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第20話 刹那とみこは仲良しさん? 乙女二人のツープラトン!

「おっ、弾いた! やるねぇ」

 真太郎の杖は割と早い動きだったのだが、今回は刹那の頭を小突く事はなかった。


 それどころか、刹那は逆に、真太郎の杖を叩き返した。

「ふふん、当然だ。アホにやられっぱなしなど、俺らしくないからな」

 目を丸くして驚く真太郎に、刹那が得意げな笑みを向ける。


「現実世界にいた時とは全く違う『今の視界』には、大分慣れたかい?」

「ったりめーだ。こっちはもう一週間もこの世界にいるんだぞ。さっきは、ちょっと油断しただけだ」

 強がる刹那を見た真太郎は、次いでみこに同じ事をやった。


「んじゃ、カウントスリーで行くよ」

「カウントなんていらないから、いつでもいらっしゃい」

 みこが自信満々に言うなり、真太郎はカウント無しでいきなり杖を振り下ろした。


「とりゃぁー、真剣白刃取りっ!」

 杖が頭に振り下ろされるなり、みこが両手でパシンと杖を挟み込む。

「「「何ッ!?」」」

 みこが謎の神業を披露するなり、全員が声を出して驚く。


「すっげ! みこちゃん、今の何それっ!?」

「真剣白刃取りとは……。みこ殿、実はかなりのやり手でござるな!」

「青髪、お前ふざけた振りして、実はスゲーなっ!」

 三人に手放しで褒められるなり、みこが気恥ずかしそうに頭を掻いた。


「えへへ~。ご紹介が遅れました、実はみこちゃんってば、剣道部の副部長で、剣道二段なのです」

「剣道部って事は、みこちゃんは、中学生か高校生なの?」

「そうっす。みこちゃんは、高校二年生です! よろしく、おっす!」

 体育会系なのをアピールをしたのか、なんなのか分からないが、みこが拳を腰の横で握って頭を下げた。


(もしかして、実はこのパーティーってば、かなり戦力高い?)

「よし! これで、チュウもみこちゃんも、視界の問題はクリアだね。次行ってみようか」

 頼もしい仲間の出現に気を良くした真太郎は、もう視界の問題はクリアしたと判断して次の訓練に移る事にした。


「防御の次は、攻撃に移ろう。師匠、チュウとみこちゃんの攻撃を受けてもらってもいいですか?」

 この中で最も手練れかつ防御力に優れていると思われるイナバに、実戦稽古の相手を頼む。


「うむ。かかってこい! でござるっ!」

 刹那とみこの特訓の相手を快く買って出てくれたイナバが、腰に下げている刀を鞘のまま抜いた。

「快諾、感謝します」

 すると、真太郎は、近くに落ちていた長い枝を拾って、刹那とみこに手渡した。

「チュウ、みこちゃん。その棒で、俺がやったみたいに師匠を叩いてみて」


「キモオタ叩きか。お安い御用だっ!」

「いいの? こう見えてあたし、剣にはけっこー自信あるよ?」

 イナバを叩けると知った途端、何故か刹那とみこが妙にやる気を出す。

「敵を攻撃する時は、相手と自分のステータス表示を見つつ、更に動き回る敵も同時に見なければならないから、ちょっと難しいよ」


「オラァー!」

 真太郎が話を終えるか否かというタイミングで、刹那がイナバに襲い掛かった。

「掛け声だけ立派でも、意味がないでござるよ?」


 しかし、刹那の攻撃は、あっさりイナバに防がれてしまった。

 それを見るなり、みこがイナバに襲い掛かる。

「面ーっ!」

「おやおや。みこ殿、剣道二段は騙りでござるかな?」

 しかし、妙に手練れなイナバは、みこの攻撃も楽々捌いてしまった。


 それを見た真太郎が、「やっぱりこのキモオタは、ただのキモオタじゃねーな」と小さく呟く。

「クソ! マジでやったのに、当たらなかったっ!」

「あれ~? おかしいなぁ? なんか、あたし弱くなってるぞぉ?」

「どうしたでござるか、二人とも? 愚痴ってないで、もう一回来るでござるよ」

 悔しがる女子中学生と女子高校生相手に、イナバがいい気になる。


「師匠。ひょっとして三人同時に相手をしても、なんとかなっちゃう感じですか?」

 イナバの実力の程を確かめたい真太郎が、眼鏡をキラリとさせて得意がっている彼に尋ねた。


「無論でござる。シンタロー殿も、かかってこいでござるっ!」

 余裕の表情のイナバが剣を構えた瞬間、真太郎と刹那とみこの三人が、同時にイナバに襲い掛かる。


「「「オラァー!」」」


「ござっ!? なんでいっぺんに、かかってくるでござるかっ!?」

 流石に三人同時はきつかったらしく、イナバの頭に三人の謎のシンクロ攻撃がクリーンヒットする。 


「あいたー! 三人共、いきなり過ぎるでござるよっ! 安全の為に、一人ずつ来るでござるよっ!」

 予想外の攻撃で酷い目に遭ったイナバが、ちょっと怒りながら指示する。

「流石の師匠でも、三人一緒は無理でしたか」

「とりゃっ!」

 何を思ったか、刹那が悪戯っ子の様な顔をして、イナバに枝を振り下ろした。


「あいたっ! 話している途中でござるよっ!」

「よっしゃ! 当たった!」

 刹那が奇襲を成功させたのに続いて、みこが間髪入れず枝を振り下ろす。

「そんじゃー、あたしもいっちゃうよ! ちょいさっ!」


「デュフ! ちょ、みこ殿! 今チュウに、注意している途中でござるっ!」

「おりゃあー!」

 攻撃がヒットした事に気を良くした刹那が、再び枝を振りかぶる。

「ちぇすと!」

 刹那が攻撃を開始するなり、みこがすぐその後に続く。


「えっさっ!」

「ほらさっ!」

「よいさっ!」

「こらさっ!」

「いたい、いたいっ! 二人とも、何餅つきみたいに掛け声合わせてござるのっ!?」 

 刹那、みこ、刹那、みこ――と女の子二人による謎のコンビネーション攻撃が、イナバに襲い掛かる。


「刹那ちゃん、最後は一緒にトドメを刺そうよっ!」

「いいぜ、青髪!」

 刹那がそう言うなり、みこがほっぺたを膨らませてむっとする。

「何その呼び方、やめてよね。みこちゃんか、みこお姉ちゃんって呼んでよねっ」

「何がお姉ちゃんだよ、お前なんかみこで十分だ!」

 刹那がぶっきらぼうに振舞うなり、みこが悪戯っぽくにひひと笑う。


「にひひ。君って、本当にこまっしゃくれてるねぇ~」

「うっせーぞ、みこっ!」

「おっ! 早速呼び捨てかな? うんうん、お姉ちゃんは気の強い子は好きだよ。じゃあ、あたしも刹那の事、呼び捨てにしちゃおうかな?」

「そんな事より、キモオタ退治だ! 俺に合わせろよ、みこっ!」

「おーけー、おーけー。刹那、せーのでいくよっ!」

 なんだかんだで打ち解けた様子の刹那とみこが、二人仲良く声を合わせる。


「「せーのっ!」」

 次の瞬間、刹那とみこのツープラトン攻撃が炸裂した。  


「ござぁぁぁー!」 

 女子二人による渾身のツープラトン攻撃を喰らったイナバが、悲鳴をあげて地面を転がる。


「ちょ、ほんとやめて! 女の子と思って舐めてたけど、この世界では勇ゲーのステータスが反映されるから、キミ達の攻撃は、めっちゃ痛いでござるのっ!」

 ゲームの設定が反映されるこの世界において、女の子とはいえ攻撃職である二人の攻撃は、どうやら洒落にならない痛さの様だ。

「つか、二人とも、ついさっき会ったばかりなのに、なんでそんな息ピッタリでござるのっ!?」

 一方的にタコ殴りにされたイナバが、刹那とみこに素で尋ねる。


「ん~……女の共通の敵が見つかった、みたいな感じなのかなぁ?」

「それだな。キモオタ・イズ・デットだ!」

 みこと刹那が、人知れず打倒キモオタで一致団結していた事をイナバに告げた。

「何それ!? どういうことっ! 二人共、拙者を殺す気でござったのッ!?」

 女の子にボコボコにされたイナバが思わず動揺するなり、脇で見ていた真太郎が刹那に声をかける。

 

「おい、チュウ。随分と慣れて来たみたいだから、なんか『スキル』使ってなよ」

「ん? 何でもいいのか?」

「師匠が死ぬと困るから、出来るだけ威力の弱い奴で頼む」

 真太郎がそう言うと、刹那は視界の隅に表示されているステータス画面から一番威力の弱いスキルを選んで、指でタップした。


「指で操作? ショートカットに登録してないのか?」

「ショートカットには、威力の高い奴しか設定してないんだよ」

 刹那は言うと、袖から仕込み剣を飛び出させ、剣を構えて腰を落とした。

「『ダークネスソード』!」

 瞬間、刹那の右腕の仕込み剣が、漆黒の霧の様な物に覆われた。

 ダークネスソード――闇の力を操る暗黒騎士が、初期に覚える攻撃スキルだ。内容は、闇属性を付与した武器による直接攻撃である。


「ちょっ、マジでござるかっ!? スキル有りなんて聞いてないでござるよッ!」

 漆黒の霧を纏う剣を手にした刹那が、激しく戸惑うイナバ目がけてスキルを放つ。

「おぎゃあああーっ!」

 刹那の攻撃スキルをまともに食らったイナバが、グルングルンと猛烈に回転しながら藪の中に突っ込む。 


「わぁー! 刹那やるじゃん! あたしもなんかスキル使ってみようかな?」

 刹那のスキルの強力さを目にしたみこが、自分もスキルを使ってみようとステータス画面を起動させる。

「ダメでござる! つか、最悪でござるっ! もう、お主らなんかの相手してやらねーよ、畜生っ!」

 悪ふざけに興じる刹那によってこっぴどい目に遭ったイナバが、とうとう拗ねてしまった。 


「なんだよ、今のは暗黒騎士のスキルの中で最弱の奴だぜ? いい気になってた癖に弱ぇじゃねーか、大した事ねーなキモオタ!」

 だが、地雷の刹那がそんなイナバを気にする訳は無く。謝るどころか、むしろ逆に得意げにはしゃぐ始末だ。

「……チュウめ。見た目は美少女JCながら、ゲームの時以上に地雷キャラでござるなっ!」


「まーまー。師匠の献身のおかげで、チュウとみこちゃんが早速仲良くなれて、更にこの世界での体の動かし方まで覚えたんです。ここは一つ、大目に見てやってくださいよ」

 場を取りなす真太郎が、ぷりぷり怒るイナバを慣れた手つきでなだめる。


「シンタロー殿も、悪乗りしていたでござるよねっ!?」

「あ、すいません、つい。でも、回復してあげますし、許してくれますよね?」

「あっ……やだ、そんな突然……! ふぁ……! 拙者、声出ちゃう……!」

 真太郎にヒールライトで回復させられるなり、イナバが無駄に甘い声を漏らした。


「おい! キモいぞ、キモオタ!」

「シンタローさん、変な事しないでよっ! イナバさんのキモさが二倍増しだよっ!」

「まーまー。ちょっとしたお茶目だよ、そうムキにならないで」

 刹那とみこがツッコミを入れ終わるなり、真太郎がおもむろに次の予定を提案する。


「チュウとみこちゃんが、得てせず繰り出した連携攻撃もイイ感じだね。となると、これはもう俺らだけでちまちま特訓するよりも、雑魚モンスターと戦った方がいいかもしんないね。みなさんは、どう思います?」


「いいと思うぜ。こんなアホみたいな事やっているより、よっぽど特訓らしいぜ」

「刹那にさんせーっ! あたし達は、もう実戦行けちゃうよっ!」

 この世界での体の動かし方を覚えた刹那とみこは、早く戦いたくてうずうずしている様だ。


「師匠はどうです?」

「四人共、この世界での体の動かし方をマスターしているみたいだから、実戦に挑んでも大丈夫だと思うでござるよ。それに、モンスター相手ならば、拙者が痛めつけられることもないでござろうし、賛成でござるよ」

 これ以上、刹那達に悪戯されたくなかったイナバが、反対するはずがなかった。


「んじゃ、次は実戦いってみるか!」

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