異の協力奥義! チート使って大暴れ!

 特訓を再開した真太郎達はチームワークを構築する為に、常に四対一でモンスターと戦っていた。

 その際、彼らは、相手が何十レベルも格下の雑魚モンスター相手でも、万全を期す為に、常に補助魔法をかけながら慎重に距離を取って戦った。

 それは、安全を担保した上で、生身での戦いの感覚を体に叩き込む為である。またそれと同時に、確実に勝利する為でもあった。


 そんな真太郎達の戦闘は、盾役のイナバが敵の注意を引きつけたその隙を突いて、真太郎がホールドエネミーで敵を捕縛。捕縛次第、みこが素早く接近してHPを削り、刹那がトドメを刺すというフォーメーションを基本としていた。


「来るでござるよ、モンスター共! 拙者が相手でござるッ!」

 このフォーメーションでのイナバの役割は、『タンク』だ。

『タンク』は、モンスターの注意を引くスキルや攻撃で、敵の『ヘイト』を集めて味方が動きやすい様にし、万が一攻撃を受ければ盾になるのが主な仕事だ。

 ただし、『ヘイト』の概念はゲーム時代には存在したが、今の状況で存在するかは謎だった。

 というのも、モンスターは『襲い掛かって来るもの全てに反撃する』といった感じで、システム的にヘイト値がある訳ではない様に見えるのだ。


「クソ! 上手い具合にヘイト管理が出来ないでござるよ!」

 そういった訳で、イナバは完璧に敵の注意を引く事は出来ていなかった。

 だが、タンク役のイナバは『侍』のジョブ補正で体力、防御力が共に高く、更に素早さに補正が付く武具を装備しているので、敵のヘイトが切れ次第、自ら動く事でいつもでも敵の注意を引く事が可能だった。 「こっちへ来――ぐあッ! 油断したでござるッ!」

 ただし、そうやって盾役になり続けて敵の攻撃を受け続けると、当然やられてしまう。


「師匠、しっかり! 今、回復します! 『ヒールライト』!」

 そこで出て来るのが、『ヒーラー』の真太郎だ。

 パーティーメンバーのHPや各種ステータスに注意を払い、異常があれば即座に回復するのが『ヒーラー』の役目だ。

 また、回復だけでなく、敵を弱体化させたり味方を強化したりして、戦闘を有利に進める為の補助を行う事も仕事に含まれる。そう言った意味で『ヒーラー』は、パーティーの補助要員であると同時に、要でもある。


「イナバさん、スイッチはいります!」

「かったりー事やってんじゃねーよ! 攻撃こそ最大の防御だろうがッ!」

そう言って、負傷したイナバに代わって果敢に敵に挑みかかるみこと刹那の役割は、『アタッカー』。

 盾役がヘイトを稼いで戦っている間に敵のHPを削り、一秒でも早く敵を仕留める事が彼女達の仕事だ。

 ただし、アタッカー役を務める職業の多くは、攻撃力に秀でるが代わりに防御力が弱いものが多い為、攻撃に際しては細心の注意が必要になる。特に、全てが現実化したこの世界であれば、猶の事だ。


「二人とも! 今の戦闘は、ゲーム時代とは違うのでござる! 無茶はダメでござるよ! 特に、紙装甲のチュウは、前に出過ぎてはダメでござるッ!」

「知った事じゃねーよ! 俺は最強の殺人鬼だ。雑魚モンスターなんか、俺の『デッドリースマッシャー』で一撃だぜッ!」

 戦闘の花形であり、派手で楽しい役割の『アタッカー』は、プレイヤー人口が多く、それ故に地雷プレイヤーも多い。勿論、刹那は当然それに当てはまる。


「おい、チュウ! また勝手な事をしてチームワークを乱すんじゃねーよ! いいか、『タンクがパーティーを守り、ヒーラーがパーティーを支え、アタッカーが敵を倒す』これが基本だっ!」

 タンクとアタッカーは共に、前衛で敵と戦うのが仕事だ。

 そして、タンクはダメージよりもヘイトを稼ぐ事に注力し、アタッカーはその隙に敵に多くのダメージを与えるのが、基本的な役割分担だ。

 このバランスが崩れると、途端に戦闘のリズムが乱れてしまう。

「ごはん、おかず、味噌汁的な三位一体のバランスを崩すなッ!」

「三角食べかよッ! お母さんみたいな事言うんじゃねーよ!」

 などとやりつつ、パーティー間の連携を体に覚えさせていく真太郎達だった。


 しかし、恐ろしいモンスターを相手に生身で激しい戦闘を行なうのは、何度繰り返した所で、なかなかに厳しモノがあった。


 ゲームとしての『勇者ゲーム』を遊んでいる時には、攻撃したいモンスターをマウスでクリックして指定するだけで、後はゲームのキャラクターが自動的に攻撃をしてくれていた訳だが、実際の戦闘はそういう訳にはいかない。

 なにせ、この異世界での戦闘は、自分自身の体を動かさなければいけないのだ。

 この世界で敵を攻撃するには、目の前で牙を剥いているモンスターに向かって、何度も何度も腕を振り下ろして武器を叩きつける必要があり、また、敵に攻撃をされたら、自分の足を使って避けなければいけないのだ。しかも、失敗すれば確実な痛みを伴った怪我をする……。

 自分の体を動かして戦闘をする――言葉にすれば簡単だが、これを実際にやるのは思っている以上に難しい。


 というのも、恐ろしげなモンスターを目の前にしてしまうと、恐怖感や興奮によって精神状態がかき乱されてしまい、体が思う様に動かなくなってしまうのだ。

 そのせいで、モンスターがどんな動きをしているのかが、目で確認できなかったり、攻撃の直前でモンスターの絶叫にビビって、思わず手を止めてしまう事も多い。

「ふぇ! やっぱり、モンスターは怖い……!」

 特に、まだ女子中学生である刹那は、その傾向が顕著だった。


「マズいな。これは、誰かが指令官になって、皆をまとめないとヤバいな……」

 そこで、真太郎は一切前線に出る事を止めて、常に戦場から一歩離れた場所でパーティーメンバーの戦闘指揮を執る事にした。


「これからは、俺が全ての指示を出します! 死にたくなかったら、言う事を聞いてください! 言う事を聞いてくれれば、皆を絶対、勝ちに導きますっ!」

 真太郎がパーティーの指揮官になる事により、それまでは各人が状況に応じてそれぞれ指示を出していた渾沌とした状況に、一本筋の通った命令系統による安定がたらされた。

 

 この状況は、ある意味では『勇者ゲーム』のパーティープレイ本来の形に戻ったともいえる。そもそも『治癒魔法師』はパーティーの回復役であり、自らが前線に出て戦う『殴りヒーラー』スタイルは邪道なのだ。


「指揮系統が安定すると、途端にチームワークが良くなったな」

 真太郎がそう言うなり、チームワークを覚えつつある刹那が続いた。

「即席の野良パーティーとはいえ、ゲーム時代に組んでた奴らが三人もいるから、連携に手間取る事は無かったみてーだな」

「新入りのみこ殿も、剣士ゆえの武人の勘があるのか、拙者達の動きにすぐに順応してくれたみたいでござる。流石、剣道部の副部長でござるな」

「いや~、それほどでもありますよ。えっへんっ!」

 安定した指揮の元、何回かの戦闘を経験するうちに、ゲーム時代から強固だった真太郎とイナバの連携はより強化され、また地雷の刹那と新入りのみこも、四人で動くパーティープレイに馴染んできたようだった。

「新手出現っ! ただちに迎撃します! 皆、所定の位置についてください!」

「「「おうっ!」」」

 突然の敵の襲来に際しても、阿吽の呼吸で動けるようになった四人は、最早、本当の『パーティー』と言って差支え無いだろう。



「戦いにも大分慣れて来たな! よし、次は俺のスキル『コラボレーター』を使った『連携技』の習得に移ろう!」

「出たな、バカタローのチートスキル」

「チート?」

 刹那の言葉を聞いたみこが、不思議そうな顔で小首を傾げる。


「ユニークスキル『コラボレーター』は、スキルは使用する事により、俺の取る全ての行動が第三者との『連携技』に変化するユニークなスキルなんだ。んで、『連携技』は、単独でスキルや魔法を発動させた時よりも、敵に与えるダメージや効果が大きくなるんだよ。しかもその上、連携を重ねる数が増えるにつれ、防御力無視、属性無視、回避無視、カウンター無視、常時クリティカルヒットなんかの付随効果が発生するから、超チートスキルなんだ」

「メリットの大きい『連携技』でござるが、発動の条件が、やや複雑でござってな。連携を成立させる際の行動順は、綺麗に連続したものでなくてはならないのでござるよ。故に、『連携技』を使う際には、『チームワーク』が重要になって来るのでござる。だから、先程から、チームワークを重視していたのでござるよ」

「今からみこに、俺達の『連携技』を見せてやるから、目ん玉おっぴろげてよく見ておけっ!」

 刹那が得意げにそう言うなり、真太郎が『連携技』の合図を出した。


「協力奥義! 『おでんは、ごはんのおかずになりません!』」

 真太郎が技名を告げるなり、イナバがスキルを使って複数の敵を薙ぎ払い、一直線に並べる。敵が一直線に並ぶなり、真太郎がホールドエネミーで敵を捕縛。そして、敵が捕縛されるなり、刹那がすぐさま、貫通性能のある戦闘スキル『ピアッシングスパイク』で一気に敵を貫く。 

「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーッ」」」

 真太郎達の『連携技』が決まるなり、モンスター達が一瞬にして消滅する。

「わー! すごーいっ! 『連携技』って、すごいね! 敵が一撃だよっ! ほんとチートじゃんっ!」

 初めて『連携技』を目にしたみこが、手をパチパチ叩いて感動する。


「よし! この世界でも俺達の『連携技』は、いい感じだ! んじゃ、次行くぞ! 協力奥義『寿司なら大好物なのに』!」

 真太郎が言いながら、ホールドエネミーで敵を捕縛する。

「『刺身がごはんのおかずになると』!」

 敵が動きを止めた瞬間、刹那が『ダークネスソード』を連続使用してHPを一気に削る。

「『途端に嫌いになる不思議アタック』!」

 トドメにイナバが、必殺の『つばめ返し』で、敵を一刀両断する。 

「すごーい! でも、そのふざけた技の名前をどうにかしなよっ!」

 そして最後に、みこがツッコミを入れて四人の協力奥義が完成した。


 そんな感じでわいわい戦闘を続けた真太郎達は、いつしかモンスターに勝利するのが当たり前になっていた。

 勝利の経験が戦闘の恐怖心を跳ね除け、心強い味方の存在が勇気をくれる。

 小さな成功経験を積み重ねる事で、真太郎達は確実に強くなっていった――。

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